新規事業の旅142 グリーンファンド
2024年10月9日
早嶋です。(3900字)
グリーンボンドファンドやグリーンファンドは、環境配慮型の事業やプロジェクトに投資することを目的としたファンドの一種だ。具体的には、再生可能エネルギーやクリーンテクノロジー、省エネプロジェクトなど、環境に対するポジティブな影響を期待する取り組みに資金を提供する。
グリーンボンドファンドは、グリーンボンド(環境関連プロジェクトのために発行される債券)に投資するファンドだ。発行元は政府、企業、金融機関などで、集めた資金は太陽光発電、風力発電、エネルギー効率向上などの使途だ。投資家は、環境に貢献するプロジェクトを支援しながら、通常の債券のようなリターンを期待できる。
グリーンファンドは、より広義でグリーンボンドだけでなく、再生可能エネルギーやクリーン技術関連の株式やプロジェクトに投資するファンドを含む。ファンドマネージャーが選定した環境配慮型の企業やプロジェクトに資金を振り向け、その利益を投資家に還元する(グリーンファンドが広義のため、以下総称をグリーンファンドとして記述)。
グリーンファンドは、通常のファンドと同様にSPC(特別目的会社)を中心に運営する。例えば、蓄電池プロジェクトなど、大規模でコストが高い場合を想定してみよう。その際、SPCを活用するのだ。SPC(Special Purpose Company)は、特定のプロジェクトに資金を集め、管理するために設立される法人だ。蓄電池プロジェクトに特化したSPCを設立し、グリーンファンドなどを通じて投資家から資金を調達するのだ。
蓄電池は、大きな電池だが再生可能エネルギーを現在の電力インフラにインストールしていく際に、とても需要な役割を果たす。その際に、蓄電池を活用することで利益を発生させることが可能なのだ。再生可能エネルギーの特性上、発電量が気象条件に左右される。太陽がギラギラしている時は発電量が増え、貯める事が無ければ放電しなければならない。一方で、電力需要が逼迫している場合は、すぐに電力を発電するのも限界がある。簡単に沢山発電出来る時は、電力を蓄電池に貯め、電力需要が高まった際に、放電して提供するのだ。
具体的なビジネスモデルをみてみよう。まずは、価格差を利用した利益の獲得だ。電気の価格は需要と供給によって変動する。発電量が多くて需要が少ない時には電気の価格が安くなり、反対に発電量が少なく需要が多い時には価格が上がる。蓄電池はこの価格差を利用して、安価な時に電気を蓄え、高価な時に電力を売ることで利益を得るのだ。近年はこの売買のタイミングや取引そのものをAIを活用することで、最適なタイミングで充放電を行い、取引を効率化できるという理屈だ。AIによる予測とリアルタイムでの最適化を使うことで、電力の取引を自動化し、安定的なリターンを期待できる。エネルギー市場の動向に基づき、最適な取引戦略を実施することが可能になるのだ。
世界中で再生可能エネルギーの導入が進んでいる。各国政府はその普及を支援し、特にグリーンボンドやグリーンファンドを通じた投資は、政策面からも優遇されることが多く、リスクを軽減しやすい環境が整ってきた。また投資家には、環境に貢献する投資を望む者も多い。蓄電池を利用することで、再生可能エネルギーの活用をさらに促進し、エネルギーの効率的な利用に貢献できるため、社会的責任を果たす投資ともなるのだ。
グリーンファンドは、蓄電池の事例でみたように、投資家から見ても魅力的で社会的な意義があるファンドが。もちろんリスクもあるだろう。メリットとデメリット(リスク)を整理してみた。
まずはメリットだ。投資家としてのメリットは、環境貢献と社会貢献だ。グリーンファンドは、環境に優しいプロジェクト(再生可能エネルギー、エネルギー効率の向上、持続可能なインフラなど)に資金を提供するため、投資家は環境保全や社会貢献に関わることがでる。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)投資戦略に合致し、投資家もそのチャンスを得得られるのだ。
グリーンボンドは通常、政府や信用力のある企業が発行するため、リスクが低く安定した利回りが期待される。通常の債券と同様に、満期時には元本が返済されるため、リスク回避型の投資家にとっても一般的には魅力的だ。
当然、環境問題に対する関心は今後も高まるだろう。再生可能エネルギーやエネルギー効率向上の需要は増加する。各国政府もこの分野を支援するため、長期的な市場成長が期待される分野だ。つまり、グリーンファンドに投資することで長期的な資産価値の向上が見込めるのだ。
既に多方面に投資を行っている場合、グリーンファンドそのものがリスク分散として活用できる。グリーンファンド事態が、多様なプロジェクトや企業に分散投資することが多く、リスク分散しながら環境に関与することができるのだ。
もちろん、メリットの裏にはデメリットがある。いつの世も、どんな商材においてもリスクはあるのだ。諸々リスクを整理してみよう。
まずは、事業リスクだ。グリーンファンドで資金が投じられるプロジェクトが予定通りに完了しない、または期待される収益を生まないリスクだ。特に、技術的な失敗や規制の変更などにより、プロジェクトの収益性が損なわれる可能性がある。
次に市場リスクだ。債券の場合、市場全体の金利動向に影響を受けるため、金利が上昇するとグリーンボンドの価格は下がり、ファンドのリターンが減少する可能性がある。また、エネルギー市場の変動や政策変更によって再生可能エネルギー分野の利益が不安定になることもリスクファクターだ。
そして規制によるリスクもある。各国の政策や規制の変更により、グリーンプロジェクトへの支援が減少したり、新しい規制が追加されるなどだ。プロジェクトのコストや運営が影響を受けることが予想できる。特に、再生可能エネルギーに対する補助金や税制優遇措置が変更されると、予想された収益が減少する可能性が考えられるのだ。
そして流動性のリスクだ。グリーンボンドの場合、確かに市場は急成長している。しかし、他の債券市場に比べると規模が小さい。そのため、一部のグリーンボンドやファンドは売買が困難になることもある。市場の流動性が低いと、必要な時に売却できないリスクが存在するのだ。なんでもウマい話の裏にはリスクが潜むものだ。諸々を検討して、勝機をみいだせた投資家にとっては魅力的に映るのだ。
最後に、蓄電池の事業にフォーカスしたリスクを洗い出して見よう。それは蓄電池の寿命だ。大規模蓄電池の寿命について、2024年10月現在の情報では、一般的にリチウムイオン電池を使用するケースが中心だ。そして大規模蓄電池の寿命は10年から15年程度とされている。寿命に影響を与える主な要素は、充放電サイクルの回数や深さ、動作温度、電池管理システムの精度などがパラメーターだ。
蓄電池は充放電サイクルの回数が多くなるほど性能が低下する。リチウムイオン電池の場合、一般的に約3,000~5,000回のサイクルを経ても80%程度の容量を維持できるとされているが、それを超えると劣化が進む。高温や極寒での使用は、蓄電池の劣化を加速する。特に高温環境では、内部での化学反応が進むため、蓄電池の寿命が短くなる。蓄電池の冷却システムや適切な運用が必要になる。そして完全に充電したり、完全に放電することを避ける運用(浅い充放電)をすると、電池の寿命が延びるとされている。深放電や過充電を繰り返すと、劣化が加速するため、バッテリーマネジメントシステム(BMS)が重要な役割を果たすのだ。
上記を踏まえて蓄電池を活用した資金回収は、次のような工夫がなされることになるだろう。まずは、計画と充放電のサイクル管理だ。計画通りのサイクル管理と、電池の劣化を抑える運用戦略を導入することで、高価な蓄電池の寿命を延ばし、想定通りの利益を得られるようにする工夫だ。この分野にAIを活用して蓄電池の運用を最適化することが要になる。この管理は、電池の交換のタイミングや通常のメンテナンスがとても大切になる。寿命を迎える前に性能が大幅に低下した場合、蓄電池の交換が必要だ。もちろん冷却システムや設備におけるメンテナンスもポイントだ。ファンドで投資した蓄電池システムの運用そのものが重要なのだ。
資金回収(ペイバック)の効率を高めるには補助金や政策支援の活用がある。政府や地域のエネルギー政策による補助金や税制優遇が得られれば、初期投資やメンテナンスコストを補うことができる。イニシャル、ランニングコスト共に低減できれば、結果としてペイバック期間を短縮できるだろう。蓄電池のインストールはこれからだ。再生エネルギーが地産地消になっても、系統電力に接続されても蓄電池の需要は高まるだろう。事業モデルは安く買って蓄え、高く売るの繰り返しだ。電力市場の価格が想定通りに推移すれば、蓄電池の充放電のタイミングにより得られる収益も安定するが、市場価格の変動によって収益が変わるリスクもあるのだ。
初期投資が大きな事業で公共性が高い場合、投資家を募って事業推進の利害関係者に巻き込む手法がある。蓄電池事業の場合は、電池のコストと寿命がその事業全体の収益に大きな影響を与える。グリーンファンドの活用は良いアイデアだと思う。SPCを構築して蓄電池の選定や設置場所の電力需要者との交渉、全体ソリューションの設計や設置やその後の保守メンテナンス。全体の事業を考えたモノが、利ざやを確実に得ながらも事業を拡大することができるのだ。
書店の敵は私立進学志向(アマゾンじゃなかった!)
