早嶋です。
アイデア。
ジェームスヤングの本は、アイデアの創り方というジャンルを初めて体系化したものだと思う。出版されてから既に800万部以上も売れているベストセラー。その中で、「アイデアはいつ出るのか?」ということに触れている。そしてそれは、何もしていないときという。何かをひねり出そうとして別のことに取り組んでいる時に出てくるという。この表現は腑に落ちる。
近年の脳科学では、脳細胞が整理される過程でに、アイデアが出るそうだ。もちろん努力は必要だ。継続的な意味のあるインプットと、それを自分で消化するためのアウトプット。しかし、一生件名脳みそをフル回転しているときには発想は乏しい。別の取り組みをしているとき、体を動かしているとき、ぽーっとしているとき、リラックスしているとき。まさに、脳みそが整理されるのでしょう。旭化成でいう「イヒッ!」の瞬間。
その瞬間は万人に一様に毎日決まった時間に降りてくる。
トイレの中、電車での移動中、通勤途中、運転中、お風呂の中、歩いているとき、タバコを負荷しているとき、寝る前、起きた後、歯磨きをしているとき。人は一日の決まった行動をしている時に、素晴らしいアイデアを出している。しかし、天才と凡人の違いは、そのアイデアを再び思い出せるか否か。悲しいが現実。
凡人は決まって忘れ、場合によっては想起したことも忘れている。何か素晴らしいアイデアを思い出したのに。というのはまだ良いほうかも知れない。天才は、必要な時にそのアイデアを再び取り出す処理に長けていると思う。
そこで考えた。
毎日毎日、決まってアイデアが出る瞬間があるのに、忘却の彼方に葬り去るのはもったいない。「ここに価値を見出すためにはどうするか?」私の場合、その瞬間は朝目覚めた時に訪れる。
初期の頃はメモを取っていた。従って、枕元に必ずノートを置いていた。しかし、取ったノートをなくして、結果的に思い出せないでいる。凡人なので、メモを取った瞬間に脳裏に残すこともできないでいた。目的が果たせないなら手段を変える。
そこで次は、携帯にメールをするようにした。タイトルにアイデアと付けて、自分にメールする。つまり、コンピューターに覚えてもらう作業だ。ネットワークがつながらないとき、何となく気持ちが悪かった。毎日する作業で、仕組みとしては問題ないのであるが感情的に何かがちがう。送信されなくても、テキストとしてデータが残っているから、結果、目的は果たしているはず。無視していればいいのに、塩梅が悪い。でも、毎日の繰り返しの作業なので、感覚合わないことはしたくない。そんなのは続かない。
そこで、別の方法を考えた。ここ数年継続しているツールは、エバーノート。基本はメールと同じ。違うのは、クラウドの世界に記録されるので、どのデバイスからでも書き込みが出来る。ネットが繋がっていない場合は、つながった時に勝手に同期されている。人間が考えなくても、いい具合に整理されている。そこで、思いついたことを書き留めている。正確にはタイプしている。タグにアイデアとだけ書いている。
必要なときは、そのタグを検索する。或いは、自分が欲しいキーワードを検索する。自分で考えたことだから、忘れていても、キーワードは出てくるもの。従って、書き留めていた内容を検索するのは全く問題ない。文字の検索に加え、写真からのテキスト検索も若干質は下がるが可能。従って、面白い広告や、ヒントになりそうなものがあったら兎に角、放り込む。
本を書くとき、講演をするとき、ワークショップをするとき、暇な時。思いついて悩んだら、そこを覗いてみる。役にたたないどうでもよさそうなアイデアから、すごいな、これっ!ていうアイデアまで様々。全部自分が考えたアイデア。何かに想起されたもの、全く関連が無いもの、何かと何かを組み合わせたもの。仕事をしていて思いついたもの。クライアントから質問されて考えだしたこと。ワークショップ中に他人の発言を聞いて触発されたこと。ブレスト部でブレストしているときに思いついたこと。様々なアイデアが豊富にある。それを見ていると再び脳みそがフロー状態になり、今まさに考えているヒントが湧いてくる。これは使い勝手の良いツールだ。
アイデア。
