香りとマーケティング。以前もこのような内容でコメントをしました。
その中でプルースト効果なるものがあります。マルセル・プルーストの長編小説「失われた時を求めて」の一節で主人公がマドレーヌを紅茶に浸して立ち上る香りをトリガーに少年時代を鮮やかに思い出しました。
このように香りには脳に蓄積された記憶を引き出す役割があるのかもしれません。実際、脳には情動を司る扁桃体という部位があります。好き、嫌い、快、不快を感じる本能的な機能が香りを嗅いだ事をきっかけに脳の中で処理されているのです。
味覚や触覚は他の感覚情報を経由しており、香りだけが扁桃体と直接かかわり、なんらかの情動を想起させる事が分かっています。
これって今後、企業の香り、商品の香り、を嗅ぐことによって、消費者が購入を通して面白い、嬉しい!と言った記憶を思い出す事ができるように意図的に仕掛けられるかもしれませんね。人が想像できる事はだいたい、どこかの企業が行っているモノ、実際、センツ・マーケティングというカテゴリで徐々に研究、実用化されています。
早嶋聡史
2010年1月 のアーカイブ
香りとマーケティング
セミナー報告@首都大学
本日は、首都大学のオープンセミナーで1日、戦略についての議論をさせて頂きました。参加者の皆さま、お疲れ様です。
もう必死で走らなきゃ
Alice in Wonderland(不思議の国のアリス)がまもなく公開されますね。シリーズの鏡の国のアリスの一節に、赤の女王が次のように話しています。「ここではね、同じ場所にとどまるだけでも、もう必死で走らなければならないんだよ」と。アリスを叱りつける場面です。
現在の世の中を考えてみます。マーケットのシェアを優位な状況で取っていたとしても、ぼーっとしていたら、すぐに追い越されます。同じポジションをキープするだけでも努力が必要です。仕事をしていても、同じ立場を維持するだけでも、努力しなければ他に追いつかれるでしょう。
昔は良かったかもしれません。しかし、今では敵は社内ではなく、社外です。そして、競合は国内だけでなく世界です。そして競合と思っていなかった業界や企業や組織までもが的に成りうる世の中です。
鏡の国のアリスで出て来た赤の女王の発言。まさに、今の世の中にもそっくり当てはまりますよね。世の中は絶えず変化している。そのため、その中でうまくやっていくためには、個人もそれなりに変化しなければならないと思います。これはマーケティングにおいてもあてはまります。
世の中の変化、市場の変化、消費者の変化。どのように時代とともに伴奏するのか?常に変化の先にあるもの、変化の先に何をするべきか?予測しながらその変化に対応するべき行動を取る必要があると思います。
先日、センター試験が例年のように日経に掲載されていました。数学、物理、英語の問題を解いてみました。案外解けます。というのもパターンが私が受けた時と全く変化していないからです。センター試験は大学に入学する時のひとつの評価軸。世の中がこれだけ変化しているのに、その評価軸が変化していない。何か、将来の日本にものすごい恐怖を感じてしまいました。
早嶋聡史
再建のシナリオに思う
本日は朝から長崎で仕事でした。
さて、「JALと支援機構の再建計画によれば3年後の営業利益は1100億円以上」としていますが、実現は厳しいと感じます。
再建計画の大きな方向性は、「安売りを前提として利益を出す計画」と読み取れます。この方針は問題だと思いす。公的資金を注入したJALが値下げをすると、競合であるANAも追随して価格を下げるしかないからです。飛行機に乗る人にとっては嬉しいかも知れませんが、無理な競争が働けば企業は苦しむだけで共倒れの可能性だってあるでしょう、勿論、最悪のシナリオですが。これに対してANAのトップは、国土交通省に対して公正な競争条件の確保を要望しています。極めて正当な要望だと思います。
欧州には公的資金を受けた企業は不正に価格を下げられない規制があります。しかし大手2社しか存在しない日本にはそのような規制は有りません。政治主導を掲げている以上、上記の競争に関わるルールを明らかにするべきでしょう。
そもそも政府が関与する目的がいまいち不明な気もします。もし国の介入が正当化できるとすれば、1)銀行の公的資金のような連鎖倒産を防ぎ金融システムを守る目的、2)GMのように従業員が多く地域経済に多大な影響を与える場合、3)一企業でなく国が産業自体を強化する場合、などがあるでしょう。
