早嶋です。
スイスのノバルティス製薬グループの創業者一族で、世界有数の財団にサンド・ファミリー財団がある。当然にこのような背景を持つ財団であれば医療制度の向上や教育制度の支援を行うと思うだろう。サンド財団はその中で、芸術の支援の一環として同財団が所蔵する時計やオートマタ(からくり人形などの機械)などの修復や管理をミッシェル・パルミジャーニに一任した。
ミッシェル・パルミジャーニは「神の手」を持つ時計師という枕詞がつくほどの技術を有す。スイス高級時計の神秘に惹かれ、時計の修復を学んだパルミジャーニは、クオーツ時計が世の中に登場し伝統的な時計製造業が危機に陥るさなかの1976年、修復専門のアトリエを構えた。修復の仕事を繰り返す中で、パルミジャーニは過去の傑作時計を先生に機構を深く学び、時計づくりの叡智と技術を極めていく。そして1980年に希少な時計コレクションを有する冒頭のサンド財団と出会ったのだ。
時計の修復をする過程で様々な部品工房や職人との関係を大切にしながら関係を強化していき、やがてそのネットワークが時計生産体制の基礎となっていく。そして1996年にサンド財団の全面的な資金援助の下、パルミジャーニ・フルリエをスタートさせた。時計業界では水平分業型で製造する手法と製造工程の95%以上を自社で行うマニュファクチュールの手法があり、パルミジャーニ・フルリエは後者の手法を取った。修復から得た知見や美意識を形にしたモデルは、黄金比に基づくプロポーションと過去の機構からヒントを得た様々な機構が同社の特徴となり比較的新しい時計メゾンであるが、近年では存在感を示すブランドになっている。
パルミジャーニとサンド財団は、時計製造の文化と技術を未来永劫継続的に残し、そして発展させていくためにマニュファクチュールの戦略を取る。ケースメーカー、回転部品や文字盤メーカーなど、次々と傘下にすることで、オート・オルロジュリー(高級複雑時計製造)を製造する体制を整えた。現在では、脱進機もグループ内のアトカルパ社により製造される。
時計業界の内側から見ると、急激なマニュファクチュールへのM&Aは少々やり過ぎ感を感じるものもいるかも知れない。しかし、パルミジャーニは同業者からの外部受注も引き受けている。それがヴォーシェ(Vaucher Private Label)だ。自社では製造できない高品質なムーブメントを若い時計ブランドやミクロブランドに提供するのだ。
そのヴォーシェ一押しのムーブメントは5400シリーズだと思う。スモールセコンドとマイクロローターを搭載した3針ムーブメントだ。パルミジャーニ・フルリエの代表作であるパルミジャーニ・トンダ1950など、自社ブランドでも幅広く展開しているムーブメントだ。我々、パリス・ダコスタ・ハヤシマの処女作モデルである紺碧(KONPEKI)、そして2024年2月にデビューする鏡餅(KAGAMIMOCHI)も同シリーズのムーブメントを載せている。
他の高級メゾンも同ムーブメントの採用は多く、例えばエルメスのスリム・ドゥ・エルメスもそうだ。このモデルは、ドンツェ・カドランのエナメル文字盤の仕様でファッションブランドの粋を超え、機械式高級腕時計として認知された。それもそのはず、エルメスはヴォーシェ・フルリエの株式を25%保有しており確固たる資本業務提携の関係だからなのだ。
(時にまつわるブログ)
スイス産業とその歴史・その1
スイス産業とその歴史・その2
腕時計とリトルハイア
日本勢の時計の売り方
スイスの腕時計事情
時計の動きに注目
グランドセイコーとブランディング
システム化した社会
グランドセイコーその1
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グレーマーケット
GSを最高のブランドにするために
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パルミジャーニとエルメス
グランドセイコーのブランディング
早嶋です。
グランドセイコーは高級時計市場参入のため戦略を明確に実行している。オメガより人材を招き、職人技や日本らしさを全面に表現したポジションを取り、若年層にフォーカスした取り組みを行っている。