2024年10月4日
早嶋です。約5500字。
アマゾンの事業モデル誕生以来、リアルの書店が減少している。一方で、子育てが盛んなエリアでは、確実に絵本を中心に書籍販売する実店舗が存続している。そして、一定の教育レベルや生活レベルが高いエリアにはそのような店舗が存続どころか繁盛している。逆に、街中や過疎化するエリアは、街の書店経営が成り行かなくなる。これは私の仮説だが、実態を調べてみた。一部は正しいと考え、一方で別の視点も考察出来た。
リアル書店の存続要因について研究された論文をいくつか読んでみた。特定のコミュニティでは、書店をサードプレイス(第三の場所)として位置づけ、地域の文化・教育価値を支える役割を果たしていることが指摘されていた(※1)。また、このような書店は親子連れが絵本を購入する店舗としても根付いている。また、都市部や教育レベルの高い地域では、単に本を販売するだけでなく、読書会や教育イベントを開催するなどの、コミュニティとのつながりを強化し、書店の経営を支えている事例も報告されていた。
実際、みなさんも肌感覚で書店の減少を感じていることだろう。日本の書店数は過去20年で大幅に減少している。統計を見ると、2003年には約2.1万店あった書店が、2022年には約1.15万店まで減少している。20年間で書店数が半減しているのだ。この減少傾向は主に、都市部や過疎地での書店の閉鎖が続いている。一方で、面白い傾向も見つけることができた。売場面積は徐々に増加しているのだ(※2)。2003年は店舗の平均面積は80.3坪が、以降増加トレンドとなり、2011年(116.3坪)から2012年(107.9坪)で、一旦落ち込む。その後、再び増加トレンドとなり、2022年には132.7坪となっている(※3)。このように、日本の書店数は減少しているが、特定のエリアでは書店が存続し、更に店舗あたりの売り場面積は増加しているのだ。ここには何らかの理由があると考えられる。
そこでエリア毎の特徴を考察すべく、都道府県ごとの書店の統計を調べてみた(※4、※5)。また、書店の数と何か因果が無いかのあたりをつけるために、都道府県別の平均所得を合わせて比較することにした。
書店数が多い上位5都道府県(2019年のデータ):
1. 東京都 – 1,040店舗
2. 大阪府 – 591店舗
3. 愛知県 – 535店舗
4. 神奈川県 – 530店舗
5. 埼玉県 – 486店舗
書店数が少ない下位5都道府県:
1. 鳥取県 – 56店舗
2. 島根県 – 73店舗
3. 高知県 – 66店舗
4. 山梨県 – 81店舗
5. 香川県 – 94店舗
単純に上記を見る限り、人口密度が高いエリアに書店の数が多いことがわかる。そこで都道府県別の平均所得との相関を調べた。書店数が多いエリアは一般的に大都市が多く、平均所得も高めだ。例えば、東京都は全国で最も高い所得を誇り、2020年のデータでは約624万円だ。他の大都市圏、例えば大阪府や神奈川県も同様に550万から600万円程度だ。一方、書店数が少ない県は、例えば鳥取県や島根県などは平均所得が比較的低く、400万から450万円程度だ。これらの所得水準と書店数の減少にはある程度の相関が見られるかもしれない。
ただし、書店数が多い上位の都道府県は、東京や大阪、愛知など、人口密集地の都市部で、逆に書店数が少ない下位の都道府県は、鳥取県や島根県のように人口密度が低い地域に位置している。特に東京都は、日本で最も高い人口密度(約6,400人/km²)で、そのため書店数が多いと考えられる。一方、鳥取県や島根県は、人口密度が低く、鳥取県は約150人/km²と、人口密度が低いため、商店などの書籍店そのものが成り立たない構造になっていると考えることが出来る。
そこで、単位人口(1万人)あたりの書店の数を確認した(※4)。面白い結果が見えてくる。
店舗数(店)
1 石川県 1.34
2 福井県 1.30
3 香川県 1.16
4 鳥取県 1.12
5 徳島県 1.06
6 京都府 1.05
7 富山県 1.04
8 和歌山県・山梨県1.03
9 栃木県・岩手県 1.02
10 秋田県 1.00
平均 0.78
書店の数は、人口密集地に多いが、単位人口で見てみると東京、大阪、愛知、神奈川などはランク外になるのだ。ちなみに同様の単位あたりの書店数は、人口1万人に対して神奈川は0.58、埼玉は0.66、東京都は0.74と平均の0.78よりも低いのだ。
ここまでのデータから推定できることは、日本海側や四国の地方都市で書店が多い傾向が見られることだ。教育レベルに注目すると福井県や石川県は、学力テストで高成績を収める傾向が強く、読書習慣が根付いていることと相関が高いかもしれないと考えた。
そのエリアにおける教育費や過処分所得の構成比率を見ると何かの関連がわかるかもしれない。統計データから可処分所得に占める教育費の割合に関するランキングと、対応する金額を整理した(※6)。確かに地域ごとの可処分所得や教育費には大きな違いが見られた。
教育費の割合が高い都道府県(可処分所得に占める割合)
1. 東京都
可処分所得: 約650万円
教育費割合: 約10-12%
教育費: 約65-78万円
2. 神奈川県
可処分所得: 約620万円
教育費割合: 約10%
教育費: 約62万円
3. 愛知県
可処分所得: 約550万円
教育費割合: 約9-10%
教育費: 約49-55万円
4. 大阪府
可処分所得: 約530万円
教育費割合: 約9%
教育費: 約48万円
5. 京都府
可処分所得: 約520万円
教育費割合: 約9%
教育費: 約46-47万円
教育費の割合が低い都道府県
1. 鳥取県
可処分所得: 約400万円
教育費割合: 約7%
教育費: 約28万円
2. 島根県
可処分所得: 約390万円
教育費割合: 約7%
教育費: 約27万円
3. 秋田県
可処分所得: 約380万円
教育費割合: 約6.5%
教育費: 約25万円
因みに、単位人口あたりの書店数が多い、石川県、福井県、香川県、徳島県、富山県の可処分所得に占める教育費の割合や金額も見てみた。
(石川県)
可処分所得: 約470万円
教育費割合: 約8.5%
教育費: 約40万円
(福井県)
可処分所得: 約460万円
教育費割合: 約8.2%
教育費: 約38万円
(香川県)
可処分所得: 約440万円
教育費割合: 約7.9%
教育費: 約35万円
(徳島県)
可処分所得: 約420万円
教育費割合: 約8.0%
教育費: 約34万円
(富山県)
可処分所得: 約450万円
教育費割合: 約8.3%
教育費: 約37万円
これらのデータを見てわかるように、人口密集地は可処分所得に占める教育費の割合が10%を超えている。一方地方で他に人口あたりの書籍店の数が多いエリアは、可処分所得に占める教育費の割合が8%前後で、教育費そのもの金額が低いエリアは7%以下であることが分かった。都市部は教育費がかかる構造で、地方は教育費をかけない傾向があるのだろうか。
この疑問は別の視点で解けた。所得が高いエリアは人口密集地に集中しており、このエリアに書店が多いのは人口との相関だ。一方で、地方では人口密集度合いが低くなり、書店の経営は難しくなるかと推定したが、所得レベルが低い鳥取や島根などは、単位人口あたりの書籍店の数が平均の0.78よりも高く1を超えているのだ。
書店の数に影響を与えるパラメーターは、人口密度は間違いない。ただし所得レベルや可処分所得に占める教育費の割合は相関があるとは言い切れない。教育費の絶対額が低い地方でも書店が多いエリアが多いからだ。となると文化や教育の関心度合いが考えられる。所得や人口に関わらず、文化的な背景や教育への熱意が強い地域では書店が比較的多く存在するという仮説だ。鳥取県や島根県、香川や徳島、秋田のように所得が低いにもかかわらず、地域の教育熱が高い場所では、書店が存続しているのだ。
所得レベルが低く、人口も少ない、そして可処分所得に占める教育費の割合が少ない日本海側や四国の地方都市、それから東北では書店が多い傾向が見られる。しかし、このようなエリアの教育レベルは低くはない。福井県や石川県は、学力テストで高成績を収める傾向が強く、読書習慣が根付いていることと相関が高いかもしれないと考えた。そこで進学率の統計を見ている時に面白い発見をした。書店の数は、私立学校の進学率と緩やかに反比例しているということだ。都道府県ごとの私立学校志向を調べてみると、以下のような順位が分かった(※7)。
私立高校への進学率が高い都道府県(2021年のデータ)
1. 東京都: 進学率56.9%
2. 大阪府: 進学率48.0%
3. 福岡県: 進学率43.1%
4. 奈良県: 進学率42.9%
5. 愛知県: 進学率42.8%
特に都市部において私立学校が教育選択肢として広く受け入れられており、私立への進学率が高いことが確認できる 一方で、私立高校などの進学率が低い都道府県は、主に地方や過疎地に集中している。逆に、国公立学校への進学志向が高い都道府県の上位には、以下のようなエリアがある(※8)。
1. 新潟県:国公立進学率が最も高く、全体の進学率は99.57%
2. 石川県:99.43%で、非常に高い進学率を誇る県の1つ
3. 福井県:99.31%、北陸地方の他の県と同様に国公立志向が強い
4. 岩手県:99.30%、国公立学校への進学が主流の地域
5. 富山県:同じく99.30%、国公立志向が強い地域
これらの地域では、特に公立・国立学校への進学率が高く、私立進学が少ないことが特徴だ。多くの住民が国公立学校を選ぶことで、教育費が抑えられ、文化的な価値観が地域に根付いている可能性が高い。書店の数や図書館の利用率も高く、地域全体で教育と文化に対する関心が高いのだ。先に示した単位人口あたりの書店の数は、新潟は1.02、石川は1.34、福井は1.30、岩手は1.02、富山は1.04だ。平均が0.78なので、一定の関係を確認できる。
全体の議論を整理してみよう。書店の敵はアマゾンではなく、私立進学志向だったのだ。まず、人口密集地では書店の数は多いが、単位人口あたりの数は少なかった。東京、神奈川、大阪、京都といった人口密集地では、書店の絶対数は多いものの、人口1万人あたりの書店数は全国平均の0.78を下回るか、ほぼ同水準に留まっている。これらの地域では、教育に対する支出が多いものの、書籍の購入に対する余裕や時間が限られていることが考えられる。単位人口あたりの書店数が多い地域は教育熱心で私学が少ない特徴から国立志向が強いのだ。石川県、福井県、富山県、岩手県などの地方では、1万人あたりの書店数が1を超える地域が多く見られる。これらの地域は、教育熱心な家庭が多く、かつ国公立学校への進学志向が強いことが特徴だ。これにより、家庭が私立学校や塾などの高額な費用を支払う代わりに、図書や文化的な支出に対して余裕を持つ傾向が見られるのだ。私学志向の強い都市部では教育費が高く、図書購入に費やす余裕が少ない。それから読書する時間を塾や私学の勉強に回しているとも考えられる。東京、神奈川、大阪のような大都市では、私学志向が強く、教育費の多くが塾や私立受験対策、私立学校の学費に割かれている。これらの地域では、可処分所得が高くても、教育費が10%以上に達しており、書籍や図書に回す予算や時間が不足している可能性があるのだ。私学志向が強い都市部では、教育が競争的になりがちで、デジタル化も進んでいる。対して、地方では書店や図書館の利用が文化的活動として根付いており、公教育の質が高いことで、私学に頼らない教育スタイルが一般的だといえるのだ。
地方に書店を増やし、文化的な施設を増やす。生成AIやロボットが人間のライバルになる頃、都市部での過度な学歴競争は無意味なものとなり、文化や感情を育んで人間らしく育った地方の国公立志向の子どもたちが未来を創造する世界がくるかもしれない。
※1:https://link.springer.com/article/10.1007/s11769-023-1393-6
※2:https://www.nippan.co.jp/news/data2023_20231113/
※3:https://www.ohmae.ac.jp/mbaswitch/e-books
※4:https://ryutsu-gakuin.nippan.co.jp/n-column-cat2-9/
※5:https://realsound.jp/book/2022/12/post-1206831_2.html#google_vignette
※6:https://ecitizen.jp/Ssds/Indicators/_D0311501#google_vignette
※7:https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/737617/
※8:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/mieruka/db_top/link/performance_link/mext1_3_2.html
価格転嫁交渉術
2024年10月3日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「価格転嫁交渉術」です。昨今の物価高、資源高、人件費高騰など経営環境は厳しくなる一方です。せめてコスト増の分を価格に上乗せしたい、でも取引先との交渉に自信がないという方もおられるかもしれません。先日ある商工会議所でセミナーをおこないましたので、その内容を抜粋してお届けいたします。
