早嶋です。
■デザイン思考とは
デザイン思考とは、デザイナーがデザインを行う際の思考プロセスを活用した思考方法です。不確かな時代、前例が無い問題や未知の問題に対して解決を図るために有用だと言われます。デザイン思考をビジネスの領域に広げた方はハーバート・アレクサンダー・サイモン(Herbert Alexander Simon)の「システムの科学」が始まりとされます。
”現在の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案するものは、誰でもデザイン活動をしている”
ハーバード・A・サイモン「システムの科学」より
■デザイン思考 3つの特徴
デザイン思考は3つの特徴があります。1つ目は、問題解決を行う際に重視する要素は対象とする顧客が本当に満足することに集中します。解決方法の正しさやベストの方法などではないということです。つまり、問いそのものが重要で、解決策に重きがあるものでは無いのです。
次に、問いを設定したあ後の流れについてです。基本的には正しい問題を設定する過程と、その後の解決策を導く過程は線形的な取り組みではありません。様々な視点とアイデアを繰り返し組み合わせた試行錯誤の結果である場合が一般的です。従って、一度出た問いや解を繰り返しくブラッシュアップすることが通常です。
そして最後に、デザイン思考では、前例や組織の固定概念やバイアスなどを全て排除して考えることが大切です。少なくとも、そのようなマインドセットを持って取り組むことが特徴です。
これまでのお話を整理すると、デザイン思考とは、顧客が最も解決したい問いを正しく定義し、その解決策を提供するプロセス及び考え方なのです。
■注目される背景
従来は、正しい問いがあることが前提でした。従って、問いを正しく定義することよりも、むしろその問いに対して早く正確に解決することが求められました。しかし、多様化した変化の激しい昨今は問題の本質、正しい問いそのものを捉えることが難しいケースが増えています。
これらはVUCA時代に表現される通りです。Volatility(変動)。変化の質、大きさやスピードなど正確に予測することが難しい時代。Uncertainty(不確実)。更に、これから何が起こるかも予測できません。Complexity(複雑)。そして、数多くの因果関係が複雑に絡み合っています。Ambiguity(曖昧)。物事の原因や関係性がそもそも不明瞭で、掴みにくい場合が多いです。
そして直近から今後にかけても、世界の経済環境が極めて予測困難な状況に向かっています。結果、企業の中でも顧客が抱える真の問題を捉えて、素早く分析して形にできる人材が求められるようになったのです。・その際に活用しやすい思考方法の一つにユーザーを中心に捉えたデザイン思考が注目されているのです。
■デザイン思考の効果
デザイン思考の最大の効果はイノベーションを創出することです。これまでの延長線上ではない、非線形的な全く視点の異なるアイデアが生まれやすくなる思考法です。デザイン思考では、顧客に寄り添って、顧客を中心とした問いを考えることをスタートとします。デザイン思考を実行するためにはチームを見直すことも重要です。チーム間のコミュニケーションが自由度高く遠慮なく行える場作りとその維持が大切です。思考のプロセスにおいてチーム全員が発言し、発言したアイデアの重要度も平等に取り扱う。役割や役職、年齢の上下など、一切捕らわれないチームでを作り、アイデアを出すというマインドがポイントです。
■デザイン思考のプロセス
基本、デザイン思考には5つのプロセスがあります。共感、問題提議、アイデア創造、試作、テストの5つです。そして、このプロセスは一方通行ではなく双方向に行いながら、各プロセスそのものを1回ではなく、複数回繰り返す過程で、顧客の正しい問いと解決策を導き出していきます。
①共感
顧客中心の考え方ゆえ、顧客を理解することからはじめます。そのための方法は対象顧客のことを調べ、次に実際に観察します。顧客がどのような行動を繰り返し、どのような思考をしているのかなど、顧客に共感を示しながら観察します。そして、気がついた点や気になる点を顧客にフィードバックしてインタビューを行います。この行動観察と実際のインタビューを通して顧客が気がついていない問いを発見します。
②問題提議
事前調査と観察とインタビューより、洞察を繰り返しながら、顧客の真の問について整理します。顧客がおかれている特定の状況から、顧客が実際に成し遂げたいと思っている状態を見出すことで、ギャップを発見します。この際に発生するギャップを問題として、正しい問いとして定義します。
