歴史は繰り返す

2023年10月6日 金曜日

早嶋です。

2016年10月。日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社が定期コンテナ船事業を統合した。船隊の規模は業界で6位、世界のシャアは7%を占める。年間1100億円の統合効果を見込んだ。当時の背景は、コンテナ船の長期的な市況低迷だ。同年8月末には韓国コンテナ海運最大手の韓進海運が経営破綻している。穀物や鉄鋼石、石炭、木材チップや塩などの個体や粉体をのばら積み乾貨物であるドライバルク船の需要も当時の中国経済の原則が響き、経営状況は歴史的な低水準が続いた。

現在、再び海運業界が厳しい。各社報道を見ると運賃レベルはその2016年水準に近づいているのだ。当時と同様にコンテナ船の供給過剰が運賃低迷の理由だ。燃料費や人件費などの運航費用は大幅に上昇している中で、運賃が下がることは、損益分岐が怪しいという見立てもできる。コンテナ船会社は、運賃を上げ、大幅な減便をして供給を絞らなければ対応は難しいだろう。

ファクトを整理(上海航運交易所)する。
– 上海⇔欧州の運賃は4割下落
– 上海⇔米国西海岸は1割下落
– 上海⇔米国東海岸は2割下落

今回の理由もコンテナ船の供給過剰だ。2019年12月、武漢から広まったコロナにより家具、IT関連、白物家電などの巣ごもり特需が発生し受給バランスが崩れた。コンテナ船各社はこれに合わせて新造船の発注を増やす。数年経過した今年に入って、当時発注分の船の竣工が相次ぎ、輸送能力が急増したのが背景だ。

過去にも供給が多かった年があり、2006年から08年、2014年から15年の水準よりも6割程度多い水準で過去最速のペースト言う(調査会社ライナーリティカ)。更に、最近の新造船は積載能力が大きく、更に供給過多に勢いを付けている。海運事業の特徴からアジア欧州間が距離や港湾の整備具合が整っており供給が集中することもあり4割の運賃下落になっているのだ。

本来、新しい船が到着すると、古い船はスクラップに出されるが。現在、鉄鋼需要が高まっており、船オーナーはスクラップ価格の上昇を更に待っている動きがあり、結果、コンテナ船の供給過剰を更に助長しているのだ。

コンテナ船の動きや需要は、世界経済を見通す指標の一つとして見ているが、コンテナ船会社は、自分たちの需要バランスを調整するのは至難の技と言ったところか。歴史的に同じことを繰り返しているが、世界経済を読むというのは実に難しいことだと知らしめる内容のニュースだと思う。



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