高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、数回に分けてお伝えしています。
今回は『なぜクロージングが必要なのか?』というテーマでお届けします。
営業のプロセスはどの業種でも概ね次のようなものです。
アプローチ→ヒアリング→プレゼンテーション→クロージング
クロージングはプレゼンテーションと成約の間のプロセスです、私は「お客様に決断を促す行為」と定義しています。
「クロージングが苦手です」、「クロージングするとお客様に嫌われるようでやりにくい」、「クロージングは押し売りしているみたいでしたくない」という声を聞きます。皆さんはいかがでしょうか?
クロージングをしない営業パーソンというのは、「私は商品説明をしました。あとはお客様がどうされるか決めてください」という態度です。いっけんお客様を尊重しているようですが、私からすれば無責任に感じます。
もし「お客様にはこれが必要です」と確信して自社の商品・サービスを勧めているのなら、最後まで熱意をもってお勧めするのが営業パーソンの責任です。
クロージングにおいては「ぜひ決めてください。あとは私が責任をもってフォローいたします」という心構えが大切です。
さて今回のテーマですが、そもそも、なぜクロージングというプロセスが必要なのでしょうか?
それは、人には誰も『人間の基本的な弱さ』があるからです。基本的な弱さとは物事を先延ばしして決断しないということです。
どなたにも思い当たることがありませんか?
私だったら、仕事に役立つ講座があって申し込もうかなと考えている、けど受講料もかかるしなぁ、さんざん考えた挙句、いったん保留してしまう。これまで考えた時間が無駄になってしまいました。必要だし先延ばししても何も状況は変わらないのに、です。
このように人は特に根拠なく、『人間の基本的な弱さ』から反射的に決断を避け先延ばししてしまいます。
だから営業パーソンはしっかりクロージングして、お客様のために決断を促して差し上げないといけないのです。そうでないと、そのお客様にとって本当に必要なモノを手に入れる機会を損なってしまうことになりますからね。
商談で「考えておきます」「検討します」と言われて、「ではまたご連絡させていただきます」なんて言って帰ってくる営業パーソンがいますが、それはただの先延ばしの反射を真に受けているだけです。それでは成約になる確率が低いはずです。
クロージングでは沈黙の力を使います。
「これでいかかですか?」とお客様にお尋ねし黙ります。営業パーソンは沈黙に耐えます。
するとお客様は決断を促されることになります。そして『人間の基本的な弱さ』から先延ばしの断り文句がとっさに口に出るというわけです。
その断り文句(反論)に対し、またプレゼンテーションをし、クロージングと繰り返すわけです。何回か繰り返すうち、お客様のほうで断る理由がなくなります。ご納得いただいた瞬間です。
ご納得いただいたお客様は喜んであなたからご契約されることでしょう。
このようにクロージングは決してお客様に無理を強いることでも営業側の都合でもないのです。お客様が人間の基本的な弱さに打ち勝つためのサポートなのです。
営業にたずさわる方には、お客様のためを思って熱心にクロージングに臨んでいただきたいものです。
私の講座ではこのような営業に関する実践的な研修や勉強会を行っていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
営業プロセス、顧客満足、人材育成、セールスコーチなどをお考えの経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
2021年7月 のアーカイブ
なぜクロージングが必要なのか?