③アイデア創造
問に対しての解決策を考えます。その問題を具体的に深堀りし、そもそも特定の状況から成し遂げたい姿に行けない理由などを様々な視点やアイデアで深堀りします。チームで議論を繰り返しながら、大量のアウトプットを出す過程で結果的に創造的なアイデアが持つことを理解します。
④プロトタイプ
沢山の量(アイデア)が出たら、次はその複数のアイデアを早い段階で実際に試してみます。その際に有用になるのがプロトタイプです。短時間で予算をかけずに、対象顧客がイメージできるプロトタイプを早い段階で作成して、テストを繰り返します。
⑤テスト
プロトタイプを実際の顧客に試し、様々なフィードバックを取り続けます。このフェーズで有用な情報を入手したら、再び上記のプロセスを共感から繰り返していきます。試行錯誤と実際の顧客インタビュー等を通じて最高の問いを見つけ出していくのです。そして、これまで成約や販売に目を向けていた視点を、購買や1回の顧客体験を通じて、生涯に渡り取り組むんだという視点を持ってテストマーケティングを繰り返します。
■よくある落とし穴(誤解)
で、結局なにが違うの?と思った読者は多かったのでは無いでしょうか。今まで行ってきたこと、これまでチームで取り組んだことと何ら変わらないという感想を持ったのでは無いでしょうか。以下4つに絞って、デザイン思考にありがちな誤解を説明します。
○顧客(ユーザー)中心の誤解
顧客を中心に考えることは、今や管理者に取って当たり前だと思います。だれでも意識して取り組んでいるでしょう。しかし顧客中心は、「顧客が言うことを聞いて、それを実現する」という単純な取り組みでありません。有名な事例で、ラインの発明をしたフォードは、顧客の声を聞いた時、「より早い馬が欲しい」という声を聞いて、今の自動車の土台を着想しました。
顧客中心というのは、ユーザーの声をそのまま形にすることではありません。その本質はなにかを理解して、それを形にすることを意味します。そのためにユーザに共感を示すプロセスが重要になるのです。そもそも顧客は自分が一体どのような状態を望んでいるかを正しく言語化できません。そのために企業が顧客のことをより深く理解して、顧客の考えていることを正しく言語化するお手伝いをすること、そしてその状況から本質的な問いを整理っすることこそ、顧客中心という概念なのです。
○デザイン思考の5つのプロセスの誤解
5つのプロセスを見ると、この通り行えば実現できるとついつい考えてしまうでしょう。しかし、最初の共感でいきなり壁にぶち当たります。デザイン思考におけるプロセスの重要性は、単に、このプロセス通り行うことではなく、このプロセスを意識して取り組むことにあります。
はじめは試行錯誤しながら、このプロセスを行き来するでしょうが、状況に応じて柔軟に対応することもあります。デザイン思考の原則を意識さえしていれば、実際、どんな取り組みを行っても構いません。プロセスを度外視して実行した場合、今行っていることがわからなくなります。そのときは、「5つのプロセスのうち、今はどこ?」と認識することで、デザイン思考のマインドセットに戻ることができるようになります。。
○手法ではなくマインドセットだと理解する
デザイン思考と聞くと、やはり手法と捉えることが多いと思います。しかし、実際はマインドセットそのものなのです。この理解を得ると、複数の参考図書や記事を呼んでもスーッと自分のなかに溶け込んでくると思います。
○今の世の中は正しい問いが大切
実は、解決策はどうにでもなります。これまでは問があることを前提に、正しい解決策を如何に早く正確に提供するかが勝負でした。しかしVUCAの時代は正しい問いがみつかりません。企業が行う差別化は、どの企業よりも顧客の問題解決における正しい問いを発見して、その問いを解決することで行います。
昔の言葉です。「目の付け所がシャープです。」これは解決策そのものを評価しているものではありません。目の付け所、つまり顧客本位の真の問を見つけたことがすばら良いのです。結局は、そのためのマインドセットがデザイン思考に表現されているのです。
参考図書
『デザイン思考が世界を変える』 早川書房、ティム・ブラウン著
『発想する会社!』早川書房、トム・ケリー著
『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 クロス目で・パブリッシング、左宗邦威著
『クリエイティブ・マインドセット』 日経BP出版、デイビッド・ケリー、トム・ケリー著
『デザイン思考の教科書』 日経BP出版、アネミック・ファン・ブイエン、ヤープ・ダールハウゼン、イェル・ザイルストラ、ロース・ファンデル・スコール著