人の生活の8割は同じ行動パターンだと思う。であるならば、頭が活性化される時期も時間帯も同じはず。その時の一番新鮮なアイデアを何らかの方法で残しておき、活用する。この方法は誰でもできるし、お金もかからない。
2012年7月 のアーカイブ
アイデア創出
ビッグデータの活用
早嶋です。
ビックデータの活用方法をまとめました。
■製品・サービスのレコメンデーション
ユーザーの属性や行動トラフィック、購買履歴をベースに最適な商品を推奨して販売に結びつける。アマゾン、楽天など多くのECサイトが実現。フェイスブックの「知り合いかも」機能もレコメンデーションの一種と考えることができる。
■行動ターゲティング広告
ウェブサイトの閲覧履歴、ECサイト上での購買履歴から利用者の趣味嗜好を分析。利用者をクラスタに分類。クラスタ毎に最適な広告を表示するサービス。GoogleやYahooの広告。
■位置情報を利用した販売促進活動
スマフォなどのデバイスにGPSを利用して位置情報を収集。この情報を従来の情報と紐付けて販促活動に応用。
■渋滞予測・需要予測
同様に移動する機器にGPSを取り付けそれを収集することで、移動している対象の予測が可能。車だと渋滞予測。携帯電話だと動線予測。人の流れの予測。
■需要予測
スマートメーターの設置により、各過程の電力料が正確に把握できる。これによって電力の使用予測を正確に行える。コマツの建機は工事の需要を正確に予測できるようになっている。エスエス製薬はツイッター上の風邪に関するキーワードを分析して、地域的、時期的に発生する風邪の予測を行なっている。世の中にあるあらゆるデータと市場データをリンクさせ、株式市場の予測を行う取り組みも進んでいる。
■不正検出
膨大なデータから規則性等を分析し、通常の方法、異常な使用を分析。クレジットカードの使用履歴を分析することで異常な使用方法を検出し不正使用を阻止する。
■離反顧客の対応
携帯電話、通販会社、保険会社、レンタルCDなど契約によって会員サービスを提供する企業は、顧客の動きを監視しながら離反しそうな顧客を事前に確認する。その顧客に対して、キャンペーンを行ったりすることで離反を防ぐ活動を行う。
■故障・異常予測
機器にセンサーを取り付け、各種センサー情報を監視。エラー、警報、故障などのデータから故障予測を行う。
■商品開発
膨大なデータをリアルタイムで蓄積解析することで、頻繁に活用される機能、使われない機能等を分析。殆ど使われない昨日は、バージョンをアップする時点で排除したり、逆に良く使われる機能は更に使い勝手を向上するなど、商品開発の参考データとして活用。同一機種のトラックにセンサーを付け、燃費の違いを研究し、燃料コストの最適化を研究しているチームもある。
参照:ビッグデータの衝撃
コマツ
早嶋です。
米国のキャタピラー社に次いで世界で2番めの建設機器メーカー。そして、意外と知られていないけれども「ビックデータ」を日本で最も駆使している企業のひとつです。ビックデータとは、近年IT業界で注目されているキーワードの1つです。
コマツは業界が騒ぐその前からデータを企業経営に有効活用していました。特に建設機器に取り付けたGDPセンサーを利用した活用方法は業界の5年先をいっていると言われるほどです。そのシステムの名前はKOMTRAX(コムトラックス)。一言で言えば、コマツの建設機器の稼働状況を遠隔監視できるシステムです。
現在では、建設機器の現在の位置、稼働時間、稼働状況、燃料を入れた時期、燃料の残量、消耗品の交換時期などを全てサーバーで監視管理できます。コマツはこれらのデータを衛星通信や携帯電話通信を使って1つのデータベースに蓄積しています。そして世界各地にあるコマツの支社や販売代理店の社員は、このデータにアクセスできるのです。
当初、コマツ系列のレンタル会社でブルトーザーやショベルカーなどにGPSを搭載して、それぞれの車両の位置情報と稼働状況を把握していました。目的は配車効率を高めること。結果、盗難などもなくなり維持管理コストが削減するメリットがありました。そこで2001年にコムトラックスを国内市場で標準化。その後、欧米、中国へど拡大します。現在では、フィリピン、ベトナム、南アフリカなど世界で70カ国、26万台以上の建機に導入されています。