人材育成3つの壁 〜リアルな中小企業の実情〜
◇人材育成プログラムの前に…
コロナ禍の中、オンラインでの人材育成が盛んです。各社が競い合って様々なプログラムを作成しています。わざわざ東京まで行かなくても、著明な講師のレクチャーを受けることができます。その魅力的なプログラムを受けると、社員の能力が高まりそうな気がします。しかし、中小企業の現実はどうかというと、そのようなプログラムを受ける前の段階で大きな壁があります。
現実の中小企業の人材育成には大きく3つの壁があります。以下の文章は、多少、言葉遣いが悪いですが、ご了承ください。
◇ ①興味がない
そもそもビジネスに興味がない。これは、中小企業だけでなく、大企業にも言えることです。
まず、中小企業の社員の多くは、入りたくて入った会社ではありません。当然、自社のビジネス、業界には全く興味はありません。プライベートの時間は、仕事のことは考えたくないという人がほとんどです。もちろん勉強、読書の習慣もありません。なので必要最低限のことしか頭に入りません。研修で良い話を聞いても、家に帰れば忘れます。
では、大企業はどうかというと、こちらも同じく多くの人は、ビジネスそのものに、興味がありません。興味があるのは、会社での自分の評価です。賢明に働くのは同期が100人くらいいて、その中で、強烈な競争意識があるからです。なので必要なことは必死に取り組みます。
この興味がないというのは大きなハードルです。人は興味がないことは理解しません。大企業の場合は、すでにシステムが出来上がっています。与えられたコマンド(命令)をこなせばいいです。何かあれば取引先に圧力をかければなんとか帳尻があいます。しかし、中小企業は目の前のプロブレム(問題)を解決しなければ、企業は存続しません。成長もしません。
◇ ②読解力がない
次に、文章、グラフ、図形の基礎的な読解力がないことです。
「AI VS. 教科書が読めない子供たち」を読むとわかります。学力中位の高校でも、大半は教科書が読めません。高校生の大半ではありません。学力中位の、つまり偏差値50くらいの高校生が読めないということです。
偏差値50くらいだと、大企業のグループ会社や、地方の中堅企業に入るくらいのレベルです。そういう人たちの半分が文章をまともに読めません。さらに、今の若い人たちは圧倒的に語彙力が足りません。なので日経新聞を読むことができません。
そして、中小企業に入る人材は失礼ながら、それよりもひどいということです。
◇ ③知的・精神的・肉体的な安定性がない
ちょっと身もふたもない書き方ですが、私が経験してきたリアルな現実です。中小企業の社員の少なからずが、知的・精神的・肉体的な不安定さを抱えています。
日本の教育システムの設計思想は、社会に適合できるかスクリーニング(選別)することです。スクリーニングを無事潜り抜けたひとは、いい大学に入って、いい会社に入ります。当然、中小企業にはそのスクリーニングで引っかかった人が入ります。
たまに中小企業に、中途採用で立派な学歴、職歴の人が入ったりします。経営者は大喜びです。しかし残念ながら、そういう人は多くの場合、何らかの形でスクリーニングに引っかかったということです。多くの場合、期待したような活躍はできません。そして予想もしなかったような問題を起こしてくれます。
中小企業は一人の人で失敗すると大打撃です。問題ある人に時間とお金をかけて、責任のある地位につけて組織がガタガタになったことを何度も見てきました。おとなしくこつこつと働いていた人が、人の上に立って豹変したこともありました。
◇前提の確認
こうしてみると、人材育成プログラム云々ではなく、その前提で壁にぶち当たっています。
御社の人材は、①ビジネスに興味がない、②読解力がない、③なんらかの不安定さがある。この壁をクリアしているでしょうか?
御社の社員に、最近、ビジネスに関する本を読んだか聞いてみてください。もし読んだのならその内容を聞いてみてください。たぶん最初の「本を読んだか?」という質問で全滅すると思います。多くの人は、ビジネスに興味がないし、読書の習慣がありません。読書の習慣がなければ、語彙は増えません。
そういう人間が、デジタルトランスフォーメーションなど聞いても、何もわからないと思います。
あと360度評価を実施することです。匿名で部下や同僚の評価をとってみてください。かなり、いろいろでてきます。経営者よりも、周りの人たちのほうが、その人の真の姿をわかっていることが多いです。
また、社員の生活習慣を把握したほうがいいです。食事・睡眠をしっかりとっているか、生活リズムは整っているかはかなり重要です。
◇壁(問題)への対策
前述の通り、人材育成には、3つの壁(問題)があります。しかし、問題があれば対策はあります。
まず興味がないと言うことに関しては、ビジネスの全体像を理解させること、そして自分の役割を与えることです。人は自分が理解できないものには興味を持ちません。なので、自社のビジネスモデルや、社会的役割を、わかりやすく根本的なことから理解させる必要があります。また、仕事に興味を持ってもらうためには、役割を与えて、裁量を与えて、承認を与えることです。このことは、会社が成長していくという物語を共有すること、そして、自分自身がその物語の登場人物の一人であるという認識を持たせることです。
