新規事業の旅 その12 山の登り方(アンゾフモデルの活用)

2022年8月9日 火曜日

早嶋です。

事業ポートフォリオを眺めて、すべての事業が成熟期、もしくは衰退期になっている。どうするんだ?と経営人から声が聞こえて来そうだが、事業ポートフォリオを長年いじらずに何もしなかったのは戦略のミス、経営陣の意思決定がなかったからに他ならない。

と言っても現場は新規事業を考えなければならない。今回は、新規事業の山の登り方についてです。新規と言う言葉の響きからすると、皆、イノベーション、革新、創造となんとも素敵なイメージを考え、今の事業ポートフォリオからは考えられないような全く異種の異形の遠い事業を考えることでしょう。が、多くの場合、失敗します。このエリアを飛び地の事業と名付けましょう。

新規事業の成功確率は低いのに、全く土地勘の無い事業を始めるのはお勧めできません。仮に起ち上げたとしても、他の事業との関連性も無いので組織間の協力もありません。企業が事業部制やカンパニー制を取っており、企業戦略の一つとして新規事業を立ち上げる。本来は全体最適に各事業部や各カンパニーが協力しそうなものの、そこは生き物と同じ。いま収益を上げている成熟事業はよそ事として手を貸しません。

まして、新規事業は成功確率が薄い割には行動が派手に映るので、既存事業やカンパニーからすると自分たちが上納した利益を使って何をしている?と言わんばかり。協力が得られるどころかパッシングの世界なのです。

そこで新規事業を考える際は、既存顧客の既存商品から始めることを検討します。既存顧客に提供している既存商品を何らかの方法で置き換えたり、付け加えたり、削減したり、増やしたり、無くしたり。そのために徹底的に既存顧客がその商品をどのように選定して、購入して、インストールして使用して、廃棄しているのか等を研究します。

既存の事業で生計が成り立っている場合、既に顧客の特定の状況を詳しく分析することを諦め、昔からやってきた取組の一環として営業して販売しています。従い、顧客が実際にどのように使っているのかなどの知識が薄いことが多く観察できます。そこで既存事業こそ徹底的に既存顧客の分析をするのです。

既に行っている場合は、既存顧客層がその商品の使用を辞めた理由や、購買の検討をしたが購買に至らなかった理由や購買の検討すら行わない理由を突き止めて、それを商品、目に見える製品と一連のサービスを変えることで吸収できないかを徹底的に考えます。

すると、何かしらのアイデアが出てきて、商品の改良が完成します。そしてそれを既存の顧客に提案して小さく、早く、新規事業部隊の成功体験を積むのです。アタマの硬い社長や経営陣はこの取組を新規として認めない場合もありますが、それはもうどうしようも無いと思います。

このアンゾフの既存既存のエリアを攻める理由は、既存事業部からしても自分たちの周辺事業の売上が上がり、顧客から感謝されるため手伝ってくれる可能性も高いです。

そして、次はその商品をベースに、これまで提案していなかったターゲット顧客や、ターゲットとして検討していなかった新規顧客を改めてセグメンテーションして、狙いを定めて営業するのです。この営業は、既存部隊の営業リソースが使えない場合が多いので、新規部隊が兵力を出して行う取組になります。しかし、商品の導入事例は既存既存で既に事例があるので、何も無い更の状態の営業よりも幾分ハードルがさがります。

この取組が成功すると、既存顧客と既存商品のちょっと上に、既存と新規の中間の顧客と既存商品と新規商品の中間の商品のエリアが生まれます。これらを時間をかけて行った結果、飛び地の新規事業になるわけです。

新規事業は、既存の取組を少しずつ工夫をした結果、生まれ、その事業を深堀りした結果生まれます。時間が立って比較すると、新しい事業だ!となりますが、その仕事を連続的に行っている側からみると境がわかりません。この手の事業の開発の仕方は、既存事業のポートフォリオを上手く回して来た企業からすると案外と上手く機能するのです。


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