早嶋です。
顧客の「あったらいいな」を考えるとき。特定の顧客の特定の状況を想定し、時には自分の「あったらいいな」をカタチにすることがヒットのアイデアを生むことがある。
例えば、JINS SAUNA。サウナをこよなく愛する、サ陸両用メガネだ。温泉もしかりだが、サウナは必ずメガネを外して利用下さい、と言う指示が、風呂屋から掲示がある。理由は、フレームがサウナの熱に耐えきれない安全上からだ。そこで日本人の半数は視力ゼロの状態でサ活を知られている状況が続いていたのだ。立ち上がったのはJINSだ。機能は想像通り、耐熱温度120度のオーバースペックで、クモリ止め加工を施した耐熱プラスチックレンズを使用している。JINSはアイウェアの概念を中心につねに「あったらいいな」をカタチにする代表企業なのだ。
例えば、ゲーミング冷蔵庫。ゲームをすると分かる”らしい”のだが、その場所から離れたく無い症候群が発症する。本格的にeスポーツに没頭すると、暗い部屋で、光を煌々と照らし画面に向き合い集中している自分に酔うのだろう。全てを画面に集中したいというのも本音かもしれない。そこにゲーム関連機器を手掛けるアローンは、ゲーマー専用の冷蔵庫をカタチにした。と言っても、小さな冷蔵庫にLEDで若干雰囲気を出した仕様にしたまでだ。が、ここが素晴らしい。全てはコロンブスの卵で、考えたものをコピペするのは簡単だが、始めにそのアイデアをカタチにすることが大変素晴らしいと思うのだ。ゲーマーはエナジードリンクが好きらしく、500mlでも350mlでも好みの色で冷蔵庫をLEDで浮かび上がらせるあたりがゲーム好きの発想にヒットするのだとか。
例えば、ペヤング焼きそば専用ホットプレート。開発者の着想は、カップ麺にも関わらず、”焼きそば”ってありえなくない?焼いてないのにね?という疑問からだ。本当か、どうか別として、クラウドファンディングでバズを作り商品化を実現。同じように共感するユーザーが一定数いたのだ。興味深いのは、バリュミューダのパン焼き器のように、本当に美味しいカップ焼きそばを作るための温度や水分等を科学的に検証しながら商品化している点だ。焼きそばの麺が保有する水分や蒸発率、ソースの焦げを追求し香ばしさを確立する。そして最適な温度での仕上げ等々だ。正直、誰がどう作っても焼きそば以上や以下の味は無いと思う。が、そのような儀式を研究した、ギーク向けのガジェットを使うことで、きっと感情的に美味しく感じるのだろう。
ヒットは、単発的、瞬間風速的な商売を意味するとすれば、ジョブ理論でいうところのビックハイアになってしまうが、上記3つの特徴は、こよなく愛する特定の顧客の特定の状況における成し遂げたい姿にフォーカスしている点だ。このような商品化の背景を考えると、単に市場調査して、コンサルをつけて商品を作れるという発想は一瞬で吹っ飛ぶことだろう。ものこそ好きの上手なれ。必要は発明の母。正に、ジョブ発見の究極の掟だと思う。
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実践「ジョブ理論」
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新規事業の旅46 ジョブ発見のコツ
新規事業の旅45 デジタル化とOC
早嶋です。
FC展開やチェーン展開する飲食店を中心にロボットの現場導入が加速している。今後、サービス業態の方針が大きく分かれ、ローコストを売りにする業態はコンタクトポイントを含め全てを機械化するだろう。一方、差別化を図る業態は、顧客とのコンタクトポイントには敢えて人を介在させるなど、人間の価値を添えたサービス提供や開発に力を入れると思う。今回は、ローコストを目指して機械と人間の融合に先行しているすかいらーくHDの事例を考えてみる。
すかいらーくHDはコロナ渦の後半1.5年の間に全店の7割に相当する店舗に約3,000代の配膳ロボットを導入している。数を展開できる企業にとって、日々の配膳業務の人手不足を補うことに加え、ロボットの走行データや配膳記録を統合して分析することで様々な生産性の向上を実現している。ロボットの軌跡をベースに従業員の導線を見直すことで従業員の歩行の4割を軽減するなどの効果を得ているのだ。飲食店の従業員は、配膳の仕事をロボットに任せることで、入店案内や会計時の接客に時間を割くことができ、結果的に生産性をあげることに成功している。
