新規事業の旅35 人間は機械の一部になる

2023年2月7日 火曜日

早嶋です。

工業化が進むことで人間は機械の一部になる。映画、モダン・タイムズの中でチャップリンは強烈な風刺を行った。現在のGAFAMに代表される様々なプラットフォームとスマートデバイスにより、その可能性は更に高まっている。

3年間のコロナで、飲食やサービス業の質が一気に低下している。人手不足という名のもとに、サービスを簡素化し受付を自動化するホテルと飲食店。

ホテルは、アナログで対応していた受付を、ホテルが行う代わりに、顧客が機械を操作するようになる。業務フローの見直しは無く、チェックインを不要にするなどのトランスフォーメーションは行われず、機械の脇には人が立っており、顧客が機械を操作するのを眺めている。アプリを共有化し、チェックインを不要にするなどすると、機械もそのホテルの人間もいらないのにそのようなアイデアは出せないらしい。

飲食店でも注文はアイパッドになり、配膳はロボットになる。たまに歩いている人間に料理の話をしても答えることができない。事前にアプリを共有し、席の予約と事前注文をして、席に座ったタイミングで料理が届くなどの仕組みは無く、昔の行動をそのまま置き換えるのみなのだ。

ホテルでも、飲食でも、人間に質問をしても、操作のこと以外は答えることができない。料理のことやホテルの周辺のことはマニュアルに書かれていないのか。

もちろん、上記のホテルや飲食店は客単価が一定以下なのでまだ我慢できる。しかし、客単価が上がっても、サービス業のプライドが感じられない。なんとなくこなしているに過ぎない。誇りがあるのか、無いのかと聞くとおそらく無いと思う。自分自身がサービスを受けたことも無いのだろう。体験したことが無い創造を生み出すのは人間の能力。与えられた以下のアウトプットしかできないのは機械化されゆく過渡期なのだろうか。

本来、人は可変できないものと思う。あの人のサービスは良かった。また行きたいと思うことが激減した。寿司屋はスタートを揃え、2万、3万と取る。それを当たり前としている業界も疑問だ。若い板前や経験が乏しい板前で食事をしても面白くない。この値段を出せばネタは良いに決まっている。しかし杓子定規のトークで終わり、ハワイの鉄板ショーかと思う戯言をコピペするのだ。2回目はまずない。

旅館も昔は普通に過ごせていたた。粗相がないからだ。近年はいちいち気になってしまう。当たり前ではないのだ。サービスが劣化し、器と軸が季節はずれで花が枯れている。おもてなしをする以前に自分たちの文化を磨かいて欲しいと思う。過度なサービスや奇をてらったディズニーランドみたいなのはいらない。自分の家の如く、懐かしい感じや普通に過ごせる空間を求めているのにだ。

世界がIT化され、システム化されることで個人が失われている。人間はIDで管理され、人のアイデンティティは消える。DBの情報を機械のように機械化された人間が読み取り、記憶や感情を外した状態で対応する。心がなくなっている。

昔のように、近所のおばちゃんが声をかけ、商店のおじちゃんからみかんをもらい、途中で隣のおじちゃんに家まで乗せてもらって変える。個人が個人として組織の中で認知され、互いの背景や感情を理解したつながりがあった。ITの世界は、互いを知らないのにDBで情報が共有されているので互いが知っているのだが、そこには感情がない。

しかし、これは皆が便利さを追求した結果の姿なので、逆戻りすることは無いのだろう。

新規事業の旅(36) デジタルの弊害を受け入れる
新規事業の旅(35) 人間は機械の一部になる
新規事業の旅(34) 複利の効果
新規事業の旅(33) ストレッチ目標
新規事業の旅(32) 需要と供給
新規事業の旅(31) ジョブと障害とキャズム
新規事業の旅(30) OEは最早役に立たたない
新規事業の旅(29) 売り手のトラブルは売り手の無知から
新規事業の旅(28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
新規事業の旅(27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
新規事業の旅(26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(23) 道具の使い方
新規事業の旅(22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(18) アンゾフ再び
新規事業の旅(17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(16) キャズムを超える
新規事業の旅(15) 偶然と必然
新規事業の旅(14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(13) ポジションに考える
新規事業の旅(12) 山の登り方
新規事業の旅(11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(10) NBとPB
新規事業の旅(9) 採用
新規事業の旅(8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(6) 若手の教育
新規事業の旅(5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(4) M&Aの成功
新規事業の旅(3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(1) 旅のはじまり



コメントをどうぞ

CAPTCHA