新規事業の旅109 ファイナンス関連の書籍
2024年5月8日
早嶋です。
新規事業は、事業アイデアを考えて、それらを事業プランに落とし、実際に行動に移す。そのためヒト、モノ、カネに関する知識や知見があったほうが良い。ここでは会計財務とした場合、会計ではなく財務に焦点を起き紹介する。
道具としてのファイナンス増補改訂版 石野雄一著
ファイアンスの基本として、価値を金銭で評価する際の考え方をわかりやすく解説。
コーポレートファイナンス戦略と実践 田中慎一・保田隆明共著
ベンチャー企業の価値算定からIR対応まで、広く浅くわかりやすく解説。
スタートアップ投資のセオリー 中村幸一郎著
スタートアップ投資に対しての考えを体系化して整理。
ベンチャーキャピタルの実務 グロービスキャピタルパートナーズ共著
VCの実務を広く体系的に整理。
起業のファイナンス 磯崎哲也著
ベンチャー企業のファイナンスの在り方、考え方、あるいはグランドデザインの大枠を提示
起業のエクイティ・ファイナンス 磯崎哲也著
エクイティファイナンスの勘所を分かりやすく解説
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
「コンサルの思考技術」
「実践『ジョブ理論』」
「M&A実務のプロセスとポイント」
新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント
2024年5月3日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント」です。この4月から新たな期が始まった企業も多いのではないでしょうか。「今期は前期比130%アップを目指す!」というような高い目標を掲げておられる企業もあるかもしれません。今まで通りでは到底達成できません、どのような戦略を立てればいいのでしょうか。今回は新しいことに挑戦し、業績拡大するために考えるべきポイントをご紹介いたします。
経営者は常に前年比アップを求めておられるのは当然ですね。企業が価値ある新しいことに挑戦していかなければ、変化の激しいこの時代に、相対的に衰退してしまうと絶えず危機感を感じておられるのではないでしょうか。
その一つの例として、前期比130%アップの売上目標を掲げるということです。自組織の将来を常に案ずる経営者がやっと安心できる数字が前期比130%アップと言われています。
前期比130%アップするためには、戦略を立てなければなりませんが、どのように考えればいいのでしょう。
2ステップで考えます。「業務改善フェーズ」と「新規事業フェーズ」です。
1つ目の「業務改善フェーズ」は既存事業についてです。既存事業を前期と同じようにやっていたのでは、とても130%アップは望めません。なぜならそのアップを創り出すリソース(ヒト・モノ・カネ)がありませんからね。
よって事業拡大のため、既存事業を7割のリソースでこなすことを目指します。つまり生産性の向上と徹底的なコストの見直しです。どうすれば少ないリソースで前期と同じ成果(売上や利益)を創り出すことができるか、考えなければなりません。
部門ごとに問題点の洗い出しやムダ・ムラ・ムリの解消、システムや仕組みの見直し、コストカットできるところはないか原材料からバリューチェーンの再点検など、やれることはたくさんあるはずです。
2つ目の「新規事業フェーズ」は、そのように創出した2割のリソース(ヒト・モノ・カネ)で新しいことに挑戦します。その新しいことで前期比130%アップを実現するわけです。
ここで問題は何をするかですね。その方向性を考えるひとつの見方として、「既存顧客か新規顧客か」という視点と、「既存商品か新規商品か」という視点の組合せです。アンゾフのマトリクスとして有名です。既存顧客に既存商品をさらに売る戦略は市場浸透・シェア拡大です。既存顧客に新規商品を売るなら商品開発という戦略です。新規顧客に既存商品を売るなら市場開拓という戦略です。新規顧客に新規商品を売るなら多角化戦略です。どの戦略をとるのが、自社にとって最も有利か考えましょう。自社の強みを活かすには?外部環境はどうなっているか?競合は?など考慮すべきことはたくさんあります。
このようにして、限られたリソースでも毎年、業務改善と新規事業を同時に行っていくことができれば、企業は成長しますし時代の変化にも対応できていることでしょう。
もちろん言うは易しで、そのためには経営者の力だけでなく管理職の力も必要ですし、それができる社員をそろえるために人材育成も絶えず行わなければなりません。
しかし新しいことに挑戦しなければ、生き残ることが難しい時代ともいえます。新しい期が始まるタイミングで考えてみられてはいかがでしょう。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
対人関係が苦手な方のリーダーシップ
2024年5月2日
安藤です。
