早嶋です。
最近テレビや紙面でも見聞きする「ベンチャーキャピタル(VC)」の実態はどのようなものなのでしょうか?
想像以上にハードな仕事ではありますが、社会課題をクリアするために、世の中にイノベーションを起こすエコシステム。実は、VCは単なるマネーゲームではなく、我々の社会を良くする担い手でもあるのです。
(イノベーションを生むエコシステム)
ソフトバンクグループの孫さんは「世界はいつも「発明家(起業家)」と「資本家(投資家)」の2つによって進化を遂げてきた」といいます。19世紀は蒸気機関を発明したジョームズ・ワットと投資家のロスチャイルド家がその代表です。21世紀も同様でスティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツ、ジョフ・ベゾスのような起業家に対してベンチャーキャピタル(以下、VC)のお金が投資されたことで世界は大きく変化しました。
一方で多くの日本人ビジネスパーソンにとって、VCは縁の無い世界です。日本は伝統的な大企業のプレゼンスが強く、スタートアップは経済の主役になり得ていません。しかし歴史を見れば、発明家と投資家の関係が常に新たな産業を創造しているので無視できない存在になっているのです。
グーグルは、米国において12番目の検索エンジンで後発組でした。初期を支援したVCが名経営者のエリック・シュミットと資本を提供して成長しています。
コロナで有名になったスタートアップであるモデルナ。ウィルスの遺伝子データを入手してからわずか2日間でワクチンの設計図を作り、42日間で臨床試験に使う1本目を完成させました。
21年末時点で世界最大のユニコーン企業はショート動画SNSのテイックトック(TikTok)を運営するバイトダンスで直近の時価総額は39兆円で、当時トヨタが34兆、ソニーが18兆なのでその規模がわかります。
(ベンチャーの投資ステージ)
ベンチャー企業を見ると「なぜ銀行からお金を借りないのか?」と思うことでしょう。銀行の融資はローリスク・ローリターンです。何か事業を行う際に、確実に売上が手元に入り、それでも元本や利息が返済できない際には、土地や建物を担保にお金を貸す事業が銀行です。
しかしスタートアップの成功に保証はありません。ハイリスク・ハイリターンの事業に投資をします。しかし世の中に革新を与える企業はこうした不透明な事業であり、そこに資金を提供するのがVCの役割になるのです。
VCが投資をする際、成長段階により異なる投資ステージがあります。当然、創業間もない頃がハイリスクで、成長した後はスタートアップ企業でもリスクは低減します。
アイデアや事業計画をベースに、経営陣だけがいる時期が「シード期」です。次に、プロダクトやサービス開発を行い、初期の顧客を魅了すべくテストマーケティングを繰り返す時期が「シリーズA」です。更に、そこから急成長の道筋が見え、事業として本格的に立ち上げる時期が「シリーズB」です。そしてここまでが伝統的なVCが支援するステージです。
VCにも特徴があり経営陣を評価する、市場を評価する、プロダクトやサービスそのものや、その技術力を評価するなど様々です。スタートアップが成長するフェーズでは、徐々に体制ができる「シリーズC」や「シリーズD(上場等)」などもあり、このフェーズの調達額は数百億を超える場合もあります。また、近年のトレンドは上記のシリーズ後に「グロース投資」としてすでに成長したスタートアップに更に投資して成長を盤石にする取り組みも観察されます。ソフトバンクのビジョンファンドは、大きく分類するとこのグロース投資のプレーヤーになるのです。
(VCの誤解)
国内ではVCに馴染みがない分、誤解も多いです。最も多い誤解は「品評会投資」です。VCはスタートアップに対してマネーの虎で放映されたように起業家の情熱やアイデアに投資をするという誤解です。
しかし実態は全く異なります。過去に成功した起業家(シリアルアントレプレナー)や優れた技術を持つ企業はあっという間に資金を調達します。従い、プレゼンをして売り込むのはVCである投資家サイドなのです。VCはマネーゲームを行うのではなく、社会課題などを解決するイノベーションを加速するための付加価値競争を行っているのです。そのためVCには自身もスタートアップで成功した経験を持つ方が多く属します。
2つ目の誤解は、「直感投資」です。話としては面白いでしょうが、一度プレゼンを聞いて投資を判断するなどあり得ません。可能性のあるスタートアップをリストアップしては情報を集めます。ステージごとに情報を整理しながら投資前の調査を繰り返し行うのです。またVCによっては過去の膨大な投資経験を活用して自分たちの投資リスクを下げる取り組みも当然に行っています。
従い、VCがスタートアップ企業に対して「一目惚れ」で投資をすることは有り得ないのです。
(VCの仕組み)
VCの一般的な登場人物は3者に別れます。それぞれLP、GP、起業家です。LPはいわば資金の出し手です。米国では大学基金や年金基金、保険会社などの機関投資家がメインです。当然、業として投資を行うためロマンではなく長期にわたる高いリターンを期待します。日本では、機関投資家は少なく、一般の大手企業が出し手になることが多いです。LPとVCは約10年の付き合いになります。その間、投資したお金は自由に引き出せません。一定期間出資した金額が塩漬けされる代償として他の資産運用よりも大きなリターンをVCに期待するのです。ざっと10年で3倍以上を期待してLPはお金を預けます。
GPはまさに投資家そのものです。ファンドを立ち上げ、LPから預かったお金を投資しリターンを得ることを託された責任者です。預かった資金を手元に有望なスタートアップを見つけて投資をするリスクマネーのプロなのです。GPの成功要因はまさに「ダイアの原石」を見つけることです。
GPは通常LPから資金を預かり10年間かけて膨大なキャピタルゲインを狙います。ビジネスモデルとしては、預かり金額の2%ほどの運用手数料で事業を回します。例えば50億のファンドだと、毎年1億の手数料でファンドを運営します。スタッフの給与、オフィス、出張費、将来の有望な起業家への露出。全てを賄う必要があります。加えて、投資した金額を超えるリターンに対しては、超過した利益の20%を成果報酬として得ることができます。50億のファンドが3倍の150億のリターンを得たとすれば、上振れの100億の20%はGPに、80%をLPが出資比率で分けるのです。このように考えると想像絶する規模の資金を手に入れることが可能です。
起業家は事業を立ち上げる発明家です。わずか数人でスタートし、限られた資源で実現しなければなりません。お金は先に出ていき、プロダクトは後で出来上がります。その間常に資金ショートとの戦いです。そこで会社の所有権でもある株式の一部を譲渡する代わりに資金を得て事業の実現を達成するのです。
VCはお金の出し手であるLPと、リスクを見極める仲介者のGP、そして起業家によって成り立つイノベーションを実現するためのエコシステムなのです。
(まとめ)
GPの仕事は「美味しく」感じますが極めてハードな仕事です。少数精鋭で有望な投資先を掘り起こす日々。可能性ある企業のリサーチと投資先のCEOとの面談。毎年に数百人とのCEOとの面談から50社程度の企業とタームシートを使って投資額とシェアの割合を交渉。運良く投資できる企業は年に数社から10社程度。その後も資金面以外の支援を提供してリターンを得られるように支援するのがGPの役割なのです。
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2023年7月 のアーカイブ
新規事業の旅66 ベンチャーキャピタルの実態
新規事業の旅65 高齢者をターゲットにした事業
早嶋です。
高齢化問題。今後の日本がこのままでは心配ですね。確かにそうですが、視点を変えるとシニア市場は数少ない成長産業であり、彼ら彼女らが保有する金融資産を動かすことができれば、莫大な事業が可能になります。チャンスと捉えた場合、まだ本気で参入している企業はほんのわずかな市場でもあります。
国内では、総人口が減少する一方、65歳以上の人口が約3,600万人と過去最高を記録し、高齢化率でも世界一を誇ります。その超高齢化社会を社会問題として捉える報道は日夜続きますが、一方で数少ない成長ビジネスとして捉える企業、組織、団体、個人はまだ少ないです。
(日本の高齢化の現状)
2020年の日本の総人口は12,571万人で65歳以上は3,619万人でした。高齢化率は28.8%。65歳以上の高齢化率は日本が1位で2位はドイツの21.7%、3位はフランスの20.8%です。日本が世界に先駆けて高齢化社会を迎えています。
日本の高齢化の特徴は、65歳以上から90歳の人口が一定以上の人口があり、2020年と比較しても2030年の予測では減らない、むしろその数が会増加することです。そのため更に高齢化率は伸び、2030年は約33%になる予測です。
電通「電通報超高齢社会の課題解決ビジネスNo.1」を見ると、超高齢化社会の課題は、「消費高齢化」「労働力減少」「社会保障費高騰」「過疎化進展」「コミュニティ希薄化」「単身世代増加」「高齢者の詐欺、事故等のトラブル増」などがあります。そして、個人の課題としては、「歩行・動作困難」「感覚機能低下」「認知機能低下」「日常生活の困難」「社会的な孤立」等が考えられます。しかしこれらは、全てが問題解決の機会であり、経済低迷が続く日本には珍しいくらい、数少ない成長産業と見ることができるのです。
(シニア層の実態)