超高級時計といえば、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、A.ランゲ&ゾーネ、ブレゲ、ブランパン、ロジェ・デュブイなのだ。各々の時計ブランドは独自の伝統や歴史、技術を有し、時計を見るなりブランドが分かるほどの個性があり、愛好家から指示されている。
時計のイメージはスイス時計が圧倒的な地位であることは皆さんの想像通りだが、高級ブランドのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、リシュモングループなど欧州勢の勢いは強い。その中で、グランドセイコーは高級時計ブランドの牙城を崩そうとしている。日本人として嬉しい限りだ。
現在、グランドセイコーは、5,000ドルから1万ドルの価格帯で頭角を現している。現在円がとても弱く75万円から150万円程度と聴くと、腕時計に価値を見出さない人からすると高いと思うだろう。普段から時計愛がある人は、高級時計としてはリーゾナブルな価格帯だ。
ただ、上記高級ブランドの時計は、ステンレスのケースでも200万円前後に価格が高騰した。コロナの3年間、スイス時計業界も大きな影響を受け、加えて人手不足で職人が足りない状況が続く。更に、スイス時計の水平分業の体制も、大手コングロマリットにより合従連衡が進み、小さなケースメーカーや針メーカー、文字盤メーカーやインデックスメーカー等、次々に大手参加に吸収されている。大手ブランド傘下になり、部品一つひとつの値段も高騰している。
またマクロの視点で見ると、機械式時計の職人は、アナログ産業ど真ん中であり、若手の成り手の少なさと、職人に成るまでの時間がかかるが故に、急激な人手不足に悩まされているのだ。そこで大手時計メーカーを筆頭に、堂々と価格を上げ、そこに円安が続き、海外時計の価格高騰が止まらないのだ。
グランドセイコーは1960年代、セイコーの上位モデルとして販売が開始され、2010年に海外展開を始めた。当初はロレックスと同等の1万ドル前後を狙ったが、うまくいかなかった。2017年にオメガの米国法人だった社長をヘッドハントし、米国販社のテコ入れを始めた。
当時は、消費者にも流通業者にもグランドセイコー=ちょっと高いセイコーという認識で、セイコーの延長にしか過ぎなかった。当時、全米で4,000店舗のセイコー販売店があり、グランドセイコーの販売戦略は安易なものだった。4,000店舗の中で売れ行きが良い30店舗を選び、そこにグランドセイコーを卸すだけだったのだ。プロモーションも基本的にセイコーと同じ。いくら中身が良いとて、それは売れないだろう。と当時から筆者は提言していた。
そこで米国での販売店を30店から15店に絞り、更に、高級時計を販売している店舗に売り込みをかけ、セイコーと異なる独自の販売網を確立しはじめたのだ。ターゲットもロレックスとずらした。高級スイス時計の主要顧客は40代から50代の高収入層。グランドセイコーはその若年層に絞った。旗艦店舗も東海岸ではなく、西海岸のLAに出店。IT技術者で収入に余裕があり、グランドセイコー独自のスピリングドライブなどの技術に興味を持つ層に勝負をかけたのだ。スピリングドライブは、機械式とクオーツのハイブリットの機構でセイコー独自の技術だ。他者は追従できない。イノベーションを受け入れる西海岸にあえて絞り、伝統的なマーケティングと異なる取り組みを行ったのだ。
高級品のマーケティング・ミックスは、兎に角徹底的に絞ることだ。グランドセイコーは、開発力があり、次から次に新しいモデルを出す。ただ、まだまだポジション的には弱い。Webを見ると商品ラインナップは現時点でも234商品もある。まだまだ商品点数は多いと思う。24年1月に新たにNYに旗艦店舗を出すが、もっと希少性を出すなどしてブランドの価値を高めないのが不思議だと感じる。
GSを再考の時計にするために
日本勢の時計の売り方
グランドセイコー①
グランドセイコー②
グランドセイコー③
父曰く
ウブロ
スイスの時計事情
腕時計とリトルハイア
スイス時計とその歴史①
スイス時計とその歴史②
現場の心理的安全性の確保(店舗事業5)
早嶋です。
店舗ビジネスにおいて、集客機能や顧客管理、それから店舗ごとの係数管理は全てデジタル化され、本部が一括して行うようになります。従来は、店舗毎に店長がいて、顧客管理や、店舗の商品の管理、それからスタッフ管理等を行っていました。