現在、国(経済産業省や中小企業庁)や地方自治体、商工会議所など多くの機関が、価格転嫁・価格交渉の後押しをしてくれています。ツールや資料の配布だけでなく、サポート体制として全国に「よろず支援拠点」を開設し経営相談や指導、講習を開催してくれています。また法律面でも下請法や下請振興法、フリーランス法の整備、独占禁止法に基づいて公正取引委員会による調査や事業者名の公表など、価格転嫁、価格交渉しやすいバックアップ体制があるとは言えます。
そこで今回は、実際の交渉にあたり、どのような順番で何をしないといけないのかをお伝えします。
まずは価格を交渉するポイントです。
価格交渉は下請けが元請に対して値上げを要請するケースが一般的ですが、そもそも定期的に取引価格を見直すことは双方にとって必要なことです。下請けにとっては事業を継続させなければならないですし、取引先にとっても下請がなくなれば事業が立ちいかなくなります。価格が適正であるということは、双方にとって大切であるという認識が必要です。
そして、いきなり交渉とならないように、日頃から取引先と日常的にコミュニケーションをとっておくことも重要です。その中で、コストが上がっている実情なども伝えることができるでしょう。
また、自社の強みが何であるか、取引先にとって自社はどのような価値提供をしているのかも認識してくことです。例えば、「急な発注にも対応できる」「安定した品質」「これまでの実績」など、その「なくてはならない」強みを交渉に活かすべきです。
その上で、実際に交渉に当たる3ステップを説明します。
ステップ1 事前準備
交渉に当たっては、値上げの根拠となる客観的なデータを提示する必要があります。原材料費やエネルギー費などの価格変動前後のデータを提示したり、投入した時間やそれに伴う人件費の上昇分など定量的に把握し実際にかかっている原価がどのように変化しているかを示すことが不可欠です。原価の推移などデータ収集のために色々なサイトが提供しています。一例を上げると、埼玉県「価格交渉支援ツール」、財務省「貿易統計」、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」、新電力ネット「全国の電気料金単価」、農林水産省「食品価格動向調査」等々データを収集するのは容易です。それらを使って、しっかりと資料を準備することが大切です。
ステップ2 価格交渉
事前に準備した客観的かつ合理的なデータを提示しながら、値上げ交渉します。その時に、自社として理想的な価格を「提示価格」、相手の反応を見ながら妥協する「目標価格」、これ以上は譲歩できないギリギリの「最低価格」を決めて交渉に当たりましょう。
あわせて価格以外で対案や取引条件を提示できないかも考えます。例えば、加工方法や設計の見直し、梱包方法や納品頻度の見直し、支払条件や保証期間の見直しなどで価格は現状維持でも妥結できる交渉もあります。
また適切なタイミングで申し入れることも重要です。大手の値上げのタイミングに合わせる、取引先の価格改定に合わせる、3ヶ月から半年前には取引先と共有しておくことも大事です。急な値上げでは相手も承諾しにくいでしょう。
ステップ3 文書化
交渉の経緯について、その都度、価格や条件について決まったこと、決まっていないことを文書化しておきます。取引条件やルールの文書化の例として、製品単価の算出ルール、追加費用の負担ルール、運送経費の算出ルール等々です。後々、間違いのないように双方で保管します。
以上が価格転嫁、価格交渉のステップです。
「確実にステップを踏むならば成功の確率は上がる」とドラッカーも言っています。価格転嫁、価格交渉をしなければならない方は是非参考にしてください。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
新規事業の旅141 高級時計ブランドのはじめ方
2024年9月30日
早嶋です。約12,400字。
高級時計など、ブランドを確立し事業として成功するプロセスにおいて、共通点を整理した。もちろん、実際は、後付も多いだろうが知名度ゼロからブランドを立ち上げ、1機100万円以上する腕時計を販売する企業の取組には、いくつかの共通項も見いだせる。最後には、我らPDCHのまとめも掲載した。
●ブランドコンセプトとビジョン
ブランドコンセプトとビジョンの設定は、マーケティング活動におけるポジショニングの確立に近い。自分たちの時計は何を表現するか。時計ブランドの核となるビジョンや考え方、商品や販促活動の軸になる取組をある程度明確にすることだ。通常、商品や事業のポジションとターゲットはある程度一緒に議論することが多い。ただ、余りにも飛び抜けたビジョンやコンセプトである場合は、今の顧客層を議論しても良い発想は生まれない。その場合は、将来顧客からのフォローを信じて自社哲学にフォーカスして取り組む。顧客は後からついて来るという発想だ。コンセプトは初期の段階で明確に議論しなければならないわけでは無い。商品を創る過程や販売を繰り返す中で一定の共通性や感触をもとに、徐々に明文化する企業やブランドもあるからだ。
実際の高級時計メーカーの事例をいくつか挙げてみる。どのようにブランドコンセプトやビジョンを定義しているか、議論する際の参考になるだろう。
まずは、ロレックス(Rolex)だ。ブランドコンセプトは、「信頼性と高精度」、ビジョンは「耐久性と技術革新を両立させ、エリート層に向けた時計を提供する」ことを掲げていると思う。ロレックスは、耐久性のある精密な時計を求める探検家やスポーツ選手から、ビジネスマン、富裕層まで幅広い層に支持されている。初期から防水性のある「オイスターケース」を開発し、世界初の自動巻き機構「パーペチュアル」を搭載するなど、技術革新を進めてきている。また、エベレスト登山や深海探検などの過酷な環境での使用実績を積み重ね、時計の耐久性と信頼性をアピールしている。
次は、パテック・フィリップ(Patek Philippe)だ。パテックのブランドコンセプトは、「伝統と卓越した職人技」で、ビジョンは、「次世代に受け継がれる時計を作る」だろう。パテックは、時計製造において職人技の極致を追求し、複雑な機構や美しい仕上げを特徴としている。彼らのビジョンは、ただ時計を売るのではなく、「あなたの時計は次世代に受け継がれるべきもの」という哲学に基づいている。これは、顧客が購入した時計が価値を増し、家族の遺産として残るというメッセージを発信している。非常に高いステータスを持つ時計メーカーとして位置付けられている。
オーデマ・ピゲ (Audemars Piguet)。ブランドコンセプトは、「芸術性と革新の融合」でビジョンは、「伝統を守りつつ、革新を続けることで、新しい時計デザインを生み出す」だ。オーデマ・ピゲは、特に1972年に発表された「ロイヤルオーク」で有名だ。このモデルは、従来のドレスウォッチとは異なり、ステンレススチール製のスポーツウォッチでありながら高級感を持つという革新的なデザインを採用した。伝統的な時計製造技術を守りながらも、新しいスタイルや素材を取り入れることにより、時計業界におけるパイオニア的な役割を果たしてきた。
リシャール・ミル(Richard Mille)。ブランドコンセプトは、「フォーミュラ1のような精密工学」であり、ビジョンは「次世代の素材とテクノロジーを駆使し、究極の高性能時計を作る」だ。リシャール・ミルは、2001年に創業された比較的新しいブランドで、航空宇宙技術やフォーミュラ1に使われる素材を取り入れ、超軽量で高耐久な時計を作り上げている。彼のビジョンは、「フォーミュラ1のような精密さとスピードを時計製造に取り込む」というもの。リシャール・ミルの時計は極めて軽量で、衝撃に強く、アスリートたちが過酷な競技の中で装着しても問題なく動作することが大きな特徴になっている。
ブレゲ (Breguet)。ブレゲのブランドコンセプトは、「発明家精神と歴史的遺産」でビジョンは「時計製造の革新を続け、伝統を尊重する」だ。ご存知の通りブレゲは、現代の高級時計に多大な影響を与えたブランドで、トゥールビヨンや永久カレンダーなどの時計機構を発明したアブラアン・ルイ・ブレゲによって設立された。ブランドのビジョンは、伝統を尊重しつつ、新しい技術革新を追求し続けることにある。ブレゲは、過去の偉大な発明に敬意を払いながら、現代の時計製造技術を進化させている。
最後は、ジャガー・ルクルト (Jaeger-LeCoultre)。ブランドコンセプトは、「エレガンスと多機能性の融合」でビジョンは「実用的かつ美しい時計を作り、細部にまでこだわる」だ。ジャガー・ルクルトは、複雑な機能を備えたエレガントな時計で知られ、特にリバーシブルデザインの「レベルソ」は、ドレスウォッチとしての優雅さと実用性を兼ね備えたモデルとして広く認知されている。彼らのビジョンは、エレガンスを追求しつつ、時計が持つ機能性を最大限に引き出すことにある。
どのブランドも、強固なブランドコンセプトと明確なビジョンを持ち、顧客に対して一貫したメッセージを送り続けている。技術革新、職人技、伝統、革新的なデザイン、素材など、ブランドの特徴を明確に打ち出し、ターゲット顧客に対して信頼と価値を提供することが成功の鍵となるのだ。
●特別な機構や技術の導入
高級時計において、技術的な差別化は当たり前だ。初期段階から何か特別な要素を持たせることで、市場のエントリーを可能にする。技術畑のブランドは、その技術そのものが目玉商品になることもあるし、その後のブランド拡大に大きな影響を与える。高級時計ブランドにおいて技術的な差別化を図る際は2つのアプローチがある。垂直統合と水平連携の2つだ。それぞれのメリットや事例を見ていこう。
垂直統合とは、製造工程や技術開発のすべてを自社で行うアプローチだ。ブランドが自前で材料調達から組み立て、ムーブメントの開発、仕上げまでを行うことで、品質管理や技術的な革新を一貫して行うことが可能になる。メリットは、品質管理が徹底されること、独自技術が蓄積されること、そしてブランドの独自性を確保できることがある。
工程の上流から下流までを自社で管理するため細部まで高い品質を維持できる。更に、他社に依存せず、自社独自の技術開発により、競争力を高めることもできる。結果的に、長期に渡りブランドアイデンティティの強化にもつながるのだ。加えて、他社製ムーブメントや部品に依存しないため、製品に独自の技術やデザインを反映しやすくなるのもメリットだ。
一方、デメリットだ。コスト高になること、スケールメリットの失敗の可能性、そして柔軟性が低下する場合があることだ。垂直統合では、製品の製造工程をすべて自社で行うため、設備投資、技術開発、製造にかかる初期コストが非常に高くなる。また、全てのプロセスを自社で管理するためには、各工程におけるリスク(例えば、技術開発の失敗、供給不足、製造ラインのトラブル)が直接的に会社に影響を及ぼすこともある。
垂直統合にこだわると、外部からの部品やムーブメントの調達を検討しないので、規模の経済を活用したコストカットができにくくなる。すでに確立した大規模のブランドは別だが、小規模ウォッチメーカーだと、外部供給に依存せずに自社で全てを製造するには限界があり、コスト高になる傾向があるのだ。
全工程を自社で行うことは、市場の変化や新技術の登場に対して柔軟に対応しにくい場合がある。例えば、ある工程で技術革新が外部で進んでいても、既に自社の設備や技術に大きな投資をしているため、その新技術にすぐに切り替えることが難しい状況が発生するなどだ。
ジャガー・ルクルトは自社で1,000種類以上のムーブメントを開発してきた歴史を持ち、内部でほぼすべての部品を製造している。Reverso(レベルソ)のような独自のデザインや高機能な複雑機構も、自社内で生み出されている。こうした垂直統合のアプローチにより、他社とは一線を画す時計を作り出し、ブランドの差別化を実現している。
パテック・フィリップは、自社で複雑機構を開発・製造する能力に優れ、トゥールビヨンや永久カレンダー、クロノグラフなどのハイエンドな技術を自社で供給している。パテックの場合、時計のすべてがパテック製であること事態も価値を高める要因と理解されている。
次に、水平連携を考える。時計ブランドが特定の工程や技術の開発を他社と協力して行うアプローチで、特定の分野で専門的な技術や知識を持つ企業と提携することで、製品の品質や性能を高めることができるというメリットがある。他にもコスト削減と効率化、専門技術の積極採用、スピードを味方にした市場投入などもメリットだ。
当然にデメリットも多数ある。まずは品質管理が難しくなることだ。特に高級時計では、細部に至るまでの品質がブランドの信頼性を支える要素となる。外部パートナーの管理が適切でない場合、品質のばらつきや不具合が発生する可能性につながるのだ。競争力が低下することも考えられる。基本的に、他社と同じムーブメントや部品を使うため、競合他社との差別化が難しくなる問題は理解できるだろう。もちろん、実際は相当のマニアでなければ水平連携先の取組を知らないので杞憂ということも言えるだろう。敢えてもう一つ言えるとしたらパートナーへの依存だ。パートナーのビジネス状況や供給状況が悪化した場合、その影響を受けやすいというデメリットだ。
