フクシマ。2011年3月11日以来、表記が漢字からカタカナに変わる。東京電力はメルトダウンの事実を早い段階から認知していたにも関わらず隠蔽し、結果、初動が遅れた事実がある。フクシマの影響は自然災害ではなく人災と言われる所以だ。
ただその後の復興、廃炉に向けては真摯に取り組んでいると思う。当時から10年後の処理水放出計画は、科学的知見を軸に情報公開を行いながら国際的なルールに乗っ取り着実にすすめている。原子力を活用してエネルギーを使用する国々にとって対岸の火事ではない。「数十年後の廃炉をどのようにすすめるのか?」「仮に惨事があった場合の対処をどのように進めるか?」あってはならない事故ではあるが、生のベンチマークであることは間違いない。
国際原子力機関(IAEA)と日本は共同で作業を行い、IAEAチームは原子力の安全要素を審査し、放射線レベルを評価。加盟国や一般市民に対しても日々情報を公開した。12年、事故後も継続したのだ。その取組の結果、IAEAは報告書で、ALPS(多核種除去設備)処理水放出に対する日本のアプローチと活動は、関連する国際基準に合致すると結論づけた。
ここに当然の如く反論する一派がいる。おそらく一定の偽情報を活用し経済的な威圧を介して政治利用を追求する国。日本からの水産物の輸入を全面的に停止し他国に対して日本を孤立させる取組だ。その一派はフクシマ処理水の細やかな対応と対局で、鳥インフルエンザ、SARS、新型コロナウイルスなど、自国を起源とした公衆衛生問題をひた隠し常に無かったことにしようとしている。
What ifではないが、その国が日本と同様に情報を開示し、世界に対してオープンで、国際協調を取っていれば多大なる被害をもたらした経済損失と人命が救われていた可能性は高い。が、その可能性は無く、常に透明性、説明責任、国際社会としての情報共有をする姿勢が見られない。同国にも4基の原発からトリチウムを定期的に放出し、排出濃度は今回放出する処理水の5倍以上の数値だ。更に、放出にあたり自国の基準のみで国際的な科学調査は行われず、協議や通知も無い。
漢民族が自国を世界の中心に置き、それ以外の国を属国とみなす。文化程度が低く卑しい国と軽蔑する。思想自体は非常に古い時代のもので歴史を見ると良く表現されるが、その考えや文化が確実に残っているとしか思えない。
ただ、ここで対立を生んでも仕方がない。今の日本に取って、そのような国とトップ同士がコミュニケーションを取る主題が無いことが最大のリスクだ。長期的な世界の共存反映を考えた場合、このパイプラインの開発を国として優先順位高くして進めるべきだ。
2023年8月 のアーカイブ
対立を望まない
新規事業の旅72 中国リスク
早嶋です。
Look east policyは1980年代に当時のマハティール首相が日本の近代化の成功に関心を寄せた政策だ。当時、マレー人を中国系やインド系住民よりも優遇する政策が引かれ、マレー人の社会的地位を高めていた。特に公的機関ではマレー人が優先的に採用され、結果、非効率と怠慢な仕事が横行する。また、役人はビジネス世界にも参入しはじめ、マレー人が過度に個人主義や利己主義に走る傾向が強まった。マレーシアは当時、旧宗主国であるイギリスとの関係も様々な問題で緊張関係が続いている背景もあった。
そこに個人の利益より集団の利益を優先する日本の労働倫理をベースに、当時の個人主義や道徳や倫理をもたらした西欧的な価値観を修正すべきとなったのが政策の背景だ。マハティール首相の影響により、マレーシア国内では日本に対しての興味関心が高まる。人材育成の一貫としてマレーシアから日本への留学生も急増。当然、日本もこれを機会と捉え、日本の建設業界のマレーシア進出ラッシュがはじまり、急激な日本企業の進出がすすむ。結果、マレーシア国内では返ってこのことが反発を生むこととなる。
2003年までのマハティール首相の在任期間中は様々なジレンマを抱えながらも、日本からの経済支援や技術移転などは続き、ルックイースト政策は継続された。
2000年頃より、東のシフトは韓国や中国などのエリアに拡大し、やがて日本からシフトする。欧米から東。当時の東は日本を指したが、近年ではアジア、特に中国を指すようになり、西欧諸国はアジア強気の経済に驚異を感じていることは間違いない。