例えば100店舗の何らかの店舗事業を行っていた企業は、本部スタッフ数名で100店舗の管理を行い、顧客の来店履歴や利用履歴に応じて、SNSや他の媒体を組み合わせた顧客の集客を行うようになります。そのため店舗の仕事は、本部が送客をした後のオペレーションになります。従来は店舗毎にプロジェクトを行い、イベントの企画や顧客のリピートを考えたり、新規の開発を行っていましたが、それが不要になるのです。
当然、店舗の管理体制や店長の役割が大きく変わります。というか店長そのものが不要になり、5店から10店舗単位で店長を管理していたスーパーバイザーも不要になります。店長の役割があるとしたら、店舗のスタッフの心理的な安全性を常に確保しながらケアすることでしょう。そのため従来は企画力や簡単な財務の知識が必要でしたが、これらは全てコンピューターと本部が一括で行うようになるので、見方がわかれば専門知識や経験は不要です。代わりに、相手のことを慮れる、気遣いができる能力が格段に必要になります。
この能力を持っている人は、今の店長ではなくパートやバイトや社員など、雇用形態に関係なく持ち合わせている、ヒューマンスキルの高い方に仕事の役割をお願いするのがベストになると思います。本部から仕組みなどで店舗に送客された顧客が、店舗での体験を最高に心地よくするケアができ、時々の重要員の気持ちの変化や心の変化に適度にケアできる人材が必要になります。
店舗のDX化は、現場スタッフの心理的な安全性の心のケアを同時に進めていかなければ、単に作業に追われる場所になってしまいます。効率的に顧客が来店でき、リピートできるようになっても、しばらく現場での人間のやり取りはなくなることは無いでしょう。効率化によって得られた資源を現場のヒューマンタッチな取り組みにフォーカスするイメージを持っている経営者はデジタル化に対応してもしばらくは事業を継続できることでしょう。
これまでの店舗事業のブログ
対前年比管理を見直そう(店舗事業1)
本部が集客機能を持つ(店舗事業2)
DXの目的を設定する(店舗事業3)
現場の組織と評価を見直す(店舗事業5)
現場の組織と評価を見直そう!(店舗事業4)
早嶋です。
見かけの仕組みを良くしても、顧客の満足度はあがりません。
先日、ピアノを買いに行きました。電子ピアノです。諸事情から購入したくなり、妻が調べてとある店舗に在庫の確認連絡を。ネットで購入しても良いのですが、既存のピアノの代替で、今のピアノとは別の部屋に置く目的からキータッチを実機で確認したかったのです。
電話口に出たお店の方が、色々な質問をしてくれて、随分と沢山の情報を提供しました。そしてその日の午後にショップに来店することに。で、店舗に行くとその方は、別の仕事で不在。別の店員に状況を説明するものの、その電話の対応は全く店舗で共有されていません。店舗のスタッフは4名程度おり、人手が不足している状況でも有りません。
私の仮説ですが、店舗店員が情報共有していない理由は、個々のポイント稼ぎが背景にあると思います。自分が接客した方からの売上により、自分の成績が左右する。その場合、インセンティブは個人につくので、組織で対応することなく、自分の都合でモノゴトを考えがちです。
20年前のように、店舗来店と接客が大きな因果で売上に直結した次代もあったでしょう。でも現在は、ネット、SNS、来店、イベント、チラシ等、ありとあらゆるコンタクトポイントが存在しており、来店時には顧客が既に情報武装している場合も大いにあります。興味を持って調べている顧客に様々な角度から対応できる店舗スタッフもそうそういません。そう考えると店員が貢献する分量も20年前と大きく異なっています。
もちろん、ITを活用して個人のIDをベースに購買前と中、そして後の追跡をしている店舗は別でしょうが、多くの伝統的な店舗事業はまだまだそこのレベルにいきません。
しかし、多くの店舗事業は一部デジタルマーケティングを導入しており、店舗ではDX対応をしよう!と少なくとも掲げています。その場合、顧客の動線を鑑み、KPIとして店舗スタッフの売上に比重を置くことは無意味です。顧客が店舗に行った際の体験に不具合が生じるからです。むしろ店舗は来店した顧客が気持ちよく買い物体験をすることに集中すべきなのです。そうすると個人のKPIに接客した顧客の売上を設定することは愚の骨頂になるのです。
