早嶋です。
リバースイノベーションの大前提は、富裕国のビジネスが1000円使う一人を相手にすることに対して、貧困国では100円を消費する10人を相手にする発想です。例えば、2010年の米国の一人あたりの年間国民所得は47000ドル。一方インドは3000ドルでした。どんなにインドが成長を遂げようとも、アメリカに追いつくには2世代くらいの時間がかかると言われています。それほど、一人あたりの消費する力に違いがあるのです。
この事実を良く理解しないまま、富裕国のトップは、貧困国も生活レベルが向上すれば富裕国で提供していた製品やサービスを求めるだろう。と考えています。しかし、これは落とし穴です。この発想が強いため富裕国で培ったビジネスを捨て、ゼロベースで貧困国向けのビジネスを行う必要性を微塵も考えることがないのです。
富裕国と貧困国では、私達が想像する以上にギャップが多く潜んでいるようです。このギャップを考える場合、性能、インフラ、持続可能性、規制、好みの5つを富裕国と貧困国で比較すると実態が見えてきます。
性能のギャップです。毎日の生活をやっとのこさ過ごしている貧困国の人々は、我々が当たり前と思っている富裕国での性能レベルを必要としません。その背景は、そこまでお金を払うゆとりが無いというのが大前提です。我々の発想では、ものが安い場合は、買い置きをしますが、貧困国ではその発想はありえません。その日暮らしの場合もあるので、使う分しか買わないのです。これは味の素やおむつ等、全てを個装販売している企業を観察すると良く理解できます。パッケージ1つとっても大きな違いがあるのです。
例えば、富裕国ではベスト、ベター、グッドという3種類の製品展開を通常は行なっています。
グッドな製品は80%の価格、80%の性能。
ベターな製品は90%の価格、90%の性能。
ベストな製品は100%の価格、100%の性能。
ですが、貧困国では、80%の性能自体が求めすぎとなる場合があるのです。従って、70%の性能を70%の価格で提供するのが妥当だろうと富裕国のトップは考えます。しかし、実際そのような市場は貧困国には受け入れられません。70%の性能でも十分すぎる、価格が合わないというのが理由です。従って途上国の人々は超割安な割に、そこそこ良い機能を持つ画期的な商品に飛びつくのです。富裕国の安いの感覚は、貧困国からすると10倍の金額であることを忘れてはいけません。
従って、金額の割にシビアであることは理解できます。品質にもやかましくなるわけです。そこで10%〜15%の価格で50%の性能を提供する、というのが貧困国の1つのベンチマークとなるようです。となると全くゼロベースの開発が必要になるということです。単に富裕国の品質を下げて価格を少しばかり下げるのでは追いつかないということです。そうゼロから始めることが重要です。
インフラのギャップです。富裕国に住んでいる限りインフラの不足を感じる機会は少ないです。しかし、短期間でも貧困国や途上国に旅行に行くと感じることがあります。日本では当たり前のことが当たり前ではないことを。例えば物理的な基盤である道路、電気、通信網、電車、バス、飛行機など。例えば社会的な基盤である学校、病院、図書館など。例えば産業基盤である銀行、裁判所、株式市場などです。
これら、いざビジネスを行おうと思って、インフラが整備していることを前提に考えていますが、無ければかなりの困難が待ち受けます。従って、企業が意識していない富裕国でのこれらのインフラは実は強力な資産となるのです。そして無意識のうちにこのような強力なしっかりとしたインフラを前提に製品やサービスを開発提供しています。従って、このギャップの認識は極めて重要です。ただ、プラスに捉えるとこのようなインフラがないことを前提にすると、今まで考えなかったことを考えるようになるという意味では新しいイノベーションの機会が沢山あるとも考えることが可能です。