2019年10月 のアーカイブ
デザイン思考
アフターデジタルという発想
早嶋です。
デジタル化の時代は、全てがオンラインにつながります。つまり、人が何かをする際は、その人のIDや何かその人を特定できる何かにひも付けられ、その前後の全ての行動履歴が蓄積されている状態が当たり前になるのです。そして、その状態がデフォルト(通常)で、そこに従来のオフラインが混じり合います。しかしオフラインの状態であっても何らかの工夫でその履歴もデジタルにIDに紐付けられて蓄積されるようになります。その意味でオンラインとオフラインの区別がなくなる状態が真のデジタル化の状態と言えます。
デジタル化の時代を見越して企業は大きな変革が必要になります。企業戦略レベルでは、従来の主体を企業本位にするのではなく、新の顧客や社会本位の会社に変えることが大切です。例えば従来のオンラインのメーカーなどは、「技術革新に邁進して最高の技術を提供し続けます。」と企業が主語になったミッションを掲げています。しかしデジタル化が到来すると、顧客との接点が単発的なものから連続に変わります。これは一回の取引がゴールではなく、その前後における全ての接点を意識して顧客体験を高める取り組みが大切になることを意味します。結果的にこれまで以上に企業は顧客や社会に寄り添う必要が出るのです。
従い、特定の状況や特定のおかれた顧客の状態において企業は価値を提供する発想に切り替える必要があります。従来のように一回の成約にフォーカスしてPLを立てる意識では、デジタル化の波に対応できなくなります。そのため従来のような機能別の組織や事業別の縦割り構造、そしてエリア別の組織運営等では、顧客に最高の体験を提供し続けることができません。必ず限界が出るのです。今後は成約をゴールとして捉えるのではなく、一見さんとの出会いをスタートと捉え、商品の販売後も継続的に顧客との関係を大切にする発想が必要になります。
「1回の購買をゴールと捉えずに、1回の購買からスタートがはじまり、顧客の生涯に渡って良きパートナーとして、顧客の体験を最大化するように寄り添うこと」これが企業が考える顧客や社会とのつながりにおける考え方となるのです。大きな違いですね。これから【ビジョンの変化】【STP戦略の変化】【ビジネスモデルの変容】の3つの視点から整理します。
【ビジョンの変化】
このように考えていけば、企業のビジョンが変わります。多くの企業が、「企業の価値や企業が成し遂げたい姿」を掲げています。もちろん顧客にフォーカスしたビジョンも沢山あります。しかし、「顧客を一番に考えて貢献する」などのようにやや抽象度が高い表現になっています。未だに自社が提供する商品(製品やサービス)が固定してい、それらを顧客に届けることをビジョンにおいている企業もかなり多いです。結果的に皆が頑張って、良いものを作り提供するという風土が染み付いているのです。
しかしデジタル化の世界では、単発の購買体験で完結しません。上述したように、何らかの顧客との接点をスタートとして、その顧客に寄り添う形で継続的に顧客体験を提供する企業が勝ち残るようになります。従ってビジョンの掲げ方に対しても、「どのような顧客にどのような顧客体験を提供しつづけ、どのような状態になって頂きたいかを追求する」というような内容に変更することが大切です。
その意味でビジョンの主語が企業から顧客や社会に変わるのです。ビジョンの変化は強烈です。常に顧客との接点を重視し、そこに常につながっている状態を創り出す。そうすることで生涯に渡り顧客に寄り添うことが可能になります。その状態をビジョンに明確に掲げ言葉で表現するのです。
【STP戦略の変化】
デジタル化が当たり前になると、マーケティングのSTPの概念も変わります。これまでターゲットを特定する際は、直接特定することが技術的に難しくコストがかかったことから、代替指標を使って顧客を捉える考えが一般でした。その結果、もっとも多く浸透して活用された指標が顧客属性でした。マーケティングで重要な概念は、「誰が、なぜ、なにを買っているのか?」です。これらを特定するために、本人も知らない「なぜ」の追求をすることがマーケティングの永延の命題でもありました。しかし企業規模が大きくなると、どうしても「なぜ」の追求には費用がかかるため、結果的に「誰が」にフォーカスが当たってしまったのです。
