早嶋です。
戦略の本質は違いを創ることです。そもそも違いとは何でしょうか?例えば、次の質問に答えてみてください。自社あるいは、想定する企業はどのような違いがあるか?です。いくつか羅列するまで、次を読まないで下さいね。
例えば、パソコンの違いを上げたとします。液晶が薄いとか、バッテリーが長持ちするとか、ソフト処理が早いとか、軽いとか。これらは全てどちらがベターか比較することが出来ます。つまり何かを基準にすると物差しがあり、その物差しで比較することが出来ます。つまりベターという違いです。例えば、シックの4枚歯とジレットの5枚刃も同様の違いですね。
しかし違いには、もう一つあります。例えば、同じパソコンでDELLを考えてみます。コモディティーしかしない。見込み生産はしない、全てをBTOでう。基本モデルの種類を増やさない。先端的な技術を追わない。組み立て工程でアウトソーズをしない。です。いかがでしょうか?こちらはどちらが良いのか?例えばスペシャリティーが良いのか、コモディティーが良いのか?どっちがよいという物差しが無く、Differentという違いです。先ほどのBetterとの違いと異なりますね。
前者のBetterな違いはOperational Effectiveness(OE)で後者のDifferentな違いはStrategic Positioning(SP)です。つまり、OEはもっとがんばろう!もっと良くしよう!という違いですが、SPは何をしないか!を明らかにすることです。戦略で重要なのはSPであり、何をしないかを明らかにすることです。端的には、doing different thingsであり、doing things betterでは無いのです。
戦略を構築する場合、先ずSPを明らかにします。そして次に、その違いがを他社が模倣できないように組織の中に違いを構築する仕組みを作ります。これがOrganizational Capability(OC)です。例えば、シェフが味付けを決めて、どのよな味にするかを明確にします。全体的に甘めにしない等です。これはSPですが、それを実際に実行するための厨房での動きはOCになります。レシピを決めるのは意思決定や選択という要因が強いですが、厨房の中は組織の能力とかそこで培ってきたチームワークの蓄積などが大切です。但し、SPとOCは概念的な区切りですので、全てを明確に線引きできるものでもありません。
違いを創るためには、三枚か四枚か?というOEの違いではなく、何をしないか?というSPとそれを実行するためのOCが必要なのです。SPがWhatとするならば、HowがOCになるのです。セブンイレブンは個々のお店に発注の権利をもたせました。つまり、本部が発注する事をやめたのです。これはSPですが、それを個々の店で実行するのはOCです。各自が仮説検証を繰り返しながら、その組織に定着しました。OCは地味で暗黙的な要素をたっぷり含んでいるものなのです。
2011年8月 のアーカイブ
OEとSPとOCの話。
違いを創る理由
早嶋です。
戦略の本質は違いを作ることです。このことについて経済学と経営学を比較すると理解が促進すると思います。経済学の考え方では、完全競争市場では、最終的に価格が均衡します。これは完全競争によって違いがなくなるからです。となると製品やサービスを購入する消費者に取って、最も安く提供して頂くでしょうが、企業は儲かりません。経済学は効率的な世の中を作ることにフォーカスされます。
一方、経営学はどうでしょうか?やはりこちらのゴールは利益を創出することにあります。そのために経済学と真逆のアプローチを取ります。つまり、完全競争ではなく違いを創出していくのです。違いを創るということは利益を生み出す素地を創ることにつながります。
従って経営学では、競争戦略という概念は極めて大切になります。この場合、全社戦略ではなく、事業戦略がフォーカスされる場合が多いでしょう。例えばパナソニックのテレビ事業と東芝のテレビ事業の戦いで、会社毎の戦いとはスコープが異ると言うことです。従って、ここで言う競争戦略は事業毎の競争にフォーカスしていきます。
ところで、事業のゴールってなんでしょう?色々あると思いますが、利益を長期的に確保することが大切だと思います。勿論CSが一番大切!シェア、成長、社会貢献、企業価値の向上、ESと多々あります。しかし、利益を確保しなければ上記の全てを行う事はできません。従って、ゴールは長期的な利益の確保、目的はCSと言ったところでしょう。但し、この考え方はヒトによって様々かもしれませんね。