では、コムとラックスによって何が変わったか?です。例えば、建機の正確な稼働時間のデータがあるので、事前に消耗品の交換が必要な部品を特定して保守サービスの効率化を測っています。例えば、燃料の使用量を分析して、効率的に使っているユーザーとそうでないユーザーを分析します。これによって燃料効率の研究に活用したり、顧客に有効な使用方法をコンサルすることもできます。これは顧客にとっても保守メンテナンス、ランニングコスト、稼働しなかった時の機会損失のロスを防げるとあって講評です。
更に、26万台もある建設機器のデータによって建設需要の予測が行えるようになっています。例えば、建機の可動が急増している地域や減少している地域の傾向が分析できます。需要動向が他社や他のアナリストよりも実データで正確に予測ができるため在庫コントロールや生産量の適正可動が可能です。
他にも、ユニークな取り組みがあります。中国では建設機器は個人事業主が買い、第三者にレンタルするモデルが主流です。個人事業主ですのでこれまで、与信管理や資金回収が難しい部分も有りました。コムトラックスによって稼働状況がわかるため、簡単にその個人事業主がビジネスとして成り立っているか否かが分かります。また、コマツの機器には遠隔ロックシステムもあるので、返済が遅れたり、悪質な個人事業主に対してはエンジンを止める事も可能なのです。これによって、返済を促すのです。
ダントツ経営を推し進めるコマツ。ダントツ商品。ダントツサービス。ダントツデータ活用と他社が3年から5年かけないと追いつけない仕組みを構築しているのです。
■コマツ
連結売上高1兆8431億円。2010年実績。売上の9割近くが建設機械、車両事業。そして注目はその16%が国内で残りは海外。とグローバル化をいち早く進めている企業の1つ。
big data
早嶋です。
1億人以上のアクティブユーザーを持つツイッター。1日あたり2億5千万ものつぶやきが発生しています。2011年10月時点。1回のつぶやきは200バイトと少量ですが、平均的な1日のトラフィックを見ると48ギガ、ツイッター全体のシステムでも1日に8テラバイトものデータが発生しているといいます。
2012年2月にIPOしたフェイスブック。当時のアクティブユーザーが8億4500万人。デイリーアクティブユーザーはその半数。そして、フェイスブックによりユーザー自信が毎日コンテンツを生み出すようになりました。ユーザー全ての時間を足しあわせれば、1ヶ月に7000億時間をフェイスブックで過ごしていることになります。平均的なユーザーで1ヶ月に90個近くの情報をアップしています。全体で毎月300億ものコンテンツです。
例えば、上記のデータから自社が運営している商品や企業の地理的に近いデータを特定して、サービスの改善や次のニーズに繋がる情報を見つけて商品開発に活用する。或いは顧客サービスに活用する。例えば、上記のようなデータと日々の経済活動をひとつひとつ分析して株価や為替の動きを予測する。例えば・・・。
これまで扱うことのなかった量のデータをサンプル解析ではなく全数解析によって何らかの傾向値や分析を行う。この背景にビックデータの存在があります。これまでも企業のデータを大量に集積して分析しビジネスにつなげる活動がありました。ビックデータは、おそらくその扱う量が半端無く増大したこと。そして、ここのデータの管理の仕方や分析の仕方はまったく異なることがあります。その結果、大量多様なデータを処理する新しい技術や担い手が注目されるようになったこと。があります。
ビックデータ。定義はあいまいですが、兎に角量が膨大。データが多様。そしてスピードという特徴があります。現在では数テラバイトから数ペタバイトが管理できる情報量だと思いますが、この量をドンドン超えていきます。数年もすると数エクサバイト単位のデータが扱われていることでしょう。
これまでの企業内にあった管理データ、販促データ、顧客データ、財務データ。これらに加えウェブのログ、アクセス記録、コールセンターへの問い合わせ情報、実際の商品の稼働情報、ツイッターやフェイスブックなどのSNS情報、携帯やスマフォなどの情報。とあらゆるデータが企業に集められ分析解析の対象になっています。分析する対象は数年前と比較して桁違いに増えています。