デジタル化が当たり前になると、個人が完全に特定されます。従って、従来のように属性にフォーカスすることなく、個々人が完全にデータでも把握できるようになります。これまでは「誰」というこを理解することに費用を投じていたのが、みんなが基本オンラインにつながることによって、個人の特定が当たり前になります。するとマーケティングの重要な概念の内、「誰が、なぜ、なにを買っているのか?」のなかで再び「なぜ」に注目があつまるようになります。
実際、個人が特定されても、個人も何故購入しているかを正確に考えて行動しているわけではありません。そのためデジタル化になっても「なぜ」の特定は課題として残り続けます。しかし、個々人の行動履歴や購買履歴等からこれまで見えなかった推測が可能になります。行動です。IoTやモバイル、そして5Gなどが揃うと、常に具体的な個々人のデータがデータベースに蓄積されます。すると、これまで点で見ていた属性から完全に個々人の連続的な変化が見えるようになります。これらを工夫して調べることができればより「なぜ」にちかい個々人の特定の状況が見出しやすくなるのです。
ジョブ理論では個人を属性で捉えるのでなくペルソナで捉えていました。デジタル化が完全に進めば、ペルソナは完全に特定の個人にフォーカスできます。そして、個々人のジョブをより明確につかみやすくなるのです。個々人の特定の状態の前後が明確になるためです。結果的にSTP戦略がこれまで顧客志向と表現されていた概念が、個々人の状況に志向する捉え方が強くなるのです。
まさにジョブ理論の概念ですね。ジョブとは特定の状況で顧客が成し遂げたい姿です。彼らを顧客が解決したい用事(ジョブ)と捉えて企業は解決を提供することの重要性を整理しました。ジョブは完全なる「なぜ」と結びつかない場合もありますが、「誰が」「何を買った」という情報以上に個人の「なぜ」を推測する情報としてはリッチになります。当然ながらそのジョブが見いだされれば企業は解決策としての商品(製品・サービス)を提供しやすくなるのです。
【ビジネスモデルの変容】
現在のビジネスモデルの基本体系は企業内部ではバリューチェーン(VC)、業界全体ではサプライチェーン(SC)に代表されます。VCでは上流の研究開発から始まり、商品企画、そして製造、販売、アフターフォローと続きます。それから全体に関わるVCとして人事や財務やマーケティングなどの機能がそなわります。このVCの流れを見ると、効率的に商品開発を行い、製造し販売するかにフォーカスがおかれています。一方で、販売した後のフォローや、そこでの顧客体験に紐づくデータが上流工程の研究や開発に生かされていないことも分かります。
上述したたデジタル化の発想を、現在のVCで実現する場合、かなり制約条件が高いことが分かります。アフターデジタルでは企業が大切にするのは一回の販売や成約ではなく、1回の顧客接点から始まる顧客体験をいかに継続的に続けていくかです。そのために、企業は意図的に顧客接点を増やし、管理して、それらの情報をもとに顧客の困ったことを解決する取り組みが大切になるからです。
ジョブ理論で言うところのビックハイア(1回の大きな購買)からリトルハイア(購買後に続く小さな購買の連続)にビジネスモデルを変えていくことです。サブスクリプションがデジタルとの相性がよい最大の理由は、毎月定額の固定金額を得ることで、企業は継続的に顧客とつながり、顧客が日常的に商品を使用してる状況を把握することができます。企業は継続的にその情報を活用してより便利で快適な顧客体験を提供することを掲げ商品開発を行います。
上記の変化はKPIの変更も意味します。従来は、販売につながる指標をKPIとしていました。売上や利益等々です。そして顧客型の指標としては満足度を活用していました。しかしいずれも瞬間的な指標でその後に継続するものではありません。アフターデジタルでは、KPIそのものの発想も変えることがポイントです。
例えば、継続的な顧客の接点を示す顧客のロイヤリティです。一回の購買金額ではなく、生涯に渡る購買金額であったり、退会せずに継続的に使用する顧客の数であったりです。満足度も、1回の購買体験や消費体験から得られたものを高める取り組みですが、継続性を見たいのであれば、推奨度を指標として掲げることも大切です。推奨度とは、同じような問題を抱えている顧客が自分が親しい友人や知人に対して同様の購買や顧客体験をすすめるかという指標です。
新入社員信仰
早嶋です。
今朝の日経に以下の記事が有りました。
ーー日本経済新聞2019年10月18日ーー
大学生のインターンシップ(就業体験)で、運営を代行するサービスが広がってきた。短期で採用直結型のインターンが増える一方、企業の人事担当者の負担も増加。運営に不安がある企業が代行業者を頼っている。学生にとっては「憧れの先輩」が社員でないことになり、入社後の不信感にもつながる。転職予備軍ともなりかねない。