理想は、電話を受けたAと店舗で偶々接客をしたBが情報を連携して、顧客が望む接客をすることです。この理解がなければDXとかIT機器に投資をしても、顧客体験が高まるどころか低下をまねきます。
今の組織や評価軸は10年以上前の仕組みを脈絡と受け継いで見直しをしてない場合、今の戦略に対して大きなギャップがあることを認識して整備し直すことをおすすめします。
保険とリトルハイア
早嶋です。
保険会社のミッションは、顧客本位を据え「一生涯のパートナー」や、「確かな安心いつまでも」などを唱えていますが、従来の顧客のコンタクトポイントはビックハイアのみでした。つまり、契約前の営業、契約時、契約の更新時、保険を利用するときです。しかも、実際に保険を使うときは、こちらから連絡をしない限り分からないという状態です。
それが近年のDX化によって、ようやくミッションに掲げる顧客のリトルハイアに真にフォーカスする動きが開始されます。つまり、契約してからをすたーととして、本来の一生涯のパートナーや確かな安心をいつまでも提供することが可能になるのです。そしてこれは顧客にとっても喜ばしいことになります。
仕組みは簡単です。保険に加入した顧客の健康に関わるデータと保険料が連動することで、顧客は保険料を下げることができ、企業は実質的な金額を得ることで保険の仕組みを効率的に運営することができます。現在はほぼ人口100%に近い人がスマフォを持ちます。これらを媒体に日々の健康に関わるデータを集め、保険会社と連動することができれば、双方に取ってメリットが高くなる仕組みです。
国内でこのような仕組みを導入する際は、いくつかの規制がネックになるため大手保険会社は人口ボーナスが今後期待できる東南アジアで同様のサービスを開始します。過去の日本と同様、経済発展に伴い健康意識も高まり市場としてもフィットすると判断しているのでしょう。
この手の取り組みは保険料の割引以外にも、日々、顧客が連絡を欲しいタイミングで保険会社が顧客にコンタクトができるようになります。すでに中国の平安保険が進めている領域ではありますが、まさかのタイミングが起こる前に予防した取り組みを保険会社が中心になってすすめることができるのです。
従来の保険会社はリスクをへらす目的で、参考にするデータは過去の健康診断の結果を基にするしかありませんでした。しかし、日々顧客の健康に関するデータをモニタリングすることができれば、適切な保険料の設定がリクスなしに容易にできます。また、数値の変化をモニタリングすることで将来発生するリスクを下げることも可能です。例えば、体格指数(BMI)などの数値の変化をみながら糖尿病や生活習慣病のリスクを予見して、罹患しないようにアドバイスすることも可能です。データの連携が可能になれば医師やスポーツトレーナーと共有することで様々な助言を受けることも可能になります。
登場人物が多岐にわたり、様々な規制が目に浮かびますが、この取り組みは一大マーケットとなる東南アジアで先行的に実験して欲しいものです。このような取り組みは、アップルやグーグルが主導権を握るのか、保険屋さんが握るのか、あるいは病院や健康を提供する企業が握るのか。我々消費者にとってはどこが覇権を握っても良いのでサービスフィーが下がり、みんなのデータによってみんながより健康に過ごせる世の中の実現につながれば嬉しいことですよね。
– 三井住友会場は国内損保としてアジア進出に先行。日本企業の現地法人の顧客からベトナムを中心にアジア各国の個人向け市場を開拓して生損保両方の拡大を目論む。
– グーグルは20年に保険分野に参入して、個人デバイスから得られたデータを活用した保険サービスを開発中。
– 住友生命保険は18年に南アフリカのディスカバリーと組み、アプリと組み合わせた健康増進型保険を発売。
– SOMPOひまわり生命保険は原則すべての個人保険を健康増進型に切り替える計画を掲げる。
– 東京海上日動あんしん生命保険やジャストインケース(東京・中央)も国内で同様の販売実績がある。
囚われのない素直な心で聞く
原です。
ビジネスを取り巻く環境の変化が早く複雑な時代、顧客の声は、企業の問題解決やマーケティング活動が顧客重視の傾向になればなるほど、貴重な情報源ととらえられるようになってきました。
私の最近の経営相談でも、「顧客の声をもっと自社のビジネスに活用したいのですが、具体的にどのようにしたら良いでしょうか」という相談を受けることが増えてきました。