リシャール・ミルはムーブメントの製造を自社開発だけでなく、複雑な機構や精密なムーブメントで知られるヴォーシェマニュファクチュールと提携している。この提携により、リシャール・ミルはムーブメント開発の負担を軽減し、他社との協力を通じて超軽量で高性能な時計を作り出している。
ブライトリングは、スイスの時計産業で一般的なETAムーブメントを採用している。ETAはスウォッチグループが所有するムーブメント製造企業で、ブライトリングは自社製造とETAムーブメントの両方を活用することで、ブランドの多様なニーズに対応しながらも高品質を維持している。
タグ・ホイヤーは、日本のセイコーと技術提携し、革新的なクォーツムーブメントを採用することで、精度とコスト効率の高い時計を市場に投入している。クォーツ技術ではセイコーがリーダー的存在であり、水平連携を通じて新しい市場を開拓しているのだ。
垂直統合も水平連携も一長一短があり、ブランド規模や戦略に応じて選択することが重要だ。最初は水平連携を行い、後に垂直統合へと移行するブランドも存在しているように、どのような方法を取るかは、ブランドの成長戦略や市場のニーズによって異なるのだ。
●有名人やインフルエンサーとの協力
無名ブランドが注目を得るために、ブランドアンバサダーや他のブランドとのコラボレーションを行なう事がある。特に、時計業界では、成功したビジネスパーソンやスポーツ選手、アーティストなどが時計を愛用していることが一種のステータスとなり、そのブランドの認知が高まるきっかけになる。
ブランドが小さく成長していない初期は、販売できる数に限りがある。そのため一定の限定モデルのような取扱ができる。そこに対して希少性をアピールし、時計コレクターや富裕層にリーチしてブランドの魅力を伝えていく。もし彼らが魅力を理解いただければ、強力なパートナーとなりブランドの良さを世界に知らしめてくれる。伝統的には展示会や時計グランプリにエントリーして自身のブランドをアプールするのだ。その中で、影響力のある組織や個人の目に止まれば次のステップに進める確率も高くなる。
ただし有名人やインフルエンサーの起用においては大きなリスクが潜んでいる。もし、彼ら彼女らがブランドイメージに反する行動を取った場合、ブランドの評判に大きなダメージを与えるのだ。更に、規模が小さいブランドは経済的な余裕が無く、理想の著名人をリストアップ出来たとしても、コンタクトすることすら難しいだろう。そこで、いくつかのリスクと策を整理してみた。
まずはリスク管理についてだ。著名人やインフルエンサーを選定する際は、知名度だけでリストアップしてはいけない。その人物の価値観やライフスタイルが本当に自分たちのブランドイメージと合致しているかを慎重に見極めることがポイントだ。長期間にわたって信頼でき、ブランドの理念やメッセージに実際に共感してくれる人がいれば、リスクそのものを減らす確率が高まる。パテック・フィリップは、製品の「次世代に受け継がれる」というテーマに合致するような、歴史や伝統を重んじる人物をブランドアンバサダーに選ぶことで、イメージの一貫性を構築している。
契約の期間等もポイントがある。長期的なアンバサダー契約ではなく、短期的なコラボレーションやプロジェクトベースでの協力を行うことで、リスクを分散できるからだ。万が一問題が発生した際にも、関係を迅速に解消することが可能になる。もちろん、短期間であっても先に示した人物の選定は慎重に行なうべきだ。リシャール・ミルは一部のアスリートや著名人とのコラボレーションを行い、限定モデルをプロモーションしている。その契約は、長期的な期間ではなくプロジェクトごとに関わる形態を取り、リスクをコントロールしていると推察できる。
ブランドが強い立場にある場合は、アンバサダー等との契約の際に契約条件をつけるのもアイデアだ。契約期間中に、ブランドのイメージに著しく反する行動を取った場合、契約を解除できる条件を設定するなどだ。仮にトラブルが発生した際にも迅速に対応することができるのだ。実際、一部のラグジュアリーブランドは、著名人との契約に「道徳条項」を含めている。イメージを毀損する行動があった場合、契約解除ができる仕組みを備えているのだ。
では、小さなブランドやスタートアップのブランドが取るべき取組について考えて見よう。著名人やインフルエンサーへのリーチ事態、経済的なコストを伴う。小さなブランドでも独自におこなうことが可能な取組だ。まずは一定のコミュニティやニッチターゲットにアプローチすることだ。高級時計の世界は、有名人よりもむしろ特定のコミュニティで発信力がある方々のほうが価値を正確に伝えてくれる可能性がある。インスタグラムや他のSNSには、特定のグループコミュニティが発達している。そのようなコミュニティの中で認知を得ることを考えるのだ。
もちろん自社のサイトや露出する媒体の中でブランドの歴史や製品の開発背景、製造工程などに焦点をあててストーリテリングすることも大切だ。高級ブランドは、商品のみならず、その商品に関連される全てにおいて価値を体現することになる。ストーリテリングはブランドの信頼性を高め、消費者の共感を呼ぶ強力な手段になるのだ。特に、小規模なブランドは、創業者の理念や職人技のこだわりを打ち出すことで、他の大手ブランドとは異なる独自性をアピールすることができる。ブランドが大きくなると、様々な利害関係の中で一定の利益を追求する必要がでてくるので、小規模なブランドのように徹底した拘りができなくなる場合があるので、余り語らなくなるのも事実だ。小さいブランドしかできない取組を将来のオーナーに向けて語りかけるのだ。ドイツの時計ブランド「ノモス・グラスヒュッテ」は、伝統的な時計製造の技術と現代的なデザインを融合させた時計作りを強調し、職人技を前面に出したストーリーテリングでブランドの知名度を上げている。
初期のブランドは、インフルエンサーや著名人よりも実際の顧客の声が大切な評価になる。特に高級時計の場合、製品の品質やサービスに満足した顧客は積極的にブランドを推薦することを行なう。これは、そのブランドの信頼を高める取組にもなる。このようにリアル、SNS等を通じて実際の顧客から発信された声を活用することも効果的だ。ただし、ここに対して明らかにペイドで著名な方々に対して発信を急増すると、やらせ感がでてしまう。数万円の時計であれば問題ないだろう。ファッションのようにそもそも何個も買い替えスイッチするものだからだ。しかし100万円以上の単価で販売をする場合は、一定の塩梅があるのだと思う。
大手ブランドは限定と言っても1,000個とか2,000個の世界だ。しかし、小さなブランドは25個とか50個作って販売するのも大変だ。そこを逆手に取り大手が出来ないような少量生産であることを協調して限定モデルとしてアピールするのだ。全ての時計に対しては、ナンバリングがされてあり、保証書にはブランドオーナーや創業者のサインが記されている。このような取組は顧客に対して特別感を与え、ブランドに対する強いロイヤルティを生み出すきっかけになる。オリス (Oris)は、限定生産のモデルを発売することで、時計コレクターや愛好家の間で評価を得ている。特に環境保護活動とコラボした特別モデルは注目されるきっかけを作った。
技術者や職人にフォーカスするのも一つの手法だ。通常、ブランドの世界は完成された商品のみが露出する。しかし、実際のものづくりの世界は熟練した技術者が幾重にも協力して完成される。その取組やその職人や技術者たちに光をあてて、ブランドを発信していくのだ。大手と異なり大量生産では無い場合は、かならず少量生産で昔と変わらないウォッチメイキングの手法を取り入れている。その技そのものが、現代人に取ってとても希少に映るのだ。セイコーグループではあるが、セイコー プレザージュは、伝統的な日本の職人技とのコラボレーションと、その技術や美しさを強調している。これは、特に海外において高い評価を得るきっかけを構築した。
著名人やインフルエンサーとの協力は、ブランドの認知度を高めるための強力な取組だが、リスクも伴う。これらのリスクを軽減するためには、適切な選定と契約条件の整備が必要だ。また、小さなブランドが無理に有名人に依存せず、他の方法でブランドを強化することも十分可能だ。コミュニティをターゲットにした取組や、ストーリーテリング、口コミを活用することで、ブランドの知名度を徐々に築き上げることがポイントになるのだ。
●細部への徹底的なこだわりと品質
高級時計は価格に見合った品質は言うまでもない。素材、製造工程、仕上げ、耐久性や実用性。全ての面において当然にクリアすることが大切だ。クオーツの時計に宝飾品を埋め込んだだけの時計は高級時計としての価値はつきにくく、ジュエリーウォッチとして、別のカテゴリに属される。時計は、やはり機械式であるか、グランドセイコーのように独自の機構等を組み込み事が前提にある。具体的な部品ごとのこだわりと実用的な機能について説明しよう。
まずは、ムーブメントだ。ムーブメントは時計の心臓部で、最も重要な要素だ。高級時計メーカーは、ムーブメントの設計・仕上げに膨大な時間と労力をかけ、視覚的にも機能的にも最高レベルの仕上がりを追求する。ムーブメントの各パーツには「ジュネーブストライプ」「ペルラージュ(丸形研磨)」「ポリッシング」といった伝統的な装飾が施される。これらの装飾はムーブメントの美観を高め、コレクターにとっての魅力となる(ジュネーブストライプはムーブメントのプレートやブリッジに斜めに彫られるストライプ模様だ。ペルラージュは円形の研磨模様で、ムーブメントの仕上げや装飾に用いられる)。
続いてローターだ。自動巻きムーブメントには、ローターが時計の動力源を巻き上げる役割を果たす。高級時計では、ローターの素材や装飾に特別なこだわりがある。まずは素材だ。ローターに18Kゴールドやプラチナを使用する。これらの貴金属は比重が重く、同じ体積(大きさ)でより効率的にゼンマイを巻き上げる機能的な意味もあるので、時計そのものの性能向上にも寄与するのだ。そしてローター自体にも装飾が施され、美観を高める要素となる。オープンワーク(透かし彫り)にすることで、ムーブメントの内部構造が見えるデザインなどもあり、これもオーナーにとっての楽しみの一つとなる。
ブリッジやプレートも忘れてはいけない。これらはムーブメント内のパーツを支える構造で、精密な仕上げと耐久性が求められる。高級時計では、ブリッジやプレートのエッジ部分を手作業で斜めにカット(アングラージュ)して、滑らかな曲線美を持たせることがある。これは、精密な職人技が求められる工程で、特にスイスの時計ブランドにおいては伝統的な技術として知られる。もちろん素材も気を使う。高品質なブラス(真鍮)やメッキ処理された金属が使われ、強度と美しさを両立させるのだ。
テンプとヒゲゼンマイは見ていて飽きない。テンプは時計の「心臓部」と呼ばれ、ムーブメントの精度に大きく関与する。特にヒゲゼンマイは、時計の正確な動作を維持するための極めて重要な部品だ。ヒゲゼンマイには、伝統的なニバロックスという特殊合金が使われている。最近ではさらに進化した素材でシリコンなどの採用もある。シリコンは軽量で磁気の影響を受けにくく、時計の精度を向上させた。高級時計では、テンプの振動数を細かく調整できる機構が取り入れられ、職人が何度も調整することで極めて高い精度を実現する。たとえば、クロノメーター認定を受けた時計は非常に厳しい精度基準をクリアしているのだ。
機械式時計のムーブメントは、軸受け部分にルビーやサファイアなどの硬い宝石を使用する。これにより、摩擦が減少し、ムーブメントの耐久性と精度が向上する。ムーブメント内の要所にルビーが精密に配置され、耐久性を保ちながら摩耗を防ぐ役割を果たす。石の数が増えるほど、時計のムーブメントは複雑で高性能であることが示される傾向にある。何よりも、時計の裏側を見ると、ルビーの色と他の貴金属の色がマリアージュしてなんとも言えない美しさを演出する。これも高級時計のこだわりとして重要視されるのだ。
時計の美的な要素にもつながる針とインデックスにも注目して欲しい。時間を表示する最も重要な機能に加えて様々な工夫がなされている。高級時計には青焼きの針がある。ブルースチールと呼ばれる技術で、青く焼き上げたスチール針や、金製の針が使われることが多い。この技術は美しいだけでなく、針が錆びにくくなるという実用的な利点もあるのだ。時間を表示するインデックスは、手作業でカットされた金属や、ダイヤモンドをあしらったモデルも存在する。
もちろんダイアル(文字盤)のこだわりも枚挙に暇がない。時計の視認性を高める役割に加えて審美的な要素を演出する重要なパーツだ。文字盤は時計の「顔」でもあり、時計そのものの第一印象を与えると言っても過言ではない。いくつか代表的なこだわりとポイントを見てみよう。
まずはエナメル文字盤だ。伝統的な製造技術で、極めて高い技術が必要だ。エナメル(ガラス粉末を焼き上げたもの)を使って作る文字盤は、美しさと耐久性が特徴だ。特に、グラン・フー技法は素晴らしい。幾重にも渡りエナメルを焼き重ね、非常に高温で焼き上げることで、鮮やかで光沢のある文字盤が完成する。この技法を用いると、長期間にわたり色あせることがなく、文字盤が時間経過とともに美しい光沢を保つのだ。ブレゲやパテック・フィリップでは、グラン・フー技法によるエナメル文字盤が使用されており、その独特の美しさが高級感を引き立てている。