そしてスピード。1秒の間に数万の取引が可能になっている株の世界があるように、データ解析や処理速度がめまぐるしく増加しています。これらのデータもリアルタイムで収集処理され、これまで考えることが出来なかったことがドンドン可能になってきています。
ビッグデータ。つまり、既存の枠組みでは、一般的な技術では管理するのが困難だった大量のデータ群、と解釈できるでしょうか。これが注目している背景は?1つは、といいながらも、このようなことを実現するための技術が個人事業主でも可能になる日が近づいていること。そして、日常的に使用している商品が全て何らかのデータを発信している。つまりデータを作っているということ。があるでしょう。更に、全ての情報が個別デバイスから雲の上、つまり無意識の内にクラウドの中に蓄積される仕組みができていることもあります。
これに伴い、過去の動きを整理することから、将来を正確に予測する動きに進むことは、何も不思議な方向性ではないということです。
バラつきの概念
早嶋です。
標準偏差。統計や確率変数のバラつきの具合を表す数値の1つで、ギリシャ文字のσやsで表されます。この文字を聞いて、或いはこの概念を聞いて急に数学がわからなくなった方、多いと思います。そもそもバラつきの概念って?
例えば、地方に電車の駅があるとしましょう。そこにはバス停も併設されています。例えば、その場所から別の場所に移動する場合、
A:バスで移動するとしたら、何分前にバス停に行きますか?
B:電車で移動するとしたら、何分前にプラットフォームに行きますか?
おそらく多くのかたがバス停には早めに、プラットフォームはギリギリに行くのではないでしょうか?これがバラつきの概念です。つまり、バスは経験値から遅れる時間の幅が電車よりも多いということを知っているのです。従って、バラつきの度合いは電車よりバスのほうが大きいということです。標準偏差はこの度合いを数字で表したものです。
標準偏差。計算式はややこしいのですが、正規分布の特性を知っておくと暗算で算出することができます。
例えば、Aのバスの場合10分前に行くとします。そしてBの電車の場合3分前に行くとします。それぞれ時刻表は、12:00に出発だったとします。
Aの場合は、経験値からおよそ、11:50から12:10の間に出発するという予測を立てています。
Bの場合は、同様におよそ、11:57から12:03の間に出発するという予測を立てています。
人がおよそと言った場合の確率を95%とします。つまり100回同じことを繰り返して95回はその通りになる。バスや電車もおよそといった場合は、100回中95回は、それぞれ上の時間の間に出発するとします。
正規分布のよく使う範囲について、平均値を0、標準偏差を1とした場合、−2から2の間にほぼ95%の確率で分布することが分かっています。つまり、平均値±2×標準偏差の範囲に95%の確率で分布するということです。このことは、難しい式では、下のように表現されます。
P(m ≦ X ≦ m + 2σ ) = P( 0 ≦ Z ≦ 2 ) = p(2) = 0.4772
より、
P(m – 2σ ≦ X ≦ m + 2σ ) = 0.9544 ( 95.4%)
これをバス停や電車に当てはめて見ると、平均値は12:00、つまり0分。そして、平均値から標準偏差を2つ分引いた値から、標準偏差を2つ分足した値の間に約95%の確率で出発すると言い換えることができます。
A:バスの場合は11:50から12:10ということなので、標準偏差は10を2で割った値、つまり5分。
B:電車の場合は11:57から12:03ということなので、標準偏差は3を2で割った値、つまり1.5分。
というように簡単に暗算出来てしまうのです。
応用してみます。例えば、100人くらい人を集めて、暗算で100人分の身長の平均値と標準偏差値を暗算で算出する場合を考えて見ましょう。素直に計算すると、平均値を求めるだけで一苦労です。
ここで平均身長±2×身長の標準偏差の範囲に95%の人が分布していると過程します。これがわかれば、標準偏差は身長の一番高い人と一番低い人の差分を2で割った値という事が分かります。