私は、これまでに多数の「顧客の声」を活用したマーケティング調査に取り組みました。そして、企業の製品開発・サービス開発や改良、自治体政策課題研究など多様な問題解決の解決策提案に役立てています。
調査結果から明らかに見えてきたことは、企業側が提供している商品やメッセージに対して、消費者が誤解しているケースがとても多いのです。
企業側が「知っていて当たり前」、「伝わって当然」と思っていることも、顧客は意外と分かっていないものです。
つまり、企業側と顧客側にギャップ(誤解という問題)があるのです。
ギャップが生じているなら、それを解決しなくてはいけません。そのためにはどうすれば良いでしょうか。
問題点は、「あるべき姿」と「現状」のギャップを分析することで発見できます。まずは、「現状を知る」ことから始めます。つまり、「顧客の現状を知ること」なのです。顧客は、何を意識しているのか、何に価値を感じているのか、企業側が商品や広告を通じて伝えたメッセージをどのように感じるのか。そのように意識し感じる理由はなぜなのか。これらの顧客の現状を知ることが、ビジネスの問題を解決するための第一歩となります。
顧客の現状を知るには、グループインタビューなどの顧客の声を聞くことが「素直な」方法です。
松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)創業者の松下幸之助氏は、次のように述べています。
「世間、大衆の声に、また部下の言葉に謙虚に耳を傾ける。それができるのが素直な心である。それを自分が正しいのだ、自分のほうが偉いのだということにとらわれると、人の言葉が耳に入らない。周知が集まらない。いきおい自分一人の小さな知恵だけで経営を行うようになってしまう。これまた失敗に結びつきやすい。素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから湧いてくる。」(引用:「実践経営哲学」著者 松下幸之助)
私は、大学生の頃から松下幸之助氏の著書を何度も読み返しています。
インタビューで顧客の現状や実態を把握することは、問題を発見し、それを効果的に解決していくための土台となります。インタビューの重要性、有効性を認識し、机上で悩む前に「素直に顧客の声を聞く」姿勢がとても大切です。
激変する自動車業界をジョブ理論で整理
早嶋です。
激変する自動車業界についてジョブ理論を通じて整理しています。内容は自動車業界のMaaSにおける変化についてです。CASEのうち、従来、環境目的のE(電動化)と、従来、安全目的のA(自動化)が『コンニチハ』することで、『あれあれ?』となり、車業界に大きな変化をもたらすきっかけになりました。そして車がネットワークにC(接続)することで、結果的に、車を中心としたアリとあらゆるサービスを統合しよう!というMaaSが本格的にイメージできるような昨今になっています。
従来の車屋さんが車を売ること、つまりビックハイアで稼いでいた時代が終わり、車の購入後、或は、車の利用におけるリトルハイアにフォーカスする時代に大きく変わります。従来のメーカーは、自分たちを『製造する人たち』となずけている通り、顧客のIDや、顧客がどのように使用しているかには興味がありません。
ここに車が電子仕掛けになった瞬間、ネットワークにつなげた瞬間、自動化が出来るようになり、ウーバーやDiDiのようなスマフォベースに顧客IDを武器に分析整理活用する企業が一気に覇者になる時代がすぐそこまで見え隠れしています。
近い将来、車の所有は一部の金持ちか、趣味趣向の延長で、今の高級機械式時計のような位置づけになると思います。すると、従来、個人が車を買うことを前提に構築されたビジネスモデルや道路や駐車場の想定がガラリと変わります。個人の家やマンションに電気仕掛けの充電器を提供したい企業も、個人に損保を提供したい企業も、個人の洗車をせっせと行っている企業も、あっというまに自動運転車を沢山保有する企業や資本家とスマフォベースの会社が、従来の事業モデルをぶっ壊して、牛耳る可能性が出てくるかもしれません。
ただ、一般消費者の我々としては、よりMaaSの恩恵を被ることになり、豊かな社会を過ごせるようになると思います。
アマゾン、大丈夫?