サントリーウェルネス「実感年齢白書2022」では、49歳からが「おじさん/おばさん」で、約62歳からが「シニア」のイメージ。「おじいさん/おばあさん」は69歳からで、「お年寄り」は約73歳からのイメージでした。従い、高齢化のターゲットの呼称はシニアとした場合が適切とし、以降シニアと表現します。
高齢化と捉えると、上述のように様々なマイナスのイメージがあるでしょうが、実際に身近なシニア(62歳以上)を想定してみてください。実際は、スマホも使えるし、ネットショッピングも、運動も普通以上に元気な方が多いことに気が付くと思います。
実際、各種調べを見てみると、77%のシニアはスマホを所有。23%がネットショッピングを活用。60代の7割、70代の4割がLINEを活用しています。更に労働の意欲も高く62%が働けるうちは働きたいと考えています。そして3人に1人の割合でお一人様です。そのためか75%のシニアは盆暮正月以外にも孫と会うための工夫やきっかけつくりを行っています。更に、五輪選手や身近な知事をTVの前で応援する「推し活」ならぬ、親子目線で自分の一押しの人に情熱を注ぐ活動を行っています。
実際、シニアの特徴は子育てや仕事が落ち着き、金銭的にも余裕が出てきたため、昔あこがれていた趣味や購買、旅行にもお金が時間をかけやすくなっています。
車ではBMWのMINIが人気で憧れの外車のエントリーカーとして親しまれています。バイクでは若い頃手が届かなかった高額のバイクや排気量の大きな機種が人気です。それからプロ以下アマチュア以上のスキルを持つ方々が多く、カメラや動画の編集など、自分の趣味を活用したボランティアや小遣い稼ぎに没頭する方も増えています。この特徴はあくまでも時間を楽しみ、社会に役立つことが目的なので、若手のクリエイターからするとある意味恐怖な存在です。
(シニアのセグメンテーション)
一言でシニアと言っても、実はかなり様々な傾向や特徴があります。これは凡その年代によって分けることができます。
85歳以上のシニア。戦前の生まれの方々で戦争経験者です。現在半数が介護認定者で両親は明治大正生まれです。終活、相続、介護、嚥下などが注目する市場になります。市場規模は約750万人です。
75歳以上のシニア。戦争を知る世代で学生運動が盛んな時代を過ごしています。約3割が介護認定者で三種の神器がTV、冷蔵庫、洗濯機でした。シニア住宅、資産形成、終活、国内旅行、健康食品などがキーワードで市場規模は約1,300万人です。
72歳から74歳。少し細かいですが段階の世代です。高度成長経済とマイホーム神話で日本を支えてきました。実に95%以上が現役バリバリの元気な方々です。健康、旅行、資産形成など市場としても魅力的な620万人です。
60歳以上。ここがポスト団塊と呼ばれ、約2,000万人の市場規模です。家電など物欲があり、朝ドラ、専業主婦、仕事人間、ジャンプ創刊、首都高開通、リタイア後の人生を志向中という状況です。起業や就労、社会参画、長期滞在mリゾート、海外、若さなどが刺さります。
そしてシニア予備軍のバブル世代。53歳から59歳です。1,200万人の市場規模です。徐々に生活が楽になり、まさに消費意欲が旺盛で、若い時のポップカルチャー、スキー、ジュリアナを憧れ、仕事半分遊び半分の充実生活を掲げて経済に活気を与えています。
(シニアビジネスの本命は埋蔵金にあり)
日本の家計金融資産の総計額は約2,000兆円にも上ります。そして約6割がシニアの所有です。金額にして実に1,200兆円です。上述のシニアのセグメントで見ても様々な需要があることが鑑みれます。
生活関連では、就業支援、住み替えやリフォーム。移住支援やレジャー、エンターテインメント、フィットネスや旅行に金融です。
医療・医薬関連では、医療品、医薬品、診断機器、医療関連サービス、リハビリ、メンテナンスなどです。
介護では、家事支援、介護施設、介護食品、介護用品などがあります。家庭の支援から考えると、非常に膨大なマーケットとして捉えることができますね。
そして、特徴的な分野はエンディングです。終活、生前葬、葬儀などは無視できないマーケットです。
(シニアビジネスのポイント)
統計的な情報だけを見た場合、明らかに成長産業です。しかし一方で、巨大な成長産業にも関わらず、シニアビジネスを上手く取り入れていない企業が多いです。その問題は、シニアの実態の理解が不足していることが問題です。事業を行う場合は、やはり社会課題として捉え、儲けばかりを考えないでシニアを満足させることにフォーカスすべきです。それからシニアビジネスは介護だけではなく、上述のシニア予備軍で見たように、長い人生フローを鑑みた設計が大切になるのです。
シニアが使えるお金の殆どを貯蓄に回して、実際に使うことなく天国に行く最大の理由は、日本の将来を誰よりも不安に思っているからだと思います。そこでシニアの目線になった老後の不安が何か、それは妄想か、事実かを理解して寄り添うことが大切です。そしてシニアの心理的なバイアスを取り出すこともポイントです。我々世代で理解しにくい悩みや不安や葛藤などをもっと研究して、セカンドライフの充実や人生の仕舞い方の手助けをする。そしてシニアの購買行動と意思決定のプロセスをもっと研究する必要があります。ポイントは安心して消費頂く工夫です。
それからシニアは80代、90代の介護だけではありません。50代をプレシニアと捉え、62歳のシニアから100歳前後の節目に向けて、全体の流れの中にシニアの事業を提供することです。そのように捉えるとシニア事業として取り入れる可能性の余白が限りなく広がることが分かると思います。
参照:
内閣府「令和3年版高齢化白書」
日本経済新聞 2022年3月27日の記事
日本銀行「資金循環統計」
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新規事業の旅64 小売とマーケティング
早嶋です。
店舗系事業の成功要因は何でしょう。一言で立地という時代は昔の話。地元に密着しながらも複数の媒体を活用した取り組みで、顧客本位に事業を行う。という当たり前のことがポイントになります。
(企業主体の4P)
有用なマーケティングのフレームワーク(考え方の枠組み)に4Pがあります。1960年にエドモンド・ジェローム・マッカーシーによって提唱された概念で、マーケティングを議論する際の4つの視点です。商品(製品やサービス)に関する方針のProduct、価格に関する方針のPrice、流通や商流や情報の流れを決めるPlace、そして販売促進に関するPromotionです。
モノが無かった時代は、商品(Product)が重視され、上流工程の研究や製造が企業の成功要因とされました。作れば売れたのです。モノが溢れると、今度は商品の認知がカギになり販売促進(Promotion )が注目されます。今と違い情報は僅か、そのため1980年代から1990年代は、広告代理店が中心となり、マス広告が普及します。日本の経済成長がピークとされた1996年前後、市場には似たような商品が溢れ、認知活動も進みます。そのため価格競争が激化して価格(Price)が重視されました。
(顧客主体の4C)
それぞれのPがバラバラだと上手くいかないという概念は当初から在りましたが、2000年前後より、「企業が商品を提供するのではなく、顧客の問題解決をするために企業がある。」という顧客志向の概念が脚光を浴び始めます。4Pの概念は、1990年代にロバート・ローターボーンが提唱した4Cの概念に言い換えられます。
4Pを企業側の視点とすると、4Cは顧客側の視点です。商品は顧客の問題を解決するモノなので価値(Customer Value)と捉え、価格はコスト(Cost)と捉えます。流通は顧客に取って利便性(Convenience)を提供し、一方的な販売促進ではなく、双方でコミュニケーション(Communication)することが大切とされました。
製品やサービスの購入により得られる価値に加えて、購買前後の体験や購買後のフォローを含みます。そして、感情的に得られる気分や優越感なども価値として考えます。
コストは商品の購入において重要な判断材料です。更に検討する苦労や流通に関わる苦労、取り付けや実際に使い始めるまでに必要な労力も加味して考えるとより顧客に寄り添った考えになります。価格の調査や割引情報、ポイント等を付加する取組もコストの範疇です。
優れた商品と価格帯が合理的でも入手困難な状態では購買に至りません。そのため顧客の購買前後の利便性までを考えることが大切です。小売店の陳列棚を見ると、商品をただアピールしたい企業の思惑が赤やオレンジなどの目立つパッケージに現れます。しかし、顧客はそれらを自分の家の素敵な空間に置きたいとは考えません。この流通に関する利便性の視点を変えるだけでも、様々な改善アイデアが出てきますね。
最後はコミュニケーションです。企業と顧客を継続的に結びつけ、意味ある意思疎通をタイミングよく行うことが大切です。企業は一方的に沢山の情報を届けようと考えます。しかし顧客に対して、顧客のタイミングで、わかりやすく伝えることが大切です。
(近年の小売の変化)
小売業界を見ていきます。2000代、4Pの概念が4Cの概念になり企業主体から顧客主体にシフトしました。しかしながら小売業界ではまだ4Pの中のPlace、すなわち立地条件が成功の鍵でした。理想の立地条件を探し、多額の費用をかけて出店を行います。そのため小売業は資金力がモノをいう世界でもありました。因みに2000年と言えば、当時の森首相がIT革命を「イット革命」と発音した映像が蘇ります。まだITを「アイティー」と呼ぶ文化が無かったのです。