ギョーシエ堀の文字盤も得も言われぬ美しさがある。極めて細かい幾何学的な模様を金属表面に手作業または機械で彫刻する技術で、文字盤に施されたギョーシェ彫りは、光の角度によって反射が変わり、独特の輝きを放つのだ。高級時計では、伝統的な「ギョーシェ・エンジン」という機械を使い手作業で彫ることが多く、職人技の集大成となる。均一で精緻な模様が時計の顔として美しいだけでなく、反射の仕方によって時間の読み取りも容易になるのだ。
ラッカー仕上げの文字盤は、何層にもわたりラッカーを塗り重ね、光沢感のある滑らかな表面を作り出す技法だ。高級感とともに、色の深みが増し、鮮やかさを引き立てる。高級時計では、複数層に渡りラッカーを塗り、その後丁寧に研磨することで、極めて光沢のある美しい文字盤が完成する。黒やブルーの文字盤は、光の反射により色が変わり、非常に高級感を感じられる。カルティエのタンクシリーズは、ラッカーを使用した文字盤が採用され、クラシックかつ現代的なデザインが評価されている。
文字盤の素材に直接サンドブラストやパテ技法(粉末やペースト状の素材を塗り重ねる技術)を施すことで、特殊なテクスチャーや質感を持たせる方法もある。サンドブラスト仕上げは、粗い粒子を文字盤に吹きかけて微細な凹凸を作ることで、マットでありながら視認性の高い表面が作られる。光の反射を抑えるため、屋外や強い光の下でも視認性が高く、実用的な文字盤装飾だ。パネライやIWCなどのスポーツウォッチでは、サンドブラスト仕上げの文字盤が耐久性と視認性を両立させている。パテ技法は、伝統的な粉末状の素材を何度も塗り重ねてから焼き付けることで、文字盤に奥行きと温かみのある仕上がりを与える。この文字盤も強い光の下でも表面の微細な凹凸が光を吸収して視認性を高めるとともにラッカーでは表現できない美しさを演出する。
ケースは、時計本体の機構を収めるだけではなく、外部の衝撃や水分から保護し、時計のデザインや機能性を決定する重要な要素になる。高級時計のケースには18Kゴールドやプラチナ、チタン、セラミックなど、耐久性と美観を兼ね備えた素材が使用される。特に手首へのフィット感や重量バランスが重視され、ケースの厚みや形状にも細心の注意が払われてデザインされる。もちろんそのケースの仕上げには、ポリッシュやサテン仕上げなどの表面加工にこだわり、ケースの美しさと耐久性を高める。また、限られたブランドでは、ケースに手彫りの装飾を施すこともある。
高級機械式時計は、ムーブメントから針、ケースに至るまで、細部にわたる職人技とこだわりが随所に詰まっている。全てのこだわりを一つの時計に盛り込むことは不可能なので、素材の選定や仕上げ技法、そして美的価値と機能性のバランスを追求するなかで、ブランドがどのようなこだわりを選定するかが時計のアイデンティティを生み出すのだ。時計が単なる時間を示す道具以上の価値になる所以もここらへんの拘りに凝縮されている。
●ターゲットと明確なマーケティング・コンセプト
ブランド・コンセプトとセットになるであろうが、一定の価値を万人に受け入れられるというのは眉唾ものだと思う。特定の顧客に対して、特定の価値を発信してこそ本当の価値が生まれるという考えもある。そのため、ブランドは、どのような層に対して時計を提供したいかを明確に特定して、その顧客にあったコミュニケーションやプロダクションを提供するのだ。
このあたりの議論に対しては、グランドセイコーのブランディングもしくは、その関連記事を参考にした欲しい。
●タイミングと運
1機、100万円以上の時計だ。すでにブランドとして確立しており、過去から多くの時計愛好家から親しまれているブランドはすでに価値がある。しかし、立ち上げたばかりのブランドが、今回のブログで触れた取組を頑張ったら必ず成功するというものでもない。タイミングも運も必要だ。ただ、時計業界では、革新的なデザインや機能が偶然にも市場で求められている時期に合致すると、爆発的な成功を収めることが多々ある。デジタル技術が急速に発展していた時期に、アナログな高級時計が逆にプレミアムなものと認識され、需要が高まったことは記憶に新しい出来事だろう。
何事もそうだが、理屈を理屈として理解しても価値にならない。実際に行動して、取り組んで、形を作ってみてはじめて、何かを手に入れることができるのだ。
PDCHの歩み
■ブランドコンセプト
「毎日使えるエレガントなドレスウォッチ」
■ビジョン
「伝統的なウォッチメイキングで機械式時計の芸術性と実用性を追求する」
■PDCHは、リシャール・ミルと同様に、ヴォーシェマニュファクチュールと提携している。1号モデルの紺碧(KONPEKI)も2号モデルの鏡餅(KAGAMIMOCHI)もヴォーシェからムーブメント供給を受けている。もちろん毎日つけるドレスウォッチを体現するため、マイクロローターを採用してより薄く、より軽く、そして正確な時間を提供することを実現。更に、ムーブメントの細かい仕上げやデザインはPDCHの意向を強く反映した特別なものだ。
■インフルエンサー
時計クラブの認知、オークションの活用、時計業界の伝統的な方々との協業。業界のジャーナリストの中でも特に時計愛と情熱にあふれる方々との定期的な情報交換。ネットワーキングや露出に対しても試行錯誤しながらブランドコミュニケーションの在り方を日々模索している。1号モデルの紺碧は、ヴォーシェマニュファクチュールのチームと共に、最高のスタートを切った。2号モデルの鏡餅は、引き続きヴォーシェアのムーブメントをベースに、ケースはラ・ファブリック・デュタン(ルイ・ヴィトングループ)、ダイアルはメタレムで御存知の通り多くの高級ブランドにダイアルを供給している。そして、時計の監修は、エマニュエル・ブーシェ(Emmanuel Bouchet)が行なうなど、ドリームチームとの取組を実現している。
■顧客
理念を理解していただける方。
■ストーリーテリング
時計以外のベルト、箱などスイスと福岡のクラフトマンシップの融合を皮切りに、ブランドのストーリーテリングを開始。2号モデルの鏡餅は、再びスイスにフォーカスをして、フルリエの近隣にすむ時計職人とのコラボレーションで伝統的なウォッチメイキングと超真面目なものづくりの印象を語りかけている。何よりも、時計業界にいなかった日本、イギリス、ドイツの3人が趣味が講じて作った時計ブランドだ。マニアがマニアらしくこだわった時計と聞くと、それだけでも実機を見たくなるだろう。
新規事業の旅140 創発する組織の会議
2024年9月20日
早嶋です。
企業の会議に呼ばれ、経営企画の意思決定やM&Aのセカンドアドバイス等を依頼されることが多い。また、取締役が進めている新規の取組などに対しても助言をする機会がある。その中で感じることは、個人として話をする場合は、物事がサクサク進むのに対して、2人以上の組織になった瞬間に日本人は議論が停滞することだ。議論に対しての考え方や会議の進行の仕方が影響しているのではないかと思う。
まず会議の進行についてだ。議論が活発で意思決定が明確な組織は議長が機能している。議長は効率的あん議論の進行と意思決定の術を理解している。議長は会議の目標を設定(あるいは確認)し、議論を脱線させず、最終的な結論や次のアクションを明確にする責任を持つ。対象的に、結論が出ないダラダラ会議の組織は、議長は司会進行に過ぎない。そのため具体的な結論が引き出されることが少ない傾向がある。司会進行型の組織は、大いに会議中の対立や普段の衝突を過度に恐れ、調和を優先する傾向にあるのだ。
会議の構造も差異がある。議論を通じて意思決定が行える組織は、会議に効率性を重視する。事前に準備された議題をベースに、効率的な議論が行われ、結論が導かれる。会議の時間もかなり守られ、賛成と反対などの対立を常に良しとして歓迎する。議長はその対立を引き出しながらも、建設的な議論を促進する。そのため、最終的に意思決定した後、いわゆる「後出しジャンケン」は発生しない。一方、芳しくない組織は、参加者が全体の調和を優先するあまり、対立を避ける傾向が強い。対立を悪しと考えている。そのため、議論が表面的なものにとどまり、結果として結論が出ないまま終了することが多いのだ 。
多様な意見の衝突は、実は賛成や反対の立場をより深く再考する機会を与え、その取組を行なう家庭で新たなアイデアが創発することも多々ある。このような議論を経験した組織は、徐々にそれが当たり前になり文化として染み付く。そして、会議の中では喧々諤々腹を割って話し、会議室を出たら、決まった内容にフォーカスして仕事をするので、後腐れもないのだ。だが、そのような経験が少ない議長や組織は、まさに「空気を読む」ことを重視し、対立をオブラートに包み議論を始めないのだ。
結果を求める組織は、会議の終わりに具体的な結論やアクションアイテムを明示する。議論ではなく形式的な会議が多い組織は何も決まらないまま、あるいは何も議論しないまま時間ばかりを費やし、議題を持ち越す中で自然消滅することが観察される。
整理すると、議論が活発な組織は、会議が効率的に進行し、議論が活発で建設的なものとなりやすい。一方、出来ない組織は、調和を重んじすぎる傾向が議論の深まりを阻害しているのだ。議長は進行役でなく、いわゆるファシリテーターとしての機能を高め、議論の活性化を図ると共に効率と後腐れのない議論ができるようになれば、将来の会議体の質がグンと向上するのだ。
【動画】武者修行研修・リーダー版・24年度
2024年9月19日
※本ページは24年度開催の武者修行研修リーダー版参加者向けのページです。
(セッション1)
リーダー版武者修行研修の参加者は以下の事前課題をご準備の上、Day1の研修に参加下さい。
1)「自己紹介シート」の作成
2)「今、自社が注目する 世の中の社会的な問題、それに関連する事業チャンスの整理」
※上記、1)2)の詳細は事務局からの連絡に従って下さい。
3)事前動画視聴(PWは別途事務局の指示に従って下さい)
新規事業の基礎 新規ビジネス創造の前に考えること(約35分)
多くの企業が既存の事業が成熟、もしくは衰退期を迎えています。そのような中、新規事業を開発することがどのような意味なのか。取り組み上でリーダーはどのような覚悟を決める必要があるのか。今回、社会課題を解決するワークを行う際の心構えを整理する目的で視聴下さい。
新規事業の基礎 新規ビジネスの基礎(約40分)
新規事業を生み出すための流れを3つのステップで整理しています。アイデアの創造、ビジネスモデル、そして事業計画です。はじめて社会課題を事業を通じて解決する議論を行う方も多いと思います。考え方や取り組むイメージを掴んで下さい。
新規事業の基礎 事業チャンス(社会課題)の発見(約21分)
2)の事前課題にもありますが、マクロ環境を見渡すことで事業として取り組めるチャンスが沢山みつかります。こちらの動画では、いかに社会課題を見出すかの視点について整理しています。
(セッション2)
リーダー版武者修行研修の参加者は以下の事前課題をご準備の上、Day2の研修に参加ください。
1)セッション1で議論した課題を各グループでワークする。
・事業チャンス ✕ 強み = ビジネスアイデア
※「誰が?」「何に困っているか?」等を工夫して調べ、関係ある方にヒアリング等を行う
・上記のビジネスアイデアの整理目的でピクト図を整理する
2)事前動画視聴
10億ビジネスの創造
こちらの動画の「10億」はあまり意識する必要はありません。ビジネスモデルキャンパスを作る際の流れや考え方を理解する目的で視聴ください。
デザイン思考 試作
デザイン思考の試作(テストマーケティング)についての解説動画です。セッション2では、みなさんが議論したビジネスモデルを検証し、ブラッシュアップするために、試作について議論を行います。その際の参考知識として視聴ください。
DX戦略 DXの創造
こちらはDX戦略の4本目の動画です。今回のリーダー版の参加者は、
1)ビジネスモデルをどのように構築するか?のヒントとして視聴ください。
2)アイデアの出し方で強み✕チャンスについて議論を深めると、Howにとらわれて、「誰の」「どんな困ったことを」について意識が薄れます。ビジネスモデルは、この2つ「誰の」「どんな困ったことを」が極めて重要ですので再度復習ください。
3)その他、ビジネスモデルの課金やアイデアの考え方について説明していますが、流れをイメージする目的で深く理解する必要はありません。参考までに視聴ください。
(セッション3)
(Day4)受講の事前課題
事後課題として、セッション2で議論した(社会課題)のアイデアをブラッシュアップして下さい。
その際、1)ビジネス・モデル・キャンパスの視点を再び議論して深堀りしてください。また、その際に、2)MVPを作成して、実際の消費者や対象層にヒアリングを行ってください。サンプル数はできる範囲で結構です。セッション3では、各チーム25分の持ち時間の中で10分から15分程度、プレゼンして頂きます。3)各チームでプレゼン資料を整理してください。
1)ビジネスモデルキャンパスのブラッシュアップ
2)MVPの作成とMVPを活用した調査
3)セッション3のプレゼン発表資料の準備
上記をすすめる当たり、プレゼンテーションの基礎の動画を参照ください。
プレゼンテーションの基礎 概要編
プレゼンテーションの基礎 プレゼンテーションの流れ編
プレゼンテーションの基礎 準備編
プレゼンテーションの基礎 コンテンツ編
プレゼンテーションの基礎 デリバリー編
また、セッション2のリーダーシップの学びを深める目的で、以下のリーダーシップの基礎の動画を見て振り返りに活用ください。こちらの視聴は任意です。