早嶋です。
アマゾンの利用は、本の利用から日用品まで私的には拡大しています。しかし、一方でアマゾンをプラットフォームとして販売を行う業者も増えているため、初めて買う商品は時として選択に迷いが生じます。そしてその際に評価を参考にするのですが、正直当てにならないことが多々ありました。そのような場合、多少値段が高くてもナショナルブランドの商品を購入します。そこで、商品によってはアマゾンを使わずにヨドバシカメラで購入するなど無意識に使い分けていることに気が付きました。
よくよく考えると、アマゾンが提供する商品とアマゾンがマーケットプレイスとして提供している場に業者が出品している商品の内、後者のマーケットプレイスの商品がぐたぐたで質が明らかに悪いのでは無いか?と思うのです。
これって長期的な視点で見るとエンドユーザーが離れる結果にならなにのかなと思います。アマゾンは業者さんに対して商品販売の機会を提供していますが、エンドユーザーにとっては結果的に使いにくい媒体になりつつあると感じるからです。
マーケットプレイスで商売を拡大したいのであれば、その先のエンドユーザーの事も鑑みなければ、そのうち他の媒体に購買が移るのでは無いでしょうか。
仮にその危機感があれば、例えば業者の選定や商品の品質についてのチェックを強化する、あるいはコメントや評価の裏とりなどもなにか工夫するなどの取組が見られてもよいですが、今の所、その誠意は感じられません。
整理するとアマゾンの品揃えを増やしているマーケットプレイスの商品は、レビューの信憑性が低く、出品も自由なため、今後も改善するどころか劇的に悪くなると推測します。商品説明を見れば明らかに悪質な業者なんだろうな?的な企業が平気で商品を販売できるということ自体、アマゾン大丈夫か?と感じるのです。
おそらく同じことを感じている人は、アマゾンのプライムマークの商品以外は見向きもしない人だと思います。私も基本そうなのですが、あまりにもマーケットプレイスの商品がありすぎてグタグタ感が否めません。
プライム商品のみ買えるというような選択があればまだましなのですが、と今日もアマゾンを使っていて感じた次第です。
飲食店の電話対応
早嶋です。
ネット社会になっても電話による予約の確認は飲食やホテルなどは結構多いと思います。中でも飲食は、ネットで調べて「行ってみたい!」と思うと、その場で電話する方が多いのでは無いでしょうか。
例えばランチ時間に、近くで検索して空いているかを調べたい。夕食のタイミングで入れるか知らべたい。週末の予定を立てている時に予約を取りたい等々です。
一部はWeb対応をしていますが、レスポンスが遅いものがほとんどで、その場合直ぐに次の候補の店にスルーします。
と考えた時に飲食店の電話対応って、結構重要なコンタクトポイントだと思うのです。しかし飲食店はその重要性を理解していないように感じます。特に客単価が高いお店であっても、未だにコンタクトポイントを無視して、店内の設えと料理そのもので勝負をしようとしています。
電話のタイミングを考えると、結構多忙な時期だと分かります。ランチ前や夕食前は仕込みをしている、開店前の準備をしている。ですが、顧客はそのタイミングで飲食店に連絡します。結果、オーナーや女将相当の方が電話に取ることが少なくなり、従業員やバイト・パートが電話対応をします。本人に悪気は無いのでしょうが、レスポンスややり取りが悪く、結果お店の印象が悪くなる。そしてスルーする。という経験は多くないでしょうか。
もし従業員やパート・アルバイトが電話を取る機会があるのであれば基本的な対応や受け答えのレクチャーをするか、或いは電話に取らせないか。要は中途半端な対応が結果的に次のリードを消している可能性があるのです。
ポルシェの環境事例・911