コストで勝負する飲食店は、サービス業に従事する人材の高齢化が課題だった。受付、案内、注文、配膳、片付け、会計など多岐に渡る業務を機械を導入することで緩和させ、人が行ったほうが企業の収益につながる業務に従事させる方針が少しづつ現場で見えてきていると思う。
すかいらーくの事例を見てみると、単にロボットを導入して終わりではなく、ロボットを中心とした業務フローに変えるという「戦略」を明らかにした体制を構築してる点に注目したい。本部がロボットを使う方針(SP:Strategic Positioning)を出しても、現場が勝手に使い方やルールを作ると、「ロボットを使わないほうが良い接客ができる」などの文脈が正当化されて、ロボットの投資が無駄に終わってしまう可能性がある。これはOE(Operational Effectives)の議論で散々されているが、方針だけ示しても現場はなかなかその方針を理解できない。しかし、一生懸命なんとか対応しようと考えた結果、現場が取組んだ内容と本部が考えた内容がバラバラになってしまい戦略が実現されないのだ。
そのため本部はあらかじめOC(Organizational Capability)の理解を重視した組織や会議体を議論して構えていくのだ。例えば、ロボットを現場に設置して終わりではなく、一定期間は一緒に使い勝手を検証しながら、そこで得た知見を標準化して全店舗に展開するなどの取組を初めからイメージしておくのだ。すかいらーくが短期間で3,000台を導入している背景には正に上記を議論した形跡を感じる。
例えば、ロボットを効率的に現場で活用できるようにインストラクターを配置し、現場で、どのようにロボットと人を共存させるかを指導している。更に、上述のようにロボットから得たデータを本部で解析し、更に現場が仕事をしやすいフィードバックを行っている。そして、店舗の設計などはロボットを優先とした設計に変更するなど、単にロボットを投入するだけに加え、全ての業務フローを見直しているのだ。
今後のすかいらーくHDの取組はもっとドライになっていくだろう。現在は配膳などの機械を導入しているだろうが、完全にワンオペやゼロオペでも店舗が回るような店舗の設計を確実にイメージしていると思う。そうなると、完全に投資した機械を減価償却しながら収益を確保する事業に変わっていくだろう。だが、難しいのは、ウーバーと同様に「いずれ機械化します!」と堂々と言えないことだろう。ということで、ローコストで運営する企業は多少コストが高くなっても、派遣やパート・アルバイトでの運営を店長含めて行うように切り替えると思う。ここは全くの想定で有るが。
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新規事業の旅44 デジタルバッジ
早嶋です。
小中学校や高校で覚えた知識や見聞をテキストデータに変換したが、メモリチップ1本分にも見たいないし、その情報は陳腐化して、新たにアップデートされていることもある。昔と違って、数年かけて学位を取り、その学位をベースに飯を食うことが益々難しくなった。
資格と足で踏んだ米粒。どちらも取っても食えねえ。と良く言われたものだ。
そう考えると昨今、マイクロクレデンシャルの重要性は良く理解できる。何かを学ぶ際に、全体像を全て時間をかけて学ぶのではなく、学習内容を詳細に分けて個別に学習する。その際に個別に認証するやり方だ。企業の社員に対して、デジタルリテラシーを高めてもらいたいとして、全てを習得するには相当の時間がかかるが、好きな分から、或は必要な分からつまみ食いして学習することで、柔軟に昨今の取組に対応できるようになるからだ。
ただ、それぞれに対して、修了書や認定書の類があったり、無かったりして、その発行元がそれぞれに違っていたら、整合性を取るのが非常に厄介だ。従来は、大学で何かの学位や修士を履修することができたら、その分野を大学が認証していたので良かった。しかし、マイクロクレデンシャルの場合は、そもそもいろいろな機関が様々に学びを提供することになる。すると、それらを蓄積して承認する仕組み、デジタルバッジの統一があると便利だと思う。