仮に、利益にフォーカスすると、利益を得やすい環境や事業というのが存在するでしょう。ビジネスの例の前に、スポーツの例を見てみましょう。例えば、世界的に成功しているサッカー選手。これが20年前だったら、今と同じように沢山の報酬を得れていたでしょうか?きっとまだまだ日本ではサッカーの認知も薄く、今と同等の金額を獲得することは難しかったのではないでしょうか?例えば、卓球の一番の選手と、野球の一番の選手では、業界が違うので、同じ一番でも野球の方が大きな報酬を得やすいのは明らかです。
極端な事例を出しましたが、これはビジネスにもあてはまります。そこで、競争戦略を考える場合はまず自分達の事業が面している業界の構造をおさせます。いわゆる5force分析です。例えば、現在の航空業界は極めて利益を得にくい構造になっていますが、製薬業界は未だ利益を確保しやすい業界です。製薬業界が利益を得やすい構造の理由は買い手の交渉力を分析を見れば明らかです。多くの薬は保険の対象ですから、価格の7割は国が負担する、という構図を見ると航空業界のそれとは明らかに異なります。業界の大雑把な構造が分かれば、戦略を立てやすくなります。つまり、どのように違いを構築するのか?の道筋です。
誤った戦略立案
早嶋です。
戦略の本質は違いを作ること。そのための方法論は様々にあります。しかし、多くの場合誤った場合があります。例えば、アクションリストの羅列。戦略的な価格設定を◯◯円にする、コストを◯◯円削減する、商品のスペックを◯◯まで実行する、等々です。悪くはありません。しかし、これらをどのようにつなげるのか?どのように実行していくのか?そのシナリオが無いと実行に結びつきにくいのです。個々の要素がどのように絡んで実現できるのか?イメージが描けるように示すことが大切です。
例えば、テンプレートとしての戦略論。つまりフレームワークありきで、マス目を埋めていく戦略立案です。SWOT分析やVC分析などを行うのは良いですが、それらがバラバラになっており、やはりどのようにつながり、絡んでいるのかのイメージができない。子供は塗り絵を与えると楽しそうに色を置いていきます。いつでもどこでも気軽に出来ます。しかもやっている感がたっぷりです。でも戦略は塗り絵ではありません。考えないで、ただただひらすらに、フレームワークに沿って戦略ができるという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。フレームワークはあくまで考え方や視点のベースです。テンプレートであって完成ではありません。
例えば、ベストプラクティスの模倣。この業界は◯◯を行うと成功する!ということを丸っとスルッとコピーする。前回、経営はカンニングOK!というタイトルでコメントしましたが、やはり経営者のビジョンや置かれている環境、業界の状況や組織によって全く違います。従って、ベストプラクティスをただ単に模倣して戦略ができるわけが無いのです。
例えば、ビジネスモデル。一見、これも戦略のように見えあすが、基本は取引のやり取りや情報の流れをまとめたモノです。どのような仕組みで利益を上げるかは分かりますが、イコール戦略ではありません。このビジネスモデルをどのように実現するのか?というストーリーも大切です。
大きな企業になると戦略を立案するスタッフが専属でいます。しかし、前回もコメントしたように個々の分析がメインで綜合する作業を怠っています。つまり個々のパーツを一生懸命に作っているけれども、プラモデルを組み立てる役割の人が不足しています。分業は上手くいっているかもしれませんが、断片的になりがちです。コンサルに丸投げでストーリーが全く無い場合もあるかも知れません。昨今は様々な情報が瞬時に入るので、前述したよにベストプラクティスの模倣に終わっているかも知れません。もっとひどいところは数字の羅列で終了!というところも少なくありません。
戦略は実行して意味があります。実行しなければ意味がありません。戦略に関わる人の全てが何をするのか?イメージがつくことが大切です。全体像を共有した上で、自分の役割を遂行することが大切です。そのためには、個々を綜合する作業は極めて大切なのです。
それから戦略は実行しないと検証できない事もあります。従って、こうなるだろう!というよりは、こうしよう!という意思が大切になる場合もあります。ある意味、皆が信じて行動できているか?ということが大切になるかも知れません。どちらかといえば右の脳みその役割になるかも知れませんが、皆が信じて行動する。そのためには全体のつながりを皆が意識して納得できていることが大切です。そういう意味で戦略は未来に向けた意思とも言えるでしょう。
さぁ!皆さんも戦略を立てて、それを綜合してみましょう。きっとワクワクするコトでしょう。人は将来を考えると脳みそが活性化するそうです。思わず人に話したくなる様な戦略を構築して実行しましょう!