今回のJALの支援はどれにも該当しないと思います。となれば過剰な支援といわれてもおかしくありませんね。オプションとして、法的整理ではなく、私的整理でも良かったと思います。公的資金と債務放棄額が少ないからです。また、破産処理も可能だったのではないでしょうか。実際、過去米国のパンアメリカン航空では破産処理を選択しています。効率の悪い企業は一度、退場するという考え方を取られたのです。因みにパンアメリカン航空は、JAL同様、国を象徴する航空会社でした。
上記意をぜーんぶ譲っても、やはり企業年金の話は甘すぎます。昨年の暮れにまとめられた支援機構の計画と比較して、今後の計画は公的資金の額も銀行の債権放棄額も大きくなっています。勿論、公的資金は我々が負担するお金です。しかしながら、企業年金の削減幅は退職者で約3割、現役で約5割のままで、ステイです。やはり違和感を感じますよね。
早嶋聡史
隙間時間を科学する
隙間時間を科学する
これまでビズ・ナビ&カンパニーは20社くらいのクライアント企業に対して営業コンサルティングを提供させて頂きました。そのメニューの中で必ず行うのが営業パーソンの時間の使い方調査です。
といっても難しい分析では無く、夏休みの子供の宿題のように、1日の時間の使い方を2週間にわたって調査するのです。そして、その結果を集計して、営業パーソン毎の時間の使い方の特性を分析します。
出社から退社までの時間をざっくり3つに分けて分析します。社内、移動、商談です。「社内」の時間には、打ち合わせ、会議、資料作成等の事務作業を全てひっくるめます。この仕事はキャッシュを生むかと言えば直接出的ではないので、+か-かを評価した場合、±0です。
「移動」の時間は、営業先までの移動にかかる全ての時間をひっくるめています。こちらもキャッシュを生むのか?と言えば、どちらかというと時間と経費を消費するので-ですね。
そして「商談」です。この時間は、営業パーソンが顧客と接する時間全てをひっくるめます。そして企業がキャッシュを生み出す最も重要や時間でもあります。勿論、その意味で+です。
勝手に+、-、±0と書きましたが、重要なのは、上記の3つに時間の使い方を分類した時の割合です。多くの人が、「商談」が一番多い事を予測するでしょうが、出来ている営業パーソンで3割、平均値で2割にも満たないのが現実です。そして、驚く事は「移動」の時間が最も多くなることです。
理由はいくつかありますが、メジャーな項目は、およそ次の3つに集約されます。
1)その週の客先のアポイントを月曜になってから取る
2)営業活動の管理が極めて短期である
3)営業活動を客観的に指導・評価する管理者が不足している
1)その週の客先のアポイントを月曜になってから取る
解決策としては、単純で営業パーソンの手帳を必ず2週間先まで埋めてもらうように行動を変化させる事です。お客さんにもスケジュールがあります。週の初めにアポイントを取っても、こちらがコントロールできる事はほぼ無いでしょう。そのため、お客さんの時間に合わせた行動になるので、無駄な移動が生じたり、隙間時間が生じたりします。その時間にパソコンを開いて仕事をする!といった言い訳も聴きますが、実際、その隙間時間を効率的に使って仕事を出来る人は、初めからそのような計画性のない行動をしないのが現実です。
2)営業活動の管理が極めて短期である
企業の会計単位が短くなるにつれて、営業の管理期間も短くなっています。しかし営業を開始してから受注を取るまで、やはりある程度の期間が必要です。ましてや法人営業の場合は、お客さんの経営計画に沿った活動が必要になるため、やはり営業パーソンの管理方法もある程度長期的にする仕組みが必要でしょう。この取り組みは企業と業種によって若干異なりますが、長期的な目標と短期的な目標の両方で営業パーソンのパフォーマンスを測ることがポイントです。
3)営業活動を客観的に指導・評価する管理者が不足している
これは営業管理者の問題です。営業パーソンに対して、とにかく数字をあげろ!といった実質的に無意味な発言しかしていない、営業パーソンが外でどのような活動をしているか全く把握していない、どのように営業をしていったらよいのか?自分自身が理解できていない。など、理由は様々でしょう。しかし、営業活動は確立です。着実に売り上げにつながるための経過目標を設定して、その目標をクリアしなければ次に進む事は出来ません。