しかし、時間の経過と共に中国にも陰りが見え始めている。人口問題だ。「中国は豊かになる前に高齢化によって衰退が始まる「未豊先老」に直面する」という見解が現実になりつつあるのだ。昨今、中国は自国の成長モデルはオリジナルだと強調しているが、中国経済の軌跡は日本や韓国とに頼った経路をとっている。
経済発展のはじめの一歩を、低コストの労働力を武器に輸出主導で急速な工業化を遂げていることだ。しかし、その勢いを止めているのが急速な人口の高齢化だ。各国の主要エコノミストは中国経済のデフレ、不動産バブル、債務危機は「日本化」と噂されている。同時に日本と同様に中国は急速な人口減少と共に高齢化の加速が経済負担を圧迫しているのだ。
少子高齢化の背景は、経済の進捗によって先に恩恵を受けた大人は高度医療の恩恵で寿命を伸ばす。一方、日本、韓国、中国は偏差値重視の試験制度を教育の要に起き過度な競争社会を構築していく。一定数の若者は、このレールに乗ることができず社会に極度の闇を感じ引きこもる。挫折感、劣等感、忍耐不足などのレッテルを日常的に感じ社会問題となり、結果的に結婚や子供を産む思考をなくす。
中国の経済成長の鈍化と若者の離職率が2割以上もある統計は上記のような因果関係を感じてしまう。AIやロボットが激速で普及する中国は高給な仕事は減少し、熾烈な競争は日本や韓国の比では無い。「寝そべり族」と称される最低の生活を良しとする若者が激増しているのも頷ける。
人口増の政策は移民以外は実現が難しい。仮に今子供が一気に産まれても、経済にインパクトを出すのは20年後だ。そもそも若者のメンタルが子供を養う余裕もなく、将来に希望もないのだから、ここにメスをいれるのは不可能に近い。この政策実現は、日本も韓国も成果を出せていないのを見れば難しさは明らかだ。
中国は、若者の過度な競争を減少させる目的で、学校以外の塾や習い事を営利目的で提供することを禁止した。これによって熾烈な競争社会が緩和されることを考えたのだろうが、甘い。裏目に出たのだ。実は大学を卒業した若者の多くは、この教育環境の事業に就くことで自分たちの収入を確保していた部分もあったのだ。それが天の一声で瞬時になくなり失業になり、将来の働き口が減ってしまった。結果、更に大卒含めた若者の就職環境が厳しくなってしまう。
完全にコントロールができない状態が始まっているのだろう。従来から公表していた年齢層での失業率を一時停止した。中国の舵取りも方針が変わった。経済成長から国家安全保障にシフトしているのだ。その手法も政治統制を重視する考えにみえる。同じ東のエリアでも日本と韓国は民主主義国で中国は共産党による一党独裁体制だ。過去中国では、若者が中心となり社会を動かす学生運動が起きている。1919年と1989年だ。当然政府は弾圧した。香港でも2019年から20年にかけて学生が中心となる民主化デモが起きたが中国は封じ込めた。しかし、ゼロコロナ政策は、若者が起こした抗議行動によって、存在が消された。
同じアジア圏内でも、中国は問題のはけ口が無い。韓国は大統領が度々変わり退任すると同時に懲役刑になることで民主のエネルギーを消している。日本はバブル崩壊後の1989年以降、首相が10人以上も入れ替わり、なんだかんだ言って最悪ではない。一方中国は完全なる独裁体制。ひずみは臨界点を既に超えている。いつエネルギーが放出されてもおかしくない。急激な経済低迷、急速な少子化、若者が就職できない現状、高齢化の影響、そして不動産問題。
新規事業を行うとき、中国の動向は重用なマクロ環境だ。不確実なリスクだが、与えるインパクトはでかい。爆発した際のシナリオ、継続のシナリオの2本は最低議論し、オプションとして捉えた戦略を描くことが寛容だ。
参照:フィナンシャル・タイムズ 「中国高齢化、日韓より深刻」 ギデオン・ラックマン
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
【動画】23年度異業種交流型・武者修行研修リーダー版(7月・9月開催)
※本ページは23年度7月・9月開催の武者修行研修リーダー版参加者向けのページです。
(セッション1)
リーダー版武者修行研修の参加者は以下の事前課題をご準備の上、Day1の研修に参加下さい。
