早嶋です。
大きく昔から変わらない企業は指を加えて眺めている。この構図は10年、20年そして、今でも観察される。事業チャンスはあらゆる組織、規模の大小に関係なく平等だ。新規事業の必要性をただ連呼するだけでは何も生まれない。組織のトップが現場レベルにまでコミットし、試行錯誤を繰り返しリスクをトップが引き受ける。このような組織は、社長=起業家か、現在も成長を遂げている企業の姿だ。
芳しく無い企業は、経営方針が不明瞭、リスクを取る覚悟が経営陣にみられない。これまでの思考の枠組みに収まり、様子をみることで自らの成長チャンスを潰している。守りに徹して組織のクイッぷちを守るのも正論だが、動かないで30年間じっとするのは違う。できない場合は、できる役者にバトンタッチすれば良いのだ。今の日本は、他の国に100歩くらい後に追いやられている現実なのだ。直視しよう。
チャットGPTが去年頃より賑わせているが、成長が止まっている大きな組織は、情報の流出の懸念があるからという理由で、何も調べない内から導入しない。昨日のGPT4o は、ITリテラッシーが低い社員でも、コンピューターを自然言語で、しかも口頭で使える革新があるのに、おそらくそれらを活用するという発想は1mmもないのでは無いかと思ってしまう。
デジタル技術が誕生した際に、例えばレントゲンの写真をアナログからデジタルに移行させる意思決定も、口腔内の撮影をして治療の経過を見る工程をデジタルに置き換える際も、昔の人は難癖つけて現場の導入を10年単位で送らせている。「レントゲンの写真の白黒の色合いじゃないと診断ができない!」とか、「デジタルで口腔内の写真を取ったら加工できるじゃないか!」とか言った具合で。いわゆる「偉い人」の一声に迎合して若い人も声を挙げない期間が続いているのだ。
選挙の電子投票もしかり。昔からの体質の大きな組織は年齢が高いが所以に、変化をしないままでいる。デジタルに反対の一派は、「不正が起きたらどうするか?」と断固反対している。デジタルで行った場合が、不正は回避しやすくなるのに、一度反対を決め込んだら死ぬ前態度を変えないのだ。
ソフトウエアの開発も、ベンチャーがオープンソースを導入し開発スピードとソフト品質を向上させている中、大きな成長をしていない組織の長老は、「誰が作ったかわからないソフトを組み込んでいいのか!」と現場を怯えさせてチャンスを何度も逸してしまう。
大きな成長できない企業の構図は、実はある程度おなじだと思う。経営陣が表では成長、イノベーション、新規事業と連呼している一方で、裏ではトライ&エラーをしない、失敗を許さない、方針を明確にしない。そして、何もよりも悪な思考は既存事業の判断軸で新たな取組を評価してしまうことなのだ。
ここまで読むと、「やっぱりトップが悪いね」とか「そうそう」と若い世代の組織人は頷くかもしれないが、若手の世代にも課題はあると思う。仮に、上が動かないとか、考えないとか思っているのであれば、自分のアイデアを整理して提言すべきだからだ。しかし、ある程度規模が大きくて年功序列の組織ほど、上司と部下のコミュニケーションの実質的なギャップが大きいのだ。結果的に「言っても意味がない」「どうせ却下される」となり、徐々に思考することすら忘れてしまっているのだ。どこかしら組織に属していながらも、組織が目指すビジョンの実現を他人事として捉えているのも罪なのだ。
2024年5月 のアーカイブ
新規事業の旅112 30年停滞からの学び
新規事業の旅111 30年停滞の要因
早嶋です。
日本は30年間成長せず、むしろ一度衰退して、ようやく30年前に戻った。この要因は何だろう。私は組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質だと思う。それは組織が高齢化して実業の意思決定に現場の意見が入りにくくなっている状態が、まさに常態化したことに要因があると思う。
80年代。日本が栄えた頃は、常に答えがあり、欧米が開発した取組を日本は実にうまくコピペした。大量生産大量販売と規模の経済でキャッシュを生み出したのだ。
2000年頃よりコピペが無意味化した。IT化が進み、2007年頃よりスマフォセントリックな経済がはじまった。大きな組織の力で数で戦うのではなく、少数でもITとソフトを組合せると従来と異なるビジネスモデルでレバレッジが取れるようになったのだ。アトムの世界では、何か規模を大きくするために大きな投資が必要になったが、ビットの世界では一度仕組みを作ればプラットフォーム化して一気に世界に展開できる可能性がある。