今のペイペイやメルペイや楽天ペイなどのように、様々な利害関係者が乱立した電子通貨やポイントのように、互いが融合して互換性があれば便利だ。少なくとも、この人は、この分野のこの知識については一定の学びがある。として、実際にその人が使えるか否かは別として、知識を得ているか否かを証明することにはつながる。ここにブロックチェーンのNFTなどを活用して証明書を発行することができれば、大企業や中途社員を採用する際のスクリーニングが非常に楽になる。最も、個人で商売をして、実際の成果を売る人間は証書があっても無くても、実力が出せれば食えなくなることは無いが、大きな社会に沿いくしたい個人にとっては保持したいバッジになると思う。
リクルートやマイナビ、あるいはパーソルあたりが標準化するか、或はグロービスやBBTなどのビジネススクールが標準化するか。あるいは、どこぞのベンチャーが言い出しっぺとなり市場を形成して、上記の業界のトップや2位にバイアウトして業界標準を作るか。何か良い気がする。
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新規事業の旅43 思考と行動
早嶋です。
三菱商事の自社倉庫シェアリングサービスは興味深い。ウーバーが飲食を運びたい人と食べたい人をマッチングするように、倉庫を貸して良い人と倉庫を利用したい人を三菱商事グループでマッチングするのだ。実業は子会社野ガウシーが行う。デジタル技術を活用することで、緊急な1日単位の利用から長期間まで自由に双方設定でき、eコマースや諸事情で物流や商品の保管が必要になる利用者に取っては選択肢が増えて良いサービスだと思う。
事業の背景には、自家倉庫という形態があり、倉庫業法により国交省の登録が必要で、企業が商品を預かり保管する営業倉庫と自社商品のみを保管する自家倉庫がある。営業倉庫は名前の通り、ECモールや他社の商品を扱うが、自家倉庫は他社製品を預かることができない制約があった。また国の手続き業務が伴うので営業倉庫の登録は手間で、メーカーや規模が大きな企業は自家倉庫を選択することが多いことに気がついたのだ。
ガウシーの推計では、国内倉庫面積、約1.86億平方メートルの中で7割が自家倉庫だという。しかし昨今の少子化、過疎化、経済低迷等で地方を中心に事業縮小や見直しを考えている企業は多い。自家倉庫は自社商品のみしか扱うことができないので倉庫があいたからと言って自由に活用ができていなかったのだ。ガウシーの凄さは、3年間かけて国と交渉したことだ。自家倉庫の余剰は4割程度あり、営業倉庫の3割未満と比較してポテンシャルが十分にあったのだ。結果、ガウシーが損害保険などに入るなど安全性を担保する前提で、空きスペースの貸し出しができるようになったのだ。倉庫を貸したい企業がガウシーと業務委託を結ぶ。そして倉庫を借りたい利用者と再び業務契約を結び直すという流れで倉庫を1日の期間からでも賃貸できるようにしたのだ。
新規事業を行う場合、アイデアは意外と出る。しかし、様々なハードルがあり断念することが多い。こと規制が大きければすぐに諦めることは考えられる。三菱商事がすごいと思うところは、それらを踏まえて国と交渉をはじめているところだ。2023年3月7日。国は「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。デジタル庁のプレスリリースを引用すると、
””「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(2022年6月デジタル臨時行政調査会決定)を踏まえ、デジタル技術の進展を踏まえたその効果的な活用のための規制の見直しを推進するため、①デジタル社会形成基本法、②デジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)、③アナログ規制を定める個別法の改正を行うもの””
ということだ。しかし3年前は、まだまだコロナが始まる前後で、そのような兆しはなかった。アイデアを出して実行に移す。一方で国益や多くの企業にとってもメリットがある大義があるからこそ、今回の取組が進んだと思う。思考と行動はセットにして、はじめて事業が成り立つ。ガウシーの事例はそのようなことを教えてくれていると思う。
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新規事業の旅(44) デジタルバッジ
新規事業の旅(43) 思考と行動
新規事業の旅(42) グループ企業の試練
新規事業の旅(41) 3つの財布
新規事業の旅(40) サービス業の苦悩
新規事業の旅(39) 金融リターンではなく事業リターン
新規事業の旅(38) システム化された社会