例えば、貧困国が始めてインフラを建設する場合、富裕国の最新の設備をベースに投資開発が行われます。富裕国の場合、インフラの整備が既に終わっている理由で、最新の設備があったとしても一気に回収することは出来ないので、古いインフラを活用せざるを得ない状況も多々あります。また、一部の開発を進めたとしても過去の古いインフラとの互換性があわずに中々進まない。ゼロベースで行ったほうが早いのにそうもいかない。そんなジレンマも観察できます。その意味では未発達という点から一気に躍進する可能性が高いのです。実際、貧困国でも一部の栄えた都市に行けば最新鋭のインフラで固められた街を観察することが可能です。
持続性のギャップです。経済活動と環境問題は切り離すことが難しくなっています。貧困国では環境のことまでを考えて経済活動を発展さえる余裕がないので、結果的に環境破壊が進むことも考えられます。この事例は中国の大気汚染を見るとよく観察できます。これがベースで中国は早い時期から大気を汚さないための移動として電気自動車に力を入れてきました。貧困国富裕国に関わらず地球の環境に対して高い付加がかかる方法で経済活動を続けると、いつしか限界がくるでしょう。そして、それは映画の世界にみるような最悪の結果となるでしょう。これらを考えると、今後貧困国を含めた多くの国々が経済活動を続ける大前提は環境負荷が少ない地球にやさしいソリューションに限定されるようになるでしょう。従って、新興国、貧困国でのビジネスに環境負荷を考えた技術やソリューションは今後も継続的に成長する分野の1つになるでしょう。
規制のギャップです。競争が無ければ成長はない、イノベーションも生まれない。従って、規制をかけることは短期的に見て国益を守ることにもなりますが、長期的に見て規制はマイナスの方向に導くことも考えられます。通常、貧困国は政府の整備も遅れているため、規制がゆるやかな場合が多いです。従って、規制の影響を受けない、結果的により早い時期に新しいイノベーションが導入される可能性が高くなります。
嗜好(このみ)のギャップです。これは国や地域毎に異なる味覚や習慣、儀式などの多様な文化からくるギャップです。これらは日常的な食事の味から、思わぬ儀式までありとあらゆるギャップが存在します。フィリピンでは氷を食べる習慣があるので冷蔵庫の設計では冷凍室が大きくなります。韓国ではキムチ専用の冷蔵庫が売れます。イヌイットの民は冷蔵庫は、凍らせないための器械と解釈しています。外気温がマイナス40度まで下がるからです。インドでは機械は音がするものだという認識が強く、空調の静音バージョンは人気がありません。
上記のように、性能、インフラ、持続性、規制、そして好みのギャップから分かるように、途上国や貧困国の消費は未だに解決できていない課題がゴロゴロ転がっています。一方で、そのような国々は富裕国が数十年前の発展するフェーズで体験したことのないような最新技術と隣合わせの世界があります。
富裕国のビジネスの感覚で行くのではなく、その国にあったゼロからのビジネスが必要なのです。リバースイノベーションの著者はこの状態を白紙状態と表現していました。
参照:リバースイノベーション
2012年10月 のアーカイブ
ゼロから開発する理由
リバースイノベーション
早嶋です。
リバースイノベーションとは、途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させるというコンセプトです。従来の流れと全く逆なのでリバース。この概念は、昨今大きな破壊力を生んでいます。
日本の経済が成熟している。これは米国、ヨーロッパも同様です。このような状況の中、企業が更に利益を求めると、必然と海外の市場に目が行きます。互いに先進国同士が市場を進出しても、そこには激しい戦いがある。そこで、どの国の企業にとっても途上国は魅力に感じる。世の中の前提として、このようなことがあります。加えて途上国の経済は破竹の勢いで成長しています。誰もがビジネスチャンスを感じるのはごく当たり前の発想です。
途上国の可能性はIMF(国債通貨基金)の経済指標を見ると明らかです。直近の指標で、人口は中国が1位、インドが2位。世界の人口の85%の58億人が貧困国で生活しています。GDP(国内総生産)は中国が2位、インドが4位。貧困国のGDPは世界のGDPの約半分をの35兆ドルです。また、貧困国の経済成長率の平均は軒並みここ数年連続で富裕国のそれを常に上回っています。多くの専門家の予測では、今後数十年で、世界のGDP成長の2/3を貧困国が占めると予測しています。