早嶋です。
「新品を今買うか、新しい技術が普及するまで購入を伸ばすか?」このような問いを持つことは無いでしょうか。今、世界を取り巻く自動車環境は電気自動車への移行時期です。しかし欲しい車はガソリンエンジン。今買って乗らなくなった頃のリセール・バリューを考える頃には、二束三文になっているかもしれない。ということで購入をためらう経験です。
スポーツカーの代名詞911。それを世の中に送り出すポルシェは、この取り組みに対して正面から取り組み解決策を提示しています。従来のガソリンエンジンは、化石燃料由来の燃料ということでCO2の排出に大きな影響を与えた。しかし、既に走っている自動車を電気自動車に置き換える過渡期において、走れる車をスクラップにして新車を普及させることもナンセンス。そう考えたポルシェは、既存の911オーナーに対して新たな環境技術で脱炭素を後押しするのです。水素から「ガソリン」を生成して提供する取組です。
(水素ガソリン)
ポルシェはドイツのシーメンス・エナジーなどとタッグを組み、チリ南部パタゴニア地方で風力発電を活用した水素ガソリンのテスト生産をはじめます。生産地のパタゴニア地方は常時風が強いことで知られ、南半球で偏西風が吹く唯一の陸地です。その風はアンデス山脈にぶつかり、冷やされ、密度が高くなったアンデス吹きおろしの風は風力発電にも最適なエリアとされます。
風力発電で得た電力から水を電気分解して水素を取り出します。そこに回収したCO2を化学的に合成することでガソリンと同じ炭化水素(水素ガソリン)を作るのです。
今回の初期投資は2000万ユーロ、日本円で凡そ26億円です。計画では22年に年間13万リットルを生産し、26年には約100万台分の5億5千万リットルを生産します。生産した水素ガソリンは既存のガソリン車に使用できディーラー等を介して既存ユーザーに直販するのです。
課題はコストです。テスト生産では1ℓ当たりの生産コストが10ドルで、26年の量産時期までに2ドル以下をターゲットにしています。ガソリンの生産から輸送、販売コスト、税金等を考えればオーナーが購入する小売価格はやや高くなるでしょうが、911を中心に特別な顧客にとって、既存のガソリン車がこれからも乗れるのであれば合理的な提案となるでしょう。
(911)
1964年の発表から今に至るまで、スポーツカーの代名詞でもあり、ポルシェのフラグシップモデルです。一貫してRR方式(リアエンジン・リアドライブ方式:車体の後部にエンジンを配置し、後輪を駆動する方式。駆動するタイアに重荷が大きく、発進時の機動が機敏になる。またブレーキ時も4輪にかかる荷重がバランスされ安定した走行を実現するとされる。)を基本として、21世紀の現在では量産RR車として独自のポジションを構築しています。
1990年代までは4輪車では数少なくなった空冷エンジンを搭載していたことでも有名で、時代によって多少の変化はあるでしょうが基本的なデザインは不変でポルシェの代名詞になっているのです。
更に注目するのはその利益率です。911の販売は2020年の販売ベースで3.4万台とポルシェ全体の約1割程度です。販売車種としてはカイエンなどのSUVが伸ばしていますが、911が稼ぐ利益はポルシェ全体の3割を占めています。ポルシェオーナーは大切にポルシェを乗り継ぐことから、過去生産されてきた911の7割は今でも現役で世界を走っています。
代名詞で稼ぎ頭、生産された7割が現役の911。これをテクノロジーが変わるからと言って全て電気にシフトしてね。というのはやはり大きな課題だったのでしょう。そこを水素ガソリンの生産から供給というエコシステムを独自でつくり911オーナーを中心に提供する取組を開始したのです。