1)「自己紹介シート」の作成
2)「今、自社が注目する 世の中の社会的な問題、それに関連する事業チャンスの整理」
※上記、1)2)の詳細は事務局からの連絡に従って下さい。
3)事前動画視聴(PWは別途事務局の指示に従って下さい)
新規事業の基礎 新規ビジネス創造の前に考えること(約35分)
多くの企業が既存の事業が成熟、もしくは衰退期を迎えています。そのような中、新規事業を開発することがどのような意味なのか。取り組み上でリーダーはどのような覚悟を決める必要があるのか。今回、社会課題を解決するワークを行う際の心構えを整理する目的で視聴下さい。
新規事業の基礎 新規ビジネスの基礎(約40分)
新規事業を生み出すための流れを3つのステップで整理しています。アイデアの創造、ビジネスモデル、そして事業計画です。はじめて社会課題を事業を通じて解決する議論を行う方も多いと思います。考え方や取り組むイメージを掴んで下さい。
新規事業の基礎 事業チャンス(社会課題)の発見(約21分)
2)の事前課題にもありますが、マクロ環境を見渡すことで事業として取り組めるチャンスが沢山みつかります。こちらの動画では、いかに社会課題を見出すかの視点について整理しています。
(セッション2)
リーダー版武者修行研修の参加者は以下の事前課題をご準備の上、Day2の研修に参加ください。
1)セッション1で議論した課題を各グループでワークする。
・事業チャンス ✕ 強み = ビジネスアイデア
※「誰が?」「何に困っているか?」等を工夫して調べたり、関係ある方にヒアリング等を行う
・上記のビジネスアイデアの整理をする目的でピクト図の準備をする
2)事前動画視聴
10億ビジネスの創造
こちらの動画の「10億」はあまり意識する必要はありません。ビジネスモデルキャンパスを作る際の流れや考え方を理解する目的で視聴ください。
デザイン思考 試作
デザイン思考の試作(テストマーケティング)についての解説動画です。セッション2では、みなさんが議論したビジネスモデルを検証し、ブラッシュアップするために、試作について議論を行います。その際の参考知識として視聴ください。
DX戦略 DXの創造
こちらはDX戦略の4本目の動画です。今回のリーダー版の参加者は、
1)ビジネスモデルをどのように構築するか?のヒントとして視聴ください。
2)アイデアの出し方で強み✕チャンスについて議論を深めると、Howにとらわれて、「誰の」「どんな困ったことを」について意識が薄れます。ビジネスモデルは、この2つ「誰の」「どんな困ったことを」が極めて重要ですので再度復習ください。
3)その他、ビジネスモデルの課金やアイデアの考え方について説明していますが、流れをイメージする目的で深く理解する必要はありません。参考までに視聴ください。
セッション3(Day4)受講の事前課題
事後課題として、セッション2で議論した(強み)✕(社会課題)のアイデアをブラッシュアップして下さい。
その際、1)ビジネス・モデル・キャンパスの視点を再び議論して深堀りしてください。また、その際に、2)MVPを作成して、実際の消費者や対象層にヒアリングを行ってください。サンプル数はできる範囲で結構です。セッション3では、各チーム25分の持ち時間の中で10分から15分程度、プレゼンして頂きます。3)各チームでプレゼン資料を整理してください。
1)ビジネスモデルキャンパスのブラッシュアップ
2)MVPの作成とMVPを活用した調査
3)セッション3のプレゼン発表資料の準備
上記をすすめる当たり、プレゼンテーションの基礎の動画を参照ください。
プレゼンテーションの基礎 概要編
プレゼンテーションの基礎 プレゼンテーションの流れ編
プレゼンテーションの基礎 準備編
プレゼンテーションの基礎 コンテンツ編
プレゼンテーションの基礎 デリバリー編
また、セッション2のリーダーシップの学びを深める目的で、以下のリーダーシップの基礎の動画を見て振り返りに活用ください。
リーダーシップの基礎
【動画】2023年新任グループ長研修(NPC)
本ページは西日本プラント工業様向けのページです。
新任グループ長研修にご参加の方は、以下の動画を視聴してご参加下さい。
Day1(9月5日)