リバースイノベーションを成功させるためには、大きな落とし穴を解消することが必要です。それは、新興国市場で勝つためには、単に事業を地理的に展開するだけではいけないということです。途上国のニーズは明らかに富裕国と異なります。従って、そのニーズがまずはどれだけ異なるのか?を明らかにして、そのニーズにフィットしたゼロベースのビジネスを展開する必要があります。
これは一人あたりのGDPを見ると明らかです。先ほど出た中国、インドは直近の数字で94位。この位置は、ボスニアヘルツェゴビナとエルサルバドルの間です。インドは128位でカーボヴェルデとベトナムの間です。そう、その違いとは消費する一人あたりのお財布事情です。この違いが天と地の差を生み出しています。
富裕国では毎日大金を費やす人が少数いますが、貧困国は毎日少額のを費やす人が大勢いるということです。つまり国ごとの総額でみれば同じなのですが、貧困国は、マイクロ消費者がいるメガ市場なのです。従ってビジネスで解決する課題が異なってきます。
1000円使う人が一人いる場合と、100円使う人が10人いる場合。ウォンツやニーズは全く異なるでしょう。従って、富裕国の製品やサービスをそのまま貧困国に持っていっても大きな効果を得ることが出来ないのです。多くの先進国企業が高度成長を続ける貧困国で成功を目指すのであれば、売上、流通、生産を増やす以上に、現地にフィットしたイノベーションが求められる。それがリバースイノベーションなのです。
参照:リバースイノベーション
プチ達成感
早嶋です。
ソフトバンクの孫さんがスプリント買収直後に「自分自身まだまだ追い込んでいない、守りに入っている。」と話したそうです。孫さんレベルであってもまだまだ。となると私なんか全然ですね。
孫さんだけではなく、多くの方々が持った感覚かもしれません。考えてみると日本の経済が伸びているときは、頑張りがそのまま何かの形で返ってきました。例えば成果に対しての給料です。しかし、今は努力をしても、それがなかなか目に見える形で返ってきません。
飛躍した仮説かも知れませんが、山登りやランニングが流行っているのも、その成果がそのまま返ってきて達成感を必ず得られることが大きいかも知れません。そういう意味で、閉塞感を持った方々から支持されているのかも知れません。
何事もそうですが、自分が行ったことに対しては何らかのリターンがあれば嬉しい。マラソンは必ず努力した形で自分に返ってきます。そのようなプチ達成感を積み上げていく行為が今の時代にフィットしているのかも知れませんね。
マズローの6つ目の欲求は、世の中が成熟していくと同時に出てくる欲求かも知れません。NGOやプロボノなど、社会に貢献を求める。自分の力が目に見える形で帰ってくる取り組みに自分を持っていく。この動きはますます激しくなると思います。
男女の購買比率
早嶋です。
男性の存在感がかなり希薄になっています。かつては男性社員が世の中の消費を延引していた次期もありましたが、今はまさに濡れ落ち葉状態。女性購買シェアが高まり、流通各社も女性にフォーカスした戦略転換に切り替え始めています。
その背景は女性の可処分所得の減少でしょう。統計を見ると男性と比較して女性の可処分所得が減少しており、消費性向もあまり上がっていません。結果、これまで目を向けなかった低価格業態に消費がフォーカスされつつあるのです。コスパの世界は男性の牙城でしたが、悲しいことか、女子の勢力も高級よりも低価格に向かっているということです。その結果、コンビニ、ドラックストア、低価格化が進むビール、居酒屋など、元祖おじさんの聖地に切り込み始めているのです。
この傾向は一時的なものではないので、企業としての対策も長期的に取り組む必要があると思います。がっつりと高級品を買い漁るちょいワルオヤジとニキータのセット。一体何処にいったのでしょうか。寂しい限りです、
では、実際の男性と女性の購買比率を見てみましょう。例えば、コンビニ。女性客比率が40%〜45%に増加しています。コンビニと言えば男性客が7割を占めていた業態でしたが、ここ2、3年は急速にその差が埋まりつつあります。単身女性の増加、共働き世代の増加など、女性の増加を支える社会的な背景も経済に確実に影響を与えています。