2010年代に普及しはじめたクラウドが一気に過去のビジネスモデルを駆逐する。全てを自前で揃え、自分たちで開発する。その発想の対局に、得意なところを自分達で実装し、苦手なところはオープンソースを活用する。積極的に他社と協力した上で、とにかく事業化のスピードアップを図った。一度波に乗ると、その展開は加速度的に早まり、自社の株価も指数関数的に高くなる。今度はその株価のレバレッジを活用して、周辺技術を持つ企業を次々に買収してグループイン。昭和平成の企業が外出ししていた顧客データベースの管理や、使用後のアフターフォローやメンテナンスを内製化して、中間にいる企業を排除し直接エンドユーザーと取り引きする形態を生み出したのだ。昔の発想では、顧客の管理コストも高く、コミュニケーションを取るのも一苦労だった。しかしITやSNSやクラウドなどの要素技術を組合せて活用することで、コミュニケーションコストが一気に下がり、様々な情報が地球の隅々まで届くようになり、情報の民主化が一気に進んだ。
フットワークが軽い動きをする組織は、若手のアントレプレナーが作り上げた組織が多い。お金も資本も少ないなか、アイデアを即実行しながらトライ&エラーを繰り返し知見をためていく。一方で、伝統的な大きな衰退する組織は、仕事をいちいち分業化しているため、全体最適の発想を持ち事業に取り組む人材が極めて少ない。何かするにも複数の組織の確認が必要で、ちょっとした変化を組織に導入するにも、あっという間に半年から1年の時間を必要とする。変革を起こしたいのであれば腹をくくってトップダウンで一気に変えれば良いものの、構造的にできない組織になってしまっていると勘違いしているのだ。
組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質。これは全てその組織が勝手に作り出したバグだ。その会議いらないよね。その承認不要だよね。いきなり成功なんてないから小さく始めると良いよね。と、当たり前に考えればわかることを、当たり前に変えていくことが大切なのだ。結局、組織の上部と下部や現場レベルで、実情が入らなく、情報を遮断する仕組みを作ってしまったのだ。組織の問題なので、組織のトップがその気になれば、時間はかかるが確実に変えることはできる問題でもあるのだ。
新規事業の旅110 30年の停滞
早嶋です。
24年3月21日。日経の見出しに「日経平均、終値も最高値更新 812円高の4万0815円」とあった。
「コロナも明けて、いよいよ日本も復活するのか!」と心躍った方もいたと思う。しかし、実際は89年頃に当時のピークで4万円近くになった株価は、03年頃に向けて低迷して1万円を割り、そこから20年近くかけて、ようやく4万円台に回復したに過ぎないのだ。失われた10年は20年、30年となり、ようやくスタートラインに戻ったのだ。
89年12月29日当時で国内の時価総額上位10社はNTT(22.93兆円)、日本興行銀行(13.23兆円)、住友銀行(10.55兆円)と以下、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行、東京電力、三和銀行、トヨタ自動車、野村證券(6・74兆円)だった。
24年2月22日現在の国内時価総額上位10社はトヨタ自動車(57.45兆円)、三菱UFJ銀行(18.38兆円)、東京エレクトロン(17.25兆円)と以下、キーエンス、ソニー、NTT、ファーストリテイリング、三菱商事、ソフトバンク、信越化学工業(12.63兆円)だ。
80年代のバブルは金融機関主導で、それから一気に金融機関にとって冬の時代が到来する。そして、半導体やソフトウェアなどの企業が日本を牽引するも、全体としては入れ替わりがゆっくり進み、国内の経済代謝が進まなかったとも言える。国内のみの動きをみていると、ときに近視眼になりがちだ。そこで同時期の日本とドイツと米国を比較してみた。
89年の主な株価指数を0とした場合、日本(日経平均)は△50前後まで堕落して、ようやく0に戻ったのが今年だ。米国(米ダウ平均)やドイツ(独DAX)は30年で数百倍から千数倍の規模で伸びていることを知ると驚愕するだろう。ドイツは89年を0とした場合、2000年にかけて300後半まで成長、03年にかけて一旦低迷し0に近づくも、そこから右肩成長で現在は800くらいを示す。米国も同様で89年を0とした場合、30年間安定の右肩成長で現在は1500くらいなのだ。如何に日本が30年間低迷し続け、海外が普通に成長を遂げているのかがわかるだろう。