カンニングOKなビジネス。
早嶋です。
戦略の本質は違いを作ること。そのためにアナリシス(分析)とシンセシス(綜合)を繰り返しますが、どうも分析で終わって、その後どうするの?が不足しています。アナリシスの部分は科学なので誰でも手法を学べば出来ますが、シンセシスの部分はアートです。そのチームや環境や方向性など、絡みあう様々な要素をベースに結びつけて行く作業が必要です。そう、シンセシスの作業を行い継続することで模倣が極めて難しい、しかしその組織にとっては再現性が高い違いができるのです。
ビジネスはカンニングOKの世界です。他の企業や競合する企業、代替する企業を模倣することは可能です。しかし猿真似したとて、上手くいかない場合があります。というか殆どの場合、上手くいかないでしょう。考えてみれば当然です。その模倣している企業と真似している企業ではあらゆる面で前提条件が異なるからです。それなのに、右から左で真似をする方も少なくありません。そして、どういう分けか、それが戦略的に行っている!などと言っている場合も多いです。
大切なのは、違いは一気にできるモノではないということです。その企業が置かれている状況や組織の要因など、様々な要因を絡ませていきながら構築していく作業です。従って、違いを作るためには、違いを生み出すためのコンセプトが明確で、それぞれのコンセプトを明確に結びつけて組織に提供することが大切です。ある企業の一瞬を真似してもいけない。もし、徹底的に違いを作るのであれば、ある企業の一瞬ではなく、その企業が行っていることを一つ一つ動画のように再現する必要があります。これはさすがに難しいでしょうね。
と言うことは、静止画を真似したとしても、その写真を結びつけるのは、模倣している企業によってやり方が千差万別でしょう。しかし、その結びつきが上手く行けば、それは真似では無く、全く新しい違いが産まれるかも知れません。そういう意味でカンニングOKなのです。
経営と理屈
早嶋です。
経営学と書くとアレルギーを示すヒトが多いと思います。そして、経営は学問として片付けられるほど簡単なものでは無いと主張するでしょう。実際、感覚的なものですが、2割くらいは理屈で表すことができますが、のこりは経営者の勘や経験や運などです。理屈では表せない部分です。しかし、一方でその勘や経験や運などを継続的に自分の経営と結びつけている人がいます。これは何でしょう。
理屈とは何かと何かを結びつける考え方、つまり因果関係を明らかにすることです。自分の経営を振り返り、何故成功したのか?何故失敗したのか?更に成功するためには何をするのか?失敗を事前に防ぐにはどうするのか?現状と将来の結果を結びつけて考える必要があります。これは理屈です。そして、その時の考え方をサポートするのも理屈です。つまり、何もしらならい手探りの状態で将来と現状を結びつけていくよりは、様々な理論を体系化した中で結びつけて行った方が将来の再現性が高くなることも考えられます。
経営学と実際の経営を結びつけて考えている時に感じることがあります。現象はコロコロと変わっていますが、それを考えるための根底やベースとなる考え方、つまり理論は変わらないと言うことです。ってことは、変わらない理論を知っていて経営を行っているということはとても軸足が固定されてパワフルに経営ができるということです。
文殊の知恵か、船山に登るか
早嶋です。
三人寄れば文殊の知恵。文殊とは知恵を司る仏で文殊菩薩のことを指します。特別に賢い者では無くとも、三人あつまって相談することで何か良い知恵が浮かぶということです。坂口安吾の探偵小説とは、の一節に「推理小説ぐらい、合作に適したものはないのである。なぜなら、根がパズルであるから、三人よれば文殊の知恵という奴で、一人だと視角が限定されるのを、合作では、それを妨げる。」とあります。なるほど、確かにそうですね。
一方で天才を集めても、平凡な結果しか出ないこともあります。この場合は、船頭多くして船山に登る、です。指図する人が多すぎると統率がとれずに意に反した方向に進んでいくということです。何でもかんでも力を合わせればOK!と言うわけではないのです。先の一節の続きで、「知恵を持ち寄ってパズルの高層建築を骨組堅く組み上げて行く。十人二十人となっては船頭多くして船山に登る、というおそれになるが、誤認ぐらいまでの合作は巧く行くと私は思う。」と、こちらも確かにそうです。