ここにインターネット革命が風穴をあけます。ネットの普及と同時に2007年頃より始まったスマートフォン革命も小売業に大きな変化を与えます。誰もが気軽に情報を検索し、行きたい場所に行けるインフラの整備と共に、プラットフォームで気軽に商品検索と比較購買ができる環境が生まれたのです。この変化により立地条件の重要性は低下していきます。
ドットコムバブルの象徴でもある米国Amazonは、店舗を持たずに消費者と商品を結びつける事業形態を書籍販売から開始します。そしてその裏ではひたすら物流の整備を進めます。小売業の秘訣が立地から物流にシフトしたのです。米国ではAmazon、日本では楽天のような企業が小売業者と顧客を結びつけるビジネスモデルを確立します。
小売業者はプラットフォームの中で知名度が上位になることや、カテゴリの中で1位を取ることが販売の鍵だと考え広告宣伝費を費やします。また、購買者の評価を上げることにも躍起になり、プラットフォームの囲い込みが始まります。そのような中、中古品やオークションはヤフー、個人(素人)間の出店はメルカリ、法人事業のマーケットプレイスはモノタロウ、ナショナルブランドを購入する場合はヨドバシカメラなどと、Amazonや楽天一強の世界に競合が次々に登場して、目的によって顧客が媒体を選択する世界が始まりました。
(D2Cの始まりと終わり)
インターネットの世界でも小売業は進化し、顧客向けブランドを展開する企業や小規模事業者は従来のプラットフォーム(電子商取引サイト)を活用せずに、直接顧客と取引をする販売に注目するようになります。D2C(消費者直接取引)と呼ばれるモデルです。
D2Cの立役者はカナダのECプラットフォームであるショッピファイです。小規模の小売業者でも簡単にD2Cが実現できるように顧客情報等の管理業務、決済機能、配送インフラなどの各種サービスを提供しAmazonや楽天に対応できる仕組みを提供したのです。米国や欧州を中心にD2C企業が躍進して大量の投機マネーも流入して一大ブームが起こりました。
D2Cの特徴は、SNSを活用してブランドの認知度を上げ、顧客の興味を獲得します。そして、自社のサイトに誘導し顧客データベースを獲得。直接商品を販売して、きめ細かいアフターフォローを展開します。
しかしこのブームも長く続きません。SNSを活用し、似たようなコミュニケーション戦略と、商品は違えども、どこも同質のマーケティング戦略に顧客は定着することなく、D2C企業は顧客獲得に苦戦するとともに、投資家からも見放されていきます。費用をかけて広告宣伝が出来なくなると新規顧客の流入がストップして自社のビジネスの成長が下火になるという脆弱なモデルが露呈したのです。
コロナを発端に、ウクライナとロシアの戦争、中国のゼロコロナ政策による物流の停止、エネルギー価格や部品価格と配送料の高騰などが次々に連鎖しています。顧客はモノが欲しいけれども部品や物流の停滞で商品が不足し手元に届かず、結果的に物価が上がる現象が発生しています。D2C企業の直撃は、これに加えてSNSの広告ポリシーの急激な変更と広告料の値上げで追い打ちをかけられました。
(リアルとバーチャルの境目)
米国のウォルマートは、リアル店舗を活用したD2Cの開発を進めオンラインで注文した商品を店頭で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)をすすめています。一方のAmazonはリアルの世界から実店舗の世界へ拡張を進めています。今後は、リアルの店舗とバーチャルの取組が融合するオムニチャネルが当たり前になると、その土地にしかない希少性に益々価値がでてくるかもしれません。ひょっとして立地で始まったPは、流通に変わり、しばらくはローカライゼーションにフォーカスされるかもしれないですね。
(過去の記事)
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新規事業の旅63 Z世代
早嶋です。
Z世代とはどのようなカテゴリ層を示すのか。その特徴をどのように歯科医院経営に活用できるのか。
Z世代は96年から2015年に生まれた層を指し、デジタル、スマフォ、SNS、動画活用が当たり前の世代。一方、大震災や多くの災害を経験してきた世代でもありリアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせる。Z世代にリーチする場合、自分たちと異なるZ世代のメカニズムを把握して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。
(Z世代の定義)
マーケティング活動と顧客分析は切っても切れない中。従い、いつも何とか世代などの人気ワードが飛び交う。しかし裏を返せば、大手コンサル会社が研究開発し、広告代理店が効率的に顧客獲得をするために大枚をはたいて取り組んでいる結果だ。そのエッセンスを活用しない手はない。
Z世代。消費区分のひとつとして定義され、1996年頃から2015年に生まれた層を指す。2022年現時点において、年齢で7歳から26歳がZ世代。生まれた時からデジタル機器に接しており真のデジタルネイティブと呼ばれる。
1965年から90年生まれをX世代と呼んだ。幼少期からカラーテレビが存在し政治的関心が低い世代だ。1981年から1996年はY世代。アナログからデジタル化を消費欲が旺盛な若年層の時に経験した世代で合わせてデジタルネイティブ、ミレニアル世代と呼ばれた。
(Z世代の特徴を表す3つの事例)
Z世代を理解するために3つの特徴的な事例を紹介する。
1)スマフォの縦型動画
スマフォと5G高速通信が当たり前になった今、動画を中心とするコンテンツはZ世代にとって当たり前だ。YouTube、TikTokが普及し、インスタグラムなどのSNSも動画表示に対応を切り替えている。
Z世代以前の調べモノはグーグルだったが、Z世代はまず動画で検索する。そして動画の形式は横ではなく縦が一般だ。そのためスマフォで録画した縦型の動画を保存、編集、サイトやアプリに配信することで自社のコンテンツを作成する企業が増えている。またそのような動画管理プラットフォームを提供するクラウドサービスも沢山ある。
従来、マーケティングや広報のチームに動画担当は脇役だったが、今は主役の扱いだ。聞いたことある組織の殆どが動画の編集、管理、エンジニアチームなど自前で束ねるまでになっている。
花王、光文社、良品計画、アパレルのヤマトインターナショナル等、動画の体裁をTikTok風にし、動画を見ながら情報取得、欲しい商品を注文できるような販売促進を行っている。
店舗系のビジネスでは、店員が商品や自社サービスをアピールしSNSの人気ライバーのようにスタジオや自店舗から情報を発信する取組もZ世代には人気で日本の小売企業でも急速に導入されている。と言っても、動画の品質はスマフォの性能で問題なく、中規模程度の企業であっても担当者が1、2名で動画を配信するケースも多い。
2)キャッシュレス決済
Z世代はキャッシュレスも当たり前。今や結婚式のご祝儀も事前にスマフォ決済で受け取るカップルも増えている。日常生活はキャッシュレス、家族の支出をリアルタイムで把握することが当たり前になっている。スマフォ決済で付与されたポイントは投資運用に回すなど余念がない。
結婚式ではPayPayを使ったご祝儀サービスの利用も増加している。その動機は、新札を用意して頂く負担を無くすという配慮からだ。一方、結婚式場の支払いは前払いが通常。ご祝儀を事前にスマフォで送金頂ければ、参加者も夫婦も互いの手間や負担が減るという算段だ。
若い世代のカップルや夫婦はキャッシュレス決済を行うことで互いの支出を管理する。同居するパートナーと生活費の管理に家計簿アプリ連動のプリペイドカードを使う。すると互いのお金の使い方を共有でき無駄をなくすことができるのだ。この背景は、共働きの夫婦やカップルが増え、収入や支出の流れが複雑になったことも考えられる。
決済サービスを手掛けるインフキュリオンの調べによると、キャッシュレス決済におけるモバイルの割合は年齢が若くなるほど高く、10代では7割、20代でも5割近くが利用している。
Y世代は子供の頃は現金が主流で学生や社会人になってキャッシュレス決済を導入。一方Z世代含め、今後は子供の頃からキャッシュレス決済が当たり前になっているのだ。
3)リアルな体験
大企業の人事を中心にZ世代を中心とする若者は「付き合いが悪い」「リアルコミュニケーションが下手」という評価が定着している。しかし、実利が少ない上司や先輩と仕事後も一緒にいても価値が無いと感じているだけで、意味ある付き合いはリアルを求める傾向が強い。
東京・高円寺の銭湯「小杉湯」は1968年の来客者のピーク530人で直近は147人まで減少した。しかし昨今、平日で400人から500人、週末になるとコンビニの来店なみの800人から1,000人にまで増えている。その来客者の半数が30歳以下なのだ。
セルスサービスの銭湯はシェアリングエコノミー的で若い世代に相性が良いのだ。常連同士が軽く会釈し、挨拶する。この程よい距離感がフィットした。また独居の寂しさを半径500メートルの裸の付き合いで解消するなどのニーズも存在する。モノに投資する満足感よりも、リアルな体験でコトに価値を感じるのもZ世代の特徴なのだ。
(Z世代の特徴と活用のポイント)
Z世代の特徴は、スマフォ、デジタル、SNSが当たり前だ。生まれてから早い段階でスマフォやデジタルに触れ、SNSで友達とやり取りする。動画や映像で調べ物をこなし、それ自体が当たり前になっている。
上記の媒体は、企業がはじめからピンポイントにマーケティングしている。そのためマス向け商品よりも、限られたコミュニティでの情報が身近に存在する。結果的に自分にとって価値あるものを重要する消費行動が誕生した。ブランドや一般的な知名度よりも、自分に価値があるものに対する投資が旺盛になる。