ドラックストア。このジャンルには女性客が8割。コンビニはこれまでドラックストアとの連携を強化してきました。背景は男女比が異なり共に補完関係になっていたからです。今後、女性の進出がコンビニの世界に進めば、この関係は崩れる方向に向かうでしょう。
マクドナルド。男性客が多いイメージですが、今ではその比率がとんとん。スタバ、こちらも男性と女性の比率を比較すると若干女性が押しています。アルコール。10年前は男女比が7対3、が今では6対4と女性の勢いが増しています。ビアガーデンも女子会の勢力範囲になっており、おじさんのパラダイスから女子会の聖地へと転換を遂げています。
使う人、買う人、決める人
早嶋です。
DMUとはDecision Making Uniteの略称で意思決定主体と訳されます。通常、顧客と捉えても、買う人、決める人、使う人に分けることができます。また、これらの行動に対して重要な情報提供をする主体もいます。情報を出す人です。
例えば、缶ジュースなどを自動販売機で買う場合を考えてみましょう。喉がかわいた人が自動販売機の前に行きます。そして、自動販売機のメニューの中から好みのドリンクを選びます。そして、そのまで蓋を開けて飲み干します。この場合、決める人=買う人=使う人になります。情報を出す人は、その人に対しての影響力が強い人ですが、広告やCMなどのマス媒体から商品のパッケージまで特定することは難しいでしょう。
例えば、ベビーカーを買う場合を考えてみましょう。夫婦で色々なベビーカーの検討をした末、ベビーカー売り場に行きます。そして、ベビーカーを買います。多くの場合、決める人はお母さんでしょう。そして、買う人はお父さん。実際に使う人はお腹の中の赤ちゃん。この場合。決める人≠買う人≠使う人になります。また、ベビーカーの選定に対してはお母さんのお友達や子育て中のお母さんなどの評判や口コミが決め手になる場合が多いです。従って、情報を出す人はママ友となるでしょう。
このようにDMUの切り口で顧客を分けることで、誰に対してどのような情報を提供すると良いのか?それぞれのDMUが欲する情報や購買の決め手となる要素は何か?を検討することができます。顧客と大きく捉えるよりも、上記のように分けて考えることで自社のマーケティング活動に活用できると思います。
地方の葬儀屋さんで、上記をベースに将来の需要を掘り起こしている企業があります。葬儀の場合、大きく2つの需要があります。本人が急になくなり、その家族が葬儀の準備をする場合。本人が生前から準備を進め、自分の意思を反映させた葬儀を行う場合です。前者の場合の決める人は故人の家族です。葬儀屋さんを決定する要因も、前者の場合はコントロールすることが難しく、たまたまその家族関係者とつながりがある葬儀屋さんに決まるか、地元の葬儀屋さんと提携している病院等の紹介などと、情報を出す人と葬儀屋さんの関係性がとても重要です。
一方、故人が生前から自分の葬儀の在り方を保持している場合、故人の意思が強く反映されます。そこで、その地方の葬儀屋さんは、大手が地元の病院や関係者と密な関係構築を行なっている時から、高齢者の方々を中心にワークショップを実施しています。その名も友引の会。毎月友引の日に集まって頂き、葬式の話や様々な葬儀の在り方について見識を広めるためのワークショップです。葬儀の話に加えて、お坊さんから葬式の話があったり、花屋さんから葬儀の時の花の話があったり、1年間を通して、葬儀に関わるあらゆる関係者の方々が、葬式について情報共有をする会です。友引の会の由来は、葬儀は友引には行わないということから、その日を利用して、将来のお客さんに情報提供をしているとのことです。
このワークショップによって、生前から自分の最後をどのようにしたいのか?に興味を持って頂き、事前にそのシナリオを考えてもらうのです。本人にとっても、自分の最後を自分の行いたいようにすることができる。このようなことに理解を示す高齢者の方が多く、当初は数名しか集まらなかったワークショップも今では毎月30名から40名位が定期的にあつまります。現在、コミュニティーに参加している高齢者の方々は500名前後にのぼるそうです。
