新規事業の旅 その3

2022年6月4日 土曜日

早嶋です。

新記事業の取り組みを自前で試みてもなかなか成果が上がらない。そんな時に社内でにぎやかになる言葉がM&Aです。そうか、新規事業を買えば良いんだ!的な発想で、事業計画が次のように修正されます。

修正前:300億の売上を既存事業で400億にし、100億を新規で創出して500億企業を目指す。
修正後:300億の売上を既存事業で400億にし、100億を新規とM&Aで創出して500億企業を目指す。

そう、新規事業という概念にM&Aが追加されるのです。新規を自分たちで立ち上げる、つまりオーガニックな取り組みに加えて、アーティフィシャルにやるんだ!という、一瞬前進する感覚になりますが、全く状況はかわりません。

そもそも、ギャップ100億を埋めるための制約や方針は無いまま。その中でM&Aをする!ということが明確になれば、後は業者からの持ち込み案件を待つのみ、というシナリオになるのです。M&Aを計画に書いた場合、その担当部門は、財務部隊か新規事業の部隊か経営企画部隊が担当することが多いです。ただ、これまでM&Aや他の資本政策を経験したことが無いメンバがほとんどなので、どうするかわからない。そこで企業の規模にもよりますが、金融機関や上場しているM&Aブティックに頼るという筋書きになります。

新規事業を方針も無く戦略も無くひたすらアイデア大会を続ける組織に、今度はM&Aの持ち込み案件を処理するという作業が膨大に降ってくるのです。持ち込み案件とは、M&Aの仲介会社やアドバイザリーを行う企業や金融機関が、この案件どうですか?という情報を経営層に紹介する案件です。

本来は、自社のM&Aに対しての戦略や方針は、この分野で、こんな課題を解決するために行います。という何らかのルールがあるのが理想なのですが、とにかく100億のギャップを埋めたい!といような大雑把なルールしかないので、部隊は次のようにがんばります。

・持ち込み案件の中身を精査する
・その案件単体の事業価値を評価する
・安いか高いかを判断して経営チームに助言する
・経営チームが進めるか否かを判断する

が、多くの場合、上手くいきません。そもそも、その案件が安いか高いか、価値があるのかがわからないのです。理由は簡単です。M&Aで議論される価値の算定の仕方は理論値ですので、実際の事業の内容が正確にわかったとしても、その価値を弾くためには、計算する側が主体的に事業を捉えなければ正解はないのです。

つまり、売りたい金額が妥当。という判断をする前に、その案件だったらこの金額が妥当という買い手の理屈が必要になります。しかし、方針が無いので、単独の投資リターンのみの議論になり、自社とのシナジーなどを考えません。結果、堂々巡りになるのです。

仮に、投資リターンは算段が取れて、買収したとしても、その後、その企業を運営してマネジメント出来る人材が買い手企業にいない。その結果、買収した時点が最もその企業の価値が高く、時間が経過するに連れて企業価値を目減りさせてしまう。というシナリオになるのです。



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