2011年の東日本大震災、昨今の大規模災害が日常になり、従来の世代よりも社会課題に対する関心が高い。テニスプレイヤーの大坂なおみ選手、環境活動家のグレタさんなどのインフルエンサーの存在も大きく、社会問題を自分たちが解決すべき問題と捉えている。
一方で、経済感覚は実に堅実だ。コスパを常に意識し、合理的な選択を求めている。メルカリやオークションアプリを駆使し、新品ではなく同じ機能・デザインであれば中古品の購入にも抵抗が少ない。リユース品は手頃で環境問題にも関与すると考え合理的に活用する。当然、消費に対する失敗は避けたく、口コミ評価や事前購入の情報収集は自ずと緻密になるのも伺える。
若者の言葉に「エモい」がある。自分の感情や価値観の共感を大切にすることから誕生した。社会的な背景や生まれた時から経済が発展しないと感じる世代だからこそ、作り込まれていない本物のリアルを重視する傾向が強いのだ。
まとめ
Z世代は、従来の世代ともまた違う価値観を持ち、自分らしさの追求と多様性を大事にする価値を持ち合わせる。デジタルツールを普通に使い、自分たちから積極的に情報にアプローチして武装する。共感し、価値を感じる商品に投資をする。機能や利便性の追求に加えて、ストーリーや体験を提案されることを待っている。
デジタル、スマフォ、SNSが当たり前の世代だからこそ、リアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせる。今後、Z世代に対してマーケティングを行う上で、このような特徴を理解し、デジタルとリアルを融合して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。
(過去の記事)
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新規事業の旅62 プランB
早嶋です。
組織的に意思決定した取り組みを修正せずに、ひたすら続ける傾向が観察される。特に日本の大きな組織にはその傾向が顕著にみられる。その際、プランBの存在と活用が肝になるが、プランBがあっても活用されない。それは一体なぜなのか。
プランAをまっしぐらに突き進む組織は「思い込み」により、組織的に議論できない空気をつくり上げる。そこで悪魔の代弁者などを活用し、議論を誘発する取組が注目されている。
(幻のプランB)
対案や代替案。これらをまとめてプランBと呼ぼう。立案し突き進むも、何らかの因果で頓挫する、若しくはその可能性が高くなる。その際はプランBに切り替えて、「よろしくね」となれば歯切れは良いが、世の中そうは問屋が卸さない。概念としては誰もが知っていることなのに、現実の世界では議論さえされないし、準備があっても行使されないのがプランBだ。
2019年12月、武漢から広がったcovit-19。有ろうことに世界的なパンデミックに発展した。日本は2020年のダイアモンド・プリンセス号の寄港以来、入国制限などの水際対策と飲食店やサービス業を中心とする移動制限を軸にコロナ対策が始まる。他国と違い、コロナとの戦いは多少の試行錯誤は観察できたが、基本方針は変わらずプランAのまま。その間に他国の事例や研究者の見解などはどんどんアップデートされる。そして他国や他のエリアはプランA(当初の計画)を放棄し、コロナ共生などを打ち出し、プランBに切り替える報道も相次いだ。
間違いなく日本政府のシナリオにはプランBは存在しただろう。霞が関の官僚は頭脳明晰で優秀な人材を揃えている。戦略立案のセオリーとして、代替案が存在しないこと自体考えにくい。しかしここで議論すべきは、我が国の大組織では、プランBが仮に存在していたとしても、一度決めたことを何となく突き進む傾向があるという問題だ。
(議論されないプランB)
名著「失敗の本質」では、ノモハン事件、太平洋戦争、第二次世界大戦前後の日本軍の敗戦原因が研究された。歴史研究と組織論を組み合わせた取組だ。当初から大東亜戦争は客観的に見て勝てない戦争という認識が一般だった。しかし「良い勝ち方」「都合の良い負け方」があることを前提に各作戦が遂行された。結果、敗戦が続く。本書の結論では、「失敗の本質」を以下のようにまとめている。当時の日本軍は、「環境に適応して判断すること」「官僚的で属人的なネットワークを廃して学びながら意思決定をすること」「自己革新と軍事的な合理性の追求」が出来なかった、と。
作家の山元七平は「空気の研究」で、プランAからプランBに変更するタイミングにおいて、「ことの良し悪しの議論すらはばかられる」と、空気の存在を指摘した。会議中、どうも発言しにくい雰囲気があり、ずるずるとはまり込む。「空気」は各人の意識の集合体で実体がない。にもかかわらず、あたかも実体を持つかのように会議やプロジェクトを支配するという。そしてプランAは強気に暴走をはじめる。
「集団思考」という言葉がある。集団で合議する際に不合理、危険な意思決定が容認される組織的なバイアスだ。米国の心理学者、アーヴィング・ジャニスは真珠湾攻撃、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ピッグス湾事件、ウォーターゲート事件などの記録調査から誤った政策決定につながる集団思考の心理傾向をモデル化した。その内容な、団結力がある集団が、構造的な組織上の欠陥を抱え、刺激が多い状況に置かれた時に集団思考に陥りやすいという事だ。
(プランBの阻害要因)
これまでの議論を整理するとプランBが発動されない阻害要因は「思い込み」といえる。組織に縛られているという組織バイアス、気が付かないまま色々な思い込みが個人や組織の行動を抑制しているのだ。
組織バイアス
組織の大小に関係なく複数の人間が集まると縛りができる。ドイツの哲学者イマヌエル・カントは自らの意思によらず、他からの命令や強制による行動を他律的行動と呼んだ。「プランAはトップが決めたから」とボトムは思うかもしれない。「内心プランBが良いと思っても、俺が決めたしね」とトップは思うかもしれない。相互に他律的行動が重なり組織ぐるみの非合理的な土壌が耕されてしまう。
アンコンシャス・バイアス
無意識に「ものの見方や捉え方や歪や偏り」などを形成し、人は何かの判断をする。これがアンコンシャス・バイアスだ。過去の経験や知識や価値観や信念などが重なり認知や判断のメカニズムが構築される。普段の言動や行動にも表れ自分でも意識しづらく歪みや偏りがあることに気が付かない。危機的状況でも「私は大丈夫」と思い都合の悪い情報を無視して過小評価する。過去の継続が素晴らしいと思い新たな一歩を踏み出さない。今の立場に固執しても損失が増大することが分かっても引くに引けない。組織のトップは全てにおいて優れていると勘違いしてしまう。自分を正当化する情報を意図的に集め反証を完全に無視する。書き出せばきりがない程、我々は思い込みに侵されているのだ。
(解決策の方向性)
カトリックにおける列聖や列福の審議に際し敢えて候補者の欠点を指摘する役割がいる。「悪魔の代弁者」とされる。指摘された欠点を聖職者が論破するプロセスを繰りし、その信者は客観的かつ公平に選ばれるという。
この意味から派生して、ある主張の妥当性を明かすために、あえて批判や反論を主張し、その役割を組織の中に意図的に役割として活用する取組が注目されている。そしてプランBの議論と行使の吟味も悪魔の代弁者の出番になるのだ。
政治学者のジョン・スチュアート・ミルも著書の「自由論」で、健全な社会の実現に向けて「反論の自由」の重要性を述べている。「ある意見が、いかなる反論によっても論破されなかったがゆえに正しいと想定される場合と、そもそも論破を許されないためにあらかじめ正しいと想定されている場合とのあいだには、きわめて大きな隔たりがある」と。反駁、反証する自由があれば組織の行動の指針として正しいとされる条件になるのだ。
米軍は2000年代に入り、シリア空爆などの重要テーマがある場合、期間限定でレッドチームを招集する。レッドチームは悪魔の代弁者で、必ず期間限定で招集される。組織の意思決定に対して、内部のしがらみがなく、内部の情報を知るのが悪魔の代弁者の条件で、チームは外の目と内の目の両方の視点が必要だ。
レッドチームが招集されると、チームは組織トップ直属に配置される。周囲からの威厳を保ち、縦割りの弊害をなくすためだ。活動目的はトップの意思決定の情報収集で、チームは意思決定をしない。問題の指摘はするが戦略を決める権限を持たせていない。組織における悪魔の代弁者の活用、レッドチームの事例は参考になるだろう。
ミッションの追求に向けて組織を動かすトップは、今後も激しい環境変化の中、意思決定を続ける必要がある。一方で、その意思決定に対しても状況に応じて柔軟に立ち回ることが大切だ。戦略を決める際は、プランAに対して常にプランBを持ち、変化に即応して計画を変更する発想は素晴らしい。しかし多くの組織が「思い込み」によって、プランAを継続する過ちが観察されている。トップは、その事実を理解して、自分たちは大丈夫と思わずに、常に過ちがあることを前提に動くことが肝要だ。
参考:集英社インターナショナル 尾崎弘之 「プランB」の教科書を参考に筆者で加筆作成
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新規事業の旅61 ノンカスタマー
早嶋です。
売上は総購入回数と平均商品単価の積で表現できる。平均単価を上げることは大変なので、企業は総購入回数に着目して、売上拡大を狙うも結果がついて来ない。なぜだろうか?