ーー引用終了ーー
そもそも新卒を大量に採用する方向性がフィットしている前提は高度成長期で経済がガンガン伸びている次期です。いまのように、さまざまな局面に対応しなければならない世の中は、新入社員を採用して育成してという流暢な取り組みがそもそもNGだと思います。
もし、それらを行ってでも新入社員を必要とするのであれば、そもそもの目利きや取り組みを自分たちで行えばよいのに、そこに代行を使う発想こそどうかと思います。もちろん私も関与している企業のように、綿密にインターンの仕組みとその後のフォローを考え丸投げではなく、パートナーとして継続的に関与した取り組みは別です。
ジョブ理論では、企業の取り組みの中に成約や販売までの活動に力を入れるため、この活動をビックハイアと呼んでいます。一方、社員からすると実際は入社後がスタートです。しかし、実経済を観察すると購買後、成約後はなんとなく力が抜けてしまいます。本来は、成約してから当人は何らかの問題を解決するわけだからこちらに資源を多く費やす必要があるのですが、本末点等になる傾向が多いのです。
今回の記事は、新入社員を取らないといけない、という人事のビックハイアの呪いを感じてしまいました。
新規事業の落とし穴②
早嶋です。
新規事業というスローガンを掲げるも、多くの企業は既存の事業を片手間に新規事業に取り組んでいます。その場合、次のような懸念があります。
「担当者の評価は、従来と変わらず既存の予算達成による」
というものです。従って、どうしてもそこは人。新規事業の重要性は理解しても、やっぱり今の既存事業に力を入れてしまいます。そもそも新規事業はすぐに成果が出るものでもないし、そのような性質であることを評価者や経営陣の理解も有りません。であるならばこれまで通り既存の取り組みを行ったほうが担当者としても合理的なのです。
更に、新規事業というテーマはあっても、どのような方向性の新規事業を行うべきかの戦略が不明なまま担当者に丸投げしえている企業が多いです。戦略が不明なので担当者は手当たりしだい手をつけます。しかも意思決定権は持っていないため、試してはパワポに資料をまとめて経営層に報告。経営層も方針が無いから良いのか悪いのかがわからなくてなんとなく宙ぶらりんの感じでときが進みます。
1年も2年も経過し始めると、流石に経営陣も縛りをかけてきて今度はM&Aだといって、また同じことを繰り返すのです。
新規事業は既存事業と異なります。従い、会社としてどのような方向性の新規事業は取り組み、どのような方向性の新規事業は取り組まないという戦略を明確にするべきです。そして、そこに関与するメンバに対しての評価を既存の事業の評価と切り分けるべきです。また、新規事業は経営陣が本気になって取りくむ事案であって、決して片手間で丸投げしては行けないのです。
インタビューの心構え
原です。
事前準備ができたなら、次は当日の心構えです。
一般顧客モニターでの参加者の方は、人前で意見を言うことに慣れてなく、多くの方が緊張しています。緊張した状態では、言葉数が少なく本音がでませんので、冒頭にはアイスブレイク(緊張で固まった雰囲気を和らげること)が必要です。
いきなり、「皆さん緊張しているようなので、緊張しないようにお願いします!」などストレートになげかける言葉は、かえって参加者が緊張してしまうので使用はNGです。
最初の冒頭説明の中では、「今回の皆さんの発言は個人名が口外されないので安心してください」などの個人情報について安心感を与えることが必要です。
そして、本題に入る前に簡単な自己紹介を全員に話していただきながら少しずつ場を温めていきます。自己紹介後には、拍手をするだけでも笑顔が出るなど効果はあります。
自己紹介だけでは、まだ緊張感が残っている場合は、もう1つぐらい付け足します。例えば、テーマがスイーツの場合は、「皆さんが好きなスイーツを教えてください。どこのカフェや専門店に行きますか」かなどを質問し、モニター参加者から自由に話して頂きます。
慣れたところで、「それでは本題についてお聞きします。」という流れで進めていきます。
アイスブレイクができないままだと、最後まで場が固く終わることがありますので、必ず冒頭には、アイスブレイクをいれましょう。
ただ、あくまでも本題について話し合う場なので、できるだけ短時間で場を温めることが必要です。あまり凝りすぎて時間のかかるアイスブレイクはNGです。
私の場合は、モニター5人のグループインタビュー時間が120分の場合は、10分ぐらいかけて場を温めています。