イメージは野球です。点を取るためには、1塁、2塁、3塁を踏まなければホームに戻る事はできません。勘違いが多いのは、出来る営業パーソンは個々のプロセスを無視しているわけではなく、1塁から順にホームまで戻るプロセスを早いスピードでこなしているのです。となると、営業管理者は、個々の営業活動を上記のようにプロセスに分解して、どのタイミングで何を提供して、何を聴きだすのか?などの行動を示す、といった指導をする必要があるのです。
早嶋聡史
男前なポメラの思想
キングジムのポメラ。良くマーケティングされた商品だと思います。ポメラは、文庫サイズのケースに折りたたみ式のキーボードとモノクロ液晶がついただけのシンプルなメモ帳です。ただしデジタル。
一言で表すならば「デジタルメモ」、テキスト入力に特化したデジタルメモです。
そもそも何故このような商品が生まれたのでしょう?開発者のインタビューを見ていると、次のような事がきっかけのようです。
「カバンの片隅に入って、テキストだけ打てて電源の心配をせずに使えるものがないかと、常々モヤモヤしていました」そこで、「毎日のように行うミーティングを記録したり、ちょっとしたアイディアを打ち込める手軽なツールがあったらいいなぁ」「手軽にデジタルメモが取れる何かないかなぁ」と。
ポメラは、見事上記の困ったことや、こんなのがあったらいいなぁ、を形にしたソリューションですね。
以下、ポメラのマーケティングミックスを見ていき、その後、今後の改善等や展開の方向性を考えてみました。
【商品】
デジタルメモのコンセプトを実現するために、手軽さと電池の持ちは工夫されています。サイズも370gの文庫サイズ。どこでも持ち歩けて、何時でも使える。それが20時間の駆動時間というスペックに落ちついたのでしょう。
特徴は2つの安心感でしょうか?1)1日4時間使っても5日間はOK、つまり1週間は電池を交換せずに使えるという安心感。2)単4電池2本という電源構成は、どこでも手に入る!という安心感を提供しているのでしょう。
ポメラのディスプレイは、今時珍しいバックライトの無い反射型モノクロ液晶です。しかし、コントラストが非常に高いため、暗いところでも十分に使えます。キーボードはパンタグラフ式で折りたたみ可能な仕組み。キーピッチは約17mmでキーの横幅を均一にすることで打ち間違えをしないように配慮した設計です。タッチ感も適度にクリック感があって打ちやすいです。
ポメラはデジタルメモですから、云わば書く道具です。そのため耐久性は、2万回以上の開閉テストにたえ、一般のノートPCと同様の鍵数に耐えるようキーボードです。それから、75cmの高さから6面のどこから落としても大丈夫という落下耐久性も保持しています。
外観は、本体の補強も兼ねた天板・鏡面仕上げ。きょう体にはラバー塗装を施して、毎日持ち運びたくなるような質感にしているところもにくいです。
【価格】
価格帯を考えるときにネットブックの存在を意識しているようです。そのため2万円を切る価格というのが当初のゴールだったとこ。結局、発売価格は2万7300円でしたが、部材の質や耐久性などを考慮した結果、どうしても2万円を超える価格になってしまった、というのが実のところのようです。ただし、価格コムで見て見ると実売価格は2万円を切り、最安値で1万5000円くらいのものも出ていました。結果的には目標の価格をクリアしているのです。
【流通・プロモーション】
ネットの通販と家電量販店です。この商品が売れだしたのは、ネットの世界のバズです。mixiのコミュニティーをきっかけにポメラユーザー会が立ち上がり、その世界から広まったとの話もあります。これを意図的に仕掛けてのかは分かりません。
ポメラの売上ですが、2008年11月の発売当初で年間3万台を目標に設定されていました。しかし、12月10日付けで「製品供給不足に関するお詫び」と題する発表をするほど人気が集まり、一時品薄状態が続きます。この状況は09年の2月に解消され、現在は月に1万台程製造するまでになっています。従って当初の目標は、発売から5カ月後の09年4月にクリアしていました。
さて、今後の動きです。ポメラ=デジタルメモですから、その機能は向上してもらいたいです。例えば、1ファイル8000文字の字数制限があります。本体のメモリのデータ領域が128kbくらいしかなく、16kbづつのブロックを8つ確保した設計だったそうです。そのため字数の制限があります。
8000文字って、原稿用紙でも20枚分ですが、ポメラはデジタルメモ。ちょっとしたメモというより、記事や原稿、議事録等のように沢山の事項をデジタルでメモしたい人のユーザー層が多かったのでしょう。これは見直す対象にしていくでしょうね。