次に、読解力を向上させることは、簡単ではありません。基本は、インプット、アウトプットを繰り返すことです。もちろんフィードバックも必要です。仕事のなかで読む、聞く、書く、そしてフィードバックを受けるというサイクルを定着させましょう。読解力が上がれば、自ずと他の能力も上がっていきます。
読書の習慣をどうやって定着させるといいかはこのブログに書いてます。
【職場の読書論 〜読書の習慣を定着するには〜】
https://www.biznavi.co.jp/blog/archives/7381
最後に、面接や、試用期間でスクリーニング(選別)は必要です。小さな組織ほどスクリーニングができていません。採用担当者は自分のノルマさえこなせばよく、現場もとりあえず人がいないよりはいたほうがいいという感じで、スクリーニングできていません。面接で適正テストをする。試用期間中も、業務の理解度をテストをする、面接をする、周囲の評価を取るなど、スクーリングをしたほうがいいです。
◇人が育つ条件
中小企業の社員で、学歴などなくてもバリバリ仕事ができる人がいます。会社の全体像がわかっていて、論理的な思考ができて、問題解決力があります。このような人を何人か見てきました。
どのようにその人たちは成長したのか?それは、会社と一緒に成長したということです。カリスマ社長のもと、会社が急速に拡大するなかで、様々なタスクをこなしていったからです。会社の成長という物語と、自分の役割があったからです。最初の興味がないをクリアすると、人材育成はほぼ成功です。
環境が変われば、認識も変わります。そして成功体験を積めば、人は劇的に成長します。小さな組織のメリットはトップの経営者と社員の距離が近いことです。さらに人事に柔軟性、俊敏性があることです。業績のいい中小企業の経営者は社員と密にコミュニケーションをとっています。そして目をつけた人材はすぐ抜擢します。
人は、他者からの承認、そして人生の物語を必要とする社会的存在です。小さな組織はトップからの承認を得られます。面倒だなどと言わず、社員との距離を縮めましょう。良い人材は会社にとって一番のお宝です。
以上、最後までご精読ありがとうございました。
【動画】2021年度店長研修プログラム ㈱新出光リテール販売部様向け
本ページは㈱新出光リテール販売部サービスステーション課様向けです。
SSのマーケティングプロセス・Web集客の仕組みと店舗の取組を考える「2021年度店長研修プログラム」のSS店長研修に参加される該当者の方は、以下の動画を視聴し、事前課題を整理した上で当日のワークショップに参加ください。
【事前課題】
次の3本の動画を視聴して下さい。PWは別途事務局より連絡があります。
1)売上実績分析の動画視聴(約39分)
2)プロセス管理の動画視聴(約27分)
※上記2本は視聴後事前課題を整理して下さい。
3)顧客DBを活用した取り組みとロイヤルカスタマー戦略の動画視聴(約35分)
URL
1)売上実績分析(https://app2.gemediar.net/movies/preview/60f6afe4-fd8c-4ba3-8c80-4d7da0106aeb)
2)プロセス管理(https://app2.gemediar.net/movies/preview/60f6b083-9fb0-43a8-a529-4d7ba0106aeb)
3)ロイヤルカスタマー(https://app2.gemediar.net/movies/preview/60f6b127-149c-497c-ae83-4d75a0106aeb)
磁気記録式メモリー(MRAM)はイノベーションの中心になるか
◇日経新聞の記事
原田です。
日経新聞7月20日(火)の朝刊に磁気記録式メモリー(MRAM)の記事が掲載されました。普及にめどがついてきたようです。これで日本の産業が、ビジネスのメインストリームに食い込めると期待しています。
この技術は、現在の要素技術のトライアングル、「クラウド」、「AI」、「5G」に続いて、ビジネスに大きなインパクトを与えると思います。
◇テクノロジーの進化は想像以上
データの記録に電子のスピン(回転)を利用するなんて、技術の進化は信じられないです。1ビットの記録が、磁気のS極、N極から、電子のオンオフになって、さらにそこから電子のスピンになって…。
25年くらい前、私はIBMのパソコンをフルセット30万円で購入しました。巨大なブラウン管のディスプレイと、ハードディスクの入った巨大な本体が机の上で大きなスペースを占領していました。その頃は、コンピューターの前でタバコを吸うなといわれていました。タバコの煙の粒子が、磁気ディスクの隙間に入り込むからです。また、ハードディスクが動かなくなったら、ぐるぐる回すといいとも言われていました。そんな物理的な牧歌的な時代から、電子のスピンを利用する時代になりました。もうハードディスクを持ってぐるぐる回ることもないでしょう。なにせ電子がスピンしているのですから!