【動画】武者修行研修・課長版(24年度)
2024年9月19日
※本ページは、2024年度武者修行研修課長版参加者向けのページです。
(セッション1)
セッション1参加当日までに、以下の事前課題を整理し動画を視聴下さい。
1)「自己紹介シート」の作成
参加者同士の理解を深める目的です。各自自己紹介シートを作成下さい。テンプレートは各社事務局の指示に従って下さい。
2)事前課題「動画視聴」 戦略思考の基礎
自社や他社の課題を抽出する際に参考下さい。経営学等の修士・学位等をお持ちの方は視聴しなくても結構です。
※PWは別途事務局からお知らせがあります。
戦略思考の基礎 戦略思考編
戦略思考の基礎 全社戦略編
戦略思考の基礎 成長戦略編
戦略思考の基礎 基本戦略編
戦略思考の基礎 環境分析編
戦略思考の基礎 戦略立案編
3)「自社紹介と自社の経営課題の整理」 ※各社ごとでまとめる
詳細は、受講ガイドを参考下さい。
(セッション2)
セッション2参加当日までに、以下の事前課題を整理、動画を視聴下さい。
1)事後課題
セッション1で議論した自社課題の解決に向けて、何らかの行動を起こしてください。セッション2で各企業の進捗を共有を簡単に行います。※この際、資料は特に不要です。口頭レベルで進捗を確認します。
2)事後課題
テーマオーナーに対して戦略提言を行う際に必要な資料や情報等を適宜収集してください。また、セッション2でテーマオーナーとのセッションで質問の準備を行ってください。
3)事後課題
動画を数本準備しています。視聴は任意です。
(不確実への対応)
マネジメントの基礎の動画の一部です。成熟する事業運営の中、既存の取組を行いながら新規の取り組みを行うためのマインドを確認できます。
マネジメントの基礎 不確実への対応
(事業分析の基礎)
事業分析を行う際に、考え方を整理しています。問題解決の流れに沿って、市場分析、競合分析、自社分析、マクロ分析の流れの後、解決策(戦略)を議論する考え方を示しています。一部、セッション1でも概説しています。こちらの動画は、合わせて問題解決の考え方の参考にもなります。
事業分析の基礎(概要)
事業分析の基礎(前提)
事業分析の基礎(問題と課題)
事業分析の基礎(市場顧客)
事業分析の基礎(競合代替)
事業分析の基礎(自社)
事業分析の基礎(マクロ)
事業分析の基礎(解決策)
4)他
セッション1で議論した、(無意識)✕(既存)の領域から、(意識)✕(既存)の領域にいくための思考の視覚化、そこから意識的に新規の議論をする概念等について整理した著書です。ビジョンを持って行動を継続することの大切さについて、経験則から考えたことを整理しています。
「コンサルの思考技術」総合法令出版 早嶋聡史著
※Amazonのリンクです。参考までに。
ーーー以下、準備中ーーーー
(セッション3)
課長版武者修行研修の参加者は、必要に応じて以下の補足動画を視聴下さい。次回のプレゼンテーションの参考動画です。プレゼンテーションの流れや準備、コンテンツ(中身)の作り方や、発表(配信)の仕方を整理しています。プレゼンテーションに不慣れな方は参照ください。
プレゼンテーションの基礎①概説
プレゼンテーションの基礎②流れ
プレゼンテーションの基礎③準備
プレゼンテーションの基礎④中身
プレゼンテーションの基礎⑤配信
(セッション3)
セッション3参加当日までに、以下の事前課題を整理、動画を視聴下さい。
1)事後課題
セッション2で議論した自社課題の解決に向けて、再び議論しながら行動ください。最終日の午後に、各企業の進捗を共有頂きます。
2)事後課題
テーマオーナーに対する戦略提言を作成ください。最終日の午前中に、各チームより宮崎社長に発表頂きます。
3)事後課題
動画を数本準備しています。視聴は任意です。※プレゼンテーションが苦手な方向けの動画です。
プレゼンテーションの基礎 概略
プレゼンテーションの基礎 3つのステップ
プレゼンテーションの基礎 準備
プレゼンテーションの基礎 コンテンツ
プレゼンテーションの基礎 デリバリ
新規事業の旅139 やり抜けない人材排出の背景と打ち手
2024年9月13日
早嶋です。8,000字です。
スタートアップ界隈では、グリッドややり抜く力、簡単な言葉では行動力や実行力が必要とされている。当たり前の取組なのに、何故にここまで企業で必要とさるのだろう。複数の視点から掘下げたいと思う。アナログとデジタル、日本における過度な平等主義、地理的影響と経済規模が及ぼす影響等から、挑戦しない人々を増産する日本があるのでは無いかと思う。
(アナログとデジタル)
アナログの特徴は、何かを習得するためにも膨大な時間と労力がかかり、全体像を把握するのが難しい。試行錯誤を繰り返し、手作業で何度も修正することで成果に到達する過程が重要視される。そう、下積みや忍耐が成果の基盤となる特徴があるのだ。一方で、デジタル技術は、アナログのデメリットを補い、時に破壊する。失敗した場合はリセットすると基に戻る。良いものがあればコピペが可能。時間が足りなくなれば、途中保存ができ、時差をおいて、そこから継続が可能だ。既存の仕組みをコピペして、更に改善できる。アナログでも同様の取り組みは可能だが、一定の時間と労力がかかった。デジタルはそれと比較して、圧倒的に手間暇がかからない。開発や成長が劇的に早なるのだ。効率的かつ迅速に成果を得れるのが特徴だ。
夏の終わり。小学生の夏休み自由研究展を見に行った。毎日、気温をつけて何処かの定点観測をする。その結果をパワポで作成してデジタルデータとして提出する。デジタルで行えば、場所と日時を指定すると過去の気温や天気データはすぐに手に入り、それらを表形式にまとめて印刷すれば出来上がる。全国にある小学校の中で同じ名前や地名の小学校を調べて、一覧にした研究があった。全てnetで情報を検索して、写真も現地ではなく、net上の写真を借用している。アイデアがあれば、作成の時間はかからない。
大局的に、毎日、アナログの気温計を見て計測している作品もあった。アナログの温度計を定点に置き写真を取る。毎日の天気の推移を朝、昼、夕に記録して写真と共に、毎日の気づきをコメントしている。そして、それらの結果を模造紙いっぱいにまとめた作品だ。他にも、全国の県庁所在地を調べて夏休みが始まった頃から終わりの時期までに、全てを実際に回り、県庁所在地のスタンプを押した作品があった。考察等はなかったが、手間と暇と金がかかった作品に見入った。概念的には同じ取り組みだが、デジタルの取り組みとアナログの取り組みで取り組みと学びのアウトプットが大きく異なる。
(過度な平等主義)
日本社会では、過度な平等主義が強調され、努力やスキルの違いに関わらず、全員に同じ機会や結果を与える傾向が強まっている。結果、成果よりも公平さが優先される文化が形成され、挑戦や努力を避ける風潮が生まれている。
現在の小学生の日常は、そこら辺の大人よりも忙しいかもしれない。習い事のオンパレードで学校から帰って「ぼーっ」とする時間がない。しかし、その習い事をみてみると、何のために行っているのかが意味不明な取組が多い。大人の満足、親の自己満足の結果ではないかと思う。スポーツではサッカーやバスケが人気だ。昔は子どもの習い事は親の関与があって成立していたのもある。いまのは、親は何もしないで良いクラブが人気だ。練習も優しく、誰でも参加できる。そこに属する限り、厳しいことも、嫌なことも言われない。指導者は専門の教育を受けていて、スポーツ心理学等に精通するも、親の満足を得ることに重きをおいた事業モデルだ。見た目は、子どもの底力を伸ばすと言っているが、努力と苦しさを伴わないスポーツと勝敗にこだわらない試合から何が得られるのか疑問が残る。そして、子供が取り組んでいる姿を親が見ていない。子供は何が嬉しいのだろうか。
私の子供達はソフトボールにはまっている。軟なクラブでは無いが、自治体のボランティアが軸となるので、練習は土日のどちらかに週に1回程度しかない。それでも勝つ楽しさ、練習して成長する実感を得ている。長男は4年生の終わり頃から、次男は2年生から。チームは人数は少ないが、それでも時々、近くのリーグに参加して20点以上も点差をつけられ負ける日々を経験してきた。始めはキャッチボールもままならない状態が、やがて相手のヒットを捕球して、1塁ベースに投げてアウトを取れるようになる。フライも取れずにランニングホームランになっていた時期も沢山あった。攻撃から守備になると相手バッターは1巡も2巡もして、長い辛い時間が続いた。5年生と3年生になる頃には、対戦相手に勝つことは少なくても、少ない点差での負け。そして、バッティングも守備も一応ソフトボールの体を成す状態まで上達する。時々ナイスプレーが出て、勇気をもらう。練習がない日は、兄弟で試行錯誤してソフトボールを楽しんでいる。今、6年生と4年生だが、遠方のリーグ戦に招待で呼ばれ、準優勝まで勝ち進むようになった。当たり前の練習を繰り返し、練習試合や試合で実際の経験を積みながら失敗を繰り返す。勝ち負けにこだわることで、負けたときの悔しさを次の練習や試合に活かすための取組を考えて行動する。ルールを理解しながら、ミスが出た場合のフォローを互いに行い、声を掛けを合いチームで守りチームで攻める。勇んでバットを全力で空振りし、果敢に飛び込んでエラーした経験が全て身になっているのだ。
練習に参加して、下手でも試合中に道具を整理し、声を出してチームを激する。そのような子供は、必ず試合に出れる。しかし、入って間もない子供や練習に参加しない子供は上手でも試合に出されることはない。これは平等ではなく公平だ。誰でも条件無しにスタート地点に立てる世界は無い。能力の得て増えて。親や何らかの金銭の有無。社会的な地位の有無。様々な障害があってスタートする。いきなり楽する世界はない。全ては地道な意味が無いと思いがちな行動の積み重ねで、その行動と蓄積が後で開花し糧になるのだ。
(ソーシャルメディアの成功と誤解)
世界人口の多くの方々が、WebやSNSにリーチできるようになる。世界中に成功する人々の話が毎日話題にのぼる。SNSでは成功体験や結果だけが強調され、若者は「短期間で簡単に成功できる」と誤解しやすくなっている。デジタルの世界は、途中を早送りして、結果をみて全てを分かったつもりになる。本当に理解し、習得した取組を何かに応用するには、途中の泥臭い試行錯誤の連続に意味があることの体感が得られない。SNSやデジタル情報は、努力やプロセスが見えにくいため、長期的な取り組みや挑戦に対する意欲が低下し、結果ばかりを追い求める風潮が助長されているのではないか。
マラソンを始めた頃。10キロどころか、数百メートル走っただけで、喉が血の味になり息ができなかった。足は重たくすぐに筋肉痛だった。そこでまずは毎日運動する、あるいは動くということから始めた。大学までバスケをしていたが、仕事をしはじめて10年も立てばいいおじちゃんになっている。昔を過信するのは辞め、ゼロから基礎を作るときめた。普段運動をしない成人男性が急激にトレーニングをすると動きに筋肉が追いつかずに、諸々のパーツが破損して怪我する。地味に毎日30分動く。2週間頃から、動く時間を60分に増やす。そして1ヶ月。ようやくカラダが運動するベースになってきて、60分の毎日の運動の中に軽いジョギングを取り入れる。それでも通して走らない。また1ヶ月続ける。その頃から、足やカラダの筋肉が運動できる基盤ができはじめる。そこから軽いジョギングやダッシュを取り入れる。始めは10キロのレースに出て、次にハーフ。そしてフルを完走する。カラダができてきたら定期的にフルに参加して、年に1度のペースでウルトラにも参加できるようになる。走っている瞬間を切り抜くと簡単なようだが、毎日のトレーニングをサボるとすぐに、ペースが落ち、筋力が落ち、取り戻すのに10倍くらいの時間が必要になるスポーツだ。
SNSでブームになると、すぐにできると思ってしまう。悪いことではない。コロナがあけてマラソンブームは終息しつつあるが、その前はすごかった。明らかに練習していない個々人や団体がこぞって大会に参加して、リタイアの繰り返し。途中リタイアは大会関係者に途方もない迷惑をかける。特にウルトラやトレイルのようにコースに用意にアクセスできない場所でのリタイアは危ない。SNSをみて、練習もしないで自分が走れると思うのだろう。試し食いして、やっぱり辞めたと、何か別の取組を始める。このような人たちを一定数観察することが増えたと思う。
(グローバル化と地理的条件)
フィンランド、スイス、韓国、台湾のような小規模な国々は、国内市場が限られている。そのため、国際市場への進出が生存と成長のために不可欠だった。また、これらの国々は技術革新や輸出に力を入れ、グローバルな競争力を高めてきた。一方で、日本は大きな国内市場を持ち、内需だけで一定の経済成長が可能だったため、外部との競争や国際化に対する動機が他国ほど強くなかった。これが、日本の競争意識や挑戦意欲の低下につながった可能性がある。フィンランドや韓国の国際化戦略と、日本のガラパゴス化の対比は諸々比較されうるとおりだ。