Day1開催までに、以下の2本の動画を視聴下さい。動画はマネジメントの基礎(全6本)から抜粋して2本を選んでいます。当日の研修までに、新任グループ長として抑えておくべきマネジメントの基本的な考え方と、NPCを取り巻く経営環境における不確実な世の中への対応について整理しています。Day1の研修では、動画の内容を踏まえて、「自社の状況把握」と「経営マインドの養成」というタイトルで様々な視点から議論を行います。
マネジメントの基礎 概要(約17分)
マネジメントの基礎 不確実への対応(約30分)
Day2(10月20)
Day1の内容を受けて、各自アクションプランシートを作成して下さい。西日本プラント工業の5カ年計画を見据え、グループ長として直近1年間で実現する目標・ビジョンを具体的にした後、それらを達成するための6ヶ月先をイメージする。そして、直近の6ヶ月の行動プランを策定してください。行動プランは、実際に1ヶ月取り組んでください。Day2の研修では、計画のブラッシュアップを踏まえて、議論を深掘りしていきます。
行動プランを作成するにあたり、以下のマネジメントの基礎の方向性、行動、能力、リーダーシップを参考下さい。
マネジメントの基礎 方向性
マネジメントの基礎 行動
マネジメントの基礎 能力
マネジメントの基礎 リーダーシップ
なお、「在りたい姿」と「現状のギャップ(問題)」から「課題」を見出して「解決策」を考える手法の補足説明が必要な方は、以下の問題解決の基礎を参考下さい。こちらの視聴は任意です。
問題解決の基礎 概論(10分)
問題解決の基礎 問題(11分)
問題解決の基礎 課題(14分)
問題解決の基礎 解決策(11分)
問題解決の基礎 計画と実行(7分)
【動画】2023年度BRM2級
※バジェットロイヤルマスター2級研修会の参加者用ページです。
BRM2級研修に参加される方は、研修当日までに動画を視聴して、所定の課題を整理し参加下さい。
なお、パスワードは別途事務局の指示に従って下さい。
(アクションプランシートの説明)
BRM2級アクションプランシート 事前課題説明
(事前インプット動画)
店舗運営をする際の基本的な考え方を方向性、行動、能力の3点にポイントを絞って整理しています。事前課題の目指したい店舗像を方向性とした場合、
・売上収益をどのように考えるか?
・それらを実現するための顧客満足は?
・実際に取り組む際の行動とスタッフ教育をどう考えると良いか?
のヒントが満載です。最後のリーダーシップは、適宜自身のリーダーシップを整理する際の参考に視聴下さい。
マネジメントの基礎 概要
マネジメントの基礎 方向性
マネジメントの基礎 行動
マネジメントの基礎 能力
マネジメントの基礎 リーダーシップ
現状と有りたい姿のギャップ(問題)を認識することが重要です。その後、そのギャップが発生するメカニズムを整理して課題を特定し、解決策を考えます。今回のBRM2級の取組を実際に行うノウハウ満載です。
問題解決の基礎 概要
問題解決の基礎 問題
問題解決の基礎 課題
問題解決の基礎 解決策
問題解決の基礎 計画と実行
新規事業の旅71 保身に走らない
早嶋です。
新しい取り組みに関わらず、失敗することは多々ある。毎回、その法則を理解し整理することは困難だが、共通する枠組みはいくつか見いだせる。保身に走った場合だ。何かの取組を2人以上のチームで行うときの前提は、その2人以上のチームが共通の目的を持ち、取り組む意義を理解して、互いにその取組に対して貢献する気持ちが高いときは上手くいく。例え、初動や途中の状況は芳しく無くても、徐々に継続する中で成果が出てくる。
一方で、自分のコトしか考えなくなり、何か都合が悪くなる時に、相手のことよりも、自分の地位や名誉や報酬のことを先に考えるようになった場合は上手く行きにくい。短期的には成果は出ると思うが、中長期的には関係性が悪くなり、長続きしないのだ。
保身に走る場合は、自分を中心に考えるので、どうしても視野が狭くなるのだろう。一方で、相手のことを慮って考える場合、100%相手を理解できないことを知っている。だからこそ、常に互いの状況を確認し合うので疑心暗鬼も生まれない。自分の保身ばかりを考えると、人の脳は鏡の用で、相手も同じ思考に陥ってると勘違いして、更に相手を疑う要素が生まれるのだ。