本当にテクノロジーの進化は予測不可能です。
◇普及と用途
このMRAMは小型の端末に使われます。さらに同時に大量のデータを保存する必要があるAIにも使われます。これらの用途では、従来の1000分の1の電力だそうです。
小型で省電力といえば、まったく同じフレーズだった技術があります。
Bluetoothです。今、Bluetoothはあらゆる電子機器に搭載されています。同じように将来は、MRAMがあらゆる電子機器に搭載されるかもしれません。
ワイヤレスのイヤホンも、スマホにつながず聴けるようになります。同じくスマートウオッチもスマホから独立して機能できるようになります。あらゆる機械に、多くのセンサーを搭載し、同時に利用できるようになります。家畜動物の管理でも活用されるでしょう。牛、豚、鶏だけでなく、魚の養殖も1匹、1匹自動で管理できます。動物や昆虫の生態を観察できるようになります。
もしかしたら人間も徹底的に管理されるかもしれません。今、サッカーは選手一人一人にGPSをつけて、試合の間、選手のデータをとっています。MRAMが普及すれば、さらに進んで、両手、両足、頭にもセンサーがつけられるようになるかもしれません。そうすれば、完全バーチャルリアリティーで選手の目線や動きを再現しながらチャンピオンズリーグ決勝のゴールを選手を選手の立場で体験できるかもしれません。
◇テクノロジーの教養
現代社会はあらゆるビジネスがテクノロジーの進化の影響を受けます。本質的な要素技術のことを理解する必要があります。最近なんでも「DX」という言葉が使われますが、どれだけの人が、本質的なことを理解し、考えているのでしょうか?
「テクノロジーの教養が必要」と、ベンチャーキャピタリストの山本康正さんが著書の「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」に書いていました。この本のなかでは、テクノロジーを関連づける「マップ」の必要性も説いています。
最近は、テクノロジーの進化はとても早いですが、山本康正さんの本のように大変わかりやすく全体をまとめた本もあります。「DX」のトランスフォーメーションとはなにか?などという議論よりも、要素技術の基礎知識を理解し、関連付け(マップ)ができるようになったほうがいいです。
飲食店の電話対応
早嶋です。
ネット社会になっても電話による予約の確認は飲食やホテルなどは結構多いと思います。中でも飲食は、ネットで調べて「行ってみたい!」と思うと、その場で電話する方が多いのでは無いでしょうか。
例えばランチ時間に、近くで検索して空いているかを調べたい。夕食のタイミングで入れるか知らべたい。週末の予定を立てている時に予約を取りたい等々です。
一部はWeb対応をしていますが、レスポンスが遅いものがほとんどで、その場合直ぐに次の候補の店にスルーします。
と考えた時に飲食店の電話対応って、結構重要なコンタクトポイントだと思うのです。しかし飲食店はその重要性を理解していないように感じます。特に客単価が高いお店であっても、未だにコンタクトポイントを無視して、店内の設えと料理そのもので勝負をしようとしています。
電話のタイミングを考えると、結構多忙な時期だと分かります。ランチ前や夕食前は仕込みをしている、開店前の準備をしている。ですが、顧客はそのタイミングで飲食店に連絡します。結果、オーナーや女将相当の方が電話に取ることが少なくなり、従業員やバイト・パートが電話対応をします。本人に悪気は無いのでしょうが、レスポンスややり取りが悪く、結果お店の印象が悪くなる。そしてスルーする。という経験は多くないでしょうか。
もし従業員やパート・アルバイトが電話を取る機会があるのであれば基本的な対応や受け答えのレクチャーをするか、或いは電話に取らせないか。要は中途半端な対応が結果的に次のリードを消している可能性があるのです。
細部に宿る
早嶋です。
God is in the details. 神は細部に宿るという言葉、ミース・ファン・デル・ローエ、ドイツ出身の建築家が残した言葉だと言われています。ただアインシュタインやル・コルビジェ、ニーチェ等も同様の表現を残しているので、大成した人の多くが大切にしている概念だと思います。
全体や見た目ばかりを気にしても、本当に大切なことで手を抜いてしまえば、そこからほころびが始まる。結果として全体の完成度が落ちてしまう。そんな解釈でしょう。