世界時価総額ランキングの値も、30年前は50位以内に日本企業(主に金融)が多数ランクインしていた。しかし、今は1社でトヨタが30番目くらいにようやく登場する。マイクロソフト、アップル、NVIDIA、アルファベット、アマゾン、メタ、テスラなど、30年前には存在しないITや半導体関連の企業が時価総額を高めているのだ。
GDPのランクも日本は米国に次ぐ2位のポジションが2000年頃より急成長を遂げる中国に抜かれ、独、インドなどに追い越されようとしている。更に一人あたりのGDPを見ると97年当時は3.5万ドル程度で4位のポジションだったが、19年現在で4万ドルと微増しているものの、他の国が経済発展を遂げているためポジションは19番目。コロナ後の23年の直近の統計では3.4万ドル程度で34番まで下がっているのだ。
既に日本は成熟国の中でもかなり経済的な発展を遂げれない国に成り下がっているのだ。現実を直視することが成長を遂げる第一歩だ。
新規事業の旅109 ファイナンス関連の書籍
早嶋です。
新規事業は、事業アイデアを考えて、それらを事業プランに落とし、実際に行動に移す。そのためヒト、モノ、カネに関する知識や知見があったほうが良い。ここでは会計財務とした場合、会計ではなく財務に焦点を起き紹介する。
道具としてのファイナンス増補改訂版 石野雄一著
ファイアンスの基本として、価値を金銭で評価する際の考え方をわかりやすく解説。
コーポレートファイナンス戦略と実践 田中慎一・保田隆明共著
ベンチャー企業の価値算定からIR対応まで、広く浅くわかりやすく解説。
スタートアップ投資のセオリー 中村幸一郎著
スタートアップ投資に対しての考えを体系化して整理。
ベンチャーキャピタルの実務 グロービスキャピタルパートナーズ共著
VCの実務を広く体系的に整理。
起業のファイナンス 磯崎哲也著
ベンチャー企業のファイナンスの在り方、考え方、あるいはグランドデザインの大枠を提示
起業のエクイティ・ファイナンス 磯崎哲也著
エクイティファイナンスの勘所を分かりやすく解説
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
「コンサルの思考技術」
「実践『ジョブ理論』」
「M&A実務のプロセスとポイント」
新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント」です。この4月から新たな期が始まった企業も多いのではないでしょうか。「今期は前期比130%アップを目指す!」というような高い目標を掲げておられる企業もあるかもしれません。今まで通りでは到底達成できません、どのような戦略を立てればいいのでしょうか。今回は新しいことに挑戦し、業績拡大するために考えるべきポイントをご紹介いたします。
経営者は常に前年比アップを求めておられるのは当然ですね。企業が価値ある新しいことに挑戦していかなければ、変化の激しいこの時代に、相対的に衰退してしまうと絶えず危機感を感じておられるのではないでしょうか。
その一つの例として、前期比130%アップの売上目標を掲げるということです。自組織の将来を常に案ずる経営者がやっと安心できる数字が前期比130%アップと言われています。
前期比130%アップするためには、戦略を立てなければなりませんが、どのように考えればいいのでしょう。
2ステップで考えます。「業務改善フェーズ」と「新規事業フェーズ」です。
1つ目の「業務改善フェーズ」は既存事業についてです。既存事業を前期と同じようにやっていたのでは、とても130%アップは望めません。なぜならそのアップを創り出すリソース(ヒト・モノ・カネ)がありませんからね。
よって事業拡大のため、既存事業を7割のリソースでこなすことを目指します。つまり生産性の向上と徹底的なコストの見直しです。どうすれば少ないリソースで前期と同じ成果(売上や利益)を創り出すことができるか、考えなければなりません。
部門ごとに問題点の洗い出しやムダ・ムラ・ムリの解消、システムや仕組みの見直し、コストカットできるところはないか原材料からバリューチェーンの再点検など、やれることはたくさんあるはずです。