葬儀の場合、故人の意思が明確であれば、その方の意思が尊重されます。そこで、その方々が故人になる前にじっくりと葬儀のことについて考える時間を共有する。葬儀屋さんから本人に事前に情報提供をすることで、決める人=使う人の構図を構築しているのです。葬儀。一見、ネガティブな要素に思われますが、その葬儀屋さんは真摯に取り組み顧客と共に最後を考える。非常に素晴らしい理念を持つ企業だからこそ取り組める発想だと思います。
傘レンタル
早嶋です。
今朝乗ったラッキータクシーに「傘レンタル」なるステッカーが社内に貼っていました。
雨の時、傘の持ち合わせがない場合、200円のデポジットで傘を貸してくれるサービズです。200円の傘は次回、タクシーに乗る時か、ラッキータクシーを見かけた時に傘と交換で200円が戻ってくる。例えば、タクシーを利用した場合は、運賃から200円差し引かれ、タクシーを利用しないで傘を返すと200円戻ってくる仕組み。
先月から導入したサービスだそうですが、数人が既に利用して、実際の別のタクシーで借りた傘が戻ってきているとか。
これって、幾つかのポイントで良い仕組みですね。
◯ラッキータクシーに次も乗ろう!というインセンティブにつながる。
◯運転手さんとしては顧客と気軽にコミュニケーションを取るきっかけになる。
◯雨の日しか乗らなかった顧客に晴れの日の利用を促すことにつながる。
因みに、買取の場合は500円で1台に5本置いているそうです。
copy exactly
早嶋です。
ビジネスの本質は違いを作ること。ですが、これは大企業の話。初めのアーリーステージは違いを作ることなんて結構タフ。むしろ、何かのビジエネスを徹的的に模倣することから始めても良いかもしれない。タリーズとスタバの違いは何ですか?家系ラーメンの元祖はどこですか?戦国焼とりのオリジナルは?
確かに自分の独自性は必要ですが、その地域やあるカテゴリーにおいてその企業しかなければ隙間を埋めることは可能です。例えそれが完璧な模倣であったとしても。自分のオリジナルや差別化を考えるのはその先の話であっても構わないとおもう。アーリーステージの起業の場合。
武術で言う守破離に近いでしょうか。まずは小さく始めてお手本通りにそっくり実践する。ここで重要なのは変にいじくらないで基本に忠実に行うこと。そう、まるごとコピー。良くない思想は、はじめから風呂敷を広げすぎて行動が先送りされること。どんなに机上で考えた所で初めないとことは進まない。アーリーステージでのポイントは感覚をつかむこと。実際に紙の上で考えたことを小さくても始めれば、見えなかったことが確実に見えてきます。考えていなかった視点がどんどん整理されるでしょう。逆にいきなりたいそうなビジネスモデルを実現しようとするとコスト(お金、時間)ばかりがかかってしまって、ブレークイーブンがかなり先になります。体力があれば問題無いでしょうが、多くは力尽きて潰れることが多いでしょう。
ビジネス・スクールを出た学生はある意味洗脳されているかも知れません。ブックマートになりすぎて、ストリートの感覚が無い。ある程度、おおきなビジネスはそもそも大きな仕組みの中でキャッシュが回っているので、何か新しいことを始めても体力があり、一定期間は生き延びることも容易です。しかし起業はストリート・スマートの感覚が生きてきます。忠実に何かを真似しながら感覚をつかめた所で徐々に自分の強みを発揮していく。
そもそも、起業した当時は自分の強みなんてめっきり分かっていない場合が多いでしょう。これも小さく始めながら相対的な強みを整理していく。違いをつける発想は、破のプロセスですね。徐々にそして、勢いが乗ってきた時点で基本から離れていく。そう、オリジナルが生まれる瞬間です。
新しい起業の話が沢山やってきます。多くの方がMBA出身です。その場合、やっかいです。独創的、差別化、というキーワードが一人歩きしています。しかし、その本質は一体何なのでしょうか?だれにとっての差別化なのでしょうか?さっぱり意図が見えません。ということが多いです。世の中には独創的なアイデアのほうが少なく、自分が思いついたことは既に先人の手でビジネス化されていることが多いです。だったら、そのモデルをまずはコピーする。そんな発想は、MBAでは学びません。所謂セオリーから外れるからでしょうか。