ここから分かることはチームづくりにおいての相性だ。18年位、色々な事業やプロジェクトを行っている中で、私が長続きしている仲間は、皆一様に違いのことを慮っている。当然に人によって態度やコミュニケーションの頻度や手法は異なるが、自分の都合だけで取り組む人は、その場限りか、徐々に関係性が薄れていく。チームの特徴は、互いの強みをいかし、互いの弱みを補うことにある。ただ、これだけの特徴だけだと1+1=2となり、大した結果は得られない。チームの最もの醍醐味は足し算の結果が2を超えることだ。そして、どちらかが自己都合しか考えなくなると、足し算の結果は2よりも少なくなる。場合によってはマイナス二なることだって考えられる。
たとえば、新しい取組をする際に、一緒にそのチームと同じ時間を過ごすことをおすすめする。いきなり意気投合して、チームを作り、互いに出資をして事業をスタートするのも良いが、事業プランを練る等、寝食を共にする時間を共有するのだ。その中で、互いの貢献度や価値観や互いを思いやる気持ち、プロジェクトに貢献する意志の強さなどが確認できるだろう。そして、その瞬間で違和感を強く感じたら、そのチームは短期的には上手くいったとしても、長続きはしない。初期の利益の配分で喧嘩になるのが関の山なのだ。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
新規事業の旅70 性善説と性悪説
早嶋です。
マネジメントのスタイルに性善説と性悪説がある。性悪説で組織をマネジメントした場合は、組織を瞬時に掌握することができるが長続きしない。いわゆる恐怖政治やハードパワーによる押さえつけになり、組織がギクシャクする結果になるからだ。一方、性善説は長い期間をみれば間違いなく効果があがる。ただ、短期的には悪を見逃すことにもなり、いきなり良い成果は上げにくい。
性善説と性悪説は人の生まれつきの本性を善と捉えるか、悪と捉えるかだ。中国の儒家の孟子と荀子の対立に由来する。
孟子の性善説。世の中の悪人をしても「それでも性は善である」と主張した。どんな人間でも困っている人を助ける気持ちや憐れみの気持ちを持つと。このような道徳感情が善で、ここを拡充することでどんな人間でも善人になれる。そのための教育が大切だと主張した。一方、孟子が亡くなった後に荀子が現れ、性善説の誤りを指摘した。善は教育など後天的な取組によって生まれ、初めて得られるものと。
欧州の鉄道を見てみると、改札や検札の機能が無い。インフラを運営する前提として、人は性善説に基づき行動すると捉えているのだ。ただし、Gメン的に、ランダムに乗客に対して検札を行う係がいて、もし切符を持っていなければ、無条件で10倍から100倍の金額を払うなど、善でない場合のペナルティが大きい。インフラの運営を考えると性善説で行うほうが管理コストは遥かに安くなると考える。
たとえば、駅が10箇所ある。その10箇所に改札機をつけ、維持するコストを考える。そして、検札をする従業員のコストを考える。結構な額になるだろう。性善説で考えると上記は不要で、Gメンの従業員コストのみで運営できる。仮に100人中数名がキセル乗車をしたとしても、上記のインフラ投資と維持コストを考えると安いものだ。
日本の鉄道は、意図的かどうかは別として完全に性悪説の運営になっている。改札機も無人駅にも最近は設置され、指定席の運行は必ず車掌に相当する人が検札している。今後も続けたいのであれば、駅の隅々にカメラを設置して、キセル乗車をする傾向の高い人をAI等で学習して、ピンポイントで検札する仕組みを導入すると全体のコストも下がると思う。
マネジメントにおいても、性善説で運営すると、社員にいちいち日報や週報を提出させる必要も無いし、タイムカードやそれに付随する管理も不要になる。考えて見れば、日本の役所も、少し大きな組織も何かをするにつけて性悪説での管理で鬱陶しい部分があると思う。性善説を前提に管理をする文化に入れ替えたほうが、今後の位置管理コストは激減できるようになると思う。