先日、10年ぶりに福岡で写真展を開いた山内悠さんの作品を観に行く機会がありました。そして今回も10年ぶりではありましたが、じっくりと妻と一緒に話する機会がありました。今回のテーマは惑星。同じ星の中に住む住人、住む世界が異なれば、異なる思考を持つ。そんな意味を込めた写真展では、モンゴルの様々な民族と自然、そして自然にもうすぐ自然になる構造物が作品に閉じ込められていました。
作品の説明を受けている中、何度がパラレルワールドというワードが出てきます。モンゴルで見る空と日本で見る空。同じ空を見ていても、見る人によっての解釈があり、そこには別の世界があるのではないか。同じ写真を撮っても、昨日撮った写真と今日撮った写真では、本人であれ考えた内容がことなり別の世界が存在するのではないか。同じ写真を見て、解釈する人によって内容がことなる。それはそれで別の世界が生まれる。
2014年から毎年モンゴルに行き、写真を撮り続ける中で山内さんが考えたことが文字ではなく絵として切り抜かれた世界。偶然に撮ったのか、その一枚を追い求めてとり続けたのか。しかし展示されている作品はどれも物語があり、1つの質問で話が尽きない。やっぱり魂がこもっているのでしょう。
購入した写真集の裏表紙には右と左のページに真っ暗な夜空に光の加減で星を切り取った作品があります。どちらも同じ写真。でもよく見ると、右のページの写真には流れ星が表現されています。同じ世界でも見る人が異なれば、見る人の思考が異なれば世界が少しづつ変わってくる。そして世界はそうやって、幾重にも人の数だけ世界があるのではないか。そのような概念を作品のまとめにびしっと仕上げている。あー、やっぱり細部にも本質があるのだなと感じました。
職場の読書論 〜読書の習慣を定着するには〜
◇本を読まないという嘆き
原田です。
多くの経営者の方から、社員(若い人)が本を読まないという嘆きをよく聞きます。
若い人だけにかぎらず、私の周りの専門家と言われる人でも、本を読んでいる人は少ないです。
本を読むという行為はとても時間を取ります。スマホ全盛の時代では、読書は、コスパの低い行為なのかもしれません。
◇経営者と読書
一方で経営者の方は、本を読む人が多いです。多くの経営者は、経営者同志のネットワークを持っています。そこで先輩経営者から、「この本を読むといいよ」と進められることが多いです。また仕事柄、移動が多く、移動時間でできることの一つが読書です。そして、読んだ本の内容は、先輩経営者へフィードバックすることになります。なので読書で得られる効果を体感しています。
◇普通の人と読書
本を読むことは、直線的思考を強要されます。一定の時間、集中して活字を追うことは、脳に負担をかけます。ある程度、訓練が必要です。
一方で、SNSやゲームは、次々と切り替わっていきます。即座に自分の必要な情報にアクセスできます。おそらく人間本来、というか動物と同じ拡散的思考になっています。
1日のほとんどを、ネットに接続している現代人は、できることなら本は読みたくないというのが本音だと思います。
あるいは必要な情報はネットで収集できるので、本を読むなんて時代遅れだという意見もあると思います。
◇読書とは
読書は、単に情報を得るものではありません。著者のものの見え方、考え方、そしてその論理的な組み立てを、体験することが読書だと思っています。これはあくまで私の読書論です。
※ちなみに、私は速読ができません。何度か試しましたが身につきません。
読書という体験で、自分の認識の枠組みが変化します。物事の考え方が改まります。物事に複数の視点を持てるようになり、世界が広がります。
読書の楽しさは、著者の視点、思考を通して、新たな世界観を手に入れることだと思っています。
◇読書のすすめ
読書の習慣はあった方がいいです。だからと言って、若い人たちに本を読めといっても読みません。ついついスマホに手が出るのが現代人です。なので私が最近読んだ本の中から、いい取り組みの事例を紹介します。
それは大学のゼミでの取り組みです。ゼミの学生に、みんなの前で自分が選んだ新書を一つ紹介してもらうという取り組みです。このとき紹介する人は、1冊読破する必要はありません。自分が読んでみたいと思った新書を紹介するだけです。そして「どうして、その本を選んだのか」を説明します。そうすると、1ページも読んでいなくても、「著者はだれか」、「どういう履歴の人か」、「どんな知見が得られるか」ということを考えるようになります。