だからシナリオとしては極めて面白いのですが、投資する気にはなれません。別のパーティーが仮に投資したとしても、途中で絵に書いた餅になることが確率的にも多いです。
ビジョンを持つなということではありません。大きくビジョンを持ち、自身のミッションを追求する姿は必要です。しかし、小さく始める感覚で、自分の頭を実践して行きながらブラッシュアップすることも大切です。実世界の感覚がとぎすまされて行きます。仮に、この段階で失敗してもリカバリーも早いです。実現しながら、行動しながら、失敗しながら、ブラッシュアップして考えを研ぎ澄ませていく。ビジネスプランをブラッシュアップしていく。いきなり10億、100億を目指すのではなく、初めのふぇーずでは兎に角、一人分、1000万円くらいを稼いでみる。
その次に、自分のスタイルを考えたら、きっと効率的にビジネスができる可能性が高くなるおと思います。こんなストリート・スマートの要素が入ったMBAも有りだと思います。
民主主義と選挙と企業
民主主義を支える重要な側面の選挙。ことが上手く運べば自由で公正な選挙が実現されますが、一方で体裁だけの選挙が行われることもよくあります。
選挙と政党の資金繰りは関係が深いと思います。これは米国のみならず他の民主主義国家で観察できます。資金繰りを最も効率的に行うには、組織的に利益の追求を行なっている機関と手を組むことでしょう。つまり、政治と企業のつながりです。
悪い言葉を使うと、仮に政治家、政党、マスコミ、シンクタンク、コンサル会社、など、政治に関わるすべての組織を買収することができれば企業としては実利を取るために非常に都合がよくなります。しかし一方で企業は政治の世界から離れたいという思いもあります。ここはジレンマです。政治を悪く利用することを前提として、仮に企業が政治を悪用したとします。そうしなければ他社や競合が手を染めてしまうから。やらなければ自分は不利な立場に追いやられる。
極端に書きましたが、マイクロソフトやGoogleなどの組織だって当初は政治と離れたところで活動していました。しかし、今ではワシントンDCと関係を持たなければ自分達や業界のビジネスが危うくなります。従ってロビー活動の拠点としてワシントンDCに事務所を出す必要性を感じています。仮にEUがビジネスの拠点であれば企業は欧州会議を無視することはできません。例えば製品の安全性のルールが少し変わっただけである企業は利益の源泉になり、ある企業にとってはそれによって採算が割れてしまう可能性がでてきます。
政治の動きは、その地域の内側だけではなく、内側と外側の貿易にも大きな意味を持ってきます。政治の在り方によっては一部の団体のみが潤う仕組みになり、または全員が利益を享受する仕組みになるかも知れません。一部では一企業だけの動きでは弱いので企業が集まって組織化して政治との関わり方を調整している動きも多く観察できます。
電子書籍と出版社
早嶋です。
日本における電子書籍の市場規模は2011年で約630億円。その内訳はガラケー向けが480億、PC向けが37億、電子書籍端末やタブレットPC、スマフォ向けが112億です。全体のマーケットは2010年ni
約650億円と減少しているものの、電子書籍端末やタブレット、スマフォ向けは88億円も増加していることです。この傾向は2012年以降も続くでしょう。
現在、電子書籍のダウンロード数はアップルストアがダントツです。背景は、電子ブックリーダーの普及の遅れがありスマフォが優勢になりつつあることです。ただ、アマゾンのKindleやKoboの日本参入で状況が一気に好転していくでしょう。2016年度には市場規模自体が今の3.6倍の2000億円規模まで推移するというのが業界の見方です。
株式会社エムティーアイの2012年9月の調査(電子書籍の利用動向に関する調査)によると、電子書籍の利用経験は男性で63%、女性で53%。年齢別では20代前半は73%で60代でも39%が経験したことがあるそうです。最も多い層は20代前半の女性が75%ですが、幅広い層に指示され始めていることが分かります。