ここはAIとカメラを活用した取組が、更にシナジーを生むので、心配性の管理職や昭和ロートル組も納得させることができるのではないだろうか。無論、新規事業を行う組織が、そこに対峙できない時点でイノベーションなどは生まれることは無いだろう。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
新規事業の旅69 売れるモノが良いモノ
早嶋です。
マーケティング関連の本にも世界一のネズミ捕りの寓話がある。ある時、科学者が世界で最高のネズミ捕りを開発した。科学者はその商品が売れて富を築くことを夢見るも誰も買ってくれなかった。マーケティングの究極は、適切な方に、適切な商品を、適切なタイミングで、適切な金額で、適切に届けることだ。良い商品は全体の一つの構成要素に過ぎず、全体の最適を常に考えることが重用だ。
そのように考えると、新規市場において、「良い商品は売れる」という思い込みは排除したほうが良い。「売れる商品が良い」のだ。そもそも新規市場なので企業は、市場のことをあまり知らない。そのため商品の開発に莫大な資金と時間を費やすのではなく、試しながら市場に投入して市場の反応に商品をチューニングするスタンスも大切なのだ。
インドでエアコンがまだ普及していなかった頃、モーター会社はインドでの可能性を夢見て商談を始めた。静かで、省エネ、壊れにくくて高品質。日本では当たり前の売り文句をインドに持っていく。すると「静かなモーターなんて有り得ない。インド人は音がしないと空調が効いていると思わない!」「高性能だと壊れないから買い替え需要が生まれない!」「品質は落として良いから安いのをくれ!」と。
まさに、市場の声を理解しながら「売れるものが良いもの」という理解をする必要が多々あることが分かると思う。既存の商売は、過去10年とか20年前に、先人たちがそのような取組を行いながらチューニングしている結果なのだ。ただ、今既存の商売を行っている人は、そのような歴史や武勇伝を口伝でも継承していないのだ。
商売において、「良いもの」は作る側のロジックで、「売れるもの」は買う側のロジックなのだ。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
新規事業の旅68 覚悟を持って取り組む
早嶋です。
新規事業のみならず、一定の取組に対して長続きする人としない人には何かの差があると思う。たとえば、その取組を続けることで得をする人のために、行えるか?つまり、その国のために貢献できるか?であり、その地域の人のために貢献できるか?などが大切だ。
顧客のために価値を提供することそのものに対して気持ちを持ち、自分のマインドがそこにあることが大切だ。という私も、10年前まではビジネスモデルが重用で、商品が重用で、技術が大切だと思っていた。が、実際にそれらが良くても、事業として継続するためには、相手のことを考えて、その人やその市場のために自分自身や自分たちの組織が貢献できることを信じることが前提になるのだ。そうしないと長い時間継続的に利益を出し続けることはできないと思う。
短期的な利益であれば、気持ちやマインドはそれまで大切ではないと思う。しかし、長期的に続けるためには真摯さが必要で、本当にその国やその市場に貢献することが大切になる。企業がどんなに良いと思って商品を提供したとしても、相手に受け入れられなければ事業として成り立たない。はじめこそラッキーストライクで購入されたとしても、注意深く購入後のフォローや研究をつづけることが大切だ。売って終わりではなく、売ってからをスタートと捉え、顧客のビックハイアではなくリトルハイアに注目するのだ。
これをおこなう前提としては、自分たちが単に儲ければ良いという考えだと、絶対にそのような発想にはならない。やはり商品を通じて顧客の問題を解決する。そのために企業は貢献するのだという意識なければ、リトルハイアに意識が向くことは無いのだ。
マーケティングの基本は、適切な商品を適切な対象に、適切な金額感で、適切なタイミングで提供することだと思う。有名な話だが、ソニーがインドで電池をはじめて売ったとき、日本では8本1セットで売ることが基本だった。同様にインドでも8本セットで提供してみたが売れない。日本の感覚ではまとめて少し安くすると売れるという思い込みがあったのだろう。そこで当時のインドを研究すると、必要な物は、必要な時に、必要な金額で購入するというのがわかったのだ。そこで1本から少し高い値段で提供したところ爆発的に市場が広がったのだ。