例えば、100人の中で一番高い人は180cm、一番低い人が150cmだったとします。これより、150cmから180cmの間にほぼ95%の確率で分布していると仮説が立ちます。平均値をm、標準偏差をσとした場合、以下の連立方程式になります。
m−2×σ=150
m+2×σ=180
これよりm=165cm、σ=7.5cmですね。
上場後のJAL
早嶋です。
航空会社は、テロや経済危機など、外部要因の変化に大きく依存します。SARSの流行、911テロ、リーマンショック、原油価格上昇はそれを示した事例でした。エアラインのビジネスモデルは外的要因によって需要が直ぐに2割、3割変動します。そういう意味で非常にボラティリティが高いビジネスです。しかもコストの半分は固定費なので、売上の変動は収益を極端に左右するファクターとなります。
飛行機は高価で複雑な機体を使用するためオペレーションの難易度が高いと言われます。特に大手キャリアの場合、路線ネットワークが膨大かつ複雑です。従って便数の運行管理、機材繰り、機材の稼働率管理など、そのオペレーションは多岐に渡ります。管理コストも高いわけです。
上記を考えるとLCCが安くマネジメントされる理由がよくわかります。多くの航空会社が使っていて、最も運航コストが安い機体に統一して、安くで仕入れる。LCCの殆どは機材を中古で仕入れ、安いコストで整備し、誰も飛ばしていないけど、そこそこ搭乗率が見込める空港と路線を見つけ出します。結果、マイナーな空港になるため、空港使用料もメジャーな空港と比較すると安価になります。そして、その路線を集中的に往復させます。はじめに参入することで、その路線を独占する可能性が高くなります。また、もともと機材が小さいので、比較的効率良く座席を満席にすることが可能です。つまり超ニッチな戦略です。LCCと言えども基本的な構造は変わらないため、このように稼働率を高める工夫をすることで利益を安い運賃でも出しやすくしています。
JALの再生は、結局のところ競争が無い時代からのゆるい管理が問題で高コスト体質になっていた。従って、まずはそこにメスが入れられました。結論、飛行機の数、路線の数、従業員の数が実際の規模と比較して3割程度多かったことが原因です。ここにメスが入りました。これによって、震災が起きた後でも黒字がでる体質になりました。固定費が高くて、稼働率が悪ければ、利益がでないのは当たり前。そこで固定費を下げ、稼働率を上げることで利益が出る体質になったのです。つまり、JALの再生は当たり前のことをしただけのようです。
では、今後のJALが仮に再上場を果たして収益を上げ続けることができるでしょうか。以下の理由から、それは難しいと思います。
まず、日本の航空業界は、国内が安定収益で、国際線は利益が出たり出なかったり。国際線は出るときは出るが、利益が出ないときはさっぱり。つまり、ハイリスク・ミドルリターン。しかしこれは米国では真逆になります。米国の国内線は完全競争市場のため、殆ど利益が出ないのです。利益が出るのはどちらかと言えば国際線です。その理由は、国際協定です。例えば羽田・ニューヨーク間に10便飛ばすとすれば、日本が5便、米国が5便と決められます。この限定された発着枠に、日本と米国のエアラインしか入れないため競争が限定されるのです。結果、双方が協調的な戦略を取れば、ある程度の価格が維持されるようになります。従って米国企業から見たら、国際線のほうが利益を出しやすい環境なのです。米国内の路線はLCCの参入でマイルのタガも崩れます。一方国際線は規制のお陰で競争が生じにくい、利益が出しやすいのです。
日本は、これまで実質JALとANAの2社だけでした。そしてハブとなる空港は羽田のみ。多くの路線を羽田起点で飛ばすことで効率が良くなり稼働率が上がりました。従って、LCCのようなモデルは考えられませんでした。地方と地方を結ぶ路線が結局廃止になったのは羽田が大きすぎたのが理由でしょう。福岡から札幌に飛ばすよりも、福岡羽田、羽田札幌と飛ばしたほうが稼働率が上がる。国内の競争が低いから、福岡から沖縄に行くより、台湾に飛んだほうが運賃が安い構造が出来上がってしまったのです。