このやり方であれば、Amazonの中身検索だけでも、終わらせることができます。そこまで負担はかかりません。お金もかかりません。
企業でも、同じように、社員から読みたい本を紹介してもらうという取り組みができます。週一回くらい、ローテーションで、みんなの前で発表してもらうといいでしょう。
そうすれば、なかには実際に読もうとする人もでてくると思います。もし読み終わり、そのことを発表することができれば、大きな成功体験になります。
◇成功体験が必要
今の本、特に新書は読みやすく作られています。1文、1段落が短く、さっと読めるようになっています。ベースとなる知識がなくても、2時間くらいで読み終える本は結構あります。
まずは一冊の本を読み通したという成功体験が必要です。良い本を一冊読めば、世界観が変わります。その世界観を誰かと共有できれば、また本を読む意欲がわきます。そういう人が増えると、社内の雰囲気も変わります。一度、分岐点を超えると良い連鎖がつながっていきます。
まずは本に興味をもってもらうこと。いきなり読ませるのではなく、小さなステップを作るというのが基本です。
以上、最後までご精読ありがとうございました。
ディープフェイク
早嶋です。
ディープフェイク。ひと頃よりも紙面に登場するようになった言葉です。これは先日お話したシンセティックメディアを活用した悪用の総称です。記憶に新しいのは2019年にFacebookのマークザッカーバーグ氏が語っている動画がネットに拡散されました。更に、当時のトランプ大統領をバラク・オバマ前大統領が批判する動画が流れていました。しかしどちらともフェイク。シンセティックメディアを活用して、悪意をもって大衆操作目的、或は愉快犯的な手口として拡散されたものです。
この技術は一般の方々に普及しているようで知られていないと思います。そのため画像や動画は、多くの一般市民にとって、やはり信憑性が高いと考えられるかもしれません。例えば、選挙で悪用することも可能です。ある属性の方々が崇拝する人がいたとします。その人の画像を活用して、選挙に有意な発言をしてもらうのです。そしてその動画をSNSなどを活用して拡散します。まさに活用次第では様々に悪用できることがイメージできるでしょう。
ITの世界では、この手の技術は大概がポルノ業界から出始めると言われます。実際、そのような合成動画も18年頃より出回り世界的にも問題視されるようになっています。まぁ、技術が躍進する裏では常に何か困ったことが起きて、それが後から法などをベースに整備されるようになる。ということを考えるとしばらくはこの手のトラブルが続出することが予測できますね。
ディープフェイクの論点は3つあります。個人情報保護、名誉棄損、そして知的財産です。例えば、顔情報や音声情報を無断で借用してシンセティックメディアを活用するとこれは明らかに個人情報の観点からNGです。創られた動画により、著しくその個人が不利な立ち位置に置かれ経済的な損失を被った場合、名誉棄損になり、損害賠償の対象にもなるでしょう。そして、基となる動画やストーリーが誰か第三者の権利で守られている場合は知的財産を脅かす対象になるかもしれません。
法的な内容は専門家に譲りますが、現時点でグレーな部分が多いということは、その隙間をかいくぐり活用する企業や個人が続出することが予想できます。各々の倫理観に従って運用となると国籍や国民性、信条や性格によって運用がバラバラになるでしょうからとても厄介です。
シンセティックメディア
早嶋です。
AI活用の合成動画作成の技術が実用化しています。俳優の様々な表情データを動画生成AIに読み込ませます。それらを教師データとして学習を数万回から数百万回繰り返すことで、動作や表情に対して自然な顔の動き、目線の動き、唇とセリフの同期、そして表情の変化を作りだすことが可能です。合成された動画は広告や将来的にはドラマや映画などに活用が期待されます。
この分野、既に一部のニュースメディアで実用化されています。博報堂と英国のスタートアップのシンセシアがタッグを組んで日銀の金融政策について読み上げる仮想女性を創りだしています。こちらの場合は、実在の人物の顔、音声等のデータを基に分身を作成します。理屈では一度データを取得すると30分程度の短い動画であればすぐに作成できると言います。
現時点での契約では、データを提供した人物に対して俳優が本来受け取っていた対価を頂くことが出来るそうです。ここは将来の音声や動作そのものを売り物にしていた方からすると諸刃の剣になりますね。