ユニ・チャームがおむつを売るときも同じことがあった。ユニ・チャームは日本での売り方であったまとめて安くを止め、インドではおむつを個包装して1つから、地元の商店で販売するスタイルを取ったのだ。そして、インド、或いはエリア毎を細かく観察してそのエリアの一人あたりのGDPを一つの指標として個包装で売るか、複数の組み合わせで提供するかなどの判断軸を編み出したのだ。
このような取組も、売って終了ではなく、その国に本気でどっぷりと浸かり貢献するぞという意志がなければ3日坊主で終わってしまうのだと思う。そう考えると、いきなり日本の成功を輸出して一気に同じ方法を展開してあっさり敗北するような取組は、そもそも本気度がなさすぎると言わざるを得ないのだ。
覚悟を持って、事業や企画に取組、ターゲットのペインやゲインの解消に覚悟を持って取り組む。そのマインドを継続することが大切なポイントの一つにあるのだ。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
新規事業の旅67 新市場開拓の落とし穴
早嶋です。
新規事業として、既存の事業を新規の市場に持ち込む。いわゆる新市場の開拓において考えることがある。やはり国や地域やエリアが変われば、その土着の文化が異なり、同じようにはいかないということだ。その際は、現地に適応させる部分と全体で標準化する部分のバランスが重用になる。ただ、その塩梅を決めるのは合理的な机上の空論では上手くいかず、小さくはじめて試行錯誤を繰り返しながらチューニングするものだ。
その際に、あたりを付けることが私は大切だと思う。ただ、そのあたりもあっている保証は無いが、あたりがあることで、それを軸として修正の角度や頻度が見えてくるものだと思う。そのあたりは、歴史からの学びや、他の業種からの学び、自分の経験や他社の経験からなど複数の視点で捉えるしか無い。要は何も分からないし、それがあっているかも不明だからだ。
たとえば、はじめて進出する国に商品を提案するとする。その場合、相手は分からない。でも自社の商品知識は持っている。このような状況は、たとえば日本にはじめてコーヒーや練乳を導入したネスレは何を考えたのか?などと歴史を参考にあたりをつけることができる。元々コーヒーを飲むなどの文化はなかったので、コーヒーを角砂糖の中に粉状にして入れ、それを溶かして簡単に飲む工夫をしてネスレは日本に文化を根付かせたと聞く。練乳に対しては、そもそも牛乳を飲む感覚が薄かったことから、そのような飲料を飲むことがかっこいいというファッションを創り出したり工夫をしている。
新規事業として、新市場開拓をする際の落とし穴だが、既存の市場と同じやり方で提供する前提でいくのは良いが、必ずその手法が通用する可能性は薄いと捉えて、そこに一定の覚悟と推定が必要なのだ。その際に、常に良いものが売れるという考えは捨て、現地に受け入れられたモノが良いものだという発想を持つことが大切だ。マーケティングの世界でもn=1を観察することからはじめて、よくわからない市場をとにかく観察してあたりをつける重要性を謳っている。まさに、あたりを持ちながらも、その対象とする顧客や企業の実態がどうなのかをファクトで理解を深める中で、商品をチューニングするイメージを持つことが大切なのだ。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
実践「ジョブ理論」
「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
「ドラッカーが教える問題解決のセオリー」
最新記事の投稿
最新のコメント
カテゴリー
リンク
RSS
アーカイブ
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月
- 2006年2月
- 2006年1月
- 2005年12月
- 2005年11月
- 2005年10月
- 2005年9月
- 2005年8月
- 2005年7月
- 2005年6月
- 2005年5月
- 2005年4月