多くの企業は総購入回数を増やすため、総顧客数とリピート回数の積に注目する。しかし、ほとんどの施策は既存顧客のリピート回数を増やす取組に注力している。ここが成果が出ないポイントだ。結論から言うと、総顧客数そのものの母数を増やすため、未顧客の開拓をはじめることが重要な方向性になりうる。
(未顧客とは)
人口減少、経済低迷、追い打ちコロナ。企業の多くは成長戦略を掲げているが明確な一歩が踏み出せない。しかし、何か考えなければ始まらないと「新規顧客の獲得」「市場の拡大」「新規事業の創造」と、これまで経験していないエリアに青い鳥の姿を見出して妄想の日々を過ごしている。
冷静に考えると、企業が対象とする全ての商品は、ターゲットカスタマーよりも大部分を「購買しないノンユーザー層」と「購買しても年に1回、2回程度のライトユーザー層」が占めている。つまり企業が普段から意識的に捉える市場は全体のごく一部であり、その集合を既存顧客と捉えている。本誌では、このようなノンユーザー層とライトユーザー層に、そもそもターゲット層にフィットしないマイノリティ顧客を合わせて「未顧客」と定義する。
(データ分析の落とし穴)
近年、データ分析業務はマーケターの役割から一般社員の作業にシフトされる程、当たり前に浸透している。しかし大部分のデータは既存顧客のデータであり、未顧客のデータは存在しない。特にデジタル化を加速している企業は、既存顧客が購買に関与するタイミングや導線でデータを収集する。そのため、購買頻度が高い優良な顧客データばかりが蓄積され、商品に興味関心が無い、あるいは薄い未顧客のデータは集まりにくい。
同様の現象は、実店舗や営業等にも当てはまる。フロントに立ち顧客と接する従業員は、既存顧客を理解していると考える。しかし来店しない、普段接することが無い未顧客のことになると当然知らない。そしてこの層に対しての重要性を認識しない。見えないものは考えることができないのだ。そのため未顧客は、存在を理解し、将来の成長の鍵になる重要なセグメントなのだが、見えない、知らない顧客は初めから対象にならないのだ。
ということで未顧客に対するアプローチはジレンマの塊だと思う。仮に、未顧客を分析しようと思ってもデータが無く、どのようにデータを集めればよいか、初めの切り口は何かが分からないのだ。
(注目に値する理由)
売上を概念化すると、一つの考え方として、次のように表記できる。
売上 = 総購入回数 ✕ 平均単価
売上を増やすためには総購入数を増やすか、平均単価を高めるかの2つの方向性が重要だ。通常、平均単価を高くしても全体の売上は伸びない。そのため、総購入回数を増やすことが重要なアプローチになる。
このアプローチは既存顧客と新規顧客のアプローチに大分される。この手の議論は過去から、「新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍程度かかる可能性がある」。など、既存顧客にフォーカスする定説が存在するが、案外と立証されていない。そのため新規か既存かの議論は繰り返し企業の中でも試行錯誤が続いている。
総購入回数 = 総顧客数 ✕ リピート回数
一方、企業成長の因果関係が強い因数に、総顧客数の増加と言うことは多方面で確認される。ここからわかることは、マーケティングは依然として一部の業界を除けば数のゲームであり、企業の売上増加の鍵は総顧客数の増加になるということだ。
しかし、実際の現場の行動を観察すると総購入回数を上げるために、総顧客数にフォーカスするよりも、リピート回数を増やす取組が注目されている。既存顧客の維持獲得コストが安いという錯覚からくるものだと思う。そのため既に製品やサービスを利用している顧客に「更に購買頂く!」という方針をとってしまうのだ。
そもそもヘビーユーザの割合は全体の顧客と比較して少なく、購買促進にも限度がある。冷静に考えるとわかることだ。また既存顧客への施策は効き目が短く持続しないことも経験的に理解している。更に投資対効果を議論する動きもあるが、そもそも効率の話であり絶対量の総顧客数が増加する策では無い。
おわかりの通り、総顧客数増加の鍵は、ノンユーザーやライトユーザを含めた未顧客を増やすことだ。これによってヘビーユーザーの数も総顧客数の増加に比例して獲得できる。一般的にノンユーザーやライトユーザーは極端に多く、何回も購買するヘビーユーザーは極端に少ない。年に1、2回しか買わないライトユーザの母数そのものを増やすことが全体の成長加速を意味することにつながるのだ。従い、購買回数が0回の未顧客に1回でも購買いただける活動に注力すること、そもそもの未顧客の母数を増やすことがとても重要な戦略になるのだ。
(文脈を捉えた再解釈の活用)
ノンユーザーやライトユーザを獲得するポイントは、未顧客の文脈(特定の状況)に注目し、商品の意味を再解釈させることだ。この行動を繰り返すことで、総顧客数の母数を増やすことができる。
理解を深めるために、保育園の子供嫌いの事例を示す。保育園では風呂嫌いの子供に対して、風呂の解釈を「嫌な場所」という認識から「遊び場の一つ」と再解釈させることで風呂に対する「イヤイヤ」を「行きたい!」に変化させた。
自社商品やブランドを風呂と捉え、未顧客を風呂嫌いの子供とする。マーケターである保育士は、未顧客の商品理解を再解釈させたことで風呂に向かわせる取組に成功した。結果、子供は「遊びたい欲求」に対して、「風呂に行く行動」を取り、結果として「楽しい水遊びという報酬」を得るのだ。このような再解釈を未顧客の様々な文脈で行い、店舗やブランドの興味に向かわせ、商品の購買に結びつける等が可能になるのだ。
例えば、歯科医院にあてはめて考えよう。歯医者が嫌いな顧客は、「治療する場所」「痛い場所」と捉えるかもしれない。そのような顧客に歯科医院の概念を再解釈させ、「健康になる場所」「快適な生活をサポートする仲間」「気持ちの良い場所」と認識させたらどうだろう。これまで未顧客だった層が一定数来店する可能性を感じることだろう。
コンビニのスイーツの例を考えよう。あるコンビニ商品の企画者は新商品のスイーツの作戦を立てた。昼の弁当等を購入に来た顧客のついで買い需要に注目して展開を試みた。しかし導入後のモニタリングや現場での検証を行った結果、次のような顧客が多数存在していることがわかった。
テレワークやオフィスワークの合間に新商品のスイーツを認知するも、「甘いものは太るし、控えなければならない」と考える顧客がいてスイーツの購入を妨げていた。いわゆる購買をさまたげる「障害」があったのだ。
ノンユーザーやライトユーザを獲得するポイントは、未顧客の文脈(特定の状況)に注目し、商品の意味を再解釈させることだった。その際の鍵になる活動が顧客の障害を見つけ、再解釈して頂くことで取り除くことだ。
そこで主戦場を昼から夜にシフトしたのだ。「甘いものは太るから悪」という解釈に対して、「オフィスと家庭の往復の空虚な毎日に充実感を与えないか?」「太るものではなく、アタナにとってのご褒美だ。」というメッセージを開発した。その結果、昼は見向きもしなかった層が、「夜のご褒美」という新たなポジションを再解釈させることで、「昼の甘いものは太る」という障害を排除して未顧客の開拓に成功したのだ。
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新規事業の旅60 ドローン事業
早嶋です。
ドローンと聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。子供のおもちゃ、空撮ツール、社会を変える大きなインパクト。皆、様々だが今回はドローンが与えるインパクトを考えてみる。ドローンが日常的に飛び回り、我々の生活をアップデートする。自動車の自動運転よりも早い時期にドローンが市中に溢れる可能性が高いのだ。
(ドローンがより身近になる社会 )
1900年のニューヨーク。通りにはギッシリと馬車が走る。そして自動車はT型フォードの1台だけ。それが1913年には逆転し、殆どがT型フォードに変わった。今、自動運転の車が話題にのぼるが、ドローンが市中に溢れる状況が先になる可能性があるのだ。
ドローンが人に変わって犬の散歩をする。子供の忘れ物をドローンが届ける。人の代わりにドローンが日傘をさす。日常の宅配はドローンと従来の仕組みが融合する。そして空飛ぶクルマも空の公道を走る(飛ぶ)ことも現実味を帯びて来ている。
(社会実装に必要な条件と動き)
2023年1月現在、そうは言ってもドローンが社会に実装されるためには、安全性、環境性、経済性を担保する必要がある。しかし着実に問題解決が進む。安全は高度に自立制御され、リモートコントロールが高いレベルで実現しつつある。環境性は電気自動車同様に電動化が進み、バッテリー、機体構造そのもの、充電ステーションなどの仕組みが揃いつつある。3つ目の経済性も大量生産、品質管理、整備点検、それらに関わる訓練プログラムが進み、多くのベンチャー企業がその実現と事業化に向けて日々努力している。
ドローン社会が目指す姿は、様々なフィールド業務の自動化だ。現在、人を中心とした業務だが、災害、ウィルス、人口減少等で現場の負担が肥大化している。そこで近い将来は人間とAIとロボットが役割分担していることは想像に難くない。持続可能な社会を実現するために、ドローンを含めたテクノロジーの活用は無視できない
ドローンは今、陸、海、空の自立型ロボティクスの支援を最大化しながら産業活動を地上から空中、海洋へと拡張している。結果的に、旅客輸送、貨物輸送、緊急輸送の領域においてドローンが実装される現実が近づいているのだ。日本は地下鉄やJRが普及しているため近距離輸送の課題はピンと来ないと思うが、インドネシアや諸外国では10キロの距離が30分のときもあれば、3時間以上かかる場合もあり経済損失の原因になっている。アフリカなどではそもそも道路インフラが未整備のため、緊急時の空の活用は必須だ。そのため国内外では近距離輸送を目的にする航空と水上の移動にドローンを活用する社会実装が加速しているのだ。
(ドローンの役割)
