新規事業の旅95 情シス情事

2024年1月30日 火曜日

早嶋です。

企業における基幹システム。企業は日常的に単一から複数の事業を運営する。その中で様々な情報が飛び交い、経営者は日々意思決定を強いられる。基幹システムはそれらを企業で統合し経営資源をより効率的に活用する目的で管理活用する仕組だ。そのため基幹システムの活用は戦略と紐づくべきだ。

経営資源は、ヒト、モノ、カネと言われる。ヒトに関しては、人事評価や給与計算、日常的な仕事の報告から、顧客管理まで多岐にわたる。モノに関しても、購買管理、在庫管理、生産管理、需要予測など様々だ。そして、カネに関しては、会計財務、原価管理、に加えて人的資本経営の各指標の判断など、膨大な情報を日々企業は管理している。

コンピューターが企業の中に組み入れはじめたのは1990年頃だ。当時は、今と比較できないくらい高価で物理的に大きく処理速度も驚くほど遅かった。それでも全てアナログで行っている作業をコンピューターに置き換えることで劇的な進化を感じる兆しがあった。95年にマイクロソフトが基本OSを発売する前後から、個々人がPCを使う文化が浸透し始め、2000年頃から、大手企業や進んだ企業は1人1台のPC割当が当たり前になっていく。

企業のシステムや情報管理を行う部隊はPCの歴史とともに始まる。情報シスと呼称され、従業員が一定数以上いれば必ずある部門だ。当初は、導入した高価なコンピュータにデータ入力し、機材を管理するのが主な役割だった。しかし、2000年頃より、社員ひとりひとりにPCが配布されるようになり、その手配やフォローなどを行う部隊に変わっていく。やがて、オンプレのサーバーに様々なデータを詰め込み、管理し活用する動きが出てくるが、この頃より情シス部隊のアップデートに限界がくる。日常的な社内インフラの問い合わせや雑務に追われるなか、基幹システムのような構想が世の中に出始めるのだ。

2000年頃より増設された情シス部隊。メーカーや商社や金融等、日々のテクノロジーを活用して情報で利ざやを稼ぐ企業は情シスの重要性を理解して、戦略部門とセットで採用教育育成を続けた結果、中枢の部隊となっている。しかし多くの企業は2000年頃に出来た部隊の仲間が継続して、戦略とは無関係に総務の延長のような仕事として、重要な部隊にも関わらず陽の目をみない部隊となる。その結果、情シス部門の高齢化が進み、2010年頃より、新規採用を始めるも、社員が根付かない現象を繰り返す。

理屈はこうだ。情シス部隊に採用された新卒は、最新のテクノロジーを学び、それらを駆使して大学やマスターで取り組んだような仕組みの構築や将来の社会インフラを変える取り組みなどを期待する。しかし、明らかに新卒の研修でも配属先での業務もレベルが低く、マネジメント層や上司がそもそもデジタルを理解していない。あるいは、理解している方はごく一部で、全ての社内の業務が集中するので、新人の教育どころではないのだ。

こんなもんかとSNSで他の同期やメーカーの情シスのことを調べると、どうも違うようだ。自分が居る部署がそもそも外れなのだ。と思い、転職していく。

企業も2010年頃より、情シスを強化してデジタル化、近年ではトランスフォーメーションを加えてDX化を試みるが、そもそも戦略の理解と現場や現業の上流工程や下流工程を理解しながら、どこをトランスフォーメーションすると良いかを構想できる人材が少ない。更に、それらを近年のテクノロジーでどのように応用的に解決できるか、アンテナを張る範囲が圧倒的に少ないのだ。結果、外注先に丸投げしてしまい、社内で採用、育成、強化する取り組みが疎かになったのだ。

何事もどっぷり浸かって、2年、3年本気で取り組めば大手企業に務める能力がある方は、手法や勘所はわかるのだが、専門外と言ってSIerに依頼するのだ。その際も、全体の使用決めや職場や事業や業界の課題を整理して、最低限目的などを共有できれば良いのだが、それも丸投げ。

ということで、大手SIerも真面目に取り組んだら採算が合わないので、仕事を欲する協力会社1合に依頼、1号は内容がわからないということで実績があると思う2号に丸投げ。結果、フリーランスでガンガン動いている数人が仕上げてしまうも、表に出ずに、手数料だけ抜かれて誰も幸せにならない構図が数年経過するのだ。

そんなときに、オンプレミス、つまりソフトやハードを自前で調達して自社に設置する運用形態から、クラウドサービスが登場していき、また現場がついてこれなくなっているのだ。大手SIerも知恵のアップデートが遅れ、丸投げした個人や協力会社2号はクラウドを武器に、それぞれが提供する資格を取り続け、常に知識と知恵と経験をアップデートした結果、下剋上の世の中になっている。

基幹システムの構築は戦略そのものだ。企業が生産性をあげて事業を遂行し、成長をしたいのであれば、都度その仕組や評価方法などもアップデートしていく。ここに皆が気がついているが、デジタルの理解が少ない経営者や管理者が多い企業は、自社で構築している少し前のオンプレ中心とした基幹システムを、クラウド中心の仕組みに総入れ替えする意思決定も出来ないのが現状だ。

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