新規事業の旅(37) 会社を居場所に置き換える
新規事業の旅(36) デジタルの弊害を受け入れる
新規事業の旅(35) 人間は機械の一部になる
新規事業の旅(34) 複利の効果
新規事業の旅(33) ストレッチ目標
新規事業の旅(32) 需要と供給
新規事業の旅(31) ジョブと障害とキャズム
新規事業の旅(30) OEは最早役に立たたない
新規事業の旅(29) 売り手のトラブルは売り手の無知から
新規事業の旅(28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
新規事業の旅(27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
新規事業の旅(26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(23) 道具の使い方
新規事業の旅(22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(18) アンゾフ再び
新規事業の旅(17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(16) キャズムを超える
新規事業の旅(15) 偶然と必然
新規事業の旅(14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(13) ポジションに考える
新規事業の旅(12) 山の登り方
新規事業の旅(11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(10) NBとPB
新規事業の旅(9) 採用
新規事業の旅(8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(6) 若手の教育
新規事業の旅(5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(4) M&Aの成功
新規事業の旅(3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(1) 旅のはじまり
5月病の予防対策
安藤(公認心理師)です。
今回は、「5月病の予防対策」です。
ゴールデンウイークが近づいてきました。 ゴールデンウイークが明けると、やる気がでない、出社したくないといったメンタル不調でカウンセリングを受ける方も増えてきます。いわば『五月病』といわれています。
新入社員の場合は、入社前と入社してみたら描いていたイメージと現実が違うというギャップに戸惑う、苦しむ『リアリティ・ショック』の状態に陥っています。観察していたら、表情、態度、行動面に表れています。そのままケアーをしないでいると、休職・離職にもつながっていきます。
五月病は、リアリティ・ショックの状態が多くあります。その場合は、カウンセリング時には、『適応障害』と診断されて面談にこられる方が多いです。詳しく、リアリティ・ショックを説明すると、思い描いていたことと現実が乖離していたと感じたときの心の動きを指す言葉です。1985年にアメリカの組織心理学者・E.C.ヒューズが提唱しました。
4月に入社した新入社員が1カ月を過ごし、入社前に描いていたイメージと実際の仕事との乖離によってリアリティ・ショックを受け、GWをはさんで、仕事を続けられなくなるケースが発生します。
そこで、企業としては、メンタル不調の状態の社員の早期発見・対処法が必要となってきます。
まずは、どのようなリアリティ・ショックを受けているかと把握することです。新入社員に興味・関心をもって態度・姿勢・行動面(遅刻、言葉数が減った他)の変化を観察することです。その変化に気づいたら、すぐに
“声かけ” をおすすめします。上司に素直に自己開示をしてくれるのは日ごろの関係性にも影響してきますので、入社してからの “挨拶” は必須です。 次に、”1対1” の面談です。リアリティ・ショックは業務内容だけでなく、同僚や上司との人間関係、企業風土などが考えられます。