他方では、ポルシェはEV化の商用も進めています。20年に投入したセダンタイプのEVであるタイカンは年間に2万台の販売を実現して、現在でも注文過多でフル生産を続けています。23年以降は売れ筋商品のSUVのマカン、カイエンとセダンタイプのパラメーラのEVシフトも計画しています。ポルシェは2030年の新車販売の8割をEVにする計画です。
ポルシェの取組は、既存の911を中心とするガソリンオーナーの将来の悩みを解消するばかりではなく、水素ガソリンを活用することでカーボンフリーの取組を推進するという素晴らしい発想で事業を進めているのです。ガソリン車とEVの共存。利益率の高い911を水素ガソリンで維持するが出来れば、環境対応と事業の両面の帳尻も合うのです。
(購買後の取組)
SDGsと環境と両立する社会が求められる中、多くの日本企業はいまだに逆行した行動で成り立っています。大量生産を進め、商品アイテム数を拡大、在庫を抱え、まだ使える商品に対してリプレースを促進する。その中で利拡大を得る高度成長期と変わらないビジネスモデルです。
マスク、ファーストフード、冷食、食器や家具など日常的に使う商品から、家電や車や住宅を見渡しても、どこか「使い捨て」の感覚が色濃く普及しています。もちろん経済を合理的に回す、衛生に保つ、コストを下げて提供するためには必要な面もありますが、過度な安全、安心、コスト安の日本は本来持った文化的側面と思想を壊す側面もあるでしょう。
一方で昔の日本は、モノを大切に使うことが当たり前でした。茶碗や漆器や着物などはそもそも高価なもので、複数所有することなく、大切に修理して世代を渡り使用されてきました。継ぎはぎや金継ぎなどの技術はモノをただ大切に使うことに加えて、修理して修復することでむしろ価値を上げる粋な技でもありました。
私がスイス機械式時計ブランドを創業したきっかけも、まさにモノを大切に使う文化を取り戻すことでした。スイス、フランス、ドイツ、イギリス。街中を歩けば古い商品が大切に修理されてリセールされています。モノに対しての価値は、新しいものよりも使用した歴史あるものに対して一目置く文化が今でも生活にのこっています。沢山所有することなく、自分が良いと思ったものを長く使い続ける。機械式時計は200年前の技術をベースにスイスの職人たちと手作業でつくっていきますが、文明が途絶えても、同じ部品を削り出し、組み立てることで後世でも継続して使用できます。
クリステンセンが主張したジョブ理論の中で購買後の使用にフォーカスする、リトルハイアの重要性があります。企業のビジネスモデル自体、売ることをゴールと捉えるのではなく、販売することをスタートと捉え顧客と関係構築を行い、その後の商品の使用やサービスの提供の中で顧客が問題を解決していく。そこに注目すると自ずと顧客との関係性が高まり永続的な事業につながっていきます。
ポルシェの革新的な取組は最新のEV技術を推進する中で、既存のガソリンエンジンがそのままの形で後世でも使用できるビジネスモデルを考え実現しているところにあります。誰でも思い付くことができるアイデアかも知れませんが、実際にテストマーケティングを行いながらその構想を示す。
確かに911はポルシェを象徴するアイコンです。利益率が高くても販売が続き、過去の販売者の7割の車が今でも現役であることを捉えると、それだけ多くのオーナーがこよなく911を愛しているのです。そこに対して正面から環境対策に取り組み、911のオーナーはそのガソリンまで気遣っている。将来的にはそのようなキャッチが浸透することが目に浮かびますね。
(提言)
さぁ、今911の購入をためらっている皆さん。臆せずに買いましょう!
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