新規事業の旅52 別の視点から見たイノベーションのジレンマ

2023年6月20日 火曜日

早嶋です。

どんなに優良企業でも、新しい革新的な技術や製品やサービスを軽視してしまう。その市場は未だ実際に規模が小さく、自社のメインディッシュの事業規模からすると小さいからだ。既存事業の経営者に取って、自社技術や製品やサービスの延長上に無い新しい概念は常に判断の意思決定が難しいのだ。

ただ既存の事業はライフサイクルがあり、いつか滅びるために、企業戦略としては常に事業ポートフォリオの入れ替えを考えながら事業に投資する資源を配分することを考える必要がある。そのため一定規模の企業や複数の事業を持つ企業はイノベーションをキーワードとする組織を必ず自社内に配置する。始めは社長の肝いりで直轄の部隊においてあらゆるイノベーションを起こそうと躍起になる。が、そうそう簡単に生まれるべきものではなく、きがついたら各事業毎にイノベーションに関連する部隊が出来上がっている。

当然、皆サラリーマンなので、誰よりも早くイノベーションを生み出し、何らかの事業リターンを生み出したいものだ。本来は、オープンイノベーションが当たり前の世の中なので、自由に議論をする中でアイデアが生まれ試行錯誤しながらカタチになっていくものだ。が、細部でイノベーションに関する組織が展開されると、各々がコミュニケーションを取らず、一つの会社でも誰が何をしているのかがわからない状況が作り出させる。

例えば、国土の70%を森林に囲まれる日本は、近年、都市化の影響もあり山里あたりでは人が住む場所と鳥獣が住む場所の境目がなくなりつつある。その結果、鳥獣は街に出てきて食べ物を漁る結果となる。鳥獣被害だ。そして、この取り組みに対しては各市町村がバラバラに考え、バラバラにアイデアを試す。頻繁に出るアイデアは、鳥獣をジビエと捉えて、村の一部に食肉加工所を配置して有効活用する取り組みだ。

企業の中で、複数の事業があり、各々が自由に議論をし始め、その議論は一つの事業、あるいは一つの部の中でクローズされ情報を共有されない。そのため、同じ議論と同じ試みと同じ失敗が、同じ一つの会社の中で起きているのに、誰も共有して集約しようとしないのだ。全国で起きている鳥獣被害における対策と同じなのだ。

そして面白いのが、イノベーションはすぐに結果が出ないという事実を知って置きながら、その様な組織は頻繁に配置転換をするのだ。イノベーションへの取り組みをして3年程度でトップを変えていくのだ。組織的にナレッジや成功体験、失敗体験が共有されれば良いのだが、そもそもその取組が出来ていない。そこで、新たにやってきたマネジメントはわれこそはと、自分なりの取り組みをまた再びゼロベースで始めるのだ。

これも自治体の鳥獣対策に重なる。自治体の担当者も自分の行動に責任を持ちたくないため、基本的に記録しないし、共有しないのがさも当たり前になっている。毎回、配属が変わって2年か3年そこらで異動する。マネジメントも現場も誰もリーダーシップやオーナーシップが無い。更に、他エリアの事例を調べることも殆ど行わないので、時間が止まって何も進まない状態が30年以上経過してしまうのだ。

企業の場合は若干ましだが、組織をコロコロ変え、同じ様な組織を作り、その管理者やマネジメントをコロコロ変えるのでは日本の自治体と行っていることが同じなのだ。結果は100%出ない。

イノベーションと連呼して5年、10年経過した組織は、今こそ取り組みを集約して過去の検証をすべきではないだろうか。そして、本部にイノベーションの部隊を設置して情報を一元管理する。そこに務めるコアのメンバは固定で最低でも5年10年のスパンで取り組む。もちろん、マンネリ化を防ぐために、意図的に3年程度の周期で現場の血を入れ替えることはするが長く取り組み成果を出すイメージを持つのだ。

ポイントは、長期、集約、検証なのだ。

(過去の記事)
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