2つ目の「新規事業フェーズ」は、そのように創出した2割のリソース(ヒト・モノ・カネ)で新しいことに挑戦します。その新しいことで前期比130%アップを実現するわけです。
ここで問題は何をするかですね。その方向性を考えるひとつの見方として、「既存顧客か新規顧客か」という視点と、「既存商品か新規商品か」という視点の組合せです。アンゾフのマトリクスとして有名です。既存顧客に既存商品をさらに売る戦略は市場浸透・シェア拡大です。既存顧客に新規商品を売るなら商品開発という戦略です。新規顧客に既存商品を売るなら市場開拓という戦略です。新規顧客に新規商品を売るなら多角化戦略です。どの戦略をとるのが、自社にとって最も有利か考えましょう。自社の強みを活かすには?外部環境はどうなっているか?競合は?など考慮すべきことはたくさんあります。
このようにして、限られたリソースでも毎年、業務改善と新規事業を同時に行っていくことができれば、企業は成長しますし時代の変化にも対応できていることでしょう。
もちろん言うは易しで、そのためには経営者の力だけでなく管理職の力も必要ですし、それができる社員をそろえるために人材育成も絶えず行わなければなりません。
しかし新しいことに挑戦しなければ、生き残ることが難しい時代ともいえます。新しい期が始まるタイミングで考えてみられてはいかがでしょう。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
対人関係が苦手な方のリーダーシップ
安藤です。
職場におけるメンタルヘルスの悪化、抑うつの増加が近年問題となっています。昨今の新しいタイプの抑うつ症状の増加が目立っております。以前は、日本でのうつ病は、「メランコリー親和型うつといわれており、40代~50代が中心。自分に厳しく、几帳面で仕事熱心。他者に対しても「迷惑をかけては申し訳ないと」頑張ってしまう。一方で、新タイプ抑うつの特徴は、・プライベートでは元気で活動的だが、職場では元気が無い ・仕事を任せても自分勝手で・自分は悪くない・上司が悪いと他者への批判が多い ・自己愛が強くプライドが高い ・20 代~30 代と若い世代に多い」 といわれています。
他、抑うつ状態になりやすい方の特徴としては、他者からの評価を過度に気にしたり、他者からの評価に過度に反応したりする傾向や、自己の快の感情を他者や集団との関係よりも優先させて追求しようとする傾向があります。要は、思考・感情・行動が他者を優先にする傾向です。
対人苦手意識は、「特定の他者に対する否定的な感情と消極的な態度の総称」と定義されています。学校、企業での現場では、この傾向は顕著に増えているように感じています。眼を合わせるのが苦手、相手からどう思われているか心配、人が怖いという心理が働くなどです。
しかし、現実職場では、相手に対して “負の態度” をもっていてもその他者に接近する場面は多く、自身の感情をコントロールすることが求められます。
新タイプ抑うつ(呼称として新型うつといわれていました)を耳にするようになったのは、2012年頃です。現在の管理職社員をしている方の中にも対人過敏傾向、自己優先志向の方も存在すると考えられます。
そこで、そのような傾向のある方に対してのリーダーシップとして、適切なのは、サーバント・リーダーシップ(Greenleaf 1997)と考えられます。
サーバント・リーダーシップに求められる属性は、傾聴・共感・癒し・気づき・説得・概念化・先見力・奉仕・成長への関与・コミュニティーづくりです。従来型の先頭をきってリーダーシップを発揮するタイプではありません。
メンバーの自立性を引き出し、チーム内でのコラボレーションを活性化し、新たな発想を創造していく必要があり、そのためにはメンバーの成長を支援し、職務を円滑に遂行できるように支え奉仕する。というリーダシップの在り方です。
*参考までに
新型うつ病になる人の傾向は、①人格が未熟なので、自己中心的で無責任な行動をとる。また、自己愛が強いので失敗を嫌う。②自己愛が強いため、業務上の注意であってもプライドが強く傷着きやすい。③病気になった理由を周りの人間や職場のせい、自分を責めるような発言がない。④仕事にはいけないが、自分の好きなことは楽しめる。等が挙げられています。
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