ということは、国内線は今後、LCCの参入でJALもANAもこれまで通り安定的に収益を上げるのが苦しくなるでしょう。JALが黒字体質になったと言っても、競争が無い時代の環境でようやく黒字化ですから競争が激化する今後の国内線でも収益を上げるようにするためには売上を上げるしかありません。しかし、ここの打ち手はありません。
更に、国際線にも問題があります。日本の航空会社の路線がアジア中心になっていることです。今後アジアの空が航空自由化になることで競争がますます激しくなります。利益が出る体制に持ってきた所で、アジアの人件費と比較したら日本の航空会社は相当苦労するでしょう。結果、ますます国内線たのみのビジネスになります。しかし、国内線は新幹線との戦い、アジア諸国のLCCの参入により、国内線はアジア市場との境界がなくなる可能性も出てきます。ますます大変な状況になるのです。
米国の航空会社が海外路線で利益を出しやすいのは、ヨーロッパ路線、太平洋路線が中心で、顧客が先進国の方々であることもあります。互いに人件費が高い国々で協定を結んでいるため均衡が保たれ価格競争になりにくいのです。
アジアの航空会社では年収100万円程度でフライトアテンダントを雇用することが可能です。これは製造業でもそうでしたが、サービス業でも同様のことが待っていることを示唆します。現状で利益が出るようになったと言っても、これまでムダな部分を削ぎ落したのみ。今後、アジアとの競争が激しくなると、根本的にコスト構造を見なおさない限り利益が出にくい状態になるでしょう。
航空機ビジネスの大きなコスト要因は3つ、人件費、機材費、燃料費です。機材費に関しては、中古で仕入れる、同じ機種に絞ってコストを下げるなどがありますが、大手キャリア同士ではそんなにコストを下げれることはありません。燃料費は世界共通なので、どこも同じです。とすると、残るは人件費。はじめから1/10の人件費の相手であれば、この部分は大きな差になるでしょう。
経営分析
早嶋です。
経営のモヤモヤをスッキリするコンサル。企業の分析をする機会も多いです。その会社が良い状態なのか悪い状態なのかの見極めは大切です。企業の目的は長期的な利益の追求ですので、その企業が目指している文化や理念、そしてそれらの想いが組織に浸透していることも大切です。もちろん、理にかなった収益モデルがあり、その収益を継続的に達成するための仕組み、ヒト・モノ・カネの経営資源を配分する経営者の能力も大切です。
社歴が長くなると多くの組織で共通の特徴が観察されます。人の体のように動脈硬化が起きています。比較的に新しい企業、小さな企業であれば、組織の血でもあるコミュニケーションが停滞することは無いのでしょうが、大きな組織、昔からある組織では、時にはそれがリスクとなることもあります。
組織の規模によって起こる問題も異なります。大企業では、コンプライアンスやリスク・コントロールはきっちりと管理する必要があります。それぞれの組織の役割を明確にして、権限規定、業務規程などを定め、そのとおりに運用する体制が必要です。さもなくばコントロールが効かなくなります。
しかし、100人程度の企業でマニュアル管理を行なっていると、それこそ危険です。互いが顔が見える距離なのに、コミュニケーションを取らずに、決められた方法で行う。頭を使わないで属人的になる。それよりも個人の能力に任せたほうが組織が活性化する規模感もあると思います。
企業の分析をする場合、財務だけではなく、業態の特徴、社歴、規模など。全く同じような業態であっても様々に異なります。これらを全て同じ基準で裁くことをせず、その組織に見合った見極めが必要になる。だからこそモヤモヤしている組織が多いのかも知れないですね。
戦略を構成する3つのこと
早嶋です。
戦略の基本は、最も弱いところに最大の強みをぶつけること。最も効果があがるところに、最強の武器を投下すること。
良い戦略は、狙いを定めて一貫性のある行動をとります。組織もそれに従います。すでにある強みを活用し、そして新たな強みを作り出します。複数のことを多方面に行いません。しないことが明確です。行うことが多ければ資源が分散して、互いに辻褄が合わなくなります。
企業の戦略発表を聞いていると、どうも辻褄が合わない。痛いところを見ないで判断している。自社のリソースを過大に評価していると感じることがあります。