実はドローンは、モビリティ(輸送と移動支援)の役割に加えて、リモートセンサ(情報収集・分析)、フィールドロボット(作業支援)の役割も担う。
従来のインフラ関連の点検で高所や危険個所などは人が足場を組まなくてもドローンで点検が行える。リスクとコストと時間が一気に解消され、従来1週間程度かかっていた点検もドローンの活用だと半日から1日で終わるのだ。
作業支援の事例だ。農薬の散布は農家にとって重労働だった。水耕栽培では、真夏の暑い時期に農薬散布が必要で体力も消耗された。ドローンで単に代替するだけではなく、画像センサや赤外線センサなどを搭載して、傷んだ箇所や本来散布しなければならない箇所をピンポイントで散布する、夜間で人が見えない時間でも稼働することが可能になるので圧倒的な作業効率が成し遂げられた。
少子高齢化、インフラ老朽化、気候変動に伴う自然災害の増加、新型感染症等々。2022年は全てを体感した年だったが、日本は世界を代表する課題先進国と同時にこれらの解決がビジネスチャンスとなっているのだ。
(市場と法規制)
従来の日本は、新しい技術を導入する際に、ヒトの思考と法規制がネックだった。しかしドローン界隈においては世界でも突出するスピードと柔軟な方法で整備が進んでいる。
2015年度、航空法に無人航空機が定義された。2019年の成長戦略閣議決定では2022年のレベル4解禁が約束され、実際に2022年12月にレベル4が解禁された。ドローンのレベル4とは有人地帯での目視外飛行ができ、都市部においても自動制御等でドローンを飛ばすことが可能になったのだ。
それまでは目視外飛行は原則禁止で、人口密集地は特に厳しかった。特別な許可が例外的に認められる場合もあったが、1日限定とかで実際に使用できない状況だった。
現在、古い規則や法律に対しての考え方や制度改定も大幅に進んでいる。従来は、担当省庁によってルールが異なり進まなかった。しかし、同じ趣旨、目的の規制を一くくりにして、類型ごとに規制の見直しが進み横断的な取組になっているのだ。国内を取り巻く様々な課題解決に向けてデジタル社会に適した規制・制度変更が進んでいるのだ。例えば、従来の法律に抵触する場合、新たな技術をベースに解決できるのであれば新しい解釈を優先する。硬直的なイメージだった政府が実は柔軟に積極的にロボット化、自動化、それらの市場化にチャレンジしている。
(課題と展望)
ドローンが社会実装されるまで大きく4つの課題がある。要素技術の革新、事業化と収益化、法・規制の整備、社会受容だ。
要素技術の革新として、積載重量を増やすこと、動力源の対応、安全性の確保がある。荷物用のドローンでは既に30kgの積載は実現できているが、重量が増えると稼働時間が短くなる。現在は40分程度の時間だが、2時間程度の動力を確保する研究が進んでいる。
産業用ドローン技術は実証実験段階だが、社会に実装されるには事業化できる工夫が必要だ。収益が出て、保証や保険の整備など、もしもの対応に応じる仕組みの構築と検討も大切だ。ドローンによる配送も複数の企業が複数の自治体でテストを繰り返している。2021年7月に起きた熱海での土砂災害では、ドローンを目視外飛行で飛ばし、いち早く現場の情報収集が実現できている。
法規制の整備は先ほどもコメントした通り、困難な中でも民法と航空法の整合を取るなど進んでいる。NEDOを中心に複数ドローン運航を社会実装するべく、運行管理システムの開発が進められている。また2020年度から全国各地で実証実験が実施され、そこから抽出された制度面、技術面の課題が議論されている。社会実装されると、最低でも100万台以上のドローンが飛ぶことになり、沢山の企業や利害関係者が出てくるので簡単に解決できる問題ではないが着実に解決し実装できる方法を具体的に目指している。
現在、ドローンが飛んでいるのを見ると物珍しくて人の注目を浴びるだろう。しかし、これが当たり前になり、我々の生活に溶け込むまで時間の問題かもしれない。一方で何事も新たなテクノロジーは人に受け入れられるまでに時間がかかるものだ。
従来、ドローン製造技術は中国メーカーが主体だった。しかしドローンがセンサとしてインフラの点検や改善に使われることを考えた場合、データや重要な情報が漏えいする可能性が考えられる。そのため国策に近い形で特定の企業やベンチャー企業などとドローン機体自体の開発も進んでいる。一方で、自動車の自動運転は陸上を走るため、既存のインフラとの整合性を合わせるのに想像以上に課題が多い。地上から上空300mの空間はこれまで誰も活用していないエリアだった。そのため、最新テクノロジーが比較的すんなり入り込む可能性もたまたまあったのだ。
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新規事業の旅59 Z世代へのアプローチ
早嶋です。
Z世代に対しての良いアプローチ方法はあるか? 時代背景とデジタルとアナログの特徴を理解すると、育成手法やコミュニケーションのとり方が理解できる。基本は、にこれまでの世代と大きく異ることを理解することだ。
(メリットとデメリット)
デジタルは、情報を記号で表し、電子的に処理でき、コピペ(コピー&ペースト)可能で、伝送も瞬時に行える。現在、デジタル抜きに企業活動を行うことは難しい。Z世代は、デジタル前提で育ち、むしろアナログを知らない。理解を深めるためにデジタルのメリットとデメリットを列挙してみる。
メリットは、効率、共有、柔軟、便利などだ。デジタルにより、人手や時間のコストが削減でき効率を得た。紙ベースの書類管理が電子管理に移行したことで、書類の保管、管理、検索が劇的に効率化された。クラウドやオンライン共有ツールを活用することで、場所や時間に関係なくデータ共有ができる。結果、オフィスやチーム間のコミュニケーションが変化した。データは複製・編集・変更が可能で、行動の検証をアルゴリズムで行うことができるため、改善やブラッシュアップのスピードが爆速化した。ネットショップやデジタル決済は、従来の顧客体験では考えられない変化をもたらした。
当然デメリットもある。安全、情報過多、人間関係の変化だ。デジタル情報はハッカーなどのサイバー攻撃の対象になり、セキュリティ対策は必須だ。更に、情報が大量に瞬時に入手できるためその選択や信憑性の評価が難しくなった。そしてデジタルを活用したコミュニケーションは、リアルの人間との対人能力を劣化させる傾向が強くなった。一方で、テクノロジーに馴染めない人はその登場によりハンディキャプを感じ、これらも人間関係の劣化を加速させている。
(デメリットの事例)
デジタルの活用で対人能力が低下する現象は、経営者にとって深刻だ。イメージを共有するためいくつか事例を示してみる。
国内では、昨今のテレワークの増加でオフィスでの直接的、人間的な関係構築の機会が減少した。コロナ期間に組織に参画したメンバは、その被害をもろに受けている。直接対面することなく仕事をする必要が増し、効率が下がり職場の人間関係が劣化したと報告するレポートが増大している。
中国では、オンライン教育が急速に普及。教師と生徒の対面によるコミュニケーションが減少し、生徒の対人能力や社交性が著しく低下していると言う。
韓国では、スマフォの利用が急速普及した結果、若者たちのスマフォン依存症が問題視されている。24時間365日、スマフォを手放すことができず、睡眠不足やストレスなどの健康問題まで被害が及ぶ。
依存症は米国の若者でも観察されている。スマフォを手放すことができず、社交不安障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの精神的な問題を引き起こす要因にもなっているという。
(Z世代の育成環境)
1997年から2012年頃までの間に生まれた人々はZ世代と称される。現在、10代後半から20代前半の若者たちだ。Z世代は、物心がついた時からデジタルが当たり前の世界で育った。SNやネット検索は生活の一部であり、思春期にはスマフォやタブレット端末が生活のデフォルトとなった。情報はネットから集め、ネット上では自分の考えを表現し、多様な価値観を尊重する傾向を持つ。
一方で、社会での経験は浅く、リアルな問題解決能力や対面でのコミュニケーション能力は当然低い。Z世代自信も問題意識を持つが改善の仕方が分からないでいる。ネット情報に依存し、情報選別の力も欠けており、発言もコピペがベースで自分の頭を使うことが苦手になったのだ。
ただしZ世代はアナログ社会からデジタル社会へのトランスフォーメーションする際は活躍が期待される。企業や教育現場では、彼らが持つデジタル技術を活用し働き方や学び方を変革することが大切だ。社会全体の多様性を尊重し、Z世代の能力を最大限引き出すことができれば、今後の事業環境にも耐えうる組織を作れるのではないかと期待されている。
(Z世代を鑑みた教育)
Z世代に企業が教育する際、フリップラーニング、プロジェクトベースドラーニング、アクティブラーニングがポイントになる。
フリップラーニングは、社員が自宅や職場で事前学習を行い、研修ではより実践的な学びを与える手法だ。デジタル教材や動画を用いたオンライン学習を事前に済ませ、研修はグループワークやディスカッションを中心に設計し対話的な学びを促すことでアナログでしか得られないエッセンスを取り入れる。
プロジェクトベースドラーニングは、現実の問題解決に取り組む。従来のOJTに近いが、問題の設定から課題の特定、実際の解決策の立案や実行までを一気に体験させるの。その際、問題解決の進め方はベテランが示し、解決する中でのデジタルツールの活用はZ世代を中心にフォローしてもらうのだ。ベテランのアナログとZ世代のデジタルを融合することで双方の理解が深まりデジタルとアナログの良い部分を互いに吸収することになる。