本題からは、モニターへの傾聴に徹底して取り組みます。モニターの目を見て、大きく頷きながら「ほぉー、へぇー、なるほど」などを連発しながら話していただきます。
そして、気になることについては、「もっと教えて」とお願いし、具体的になるまで掘り下げていきます。
時には本題から外れた話をするモニターがいますので、その時は、「本題から外れましたね。」と教えてあげることも必要です。
司会者は、車のドライブに例えると、リラックス感のある車内の空間づくりと適度なアクセルとブレーキとハンドル技術により、快適なドライブを提供する役目なのです。
ここまでは、司会を数回でも経験すれば誰にでも出来ます。
しかし、「目的、テーマ、地域、年代、対象者の属性など」が違えば、当然に発言の内容も変わります。穏やかなグループインタビューもあれば、激しく議論するグループインタビューもあります。100のテーマがあれば100の異なるモニターが集まり、その時の状況に応じて100のグループインタビューの進め方が司会者には必要となります。私は、今でもこれでOKと安易に満足したことはなく、グループインタビューの楽しさだけでなく、厳しさと奥深さに対して仮説検証を繰り返しながら精度向上に取り組んでいます。
毎月、弊社内で下記の月次セミナーを実施しています。
詳細と申込み先は下記Webからご覧になれます。
ご参加お待ちしています。
▼月次セミナー「顧客モニターマーケティングの実務」
キャリア・ドッグ
安藤です。
今回は、『組織活性化の仕組み』として、厚生労働省が促進しているセルフ・キャリアドッグについてお知らせ致します。
セルフ・キャリアドッグとは、定期的なキャリアコンサルティングとキャリア研修などを取り組み合わせて行う、従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的とした総合的な仕組みのことです。
企業と従業員両方のメリットがあります。人生100年時代になり、『マルチ人生』というキーワードが
ライフシフトでも言われています。経済産業省の新・社会人基礎力では、『キャリアオーナーシップ』という生き方を提唱しています。
また、職業能力開発促進法10条の3第1号では事業主は、「労働者が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めることを容易にするために、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度その他の事項に関し、情報の提供、キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うこと」とされています。
これからの時代に、従業員にとっては自らのキャリアを考えることで仕事に対するモチベーション向上に
つながり、企業にとっても人材の定着や従業員の意識向上を通じた組織活性化が期待されています。
これからの企業は魅力ある組織作りをしていかなくては採用で人材の確保もできなくなっていきます。
対象者別に下記のような効果が期待できます。
①新卒採用者には、仕事への向き合い方、取り組む意欲の向上 ②育児・介護・休業者には、育児・介護の不安を取り除き仕事と家庭の両立課題の解決を支援する ③中堅社員には、職業人生の後半戦に向かってのキャリアの再構成、④シニア社員に対しては、これまでのキャリアの棚卸しと目標の再設定です。
基本的な進め方としては、
①キャリア研修
・集合形式で研修を行うことで、多くの社員に効果的にキャリアを考えるきっかけを提供
②キャリアコンサルティング
従業員とキャリアコンサルタントが一対一で面談を実施し、個別従業員のか課題を整理し、解決を支援
③フォローアップ
組織全体で、個別従業員及び組織の課題を解決
新たなキャリア開発の枠組みをつくる上で、セルフ・キャリアドッグの取組への理解を深めたい方、
キャリア・ドッグ導入をご検討の方、メンタルヘルス, ストレスマネジメント, アンガーマネジメント, ハラスメント, モチベーションマネジメント研修などにご興味・ご関心のある方また、気軽に弊社にご相談くださいませ。
新規事業の落とし穴①
早嶋です。
大手企業や老舗企業で複数の事業部を持つ規模の会社に共通の課題があります。「今の稼ぎ頭が成熟、あるいは衰退期にあるが、将来的な対応が先送りされている。」です。もちろん、意識的に新規事業の確立として、中計や事業計画にはM&Aなど含めて記載はあります。しかし、内部の実際の行動や資源配分を見ると実質なにも行っていないことが分かります。