本来の俳優業は時間を売っての商売でした。そのため撮影できる時間に限りがあり、断っているケースが多く存在していたと思います。またアクションシーンや物理的に撮影する場所に移動を伴う場合、その前後の時間も無駄になっていました。また、撮影する際も撮り直しや何らかの条件を一致させる必要があれば、当然に拘束時間も長くなったことでしょう。
それが、基本的に俳優の時間確保、場所確保、そしてスタジオでの撮影そのものが不要になるのです。このように考えると、基本的に俳優に支払う費用は同じでも、撮影の手間、編集の手間、移動やその他付随する費用を払うことを考えた場合、製作費の実に9割も削減できるといいます。
このような動画、シンセティックメディアはデジタル素材になるためコピペの対象になります。つまり同じ作品を無数に際限なく生み出すことができるようになるのです。すると、従来忙しい時間帯に登壇できなかったため、偶然にそのタイミングで空いていた俳優がフォーカスされるなどの、アナログであったからこその偶然のスター誕生なども少なくなるでしょう。また、元々能力があるけれども日の目に会えなかった俳優も登壇する回数が激減することになるでしょう。
更に、映像を5G などで届ける際に、受信側の人の感情などのデータをリアルタイムに交換できる仕組みがあるのであれば、配信するストーリーそのものを受信側の人に応じて物語や登場人物、エンディングのシナリオを変えるような配信も可能になります。従来は、違うパターンの動画を取るためにはアナログを駆使して物理的に同じ条件で撮影を重ねる必要がありました。しかし、シンセティックメディアを活用すると同じ動画データから異なる動画を創り出すこともリアルの作業を比較すると簡単になります。
デジタル化が進むと、俳優の世界においても頂点とそれ以下に分かれてしまう。後5年もすると日常的にこの技術も活用されるようになるのでしょうね。
【動画】戦略の基礎サンプル
本ページは、麻生教育サービス様、並びに関係者様向けのページです。
「戦略思考の基礎」
企業における戦略立案の基本的な考え方と事業の方向性を考える際の事業環境の分析の仕方をわかりやすく整理して理解します。本講座は①から⑥までの6回シリーズです。各回30分前後の内容です。レポート添削コースを選択の場合は、自社商品を題材としたレポート動画を視聴いただいてレポートを提出ください。
①戦略思考(戦略思考の動画視聴はここをクリックください)
戦略思考の基本的な考え方、戦略のゴール、戦略の本質について整理します。全6回の概要を掴みながら戦略思考に興味をお持ちください。34分の動画です。
URL:https://app2.gemediar.net/movies/preview/60e6f5ee-a6b0-4559-b4be-0806a0106aeb
②全社戦略
全社戦略と事業戦略の違いを改めて説明した後に、全社戦略で取り組む内容について説明しています。スタッフ部門やコーポレート部門、本社スタッフはこちらの動画を見ることをおすすめします。26分の動画です。
③成長戦略
戦略の概念に時間の感覚を取り入れます。事業ライフサイクル、アンゾフの成長マトリクス、事業ポートフォリオ・マネジメントの3つを整理します。38分の動画です。
④基本戦略
競争戦略や自社の進むべき方向を考える際の3つの基本的な方向性について解説しています。ポーターが中心に考える外部環境をベースにした戦略論、バーニーが中心に考える内部リソースを中心に考える戦略論、そして不確実な世の中にオプションを取り入れた戦略論をそれぞれ整理します。37分の動画です。
⑤環境分析
戦略立案する際に分析する手法を整理しています。環境分析の考え方を理解した後に、マクロ環境分析とミクロ環境分析の概念と分析手法を整理します。35分の動画です。
⑥戦略立案
最終的に自社が取るべき方向性を導き出します。戦略の方向性について理解を示した後、クロスSWOT分析、意思決定のイメージについて理解を深めます21分の動画です。
事後課題
戦略思考の基礎を見た上で、自社か他社を選択します。これまで習得した知識に基づいて、実際に環境分析からクロスSWOT分析を行い戦略立案の流れに取り組んでいただきます。
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