最近の事例では、ジェンダ問題もあります。男性社員は名前で呼ばれるが、女性社員は名前を呼ばれないなどもありました。名前を呼ばれないということは、一人の人間として、承認されていないとう心理に陥ります。職場風土として、男性優位な職場であり、チームで仕事をする場合も上司から男性社員には指示があるが、女性社員には指示がない等、そのようなことが重なり自己肯定感が低くなり、本来なら、報告・連絡・相談が必須ですが、それができなくなりミスが増えメンタル不調になったりすることもあります。
前回の投稿にも記載しておりますが、新入社員の方は、まずは、新しい環境の中で馴染んでいくのに時間はかかるかと思いますが、良い生活習慣を続けること(睡眠・食事・運動)が必須です。体調面・メンタル面に不調を感じたら、生活リズムを見直してみてくださいませ。
お気軽に弊社にご相談くださいませ。
潜在化したニードを顕在化するセールスコミュニケーションスキル
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今回のテーマは「潜在化したニードを顕在化するセールスコミュニケーションスキル」です。前回のメルマガでは、お客様は「私」をわかってくれて、「私」にピッタリの提案や解決策を提案してくれる営業マンを求めていると書きました。今回は目に見えているモノ(顕在化)だけではなく、潜在化したお客様のニードや問題をくみ取るスキルについてお伝えします。
結論から申し上げると、お客様ご自身も気付いておられないニード「本当はこんなのがあったら(出来たら)いいのになぁ」を営業マンがくみ取るためには、お客様にお尋ねするしかないのです。答えは全てあちら側(お客様)にしかないからです。
「本当はどうしたいんですか?」と率直に尋ねても、お客様から回答を得られません。そこでお客様の内面を深堀する質問を順番に重ねることにより、潜在意識の深いところを探っていきます。
まずお客様が現在置かれている状況、状態、背景をお尋ねします。営業マンがお客様の事を詳しく知ると同時に、お客様ご自身にもご自分の状況を再確認していただくプロセスです。
住宅のトップ営業マンならまずは「どちらにお住まいですか?」「現在どのような家にお住まいですか?」「持家ですか?賃貸ですか?」「家賃はおいくらですか?」「通勤、通学は?」「年収は?」「貯蓄は?」など、モデルハウスの来場アンケートにもあるような内容をお尋ねします。
そこから徐々に本質に迫る質問でさらに突っ込んでお尋ねします。「休日の過ごし方は?」「これからどのようなライフスタイルを送りたいか?」「子供をどのように育てたいか?」「それはなぜですか?」「その結果、何を得たいですか?」、そして「どのような人生を送りたいですか?」といったお客様の人生哲学や夢、理想ともいえる内容にまで及びます。
次に、お客様のその夢をかなえるために障害になるであろう問題を、質問によって明らかにしていきます。 お客様に理想と現状のギャップに気付いていただくプロセスです。
引き続きトップ住宅営業マンで例えるなら、「ご家族との時間を大切にしたいとのことですが、今は通勤に時間がかかっておられるようですね。会社に近ければご家族との時間も増えるのではないですか?」「お子さんを伸び伸び育てたいとのことですが、そのための環境が必要ですね」「お子様の通学路は大きな国道を横断しないといけませんね。沿線はトラックも結構走るようですが?」「ガレージがあれば、休日の趣味の時間が充実するのではないですか?」など、お客様がもっと満足する生活をイメージしていただく問いかけです。逆に言うと、現状に不満や不足をはっきりと感じていただく質問と言い換えることができます。
現状ではご自分の理想や夢を実現できないと気付いていただくわけです。
そうなると、お客様の心理としては「今のままでは嫌だ」「何とか理想に近づけたい」「できることなら夢を実現したい」となります。
「何か良い方法はないものか?」と営業マンに提案を求めてくだされば、営業マンは「これならどうですか?」と自社の商品やサービスの提案をするだけです。
深層レベルでお客様のご要望をしっかり聞取りができていて、その要望を満たすスペック(性能や価格)の商品やサービスなら契約に至る確率は相当高いはずです。特に売り込む必要もなく、いわゆる商品売りでもなく、本当にお客様にご満足いただけるセールスです。
このように、お客様にお尋ねすることで、お客様自身がご自分の潜在的な願望に気付き、それを実現したいと行動してくださる。その結果、ご契約に至るというセールスプロセスを私は住宅会社、保険会社で実践してきました。