さて、この違いは難でしょうか?烏合の衆、つまりただの集まりか、共通のゴールを持ったチームか。早嶋はそう思います。現在、三社が共同で特許を取り、その技術をベースに市場展開するプロジェクトのコンサルを行っています。A社、B社、C社とします。3社共通のゴールは、この技術をベースに社会に役立てて、かつ、自分たちも利益を上げることです。しかし、コンサルに入る前は、3社がそれぞれ動いていて、情報の共有がうまくなされていませんでした。
A社とB社が知っていてもC社が知らない。B社とC社が知っていてもA社が知らない。C社とA社が知っていてもB社が知らない。なんかじゃんけんのような関係で3社が共有しないまま仕事が進んでいるようで、実際は停滞していました。そこで行ったこと。3社を集めて共通のゴールを設定する。3社の役割を明確にして、互いが行うことを共有する、です。そしてプロジェクトの直近は定期的に情報共有の会議と次のアクションを決定する会議を開催しました。
たったこれだけのことですが、文殊の知恵が出てプロジェクトが円滑に進み始めました。共通のゴールを設定して、その達成に旗振り役をつけること。言葉ではリーダーになるのでしょうか。文殊の知恵になるか、船山にのぼるか。ちょっとしたキッカケですが、やるかやらないかで大きな違いが出てきます。
未来を創る
早嶋です。
経営者の仕事は未来を創ることだと思います。今忙しく行っている仕事が過去の延長によるものであれば、その解決を急いで行い、未来を考える時間を確保することに勤めることも大切です。過去の課題を解決しなければ、今が無い。従って、過去の解決が先だ。このような議論をするとかならず、パラドックスであることに気付きます。まさに、鶏と卵です。
しかし、未来の仕事を創ることをしなければ、何のために過去の課題を解決するのか?の方向性が見出せません。結果、これまで通りの仕事の仕方になるので、過去の継続を永遠と続ける結果になります。方向性がありません。更に、過去継続してきたやり方を否定するつもりはありませんが、その方法で行動を続けていた結果が今であれば、少なくとも同じ仕事の仕方では飛躍は無いことは分かります。
これは内部環境によるものです。しかし昨今、外部環境は過去と比較して総じて最悪です。経済は低迷し、ボーダレス化とグローバル化のにより、競争が激化。大手と中小の住み分け、国境の住み分け、業界の住み分け、全てが崩れてきています。加えて生産労働人口の減少により、国内の消費がますます低迷することも明らかです。
少し考えるだけでも、外部環境の要因で業績が良くなる事はありません。であるならば、やはり過去の継続では、今後は頑張ってもステイ、通常はダウンになることが明らかです。
そこで再び、未来を創る仕事が経営者がおこなうこと。こう考えると腑に落ちるでしょう。時間は24時間365日平等に与えられています。過去の仕事に追われていて時間が無い。これはイイワケに過ぎません。時間を今創ることができない人は、一生、過去に追われる仕事になるでしょう。
では、未来を創る第一歩って何をするのか?早嶋は考えます。進むべき道を明らかにすることだと。昨今の外部環境をあれこれと分析することは大切です。そして先を読む先見の知も必要です。しかし、そして企業として個人としてどうするのか?ゴールや夢を示すことが大切です。
経営者或いはリーダーは進むべき道を示し、そのビジネスモデルによって、組織や企業がどのように変化していくのか?チームや従業員に示す必要があります。そして進むべき道が明らかになったら、次はその道の歩み方、戦い方を示す必要があります。どう戦うかを明らかにするのです。攻めるのか守るのか。そもそも戦わないのか。
上記を読んでなんとなくわかっているけれども、一歩をどう踏み出すのか?そう考える人は少なくないと思います。その第一歩は形式値にすること。つまり、自分以外の誰かが見て分かる形にする。文章にする。絵にする。様々な方法がありますが、最も簡単な方法は、人に話すことだと思います。そして話を聞いてくれる人たちが、その概念や方向性を整理してくれれば最高です。自分で絵にしたり、整理する。案外難しい仕事です。
コンサルタントの仕事に、上記のような事を提供するのはありだと思います。モヤモヤをスッキリする!そんな背景から生まれたビジネスモデルです。
聴覚とマーケティング
早嶋です。