分析や理屈を考えないで戦略をこしらえている感がたっぷりです。背景には、面倒な作業や分析、調査や下調べをせずに、戦略は立てられるという安易な発想があるのかもしれません。
戦略を立てる時に地道なハードワークを避けると、決まって上記のような結果になるでしょう。格好ばかりで何かのテンプレートにはめておしまい。しかし、本当にそれが戦略といえるのか。
現状に真摯に直面し、何が問題かを徹底的にあぶり出す。そして最も重要な作業は、その沢山ある問題から解決の糸口となる課題を発見する。もちろん、この過程で様々な意思決定が生じます。何かを決めるという作業は、必然的に選択する責任が生じます。ここに逃げがあってはいけない。
責任回避をするために、皆の意見を取り入れる。これは最低です。すべてのことを行おうとすると全てがツマラナイものになります。誰もが喜ぶことは、誰も喜ばない。全てに資源を費やせば、全ての資源が無駄になる。
戦略に王道はないのでしょう。徹底的に分析を行い、現状を把握する。その上で自分たちの資源を何にフォーカスするのかを明らかにする。しないことを決める。そして、そこに集中砲火する。
What:何をするのか?方針が明らかになっている。その方針を導き出したWhy:理由や分析、根拠などの理屈が存在する。そして、How:その方針をどのように行動に落として行くのか、細かく分からなくても導き出せるイメージが持てること。
この3つは欲しいです。
戦略の良し悪し
早嶋です。
戦略策定の要となることは、直面する状況から死活的に需要な要素を抜きん出す。企業であれば、そこに全経営資源を費やして行動を集中させることを考えることです。
良い戦略は目標やビジョン以上のことを実現することを促します。良い戦略は直面する難局からそらしません。それを乗り越えるためのアプローチを提示します。状況が困難であっても、行動の調和と集中を図ります。良い戦略は問題解決や競争優位へと導きます。
戦略とは、野心を抱いたときに、或いは何か新しい局面を迎えた時に、リーダーシップや意思決定をいつどこでどのようにあ発揮するのか、その道筋を定めることです。良い戦略には取るべき行動の指針が既に含まれています。細かい実行手順は示されませんが、やるべきことが明確になっています。今何をすべきか?はっきりと実現可能な形式で示されていない戦略は、欠陥品です。戦略とは組織が前進するためにはどうすべきか?を示しています。
良い戦略には3つの核となる要素を含みます。すなわち、診断、基本方針、行動です。状況を診断して問題点を明らかにし、それをどう対処するのかの基本方針を示します。これが道標となります。この基本方針の基で意思統一を図り、経営資源を集中投下して、一貫した行動を取ります。
悪い戦略には、困難な状況の分析が意図的に避けられています。都合の悪いことは知りたくないという意識が働くのでしょう。また、戦略策定と目標設定を取り違えています。こうすると問題解決に方向が向かないため、悪い戦略になりがちです。また、四方八方に配慮するあまり、困難な選択肢がはじめから排除されることもあります。あらゆることを勘定していれば、リソースの集中投下はできません。
マルコムの役割
早嶋です。
企業がブランドを開発して、育てていく、或いは陳腐化しないようにブラッシュアップする。ブランドマネジャーの役割は知られていますが、マーケティングコミュニケション(マルコム)はあまり知られていませんね。
マルコムの仕事は、ブランドのポジショニング、キャンペーン目的、クリエーティブ戦略、プロモーション戦略、メディア戦略、キャンペーン管理など、コミュニケーションに関連する一連の業務を担います。ブランドポジショニングとは、どのブランドが何を目指し、何処にいくのか?その方向性を明らかにすることです。全てに悩んだ時の大きな指針になります。
マーケティングの部隊で、ブランドポジショニングが明確になっていないままで、様々なコミュニケーション活動を行うと、部分最適になりがちで、全体がどんどんぼやけてくることが多々あります。
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