新規事業の旅63 Z世代

2023年7月26日 水曜日

早嶋です。

Z世代とはどのようなカテゴリ層を示すのか。その特徴をどのように歯科医院経営に活用できるのか。

Z世代は96年から2015年に生まれた層を指し、デジタル、スマフォ、SNS、動画活用が当たり前の世代。一方、大震災や多くの災害を経験してきた世代でもありリアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせる。Z世代にリーチする場合、自分たちと異なるZ世代のメカニズムを把握して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。

(Z世代の定義)
マーケティング活動と顧客分析は切っても切れない中。従い、いつも何とか世代などの人気ワードが飛び交う。しかし裏を返せば、大手コンサル会社が研究開発し、広告代理店が効率的に顧客獲得をするために大枚をはたいて取り組んでいる結果だ。そのエッセンスを活用しない手はない。

Z世代。消費区分のひとつとして定義され、1996年頃から2015年に生まれた層を指す。2022年現時点において、年齢で7歳から26歳がZ世代。生まれた時からデジタル機器に接しており真のデジタルネイティブと呼ばれる。

1965年から90年生まれをX世代と呼んだ。幼少期からカラーテレビが存在し政治的関心が低い世代だ。1981年から1996年はY世代。アナログからデジタル化を消費欲が旺盛な若年層の時に経験した世代で合わせてデジタルネイティブ、ミレニアル世代と呼ばれた。

(Z世代の特徴を表す3つの事例)

Z世代を理解するために3つの特徴的な事例を紹介する。

1)スマフォの縦型動画
スマフォと5G高速通信が当たり前になった今、動画を中心とするコンテンツはZ世代にとって当たり前だ。YouTube、TikTokが普及し、インスタグラムなどのSNSも動画表示に対応を切り替えている。

Z世代以前の調べモノはグーグルだったが、Z世代はまず動画で検索する。そして動画の形式は横ではなく縦が一般だ。そのためスマフォで録画した縦型の動画を保存、編集、サイトやアプリに配信することで自社のコンテンツを作成する企業が増えている。またそのような動画管理プラットフォームを提供するクラウドサービスも沢山ある。

従来、マーケティングや広報のチームに動画担当は脇役だったが、今は主役の扱いだ。聞いたことある組織の殆どが動画の編集、管理、エンジニアチームなど自前で束ねるまでになっている。

花王、光文社、良品計画、アパレルのヤマトインターナショナル等、動画の体裁をTikTok風にし、動画を見ながら情報取得、欲しい商品を注文できるような販売促進を行っている。

店舗系のビジネスでは、店員が商品や自社サービスをアピールしSNSの人気ライバーのようにスタジオや自店舗から情報を発信する取組もZ世代には人気で日本の小売企業でも急速に導入されている。と言っても、動画の品質はスマフォの性能で問題なく、中規模程度の企業であっても担当者が1、2名で動画を配信するケースも多い。


2)キャッシュレス決済
Z世代はキャッシュレスも当たり前。今や結婚式のご祝儀も事前にスマフォ決済で受け取るカップルも増えている。日常生活はキャッシュレス、家族の支出をリアルタイムで把握することが当たり前になっている。スマフォ決済で付与されたポイントは投資運用に回すなど余念がない。

結婚式ではPayPayを使ったご祝儀サービスの利用も増加している。その動機は、新札を用意して頂く負担を無くすという配慮からだ。一方、結婚式場の支払いは前払いが通常。ご祝儀を事前にスマフォで送金頂ければ、参加者も夫婦も互いの手間や負担が減るという算段だ。

若い世代のカップルや夫婦はキャッシュレス決済を行うことで互いの支出を管理する。同居するパートナーと生活費の管理に家計簿アプリ連動のプリペイドカードを使う。すると互いのお金の使い方を共有でき無駄をなくすことができるのだ。この背景は、共働きの夫婦やカップルが増え、収入や支出の流れが複雑になったことも考えられる。

決済サービスを手掛けるインフキュリオンの調べによると、キャッシュレス決済におけるモバイルの割合は年齢が若くなるほど高く、10代では7割、20代でも5割近くが利用している。

Y世代は子供の頃は現金が主流で学生や社会人になってキャッシュレス決済を導入。一方Z世代含め、今後は子供の頃からキャッシュレス決済が当たり前になっているのだ。

3)リアルな体験
大企業の人事を中心にZ世代を中心とする若者は「付き合いが悪い」「リアルコミュニケーションが下手」という評価が定着している。しかし、実利が少ない上司や先輩と仕事後も一緒にいても価値が無いと感じているだけで、意味ある付き合いはリアルを求める傾向が強い。

東京・高円寺の銭湯「小杉湯」は1968年の来客者のピーク530人で直近は147人まで減少した。しかし昨今、平日で400人から500人、週末になるとコンビニの来店なみの800人から1,000人にまで増えている。その来客者の半数が30歳以下なのだ。

セルスサービスの銭湯はシェアリングエコノミー的で若い世代に相性が良いのだ。常連同士が軽く会釈し、挨拶する。この程よい距離感がフィットした。また独居の寂しさを半径500メートルの裸の付き合いで解消するなどのニーズも存在する。モノに投資する満足感よりも、リアルな体験でコトに価値を感じるのもZ世代の特徴なのだ。


(Z世代の特徴と活用のポイント)
Z世代の特徴は、スマフォ、デジタル、SNSが当たり前だ。生まれてから早い段階でスマフォやデジタルに触れ、SNSで友達とやり取りする。動画や映像で調べ物をこなし、それ自体が当たり前になっている。

上記の媒体は、企業がはじめからピンポイントにマーケティングしている。そのためマス向け商品よりも、限られたコミュニティでの情報が身近に存在する。結果的に自分にとって価値あるものを重要する消費行動が誕生した。ブランドや一般的な知名度よりも、自分に価値があるものに対する投資が旺盛になる。

2011年の東日本大震災、昨今の大規模災害が日常になり、従来の世代よりも社会課題に対する関心が高い。テニスプレイヤーの大坂なおみ選手、環境活動家のグレタさんなどのインフルエンサーの存在も大きく、社会問題を自分たちが解決すべき問題と捉えている。

一方で、経済感覚は実に堅実だ。コスパを常に意識し、合理的な選択を求めている。メルカリやオークションアプリを駆使し、新品ではなく同じ機能・デザインであれば中古品の購入にも抵抗が少ない。リユース品は手頃で環境問題にも関与すると考え合理的に活用する。当然、消費に対する失敗は避けたく、口コミ評価や事前購入の情報収集は自ずと緻密になるのも伺える。

若者の言葉に「エモい」がある。自分の感情や価値観の共感を大切にすることから誕生した。社会的な背景や生まれた時から経済が発展しないと感じる世代だからこそ、作り込まれていない本物のリアルを重視する傾向が強いのだ。

まとめ
Z世代は、従来の世代ともまた違う価値観を持ち、自分らしさの追求と多様性を大事にする価値を持ち合わせる。デジタルツールを普通に使い、自分たちから積極的に情報にアプローチして武装する。共感し、価値を感じる商品に投資をする。機能や利便性の追求に加えて、ストーリーや体験を提案されることを待っている。

デジタル、スマフォ、SNSが当たり前の世代だからこそ、リアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせる。今後、Z世代に対してマーケティングを行う上で、このような特徴を理解し、デジタルとリアルを融合して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。

(過去の記事)
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