それから、現在は書きためたファイルを検索する仕組みがありません。これだけ検索してモノを探す世の中に慣れてしまっているので、この機能も改良のポイントかもしれません。
デジタルメモ、とにかく書くだけという1点に集中して開発されたポメラ。書いたものを携帯電話で送るという発想も無かったそうです。microDSカードを使える仕様にしたのは携帯を意識した発想というよりも、実際は貧弱な本体メモリを補強する目的だったと開発者が語っていました。もちろんPCとの接続は必須と考えていたようで、USBでの接続は完備されています。
今後は、ポメラのメモをどこかに送信したい!というニーズに対して、どこまで機能を追加するのか?に注目があつまります。ネットにつなげる仕様になった瞬間、ネットブックとのポジションが不明確になるからです。実際、SIMを使うような携帯の一体化は検討していないとも聴きました。
あくまでデジタルメモですから不要な機能は一切省く。従って写真やPDFファイルを閲覧するビュアー機能も付く事は無いでしょう。とにかくテキスト入力に特化したデバイスですから、その部分を突き詰めて行って欲しいモノです。
早嶋聡史
キータッチの音
キーボードのキータッチ音。機種によって随分と違うようです。
早嶋が使っているDELLのノートPC(LATITUDE E4300)は意外に音がやかましいのかも知れません。黙々とPCと戦って作文をしていると人が変わったようだ、といわれる事が多々ありました。何が?と思い、その方々のお話をお聞きしたところ、仕事中やブログを書いている時、突然スイッチがONになるようです。
初めは、キーボードの音がカチ、カチッ、とゆっくり始まり、徐々にスピードが上がって来て、スイッチが入った頃には、タッチ音がカチカチカチ・・・・と鳴り響くとか。この音を聴きながら早嶋の手を観察していた方が、何かに取りつかれたようにPCに文字を入力していると。
確かに、キータッチの音は、無い方が良いかもしれませんが、無音だとなんだか気分が乗らないかも知れないですね。となれば、メーカーによってキータッチの音を研究しているはず!そこで、DELLのマーケターに来たところ、そのような考え方もある、との事でした。
意外にも家庭の用のPCよりもビジネスユースのPCの方が音を気にする人がいるとか。無音にするよりもある程度の音を出した方が、その気になる。なんて人もいるのでしょう、早嶋みたいに。
少し、キータッチの音、調べてみようとおもいました。
早嶋聡史
マーケティング関連の書籍紹介
NTTラーニングスクエア様でマーケティングの研修をさせて頂いております。その中で「どのような書籍を読むと良いの?」という質問を度々頂きますので、ブログにアップさせて頂きました。
簡単に流れを理解したい方は、まず、「実況LIVE マーケティング実践講座」を読んでみて下さい。その他、興味がある方向けに、つらつらと紹介しています。
■入門書
●実況LIVE マーケティング実践講座 (単行本)
須藤 実和 (著)
決して入門レベルではありませんが、セミナーで一通りお話した内容を整理するために最も適しています。実例は、サントリーの飲料ですが、流れやコンセプトを非常によく理解できます。
●マーケティングを学ぶ人が最初に読む本 (単行本)
重田 修治 (著)
内容は非常にシンプルに書いていますが、広く浅く取り上げられています。通勤時間の往復で読める程度ですが、全体像を把握することが出来ますので、深く読み進める前に取りあえず読むといいと思います。
■MBAで最も読まれている本
●コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 (ハードカバー)
フィリップ・コトラー (著), ケビン・レーン ケラー (著), 恩藏 直人 (監修), 月谷 真紀 (翻訳)
こちらは、世界各国のMBAのマーケターが必ず読んでいる書籍です。ざっと目を通し、必要に応じて深く読むスタンスで良いと思います。
●産業財マーケティング・マネジメント (HAKUTO Management) (単行本)
マイケル D ハット (著), トーマス W スペイ (著), 笠原 英一 (翻訳)
B2Bや特に産業財のマーケティングに特化した書籍です。上記同様、ざっと目を通し、必要に応じて深く読むスタンスで良いと思います。
★★
更に、興味を持ったら以下のような書籍もいかがでしょうか?