SMD(サウンドマーチャンダイジング)、言葉としては聞き慣れないと思いますが、その手法は古くから活用されていました。視覚的に訴える販促が主流ですが、こちらは聴覚を刺激するもの。近年の脳科学では、聴覚は注意を喚起するのに加えて、感情を左右する影響も強いことが分かっています。戦略的に音を使い、科学的なアプローチのもと販促に活用する、それがSMDです。
音と言えばヤマハ。厚さ1.5mmのTLFスピーカーはSMDの可能性を促進しました。JR新宿駅の北通路には、音がなる看板、サウンドサイネージなるものがあります。人が通るたびにセンサーが反応して、CMで流れているメロディーと歌が流れます。通りを歩いていると、「何?」と思わず看板に注目するという仕掛けです。
この広告を手掛けている印象メーカーの検証によれば、消費者がソフトドリンクを選択する基準はCM⇒店頭認知、ということです。従って、CMと看板を連動するサウンドサイネージは、店頭認知を促進する効果を期待しているようです。
仕事がはかどらない時、試験勉強に集中できないとき、何か好きな音楽をかける経験、一度や二度はあるでしょう。BGMによって顧客の気持ちがある程度かえることができれば。このような試みのもと、関西圏の食品スーパーでは次のような実験を行っています。
時間帯、客層に応じて、1日7回BGMを切り替える。例えば、開店時の9時代はモーニング・クラシックとともに来店客がゆっくりと買い物を楽しめるように演出します。夕方のラッシュ時間はJ-POPボサノバなどを流し、効率的な買い物を後押しします。そして夜9時の閉店時間には再度ボサノバを流し時間にギリギリの焦りを解消できるように工夫しています。
これらは同質の原理と呼ばれ、聞き手の気分にあった音楽を提供することで、精神的に良い方向に向かわせる音楽療法の原理も活用されています。
脳科学が発達すると、ビジュアルだけのマーケティングから五感をフルに刺戟したマーケティングがどんどん行われるようになります。そして、いま人の無意識までをコントロールして、無意識に購買を促す方法が真剣に研究、導入されています。ここまでくるとマーケティングって一体なんだろう?と疑問を投げる方も多いかもしれません。
しかし、マーケティングの基本は顧客の創造です。顧客の欲求を満たすことが先決です。様々なテクノロジーを顧客の欲求を満たす方法に活用していけば、その分消費者もよりハッピーになっていくことに違いありません。
フレーミングとマーケティング
早嶋です。
世の中の傾向です。新しい言葉が産まれる事によって、その概念がポジティブになったり、ネガティブになったりする傾向が観察できます。
例えばニート(NEET)、これは、Not in Education、 Employment or Trainingの略称で教育、労働、職業訓練のいずれにも参加していない状態をさします。無職、無関心、無学といえば聞こえが悪いですが、ニートとなると何となく悪くも良くもなくニュートラルに聞こえます。職業はニートです!と平気で紹介されても、軽く流すことができそうです。
例えばウィッグ。これはカツラの別の表現ですが、なぜかポジティブに聞こえます。カツラをつけている!となるとネガティブな印象があります。しかし、ウィッグです。となると、なんだかファッショナブルな印象を受けます。
例えばバツイチ。離婚経験のある人を指す言葉ですが、離婚+経験者となると、とても重たい雰囲気ですが、バツイチとなると、なんだか軽く聞こえます。不思議です。
このように、言葉の表現の仕方一つで捉え方が変わる、心理学ではフレーミング効果とも呼ばれます。マーケティングでも良く使われていますよね。滋養強壮剤にはタウリンが含まれているものがあります。タウリン1000mg配合!と表現されると、なんだかとっても効果がありそうです。タウリンが何にいいのか?ということよりも1000という数字が強調されるからです。しかし、1gです。
フレーミングは、購買障壁を下げる効果もあります。例えば、男性からすると、スイーツを購入するのは何だか抵抗があるというのが統計で出ています。そこで、商品名やキャッチコピーに男の◯◯、とか俺の◯◯とかつけることで、男性向けだから、買っていいんだ!とレジに持って行きやすくなります。コンビニを見てみると、俺のエクレアや男のティラミスなど、実に多くの商品に観察できます。従来は女性を想起させる商材で、男性の需要が見込める商品には、この傾向が強くなっています。
