新規事業の旅108 イノベーションとCVC

2024年4月26日 金曜日

早嶋です。

イノベーションを実現するための手法は、R&D、M&A、提携・出資などがある。そもそもイノベーションとは、なんだろうか。

ポケベルがケータイになりスマフォになる。ケータイからスマフォの変化はイノベーションだと思う。従来のメセージのやり取りや通話に加えて、写真や動画を活用したコミュニケーション、24時間365日常にオンラインにほとんどの人がいるために、スマフォで様々な体験を共有することが可能になった。隙間時間には音楽や映像を楽しみ、仕事や買い物もスマフォがあれば簡潔でいる。スマフォは財布にもなり決済や商品の購買も簡潔させてしまう。スマフォによって完全に人間の、消費者の行動が変化したのだ。

そのスマフォだが、特質した1つの技術による成果ではなく、様々な技術やサービスが組み合わせられた結果できあがった産物とも言える。その意味でスマフォのイノベーションは、消費者の行動を変える機能を実装する技術開発やサービス提供と言ってよい。これは今後のイノベーションの開発に一定の示唆を与えてくれる。

イノベーションの大家、クリステンセンのイノベーションの議論では、1960年から1990年代までは実に連続的な技術開発が進展した。しかし2000年代にデジタル技術とネットワークの融合により急激にグローバル化が進展する。ここに異業種の技術融合なる取り組みが派生した結果、非連続的なイノベーションが誕生する。

技術のベースは国や企業が持つ基礎研究所からスタートし、そのシーズを製品にインストールして事業化していく。研究所から事業部へ技術移転された技術は、実際の市場からのフィードバックを受け磨きがかかる。1980年から90年代は、事業の多角化がブームになり要素技術はどんどん体系化され、プロダクトイノベーションが加速したのだ。2000年に急遽インターネットなどのIT技術が発達し、コミュニケーションコストの削減とデータ管理コストの削減がなされた。一方で、あらゆる記録をデータとして保持することに価値の源泉が移り、そのデータを駆使して価値を提供する企業が世界的にキャッシュを稼ぐようになる。

まさに連続的な技術開発に加えて、異業種の技術や融合を図り、製品に加えて、その製品を活用する前後のサービスの工夫など、最終的にはビジネスモデルを工夫した企業が競争優位に立つ世界ができあがってきたのだ。

これらを整理するとイノベーションは、継続的な技術開発に加えて、異業種の技術や製品、サービスを組み合わせることで、消費者の経済行動を変化する諸々の取組を指すと言ってもよい。この考えは、近年の学者の指摘の中で、早稲田大学ビジネススクールの入山准教授の話と合致する。イノベーションは知の探索と深化の両利きの経営の中で生じ、事業が新規に近ければ未知の知を探索し、既存の事業であれば知の深化を進めることになると入山准教授は述べている。

事業は、1つの知を継続的に探索することでキャッシュを得る。しかし継続的な取組は、いつしか破壊的なイノベーションによって駆逐される可能性がある。かといって、知の探索をおこなっても、すぐにキャッシュを稼ぐことができない。企業イノベーションを行うには、この2つを頭に入れてうまく管理するしかないのだ。

では、イノベーションに投資する方法は何があるだろうか。冒頭に書いた通り、R&D、M&A、提携・出資などに類型できる。

既存事業の短期的な時間軸で取り組む手法がM&Aだ。まさしく時間を買う目的で事業シナジーを獲得する。既存事業の長期的な取組は、新規事業の探索になるのだろうが、実際に企業を観察すると既存事業の延長で研究開発をしている企業が多い。R&Dと名前はつくが、既存事業の継続的なプロダクト・イノベーションを進める取組なのだ。

新規事業の短期的な時間軸で取り組む手法はイントレプレナーやJV(ジョイント・ベンチャー)がある。多くの企業を観察するとこのエリアは、企業の事業ポートフォリオのノンコア部分で取り組む事例が多い。飛び地の事業を開発する取組だ。

新規事業の中期的な時間軸での取組は、CVCが近年注目される。事業会社がスタートアップ企業に投資することだ。通常、スタートアップ企業は、常にオンリーワンの新しい事業を企てている。そのため事業会社からみてもCVCは新規事業に位置づけることができる。事業会社がCVCに与えるメリットは、キャッシュ以外に、革新的なアイデアと自社の固有の技術しかもたないスタートアップに、事業化を促進するための他の資源を提供できる可能性だ。

このように捉えると、知の探索と知の深化を同時に行える可能性としてCVCはドンピシャなのだ。

(過去の記事)
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