■経営者とマーケターを比較
●マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか? (単行本(ソフトカバー))
アル・ライズ (著), ローラ・ライズ (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳)
STPの発想は時に、経営者にとって縮小する戦略のように聞こえるかもしれません。このニュアンスの違いを理解しながらマーケティング戦略を説明しないとトップの声が強い会社はマーケティングが出来にくい環境になるかもしれません。そのような背景を経営者とマーケターに分けて話されています。
■行動経済学関連の書籍
●セイラー教授の行動経済学入門 (単行本)
リチャード・セイラー (著), 篠原 勝 (翻訳)
●経済は感情で動く―― はじめての行動経済学 (単行本(ソフトカバー))
マッテオ モッテルリーニ (著), 泉 典子 (翻訳)
●世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ) (単行本)
マッテオ・モッテルリーニ (著), 泉 典子 (翻訳)
●予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (単行本(ソフトカバー))
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (著), 熊谷 淳子 (翻訳)
上記は、全て行動経済学についての著です。近年、人間は合理的では無く感情によって非合理的な判断を合理的と考えている傾向が分かっています。消費者や最終意思決定者が決断をするときに何を考え、何を思うのか?そのような事を事前に考えながらプロモーションを行ったり、アプローチを考えたり、営業の作戦を考えたり。マーケティングをすすめるにおいて、非常に参考になる関連分野だと思います。
■ニューロマーケティング
●買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界 (単行本(ソフトカバー))
マーティン・リンストローム (著), 千葉 敏生 (翻訳)
●五感刺激のブランド戦略 (単行本)
マーチン・リンストローム (著)
●五感マーケティング (Nanaブックス) (単行本(ソフトカバー))
高橋 朗 (著), しりあがり 寿 (イラスト)
行動経済学と同様、今後、マーケティングの進め方に革命を起こす分野かもしれません。モノに飽き飽きして満足した時、人はインターナルな欲求を高めていくと思います。それは何か?精神とか安らぎといったモノです。これまでは全く計測する事が出来なかったので理論化して体系化する事が難しかったですが、脳に直接聴く方法がfMRIなどの医療技術の発展とともに徐々に可能になっています。それをマーケティングに応用したら?という神を冒涜する行為にも思える手法です。しかし、無意識は、実は脳が意識的に判断していることなのかもしれません。そこで、素直に脳に訊いてみよう!という潔い考え方なのです。
■ペルソナ
●ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする
ジョン・S・ブルーイット著
ペルソナ戦略は、マーケティング手法の一つで、例えばWebサイトを構築するときに、架空の人物「ペルソナ」を作り、その人物に相応しいWebサイトを構築していくような手法です。理論自体は、99年に米国でまとめられ、以後ネットを通じて世の中に浸透している手法です。マイクロソフト、アマゾン、フェデックス、フォードといった企業はマーケティングにペルソナを取り入れて行っています。
マーケティングのプロセスの中では、セグメンテーション、ターゲティングというフェーズがありますが、ペルソナでは、コミュニケーションを行いたい対象をもっと具体的にペルソナとして創り上げ、ユーザーの代表として考えます。そして、そのペルソナが最も好むマーケティング・ミックスを提供する考え方です。
本著では、ペルソナの考え方から、企業がペルソナ戦略を実行していくときのシナリオがこと細かく説明されています。
■分析関連
●数式を使わないデータマイニング入門 隠れた法則を発見する
岡嶋裕史著
データマイニングの手法を気軽に知りたい人向けに書いた著書です。福岡⇒東京の移動時間で読めるくらいのボリュームですが、分かりやすくまとめられた一冊です。
■2位以下の企業が取る戦略
●Eating the Big Fish: How Challenger Brands Can Compete Against Brand Leaders (Adweek Book)
こちらは、消費財のブランド戦略において、チャレンジャーの戦略、つまり、2位以下の企業が成熟産業において成功する方法を紹介した書籍です。こちらの書籍において、以下の内容を前提として議論が進みます。
●マーケットリーダー(売上シェア1位)でなくとも成功可能