もし、仮に真剣に新記事業を立ち上げるのであれば、それなりのコストと労力が必要になります。従来の既存事業のように事業計画を描いてもそのとおりに行きません。時間がかかる、結果がでない、そのためなんとなく後回しになっています。7つの習慣にある通り、時間がかかる、重要な取組については、計画して時間を確保して確実に行動を積み重ねて行く必要があります。が実際は、時間がかからない重要な取組に資源を費やしてしまいます。
そこにM&Aという武器を近年の中堅企業を含め持ち始めました。が、何の目的でM&Aを行うかが明確にならなければ価値の算定や交渉、買収前調査のリスクを回避できるかの判断など、買手としてできません。方針なくM&Aをしても意味がないのです。
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オービック
早嶋です。
システムインテグレーターのオービック。夜な夜なテレビを付けていると昔から変わらないゴルフシーンとオービックの音声が流れています。そのオービックはご承知の通り素晴らしい戦略を持っています。
システムインテグレーターとして大企業や大規模のシステム開発を狙わずに、中堅企業に特価した基幹システムを提供します。開発は外注を活用せずに、全て社内で手掛けています。営業は代理を使うことなく、自社でしかもダイレクト販売です。IT業界は人材の流動が高いですが、オービックは社員の殆どを新卒で賄っています。そしてSEを専門職と捉えないで、営業とSEを分けることなく両方を経験させることによって営業と開発の双方の効率を高める取組を実施しています。
そんなオービックの成績は19年3月の営業利益率は51.2%。主力基幹システムはオービック7です。1997年の発表から従業人規模で100〜1,000人程度の中堅企業に特化したシステムを提供しています。営業とSEの両方の経験を持つ社員が中堅企業の要望を抽出して足し算ではない無駄な機能を省いた基幹システムの設計と提供と開発が人気を得ているのです。
IT調査会社のIDCの調べでは18年度の国内ERP市場の占有率がSAP、富士通に次ぐ3位で、中堅企業に特化したシェアでは1位を誇っています。
システムの内製化、SEと営業の一元化、オービック7に特化した資源リソースの投入。結果、社内にノウハウが蓄積され、それらをベースに開発をするために効率とスピードはともにあがり、結果50%を超える営業利益を叩き出す企業になったのです。
昨今のIT企業の大手は、どうしても売上を確保する必要性から、大型のシステム開発案件を取りにいくようになっています。しかし、自社のリソースだけでは人数が足らず外注を活用するようになります。ここが麻薬で、外注や下請けは自社のコストよりも安く、受ける企業が比較的に多かったことから多様してきました。
その結果、自社で通して開発できる人材が減少して、システム開発のノウハウは下請けや外注業者に蓄積されるようになります。また、昨今ソリューション営業と言われていますが、開発の全体を知らない人間が急に顧客のことを理解して提案してね。と言われても難しいはなし。1,000人単位のエンジニアを抱えるも、上述の事情で経験と知識が乏しい給与の高いエンジニアを育ててしまった。という状況になっているのです。
いつの世も、今すぐ取り掛からなければならない重要なことに資源と時間と労力を割き、重要だけで時間がかかる教育や内製化は後手に回した結果が露呈しているのです。そこに対してオービックは着実に大手とは違った正攻法で現在の業績を保っている。と考えれば、やはり正しい手法を、着実に、当たり前にこなす難しさと大切さを改めて考えることができる事例だと感じました。
オービックは、今回取った戦略に対しては、2000年頃のITバブルの影響がありました。過去、中堅企業から大手企業に販路を伸ばす意思決定をしていました。大型案件では売上は期待できたのですが、都度特殊開発になる難しい案件が続きますので、多数のエンジニアが必要になり外注を始める結果になりました。
大企業の受注はシステムに対しての要求や要望が高く、システム会社はそれに対応する必要がでてきます。一方、従来の中堅では出てくる要望は事前に予測がつくし、ある程度対応するノウハウも見についています。結果としてトップである売上は高まりますが、実益としての利益が目減りしていくという苦い経験を教訓にしたのです。
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参照:日経新聞 ビジネス欄 2019年9月
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