更に、日本の地理的条件が競争意識の低さに影響していると考える。日本は島国で、海で囲まれている。他国からの直接的な脅威や侵攻を受けるリスクが比較的少なく、歴史的にも内向きな発展が可能だった。この安全性が、外部との競争を避ける意識を強化してきた可能性がある。縄文弥生にかけて多くの渡来人が日本に来たことが分かっているが互いに喧嘩することなく日本人として交わり温和に暮らした文化を持つのだ。一方で、北欧や欧州の国々は、地理的に隣接し合っているため、常に他国との競争にさらされている。特にEU加盟国間では、協力と競争が共存し、外部とだけでなく、内部での競争も強く意識さざるを得ない。
普段、国内で生活をしていると海外を感じることは少ない。コロナ前頃から国が観光に力を入れてインバウンドを連呼し、都市部や観光エリアには一定の外国人がいるが田舎にはまばらだった。それが、人手不足になり外国労働者が日本で安住の地を求め様々なインフラの仕事を手伝って頂けるようになった。しかしここ数年の日本の国力ダウンと、日本語という障壁の高さから、そのような方々もドイツやフランスなど英語が通じる国にシフトしている。定期的に海外に行き、物価の違いを観察するがコロナ後は加速した。日本は給与は安いと言われるが、安全面、人的資源の教育やモラル等を鑑みて、多くの教育コストや安全コストが不要なため、高い品質で商品を提供できる面もある。それが日本クオリティであることを理解している人はかなり少ない。日本以外の条件や立地、実際の商品レベルを比較することがないからだ。つまりは、国内で仕事をしているだけで一定の経済を保てることができているからなのだ。
(マイノリティへの迎合)
近年、組織内での心理的安全性を確保することが強調されている。自由な空間で知的な仕事をするためにはとても大切な取組だ。しかし、言葉や概念が取り違えられている。失敗やリスクを避ける文化にフォーカスされ、挑戦や新たな取り組みに消極的な傾向を強めているのだ。小学校のリレーは、勝敗がつきにくいような工夫をしている。みんなでゴールして、みんな1位のような体験に美徳をおいている。熱中症のリスクが高まり、小学生は当たり前に学校に水筒を持っていく。給水器やミネラルウォーターを完備する私立も沢山ある。でも、日本の水道水は品質が高くて飲んでも問題ないのだ。ちょっと怪我をすると、すぐに責め立てる親がいる。学校の先生の威厳が下がり、一部の声の強い親の意見が正当化される。
観光地や生活エリアの中で、危ない場所が少しでもあれば、バリケードが張られ、パイロンを立てまくり、壁面はコンクリートで固める。自然の調和など無視して、アスファルト天国とコンクリート天国を作りまくるので、水の逃げ道がなくなり都市部では雨が降るたたびに水浸しを作っている。
危ないところで危ないことをすると怪我をする。当たり前だ。台風が来ている時に、外に出て傘をさすと風で飛ばされる。自分の住んでいるエリアが危ないのかどうなのか。不動産を買う際や、賃貸をする際に、自分の判断で選んでいるはずだ。なのに、政府や自治体の対応が悪いと言い、役人はその声に従う。
住宅地の公園でボール遊びをして、子供がはしゃぐと、近くの老人が文句をいう。「先に公園があり、後で住宅ができているでしょう?」「あなたが同じ年の頃、同じように遊んだでしょう?」記憶が無いのを言いことに、老害に目を向け、将来の子どもの可能性を潰す策に走る。
長いものに巻かれ、声の大きい人に従い、勝手に空気を読んで、行きにくい世界を作る。その中で出来た環境は心理的な安全性とは程遠い。
(変わらぬ教育制度)
日本の教育制度は10年ごとに見直しが行われているものの、戦後の基本的な枠組みが大きく変わっていない。基本は、詰め込み型の知識重視やテスト中心の評価システムに依存し、個々の創造性や批判的思考を育てる面では不十分だ。テストや試験で結果を重視し、プロセスよりも結果だけを評価する傾向。若者は結果だけを重視し、過程や努力が軽視される傾向をインプットされるのだ。社会に出ても同様の文化が続くことで、長期的な取り組みが敬遠されるようになるのだ。
ギブアップ症候群と誰かが名付けた。すぐに辞めるのだ。デジタルの即時性に慣れている若者は、長期的な目標に対しての忍耐力が不足している。目標達成までのプロセスが長いと感じた瞬間に諦めてしまうのだ。挑戦する以前に、そのプロセスを少しでも感じた瞬間に一歩目を踏み出さないのだ。日本は豊かで、外部との競争が少なかった。国内市場での成功だけで生活が成り立っていた。英語苦手意識が影響し、国際的な情報やトレンドにアクセスする機会が限られた結果、日本独自の文化やビジネス慣行が形成され、ガラパゴス化した。地理的・経済的に守られた空間として機能し、外に出なくても生活できる社会が長く続いた。過度な平等主義が広がることで、努力や挑戦をせずとも生活が成り立つ社会が形成され、挑戦意欲や競争力が低下した。30年。
(得意な分野と成長の一手)
アナログからデジタルへの移行、日本における過度な平等主義、グローバル化の影響、教育制度、ソーシャルメディアなどの多様な要因が組み合わさり、若い世代において「挑戦しなくても良い」という風潮が強まっている。日本の地理的・文化的背景が、外部との競争を避けつつも、経済的には一定の成功を収めてきたことで、さらに挑戦意欲が低下している。これらの要因が現代日本社会における挑戦不足の一因となっていると考えられる。
一方で、マイノリティ分野では日本人、特に若者の活躍が著しい。サッカー、野球、バスケットボール、テニス、ゴルフ、卓球、バトミントン、スケボー、ブレイキングダウン等々。皆が顔と名前をすぐに上げられる選手のオンパレードだ。建築や現代アートの世界も、料理やスイーツの世界でも著名な方々が次々に誕生し世の中にインパクトを与えている。アニメや漫画の世界だけではなく、様々な分野で世界レベルで活躍する若者も増えているのだ。
何が因果かわからないが、文科省が絡んでカリキュラムを作り、それを標準化し義務教育で提供した瞬間から得意な成果が出せない人材になるのではないかと思う(ただし、国民のレベルを平均に底上げする取組に関して文科省は大いに成果を出している)。スポーツや芸術などの、クリエイティブの領域では、ラッキーなことに関与が薄い。ゲームやアニメ、料理に至っても同じだ。これらを加味したら、いくつかの打ち手が見えて来る。
まずは、管理からの開放だ。能力の開発は自由の中から生まれるのではないか。という大胆な取組はどうだろうか。文部科学省が管理する教育制度から独立するのだ。私学でも、独学でも、吉田松陰の私塾でも良い。伸ばしたい分野があれば、より自由な環境で子供や若者の情熱を追求させるのだ。そこには他からの強制ではなく、自己主導的な学びや挑戦の場になる。ベンチマークは地域一番ではなく、常に世界のトップレベルをみていく。他者との競争や創造性をも自ら発揮することが可能な領域ができる。個人の才能や努力が伸びやすくなると思う。柔軟かつ個別化されたアプローチが、若者の成長に必要な要素だと思うのだ。
突出する人材を育てるのであれば実力と結果に重きを置くのだ。スポーツや芸術の世界では、なんだかんだ言っても結果が全てだ。そこには実力主義が厳しく適用される。これらの分野は、過度な平等主義よりも、個々の能力が重視されるため、挑戦や努力の価値が明確に評価される環境が整う。一定の分野で秀でた能力を開花させたいのであれば個人の能力や努力が正当に評価される仕組みを取り入れることも考えて良い。挑戦意欲を喚起できる可能性がある。
頂点の視点と柔軟な思考も鍵だと思う。日本人が活躍している分野はどれも世界レベルだ。だとすると、グローバルな競争が前提となる。若者が早い段階から国際的な視点を持ち取り組んでいるのだ。地域の大会で優勝とか眼中にはない。小さなステップとしては大切だが、早い時期からグローバルの環境に身を置き、そこで戦うこと切磋琢磨することを当たり前にするのだ。もちろん道具として、言語や文化の壁を越える力が必要になる。机上や本で学ぶ知識と違って、現場で実践することで役立つ技能になる。特にデジタル時代では、オンラインを通じて世界中に発信することも、世界中とやり取りすることも可能だ。柔軟な教育をカリキュラムで提供するのではなく、柔軟な仕組みを始めから取り入れることだ。
そして最後に、子供が将来を作る。若者が将来の鍵だというのであれば、徹底的に個別のキャリア形成と自由な環境を設計し提供すべきだと思う。1年生のカリキュラムはこれ、これは習っていないからばつなどの発想は終わっている。能力を始めから潰しているようなものだ。もちろん、人間関係や道徳心などの一定の知識に対しては横並びは良いと思うが、突出させたい分については、フルオーダーで組んでしまう。音楽やアート、アニメ、スポーツなどの分野は、固定されたキャリアパスがない。個々人が自分で道を切り開くことが求められる。この自由度の高い環境は、自己表現の場として非常に魅力的で、若者に挑戦の機会を与えていく。その鍵は個別対応なのだ。
なんだかんだ言ったが、日本の教育は全体的に平均的な成果をあげている。そして、個別には世界レベルで活躍する若者を多数輩出している。モラルの高さや品格、礼儀正しさは、This is 日本というべき世界に誇るべき特徴だ。このバランスが、日本の教育システムの一つの成功例だとすると、もっと出る釘が打たれないような、非迎合的な思想と実践のインストールを助長すべきだと思う。
全てにおいて道徳や社会的規範の教育は更に力を入れる。どんなに秀でていても常に上がいると謙虚に考えひたむきに努力する。この背景は、礼儀正しさや高いモラルであり、グローバルな舞台でも好意的に受け入れられる要因となっている。平均的な部分を維持しつつも、特定の分野においては教育制度含めてゼロベースで見直し、そこは個別にキャリアを構築する機会と支援を与えることが次の10年移行を開発する一助になるのではないかと思う。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
「コンサルの思考技術」
「実践『ジョブ理論』」
「M&A実務のプロセスとポイント」
新規事業の旅138 LLCとKK
2024年9月9日
早嶋です。
合同会社(LLC: Limited Liability Company)は、日本の会社法に基づいて設立される法人形態の一つだ。比較的新しい形式の会社になる。LLCは、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにしているが、日本の仕組みに適応されている。
LLCは有限責任で、出資者(社員)は、出資した範囲内でのみ責任を負う。つまり、会社の責務に対して個人の財産が差し押さえられることはない。またLLCの特徴として、株式会社と比較すると運営の自由度が高いとされる。社員間で合意すれば柔軟な経営が可能なのだ。出資比率に関係なく利益配分を決めたり、業務執行権を特定の社員に集中させるなどだ。税制面では、法人税が課せられる。米国のように個人の所得税として課税されるパススルー課税ではなく、会社として法人税を支払う。LLCは株式を発行しないため、株式市場での取引や株主総会の開催などは必要ない。非公開の会社で、外部の出資者に対する説明責任も比較的軽いのが特徴だ。
LLCのメリットを整理する。まずは、設立コストが安いことだ。合同会社の設立費用は、株式会社に比べて低く抑えられる。定款認証が不要で、登録免許税も安価なのだ。次に柔軟な経営が取れることだ。合同会社は、社員間で合意があれば自由な経営が可能になることだ。そして意思決定の迅速さだ。株主総会などの形式的なプロセスが不要で、重要な決定も社員間で直接行えるため、迅速に対応ができる。
次に、デメリットを整理する。1つは信用だ。株式会社に比べて、合同会社は知名度がまだ低く、社会的信用力が劣ると言われる。特に取引先や金融機関との関係において、信頼性が低く見られることがある。ただ、出資者の企業がすでに信用を確立している企業であれば、この範囲ではない。大きいのは、資金調達がしにくいことだ。株式会社のように株式を発行して資金を調達することができない。そのため、外部からの資金調達が難しく、事業拡大の際に制約が生じる可能性がある。逆に、出資者が一定の資本を持っていれば、この点もクリアできる。合同会社でも金融機関からの融資による調達は可能だ。ただ信用によっては、代表社員の個人信用や主要な出資者と金融機関の関係などが大切になってくる。最後はデメリットといえば疑問になるかもしれないが、パススルー課税が活用できないことだ。日本の合同会社は、法人税を支払う必要がある。簡単に事業を始める形式として合同会社を選んだ場合、個人事業主やパートナーシップよりも税負担が高くなる場合があるのだ。
合同会社は、比較的少ないコストで設立でき、柔軟で効率的な経営が可能な法人形態だ。しかし、資金調達や社会的信用力の面で制約がある場合がある。企業の成長や外部資金の活用を考える場合は、株式会社との比較検討も必要になる。
合同会社の出口について考えてみる。結論は、合同会社も株式会社と同様に売却可能だ。ただし、特有のプロセスや考慮する点がある。合同会社の出口は3パターンが考えられる。持ち分の譲渡、会社そのものの譲渡、そして吸収合併だ。
合同会社の出資者(社員)は、持分を持つ。この持分を第三者に譲渡することで、実質的に合同会社を売却することが可能だ。譲渡には他の社員の同意が必要な場合が多いが、定款で異なる取り決めがある場合がある。合同会社全体を他の法人や個人に譲渡することも可能だ。この場合、譲渡先が合同会社の全持分を取得し、会社の経営権を引き継ぐことになる。そして、合同会社が他の企業に吸収合併される形で売却されることもある。この場合、合同会社は消滅し、譲受企業にその資産や負債、事業が引き継がれる。株式会社のように、一部を切り出す事業譲渡も可能だ。合同会社が特定の事業を第三者に譲渡することで、部分的に会社の価値を売却することだ。これにより、主要な資産や事業を譲渡して会社を縮小させ、残りの事業を保持することも選択肢となる。