アクティブラーニングは、Z世代が自発的に課題や問題に取り組み、主体的に学びを進める方法だ。デジタル化が遅れている企業は初めの一歩が踏み出せない。アナログにどっぷり浸かった中間管理職や部長層のデジタルアレルギーがはびこっているからだ。そこで入社歴の浅いZ世代を中心にチームを組み、プロジェクトリーダーは社長が務める。些細なことでも良いので、全社を改善するテーマを半年程度で繰り返しZ世代を交えて提言してもらい、その実行を実際に行う経験を積ませるのだ。デジタル化の支援の過程でZ世代の力を借り、徐々に自発的に考えるように仕向けていくのだ。
上記により、Z世代が弱いとされるアナログのスキルや世代間を超えたリアルなコミュニケーション体験、そして協調性や問題解決能力の習得ができる。加えて、リアルの世界しか知らない上の世代も、Z世代の生態系を体験し理解すると同時に、一緒に仕事ができるという間隔も芽生えさせることができるのだ。
(企業の変革)
中堅から大企業の人事はZ世代の離職率の高さに悩みを持っているに違いない。しかしZ世代が離職する理由はある程度特定されている。ワークライフバランスの悪さや、職場環境のストレスや人間関係の悪さ、仕事内容のマッチング不良や自己成長の機会の欠如などだ。
従来は、組織に入って5年、10年の期間をかけてジワジワアップデートするのが常だった。しかし、Z世代はコピペして、瞬時に共有する世界が当たり前だった。昭和の忍耐など微塵もない。しかし、それを受け入れることでアナログ企業はデジタル企業にシフトし始める。
ワークライフバランスの改善は、企業のみならず国家単位での課題だ。柔軟な働き方と従業員のライフの充実は今後外せない。職場のストレスや人間関係の悪さは、上記で提言した3つのラーニングを取り入れることで改善されるだろう。そして、その取組の中で、Z世代との関係構築を深め、双方のゴールを共有することで仕事のマッチングも実現させる。そしてキャリアを考える機会やZ世代が検索しても知り得ない、企業自体の魅力をどんどん共有していくのだ。
Z世代の離職率が低い企業は、今後10年を生き抜く企業として、そこそこアップデートした体制が整ったとも考えられる。経営者として、今の世代で会社を精算するか、今の体制を独自のポジションと主張して生き残るか、或いはZ世代の考えを組織にインストールしてガラガラポンするか。当然、ここは選択の問題であり正しいか間違いであるかは無い。経営者であるあなたが自由に判断すべきなのだ。
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新規事業の旅58 サスティナブル経営
早嶋です。
サステイナビリティ経営とは何だろうか? それは、長期的な視野を持って経済成果、社会と環境への貢献を目指す経営手法だ。大企業が行う取り組みと認識されるが、小規模チームがこの取り組みを活用することのメリットも大きい。
(サステイナビリティ経営とは)
企業が長期的な視野を持ち、経済的な利益に加えて、社会や環境の持続可能性を考慮し事業活動を行う。結果、持続可能な社会の実現に貢献することを目指す経営手法だ。
ポイントは、従来よりも、より長期的な視野を持ち、環境、社会、経済の3つの側面をバランス良く考慮する点だ。環境負荷の低減や社会貢献活動、持続可能な製品やサービスの開発を経営に取り入れ、社会と環境に貢献するのだ。
サステイナビリティ経営の取組は、社会的責任を果たすことよりも、将来的なビジネスチャンスや競争優位性を生み出す重要な経営戦略と解釈され、企業が実践することでブランド価値の向上など、多様なメリットを得ることができる。
(SDGsやESGとの違いは)
サステイナビリティ経営、SDGs、ESGは、いずれも企業が社会や環境に貢献することを目的とするが、それぞれ異なる側面をカバーする。
サステイナビリティ経営は、前述の通り長期的な視野を持って経済成果、社会と環境への貢献を目指す経営手法だ。
一方、SDGsは、国連が定めた持続可能な開発目標であり、貧困の撲滅、地球温暖化の防止、平和と正義の実現など、17の目標が設定されている。企業は、自社の事業活動を通じてSDGsの達成に貢献することが求められている。
ESGは、企業の環境、社会、ガバナンスの側面を評価する指標であり、企業が社会的責任を果たすことやリスク管理を行うための指標として用いられる。投資家は、企業のESG評価を参考に、企業価値を判断することがあるのだ。
整理すると、サステイナビリティ経営は企業が取り組むべき経営手法で、SDGsは国際的な持続可能な開発目標で、ESGは企業の環境、社会、ガバナンスの側面を評価する指標なのだ。企業規模が大きくなるほど、これらの指標を総合的に考慮し事業活動を進めることが求められているのだ。
(サステイナビリティ経営における、環境、社会、経済のポイント)
サステイナビリティ経営の実践では環境、社会、経済の3つの視点を総合的に考慮する。
企業は環境に対する影響を最小限に抑えることが求められる。CO2排出量や廃棄物の発生量などの削減、再生可能エネルギーの活用、バイオマス資源の利用、環境保護活動の推進などだ。
企業は社会的責任を果たすことが求められる。人権や労働基準の尊重、地域社会への貢献、消費者保護、サプライチェーンの透明性の確保などだ。
企業は持続可能な経済成長を追求することが求められる。社会的価値を創出し、イノベーションを促進し、顧客満足度の向上、リスク管理やコンプライアンスの確保などだ。
これら3つを総合的に考慮し、より長期の視野を持ち持続可能な事業活動を行うのだ。昨今このようなワードを上手く活用し「やっている感」を演出する企業も少なくない。しかし自社の取組を整理し、こまめに発信することで、競争力を高め、結果的に顧客や利害関係者からの信頼や支持を得ることにもつながる。
重要なことは表面的に言語化して発信することではなく、企業として実践することだ。サステイナビリティ経営の本質は、企業の社会的責任を果たすための実践そのものなのだ。
(サステイナビリティ経営と企業価値の関係)
ボストン・コンサルティング・グループの調査によると、企業間の諸条件を揃えた場合、サステイナビリティ経営を実践する企業は、実践しない企業よりも利益率が高くなる報告を随所で出している。
EY Japanの各種レポートを見ると同様の取組を行う企業の資本コストは他の企業よりも低く、市場からの評価が高まっていることが分かる。これらの議論は世界経済フォーラムなどでも度々議題にあがっていることから一定の評価はあるのだろう。
また、S&P Dow Jones Indicesなどのレポートでも、ESG指標を採用する投資ファンドは、採用しないファンドよりも高いリターンを示す傾向を示している。サステイナビリティ経営の取組は、企業価値の向上と投資家からの支持を得るために重要な要素であることが分かる
(小規模チームの取組の仕方)
サステイナビリティ経営の取組は、何も大企業に限った話ではない。小さな規模でも取り組むことで企業価値の向上に加えて、従業員のエンゲージメントの高まり、利害関係者への訴求と認知が高まるなどメリットが多数ある。取り組み方も大きく構えることなく次のようなステップで実現できる。
1)組織の目的やビジョンの確認
長期的な視点で、環境・社会・経済の3つの視点から取り組むため、組織の目的や現在のビジョンと照らし合わせて取組みを確認する。
2)利害関係者の整理
利害関係者は、従業員、顧客、取引業者、地域社会、金融機関などだ。各利害関係者にとって重要な課題や要望があれば共有しながら取組を進める。
3)現状分析
多くの企業は何らかの取組を既に実施しているはずだ。例えば、組織の社会貢献や環境貢献活動、省エネ活動などだ。このような活動をサステイナビリティ経営の取組として一度整理してみるのだ。
4)目標設定
上記の取組を繰り返し該当チームで取り組む目標を設定する。具体性、測定できる指標、実現できる内容、時間軸などを可視化し、適宜利害関係者と共有する。
5)行動計画への落とし込み
上記をベースに行動計画を策定する。小さな組織でも行っている行動が世の中に役立つことが分かれば皆の気持ちが高まっていく。そして定期的にその実行の確認とブラッシュアップを継続する。
6)コミュニケーションの実施
取組状況などを適宜、利害関係者に発信する。簡単なレポートを作り提供する。WebサイトやSNSで定期的に発信する。イベントや講演会の時に状況を伝える。日常的な顧客とのやり取りの中に挟んで話をする。など、取り組める内容を2、3組み合わせて実施するのだ。
(小規模チームが取り組む際の意識と留意点)
良いことばかり書いてみたが、最後にデメリットや留意点を整理してみる。
まずは、費用増加だ。環境や社会に配慮した取り組みを行う必要が一方、長期的には設備の改修や、認証取得など費用がかかることがある。また取り組む際の人員確保や従業員の教育にも費用がかかる。
サステイナビリティ経営を実践することで得られるメリットはあるが、それを社会にアピールすることを従来から行っていない組織は少し難しい部分もある。広報やマーケティングの活動もセットで捉えたほうが良いからだ。
仮に、業界全体でサステイナビリティ経営に取り組んでいない場合、小規模チームが取り組んでも、大きなインパクトを出すことは難しい。そのため業界内の他の企業とタッグを組む等、協力して進める必要もあるのだ。
サステイナビリティ経営は、より長期的な視野で経済、社会、環境に配慮した取り組みを行うことだ。持続可能な社会の実現に貢献することは、長い目で見れば自社の価値を上げ、地域社会と一緒になって永続することを目指すのが小規模チームの理想だと思う。
大上段に構えることなく、従来の取組を整理する形式で、経営者の考えを示し、従業員や地域社会のこと等をチームで考えるツールとして捉えることで、小規模チームでも活用ができる取組だと考える。
参考:「トータル・ソサイエタル・インパクト」 株式価値向上から社会的価値向上へ ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)
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新規事業の旅57 セキュリティの今後
早嶋です。
コンピューターのセキュリティ対策についての変化や今後の方向性はどうなるだろうか?