逆もあります。男性の世界に女性が出てくる。◯◯女、◯◯子、◯◯ガール等です。歴女、鉄子、美ジョガー、山ガール、森ガール、野ギャル等々。
上記の例を参考に、自分たちの商品、待ちのPR、個人のPRなどにフレーミングを使ってポジティブにすることによって、印象を良くすることができる、様々に応用できそうですね。
ARとマーケティング
早嶋です。
こどもの頃に見ていた映画の世界がドンドン現実になっていますね。昔は、小さな端末から画像が出てきて、その人と会話ができるツールなんて夢のまた夢。それが今はスマートフォンで誰でも手軽に当たり前に使える世界。テクノロジーの進歩って素晴らしいですね。
さて、そのような技術の一つにAR(Augmented Reality)があります。日本語では拡張現実と称されます。この技術は、実際に目で知覚している風景や動画、イラストや文字などに何らかの媒体を使って電子情報を重ねる技術です。GPSと端末をリンクさせ、位置情報を基に、店舗への誘導、クーポンの配信、観光案内等々、様々な分野への応用が期待されます。
例えば、今年の5月に資生堂がオープンした銀座の総合美容施設であるシセイドウ・ザ・ギンザには、ミライミラーというARを使ったメークシミュレーターがあります。A4サイズ程度の鏡のようなモニターに自分の顔を写すと、好みのメイクをした自分が現れるという仕掛けです。機器に内蔵されたモニターで顔を認識して、そこに仮想的なメイクを加えて、モニターに映し出すのです。
化粧品を選ぶときに、メイクした自分の姿がその場に映し出されるので、イメージがしやすくなり、購入につながる。そんなツールでしょう。勿論、化粧品のノリや質感などは体感できませんが視覚的なイメージは明確になります。この技術は、アパレルショップやメガネ屋さんにも応用できますね。アパレルだったら全身の画像を認識した後に、好きな洋服を重ね合わせて、色見や全体のコーディネートを確認できます。髪型やメガネなどの小物を合わせたトータルコーディネートが可能になるので便利ですね。Webの世界に応用すると、その人の体系を上手く取り込むことができれば試着しなくてもサイズの確認がある程度正確にできるようになります。極めて便利で拡張性の高い技術だと思います。
スタジオジブリの映画、コクリコ坂からの劇場公開に合わせて、KDDIもARの技術を使ったプロモーションを行っていました。ここではARを使ったセカイカメラというアプリケーションを利用しています。映画の舞台となった場所を、セカイカメラを通して見ると、あたかも50年前にタイムスリップしたかのように古き良き日本の風景が映し出されます。
アプリケーションに事前にダウンロードして、その場に行き景色を媒体を通じて映し出す。すると、そこに媒体を通して仮想の映像が現れてくるのです。従来は、その場所に看板やポスターを張っていたでしょうが、この仕掛けだとそのコストと手間が省けます。また、場所の確保や土地や建物の保有者に対して一つ一つ許可を取る手間も省けるでしょう。
この技術は、例えば観光地に他言語での案内を画像に重ねて表示させることもできます。例えば、バスの窓にこの装置を付けることで、車窓の風景にそのロケーションにあった情報提供も出来るでしょう。新幹線の車窓に景色と共に、その土地土地のニッチな情報が得られるようになる、そんな世界もすぐそこにあるのです。
スーパーや百貨店でのPOPにも応用が期待されます。先行するデジタルサイネージは、商品の数やPOPの数だけハードを準備する必要があるのでコストがかかります。しかし、ARを利用することで、消費者のスマートフォンに適宜商品の情報やクーポンがその場で見れるようになります。
ただ一方で、何でも間でもカメラを通して見ることになりますので、消費者の負荷もかかるでしょうから、技術の進歩以上に普及のスピードは遅くなるでしょう。実際に、東急ハンズの梅田店ではARを活用したPOPサービスを実験的に行っています。担当者の声では、スマートフォンをかざして情報を入手する人はまだ1割程度だそうです。スマートフォンで街中を見たり、商品を見ていると盗撮やデジタル万引きという疑いの目をかけられるかもしれない!というネガティブな動機が働くのも原因の一つでしょうね。
最近は、技術の進歩が著しいですが、実際に導入するとなると、心理面の抵抗によって使えない!導入が遅れる!というのが多々ありますね。
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