電子書籍市場の先進国はアメリカ、韓国です。韓国はネット接続では先進国です。平均的な国の7倍の帯域をもつブロードバンドのインフラが整備されています。また、政府は2015年までに国内のすべての学年と教科で教科書を電子化する計画を発表しています。既に2008年より数百校の小学校でテスト的に実験が始まっています。現在、韓国での電子出版の普及は出版し上の2割程度ですが、教科書が電子化された世代の子供は紙で本を読むことに抵抗を示すようになるでしょう。従って、一気に紙から電子書籍に巻き返す瞬間が2020年ころまでには現実の話になっていると思います。
米国でも同様の動きが進んでいます。従来の紙の教科書は高価でプリンティングコストもバカにならないということで電子教科書への以降の期待が高まっています。米国で教育ビジネスを手がけるXplana社の報告では、2010年度の高等教育の教科書に絞める電子教科書の割合は1%程度。しかし、様々なタブレットPCの普及と電子ブック端末の登場で今後の電子教科書の成長は確実です。同社は2014年の電子教科書の普及を全体の2割と予測しています。
この動き、遅かれ早かれ日本にも押し寄せてくると思います。電子書籍が先か電子ブックが先かはわかりませんが、アナログカメラがデジカメになったように、CDがiPodになったように全く構造が変化するビジネスモデルの戦いが繰り広げられます。実際、アップルストアの電子ブックのコンテンツを提供している企業のバックグラウンドはIT企業。出版社が提供しているコンテンツはごく少数です。
となれば、現在4300社程度ある出版社にとっては大打撃です。また、出版を取り次ぐ日販やトーハンの仕事も激減するでしょう。加えて、街の本屋さん。電子出版の普及とともに、小さな書店は雑貨屋別の差別化で生き残れなければ非常に厳しいでしょう。小規模で2階建程度の書籍は最も中途半端な経営になるので継続出来ないところが続出するでしょう。一方、大型の書籍もランニングコストを維持するこが難しくなり、ますます再編が加速されるでしょう。出版社で体力がないところはも打撃を受けるでしょう。ただ、有望なコンテンツを持っている出版社は電子書籍を販売するIT企業にM&Aされる可能せもあります。
どちらにせよ、アナログの世界の書籍業界は大きく絵図が書き換えられるのは間違い無いと思います。
人口と経済
早嶋です。
ドラッカーは、その多くの論文で人口動態から未来のストーリーをつむぎ出すことを言っています。唯一、未来を読める先行指標なのです。人口ミラミッドをみれば将来、その国の経済がどうなるのか?ある程度、予測ができると思います。
例えば、出生率の低下は、人口を構成する年齢層のバランスを変化させます。一方で急激な人口の増加もしかりです。
欧州と米国では、1946年から1964年にかけてベビーブーム世代が形成されます。この世代が幼少期の頃、国家は教育や様々に子供が必要とする資源を提供するために巨額の投資を行いました。歴史を見ると、この時期を迎える家庭は子供が沢山いる一方で、祖父母の数が少ないです。これはまだまだ平均寿命が短い時に生まれているからです。更に、女性は家に留まって家族の面倒を見る場合が多かった時代です。
同じような観察は、1970年代のアジア、現在のアフリカでも観察できます。ベビーブーム世代が成長して労働人口の仲間入りを果たすと、国家は約40年に渡り反映しています。この40年間に、少子高齢化がスタートして、家族の構成人数が減少します。一方で所得が増加していき、大きな中産階級が誕生します。それから平均寿命が急速に伸びていき、社会に大きな変化が現れます。離婚の増加、晩婚化、独居形態の増加等々です。
そして、この世代の方々が老齢期を迎えると今度は一気に経済が悪化していきます。大きな老齢人口を比較的に小さな後継世代が支えなければならなくなります。国が不安定になり高齢者の不安が増大します。まさに今の欧州や米国、そして日本がこの時期に該当します。そしてこの状況は2030年ころよりアジアでも経験することになるでしょう。
ドラッカーの言葉とおり、経済の行方は人口形態の動向に左右されていくのです。
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