マイクロソフトがWindows 3.1の後継として、1995年に発売したオペレーティングシステム、ウィンドウズ95。この発売の前後でインターネット活用が仕事から家庭にまで一気に普及するきっかけとなった。そして2007年頃にはアップルからスマートデバイスが発売され、パソコンからスマフォを持つ個人が増え、一人1台を保有し日々の生活インフラとなり生活に溶け込んでいる。一方、あらゆるデバイスがネットワークに接続され、セキュリティ問題が浮上する。今回は、そのセキュリティ対策の進化と歴史に注目する。
(1990年代)
1990年代よりネットワーク利用が拡大される。ネットワークとはコンピューター同士を結ぶ概念で、構内ネットワークを結ぶLAN(Local Area Network)から、拠点間を離れたコンピューター同士を結ぶWAN(Wide Area Network)へと発展した。その際に利用される通信規約がTCP/IPだ。これは世界中のコンピューターネットワークで標準的に利用される通信ルールだ。TCP/IPはWWW(World Wide Web)の発明と共にコンピュータとそのネットワークに革命をもたらした。
異なるデバイスやOSが通信する際にルールが必要だ。そこで通信規約としてTCP/IPが規定された。我々がインターネットでWebページを閲覧する時は、TCP(Transmission Control Protocol)とIP(Internet Protocol)を利用する。TCPは送ったデータが相手に届いたか、その都度確認しながら通信するルールで正確な信号を送信する通信規格だ。IPはIPアドレスと呼ばれる数値を付与し、その数字を用いて通信先の指定や呼び出し、通信を行う。
一方、TCP/IPによって構内(例えば家庭内や企業内)の内側と外側が自由に接続されるようになる。家庭や企業内には各々機密情報を保持しているが、インターネットを不正に活用すれば機密情報を盗み出すことも可能になるのだ。また、人為的なミスで機密情報を漏洩する恐れもある。このような背景からセキュリティ対策は不可欠なのだ。
そこで企業は構内の内側と外側にセキュリティの防御用に壁を設置し、悪意を持つ不審者のネットワーク侵入を阻止する。この仕組はファイアウォールと呼ばれる。ファイアウォールは、送信される通信データのかたまり(パケット)情報から接続を許可するかどうかを判断する。仮に不正アクセスの場合は、管理者に通報される。ファイアウォールには様々な付加機能がありセキュリティ対策に柔軟に対応できるようになっている。
(2000年代)
この頃より、企業は不審者の侵入防止に加えて、ウィルス対策が必要となった。当初、ウィルスはフロッピーディスクなどを介してコンピュータに忍び込み子供のいたずらをする程度の存在だった。しかしネットワークの普及と共に企業での電子メールの活用がウィルスの拡散に勢いをつけた。
記憶に残るウィルスに「I love you」がある、2000年の出来事だ。メールのタイトルが「I love you」でファイル添付がある。添付ファイルを開くとウィルスが解凍されコンピュータが感染する。このウィルスは厄介で、コンピュータに保存されたデータを破壊し、更に登録しているメールアドレスにも同様のウィルスを仕込むのだ。そのためあっという間に世界に拡散されたのだ。このようなウィルスが2000年代初頭はかなり増殖した。「コードレッド」や「ニムダ」などもその類だ。ウィルスは徐々に高度な技術が仕込まれ、最終的には身代金と同様にウィルス感染した企業や組織に、コンピューター制御を正常に戻す見返りとして金銭を要求するウィルスなども登場してきたのだ。
(情報漏えい)
2000代初頭は大規模な情報漏えいも世間を賑わせた。都内で美容サロンを運営する企業から数万人規模の個人情報が漏洩し、世間を騒がせた。この事件は、裁判で一人当たり数万円の損害賠償を言い渡され、企業に取っては情報漏えいが重大な経営リスクとして認識されはじめた。
情報漏えいによる損害賠償を企業に課した背景は、その発生要因にある。これまでの流れを考えると、外部からの不正アクセスが要因だと思うが、実際は内部要因が主たる原因だったのだ。コンピューターを外に持ち出した際に紛失してデータを漏洩させた。内部のオペレーターが誤作動を起こしてしまい情報を外部に拡散してしまった。このような要因が8割以上を占め、外部からの意図的な攻撃や内部社員の悪意ある不正持ち出しなどが残りを占める。つまり情報漏えいは人為的なミスや内部不正などが理由で、外からの脅威ではなく内部での管理に関わる問題と認識されたのだ。
情報漏えいの問題は、通信販売会社、電力会社、金融機関、小売業など、様々な業界や企業から発生した。このように多くの情報漏えい事件を背景に2003年に個人情報保護法が成立。2005年から全面的に施行された。個人情報を取り扱う一定規模の企業に取って、情報を確実に管理して安全に運用することが重要課題として認識されたのだ。
(拡大する脅威)
セキュリテイ対策はイタチごっこで、大量に迷惑メールを送り付けるスパムメールの増殖、ファイアウォールをくぐり抜け不正データを送りつける手口など、敵の技術も都度高度になってきた。そこでIDS/IPSなどが新たに実装された。IDS(Intrusion Detection System)とは、ネットワークやサーバ通信を監視する仕組みで、外部からの不正アクセスを検知し、管理者に通知する。IPS(Intrusion Prevention System)は、不正アクセス検知と通知を行いながら、該当通信を遮断するなど侵入を防ぐ機能を持つ。ネットワークの利便性が上がる一方で、このように幾重にも及ぶ防御が必要になってきたのだ。
最終的には、これらの機能をUTM(Unified Threat Management)に集約することになった。UTMはファイアウォール機能、IDS/IPS機能、アンチウィルス機能、アンチスパム機能、Webフィルタリング機能、アプリケーションコントロール機能などを備えで、これらの機能を駆使した多層的な防御を1つの装置で行うのだ。
セキュリティ対策は全ての企業が行っているわけではない。リテラシーが低い企業は、日々リスクにさらされている現実を知らない。そこで2010年頃には、標的型攻撃が増加していく。敵もランダムに攻撃を仕掛けても、防御する企業には影響を与えることができない。そこで不正組織は事前にセキュリティが弱い企業や団体を調べた上で、脆弱な組織に攻撃するのだ。標的にされた組織にはウィルスやマルウェアが仕込まれた添付ファイルやURLを送り、不正プログラムをインストールさせるのだ。2015年に起きた公的年金を扱う特殊法人を狙った不正アクセスは大変なニュースとなったので読者も記憶に留めていることだろう。
2019年12月、武漢から発症したコロナ。その後の企業は、これまで重い腰をあげて一気にデジタル化にシフトした。結果的にテレワークやクラウド型のサービスを標準としたニューノーマルな仕事のスタイルが定着し、新たな脅威にさらされるようになった。従来の構内からのアクセスと異なり、初めから外部環境からのアクセスが当たり前になる。セキュリティが効かいないエリアでの業務が発生し、そこにセキュリティの落とし穴がますます増えている。
これらの対策は、社員の情報リテラシーの向上やルールを整備した運営に加えて、クラウドや外部ネットワークでの仕事を前提としたネットワーク環境の再構築(シンクライアントやVPN等)が課題になる。そして万が一被害が出ても、早期に検知が出来て被害を最小化できるようにUTMを活用するなど、ログの取得や継続的なネットワークの監視は企業に取って新たに発生する必須業務となるのだ。
参照
情報セキュリティ10大脅威 2021:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構より
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2021.html
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