ちなみに、合同会社から株式会社に変更することも可能だ。これは組織変更と呼ばれる。組織変更をする際は、組織変更計画を作成する。株式会社に変更する際の基本方針や手続きを定めたものだ。計画には、新たな定款や、株式の発行方法、資本金の額などを含み検討する。組織変更計画は、合同会社の社員総会で承認される必要がある。通常、全員一致での承認が求められるが、定款で別途定めがある場合はその基準に従う。株式会社に移行するには、新たに株式会社の定款を作成する。ここで、株式の種類や議決権の設定、役員の選任などを決定する。そして、組織変更計画が承認された後、法務局で株式会社としての登記を行う。合同会社から株式会社に変更するための登録免許税が必要になる。その後、株式会社に移行した後、出資者に対して株式を発行し、それぞれの出資比率に応じた株式を割り当てる。これにより、出資額に応じた議決権が与えられる。
株式会社に移行することで、出資額に応じた議決権を設定でき、出資額が多い人がその分大きな影響力を持つことができる。また、株式を発行することで、将来的な資金調達が容易になる。この場合のデメリットは、手続きや費用だろう。また、株式会社は合同会社よりも通常の運営の手続きが複雑で公開義務などがあり、合同会社のメリットを失うことになる。
株式会社と合同会社はメリットとデメリットがそれぞれあり、企業の目的に応じた組織形態を選択することが正解だ。そのため、世の中には、株式会社から合同会社に変更する企業も、逆もあるのだ。
例えば、株式会社から合同会社に変更した事例だ。少し大きな企業を上げてみる。アップルジャパン合同会社は有名だ。かつてはアップルジャパン株式会社として日本で活動していたAppleの日本法人は、2009年に合同会社に組織変更した。今は、合同会社として運営さている。この変更は、アップルがより簡素な組織構造で柔軟な経営を行うことを目的としたとされる。アマゾンジャパンも同様だ。アマゾンの日本法人も、かつてはアマゾンジャパン株式会社として運営されいた。それが、2016年にアマゾンジャパン合同会社に組織変更したした。この変更も、より柔軟な経営と税務上のメリットを考慮した結果だと考えられる。ソフトバンクグループの中核企業のソフトバンクテレコム株式会社も、後にソフトバンクテレコム合同会社に組織変更している。その後、再び株式会社に戻るなど、経営戦略に応じて柔軟に組織形態を変更している事例だ。
上記3事例からもわかるように、大手企業が経営の効率化や柔軟性を求めて、株式会社から合同会社に組織変更するケースがある。ただし、合同会社に変更した後でも、その企業の経営方針や市場での立ち位置が大きく変わるわけではなく、主に内部の運営体制や税務上の理由で行われることが多いと考える。
今度は、合同会社から株式会社に変更した事例をみてみよう。LINE株式会社は、もともとNHN Japan合同会社として設立され、その後LINE株式会社に組織変更している。LINEのサービスが急速に拡大し、成長したことで、株式を発行しての資金調達や企業価値の向上を目指して株式会社に変更したのだ。メルカリも、もともとメルカリ合同会社として設立され、後に株式会社メルカリに変更された。この変更は、メルカリが資金調達や上場を視野に入れての決断で、スタートアップから急成長を遂げた同社にとって、株式会社としての運営が適していたのだ。DeNAは、最初、有限責任中間法人という形態で設立された。その後、有限責任事業組合(LLP)を経て、株式会社ディー・エヌ・エーに組織変更された。成長に伴い、株式会社にすることで資本市場からの資金調達を容易にし、企業価値を最大化するための戦略だった。最後に、ビズリーチだ。最初は、合同会社ビズリーチとして設立された。後に株式会社ビズリーチに組織変更している。同社の成長に伴い、資金調達の必要性や、上場を目指すために株式会社としての形態が望ましいと判断されたことが理由だ。
これらの企業は、合同会社としての柔軟性や簡便さを活かしつつ、成長段階で資金調達や上場などを見据えた株式会社への移行を行っている。特に、スタートアップ企業が初期段階で合同会社を選び、成長に伴って株式会社へ移行するケースが多いのだ。
合同会社と株式会社は、運営、資金調達、税制においてメリットとデメリットが背反し、企業の目的や状況に応じて選択することが正解になる。運営面は、合同会社は柔軟性が高い。簡素な運営が可能だが社会的信用が低い傾向がある。一方、株式会社は厳格な運営が求められ、社会的信用も高い。資金調達は、合同会社は出資者間の合意で柔軟な資金調達が可能だが、外部からの大規模な資金調達が難しい。株式会社は株式を発行できるため、資金調達の選択肢が広がる。日本では、パススルー課税などの適用がないので、大きな違いはない。ただ、アマゾンやアップルなどのグローバルで活躍する企業においては何らかの違いがあったから検討していると考えることができる。
一般的に、合同会社は小規模ビジネスやスタートアップに適しており、株式会社は大規模な資金調達や事業拡大を目指す場合に適しているといえる。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
「コンサルの思考技術」
「実践『ジョブ理論』」
「M&A実務のプロセスとポイント」
新規事業の旅 全集
2024年9月6日
こちらは現在連載している「新規事業の旅」の全部のリンクです。
新規事業の旅(1) 旅のはじまり
新規事業の旅(2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(4) M&Aの成功
新規事業の旅(5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(6) 若手の教育
新規事業の旅(7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(9) 採用
新規事業の旅(10) NBとPB
新規事業の旅(11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(12) 山の登り方
新規事業の旅(13) ポジションに考える
新規事業の旅(14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(15) 偶然と必然
新規事業の旅(16) キャズムを超える
新規事業の旅(17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(18) アンゾフ再び
新規事業の旅(19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(23) 道具の使い方
新規事業の旅(24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
新規事業の旅(28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
新規事業の旅(29) 売り手のトラブルは売り手の無知から
新規事業の旅(30) OEは最早役に立たたない
新規事業の旅(31) ジョブと障害とキャズム
新規事業の旅(32) 需要と供給
新規事業の旅(33) ストレッチ目標
新規事業の旅(34) 複利の効果
新規事業の旅(35) 人間は機械の一部になる
新規事業の旅(36) デジタルの弊害を受け入れる
新規事業の旅(37) 会社を居場所に置き換える
新規事業の旅(38) システム化された社会
新規事業の旅(39) 金融リターンではなく事業リターン
新規事業の旅(40) サービス業の苦悩
新規事業の旅(41) 3つの財布
新規事業の旅(42) グループ企業の試練
新規事業の旅(43) 思考と行動
新規事業の旅(44) デジタルバッジ
新規事業の旅(45) デジタル化とOC
新規事業の旅(46) ジョブ発見のコツ
新規事業の旅(47) 器と魂
新規事業の旅(48) Z世代の高級品
新規事業の旅(49) アニメ界のSPA企業が覇者になる日
新規事業の旅(50) PBR1割れの衝撃
新規事業の旅(51) 新規事業の創造3つの方向性
新規事業の旅(52) 別の視点で見るイノベーションのジレンマ
新規事業の旅(53) 新規事業のベストミックス
新規事業の旅(54) サーキュラーエコノミー
新規事業の旅(55) PBR1割れを考える
新規事業の旅(56) 情報の民主化と経済格差
新規事業の旅(57) セキュリティの今後
新規事業の旅(58) サステイナブル経営
新規事業の旅(59) Z世代のアプローチ
新規事業の旅(60) ドローン事業
新規事業の旅(61) ノンカスタマー
新規事業の旅(62) プランB
新規事業の旅(63) Z世代
新規事業の旅(64) 小売とマーケティング
新規事業の旅(65) 高齢者をターゲットにした事業
新規事業の旅(66) ベンチャーキャピタルの実態
新規事業の旅(67) 新規開発の落とし穴
新規事業の旅(68) 覚悟を持って取り組む
新規事業の旅(69) 売れるモノが良いもの
新規事業の旅(70) 性善説と性悪説
新規事業の旅(71) 保身に走らない
新規事業の旅(72) 中国リスク
新規事業の旅(73) サステナビリティ経営
新規事業の旅(74) ストックオプション
新規事業の旅(75) ゼロイチとM&A
新規事業の旅(76) TAM/SAM/SOM
新規事業の旅(77) 近くと遠く/全体と細部
新規事業の旅(78) 逆境を乗り越えるリーダー
新規事業の旅(79) ラストイチマイルの柔軟思考
新規事業の旅(80) 業務提携と資本提携
新規事業の旅(81) 部下の視点と視野の狭さはあなたの鏡
新規事業の旅(82) バックキャスティング
新規事業の旅(83) ペット保険にAmazon参入
新規事業の旅(84) ベンチャー企業
新規事業の旅(85) 生成AI1年目の誕生日
新規事業の旅(86) スケールする前後の組織
新規事業の旅(87) 無線給電
新規事業の旅(88) よく見る風景
新規事業の旅(89) ダイナミックプライシング
新規事業の旅(90) 提携と出資
新規事業の旅(91) アパホテルのプライシング
新規事業の旅(92) コカ・コーラのダイナミックプライシング
新規事業の旅(93) アップルのゴーグル型端末
新規事業の旅(94) 通年採用のススメ
新規事業の旅(95) 情シス事情
新規事業の旅(96) オープンイノベーションの打ち手としてのCVC
新規事業の旅(97) 今後のマーケティング
新規事業の旅(98) エフェクチュエーション
新規事業の旅(99) 2世と3世
新規事業の旅(100)自分事と他人事
新規事業の旅(101)最近の経営企画
新規事業の旅(102)ドーミーイン
新規事業の旅(103)誰もわからない
新規事業の旅(104)運とリスク
新規事業の旅(105)経済的なインセンティブの大切さ
新規事業の旅(106)スタートアップと採用
新規事業の旅(107)エクイティにおけるインセンティブ
新規事業の旅(108)イノベーションとCVC
新規事業の旅(109)ファイナンス関連の書籍
新規事業の旅(110)30年の停滞
新規事業の旅(111)30年停滞の要因
新規事業の旅(112)30年停滞からの学び
新規事業の旅(113)ワイガヤ再び
新規事業の旅(114)地域を盛り上げる前の分析の視点
新規事業の旅(115)足るを知る
新規事業の旅(116)継続は力なり
新規事業の旅(117)実践の妨げとなる心の豊かさ
新規事業の旅(118)学習性無力感
新規事業の旅(119)学習性無力感を克服するアプローチ
新規事業の旅(120)実践は時間と努力の変数
新規事業の旅(121)必要は発明の母
新規事業の旅(122)アントレプレナーとイントレプレナー
新規事業の旅(123)人事異動の落とし穴
新規事業の旅 (124)マネジメントの共通認識
新規事業の旅(125)高尚なパーパスの落とし穴
新規事業の旅(126)トレランスと遊び
新規事業の旅(127)行動しないことの考察
新規事業の旅(128)先延ばし
新規事業の旅(129)ベンチャー企業と中小企業
新規事業の旅130 設立から上場までの物語
新規事業の旅131 台湾事情2024その1物価
新規事業の旅132 台湾事情2024その2背景
新規事業の旅133 台湾事情2024その3再び物価
新規事業の旅134 北海道事情2024
新規事業の旅135 不祥事の元祖と原因と対策
新規事業の旅136 スタートアップと大企業
新規事業の旅137 提携や資本業務提携の契約
新規事業の旅138 LLCとKK
新規事業の旅139 やり抜けない人材排出の背景と打ち手
最新記事の投稿
カテゴリー
リンク
RSS
アーカイブ
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月
- 2006年2月
- 2006年1月
- 2005年12月
- 2005年11月
- 2005年10月
- 2005年9月
- 2005年8月
- 2005年7月
- 2005年6月
- 2005年5月
- 2005年4月