ご自分の営業の進め方に取り入れていただける部分があれば幸いです。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
新規事業の旅42 グループ企業の試練
早嶋です。
企業規模が大きくなるとグループ企業の数も比例して大きくなる。多くのグループ企業は既存事業の流れから分社化され、周辺事業を手伝う目的で設立されている。そのため本店の事業ポートフォリオの影響を大いに受ける立場にある。
90年代から2000年代頃は、本店からほぼ100%の売上を得てきた。グループ企業は年度末に本店からの次年度の予算が確定され、事業年度の1年間は正しく予算を執行することで利益を得てきた。本店からの売上がベース故、営業部は存在するが、実質本店からの天下り人事で部長を固め、確実に業務フローを回す流れが定着した。従い、営業力は基本的に無い、もしくは著しく低いのだ。
グループ企業の役割は、本店からの営業オーダーを決められた予算でこなし、決められた利益を出すことだ。もし創意工夫してコストをカットしても次年度の予算を本店から絞られることになるので、ある意味公務員のように工夫もしないでただこなす文化が定着する。仮に、予定よりもコストが掛かりそうな場合は、本店に相談をして追加の予算が計上できるので、予実管理も他の企業と比較するとズブズブだ。というよりもその発想すら乏しい。
2010年頃より景色が変わる。本店のキャッシュカウに相当する事業が衰退しはじめ、経営状況が低迷したのだ。当然、グループ企業の売上も低迷する。従い、グループ企業の利益も減少する。利益を確保する必要があるグループ企業は、新規事業を連呼するもスローガンに終わり、結局、創意工夫も無く、人件費を無理くり削減することでかろうじて利益を出す。結果、人材投資も縮小し、金の卵を産むガチョウの如く、将来のポテンシャルを潰してしまうのだ。
そんな時、突然、本店は自社の売上や利益目標を切りに良い数字にして、成長することを宣言する。そのしわ寄せは、グループ企業にもやってくる。結果、本店売上比率を100%から50%程度まで下げ、代わりに自分たちで営業を取りに行くシナリオが既定路線になる。しかし、法人営業部隊は、いわゆる民間企業への営業経験はなく、いつまで立っても新しい売上や新規事業が立ち上がらないで苦しむのだ。たまたまグループ企業のトップが何らかの繋がりで仕事を取る場合もあるが、戦略性が乏しいため思うような継続が出来なかったり、効率が悪い仕事が増えて、利益がますます出ない体制になってしまう。
民間企業のように、管理会計を導入して細かい仕事単位で利益と効率の追求などしていない。終了した案件を見直し、次の仕事にフィードフォワードする発想も無い。過去の仕事の資料は残っているものの、本店に報告することが目的の資料で、今後の効率化や新たな事業を創造する材料としてもほとんど役に立たない状態になってしまっている。
この状況を脱するためのウルトラCは存在しない。きっちりとこれまでの仕事を整理して、業務フローを整理する。各々が保管している資料やデータの交通整理を行いデータを一元化する。管理会計は経営を見直すためのツールと認識して、どこで利益が出ていないのかを細かく正しく把握して、仕事を進めながら検証する。民間企業では当たり前に行っている仕事の進め方をまずは半年から1年できっちり行うことができれば、無駄な仕事や作業、報告書の作成や営業など、様々な伸びしろが見えてくる。一足飛びにすすめることは難しいが、伸びしろは結構あるのだ。
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新規事業の旅(38) システム化された社会
新規事業の旅(37) 会社を居場所に置き換える
新規事業の旅(36) デジタルの弊害を受け入れる
新規事業の旅(35) 人間は機械の一部になる
新規事業の旅(34) 複利の効果
新規事業の旅(33) ストレッチ目標
新規事業の旅(32) 需要と供給
新規事業の旅(31) ジョブと障害とキャズム
新規事業の旅(30) OEは最早役に立たたない
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新規事業の旅(27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
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