●しかし、フォローワー企業は、今後ますます淘汰が進む
●つまり、2位以下の企業は、単に生き残るためにも、チャレンジャーになる意外の方法は無い。(ただし、純粋なニッチャー戦略は議論の範囲外です。)
チャレンジャーが、マーケットリーダーに対して戦いを挑むときに、ベンチマークをすることがいかに不毛なことであるかをまず、説明してます。著書では、リーダーとチャレンジャーは全く別の生き物であるが如く、解説しています。その理由は以下の3つです。
1)認知度による優位性
一般的に、企業の認知度が増すにつれ、リーディングブランドは、線形ではなく指数関数的に上昇します。これは、2位以下の企業が自社の認知度を上げるための活動を試みても、結果的にユーザーの頭の中ではブランドンの相対的な順位はそれほど上がらず、見返りが薄いことを力説しています。
2)購買行動による優位性
ユーザが購買行動を起こす際も、リーディングブランドは得意な現象が確認されています。2位以下の企業の広告量の投下と、それに反応して顧客が店舗に足を運ぶ関係は、ほぼ線形的な相関性があります。ただし、リーダー企業のときは、比較的小さな広告量の投下によって他の企業よりもはるかに大きな効果を上げる傾向が確認できる。
3)購買頻度による優位性
これは、いわゆるダブル・ジャパディ(Double Jeopardy)現象です。つまり、リーディングブランドを購入する人は、そのブランドの購入頻度も多くなるという現象です。
上記の3つによって、リーダーは、2位以下の企業に対して圧倒的な優位性を享受する傾向があるのです。そのため、レーダー企業のROI(対投資効果)は、2位以下の企業よりもはるかに効率が高いと説いています。
このため、2位以下の企業は、リーダーの様子を見ながら小さな改善を積み上げる守りのフォローワー戦略をとっては、今後の成長どころか生き残りをかけることすら難しいとしています。つまり、チャレンジャーとしての戦い方をとるべきなのです。
上記が、本著の序論の部分です。以下、本論では次のポイントを説明してチャレンジャーの信条として、チャレンジャーが取るべき戦略を解説しています。
早嶋聡史
新興国ビジネスの鍵
経済同友会主催の「心・日本流経営の創造」シンポジウムにおいて、GE副会長であるジョン・G・ライス氏が新興国への対応に関して、次のように話されていました。
新興国市場について今から動き始めるというのは既に手遅れかも知れない。しかし、そこで成功を目指すのであれば、これまでの海外進出とは全く異なる考え方が必要。
ポイントはローカライゼーション。工場を建て、製品を作り、それを輸出するだけのタッチ&ゴー的な進出の仕方は成功出来ない。現地の人や資源やインフラを長期的に活用する事を視野に入れた投資を行いながら現地化を進める新しいマインドセットが必要。
更に、新興国を市場や製造拠点としてだけと捉えるのは誤り。開発拠点として重視する必要がある。標的市場で成功したいのであれば、その市場の顧客ニーズに耳を傾け、顧客の近くで開発をする必要があるからだ。GEは既に多くの新興国に開発拠点を整え、現地の人間によって開発を進めている。
早嶋聡史
アウトレットモールの影に
アウトレットモール。学生の頃は日本にそのようなモールが無かったため、バックパックを担いだついでアメリカに行ったときに初めて2級品を安く購入したのを覚えています。
現在では、日本でも当たり前になったアウトレット。それどころか現在の経済下では主流になりつつあります。アウトレットでは値引きが本来されない海外のブランド品が安く買え、モールの中には飲食店なども充実して1日中楽しめるコンセプトのモールが全国各地に点在しています。
これまでは郊外中心の出店でしたが、近年はアウトレットの出店が都心にも広がっています。消費が伸びない中、アウトレットの市場が伸びている背景があるからです。
アウトレットは、季節毎に商品が入れ替わる衣料などのアパレル品の在庫処分を行う場所に打って付のお店です。また、半端モノや分けあり商品等も焼却処分するよりは二束三文で売ったほうが良いのです。経済が回っている時は、アウトレットと通常のショップの循環が良く回っていました。しかし、今では通常のショップの客足が落ち込み、アウトレットのみが活況になっているようです。
売上をキープしたいアパレルは、アウトレット品と見せかけて、わざわざアウトレット用の商品を準備して販売しているところもあります。勿論、全てのショップがそのようにしているわけではありませんが、通常のショップが売れないのにアウトレットが好調という事は、確実に利益率を低下させている要因になっています。
実際、アウトレットで買い物をする習慣が身に着けば、定価で商品を買うのがバラらしく感じられるようになります。短期的にみるとアウトレットモールの出店は売上を支える要因になると思いますが、今後の経済状況を考えると、自らブランドの価値を低下させているように思います。
早嶋聡史
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