職場におけるメンタルヘルスの悪化、抑うつの増加が近年問題となっています。昨今の新しいタイプの抑うつ症状の増加が目立っております。以前は、日本でのうつ病は、「メランコリー親和型うつといわれており、40代~50代が中心。自分に厳しく、几帳面で仕事熱心。他者に対しても「迷惑をかけては申し訳ないと」頑張ってしまう。一方で、新タイプ抑うつの特徴は、・プライベートでは元気で活動的だが、職場では元気が無い ・仕事を任せても自分勝手で・自分は悪くない・上司が悪いと他者への批判が多い ・自己愛が強くプライドが高い ・20 代~30 代と若い世代に多い」 といわれています。
他、抑うつ状態になりやすい方の特徴としては、他者からの評価を過度に気にしたり、他者からの評価に過度に反応したりする傾向や、自己の快の感情を他者や集団との関係よりも優先させて追求しようとする傾向があります。要は、思考・感情・行動が他者を優先にする傾向です。
対人苦手意識は、「特定の他者に対する否定的な感情と消極的な態度の総称」と定義されています。学校、企業での現場では、この傾向は顕著に増えているように感じています。眼を合わせるのが苦手、相手からどう思われているか心配、人が怖いという心理が働くなどです。
しかし、現実職場では、相手に対して “負の態度” をもっていてもその他者に接近する場面は多く、自身の感情をコントロールすることが求められます。
新タイプ抑うつ(呼称として新型うつといわれていました)を耳にするようになったのは、2012年頃です。現在の管理職社員をしている方の中にも対人過敏傾向、自己優先志向の方も存在すると考えられます。
そこで、そのような傾向のある方に対してのリーダーシップとして、適切なのは、サーバント・リーダーシップ(Greenleaf 1997)と考えられます。
サーバント・リーダーシップに求められる属性は、傾聴・共感・癒し・気づき・説得・概念化・先見力・奉仕・成長への関与・コミュニティーづくりです。従来型の先頭をきってリーダーシップを発揮するタイプではありません。
メンバーの自立性を引き出し、チーム内でのコラボレーションを活性化し、新たな発想を創造していく必要があり、そのためにはメンバーの成長を支援し、職務を円滑に遂行できるように支え奉仕する。というリーダシップの在り方です。
*参考までに
新型うつ病になる人の傾向は、①人格が未熟なので、自己中心的で無責任な行動をとる。また、自己愛が強いので失敗を嫌う。②自己愛が強いため、業務上の注意であってもプライドが強く傷着きやすい。③病気になった理由を周りの人間や職場のせい、自分を責めるような発言がない。④仕事にはいけないが、自分の好きなことは楽しめる。等が挙げられています。
新規事業の旅108 イノベーションとCVC
2024年4月26日
早嶋です。
イノベーションを実現するための手法は、R&D、M&A、提携・出資などがある。そもそもイノベーションとは、なんだろうか。
ポケベルがケータイになりスマフォになる。ケータイからスマフォの変化はイノベーションだと思う。従来のメセージのやり取りや通話に加えて、写真や動画を活用したコミュニケーション、24時間365日常にオンラインにほとんどの人がいるために、スマフォで様々な体験を共有することが可能になった。隙間時間には音楽や映像を楽しみ、仕事や買い物もスマフォがあれば簡潔でいる。スマフォは財布にもなり決済や商品の購買も簡潔させてしまう。スマフォによって完全に人間の、消費者の行動が変化したのだ。
そのスマフォだが、特質した1つの技術による成果ではなく、様々な技術やサービスが組み合わせられた結果できあがった産物とも言える。その意味でスマフォのイノベーションは、消費者の行動を変える機能を実装する技術開発やサービス提供と言ってよい。これは今後のイノベーションの開発に一定の示唆を与えてくれる。
イノベーションの大家、クリステンセンのイノベーションの議論では、1960年から1990年代までは実に連続的な技術開発が進展した。しかし2000年代にデジタル技術とネットワークの融合により急激にグローバル化が進展する。ここに異業種の技術融合なる取り組みが派生した結果、非連続的なイノベーションが誕生する。
技術のベースは国や企業が持つ基礎研究所からスタートし、そのシーズを製品にインストールして事業化していく。研究所から事業部へ技術移転された技術は、実際の市場からのフィードバックを受け磨きがかかる。1980年から90年代は、事業の多角化がブームになり要素技術はどんどん体系化され、プロダクトイノベーションが加速したのだ。2000年に急遽インターネットなどのIT技術が発達し、コミュニケーションコストの削減とデータ管理コストの削減がなされた。一方で、あらゆる記録をデータとして保持することに価値の源泉が移り、そのデータを駆使して価値を提供する企業が世界的にキャッシュを稼ぐようになる。
まさに連続的な技術開発に加えて、異業種の技術や融合を図り、製品に加えて、その製品を活用する前後のサービスの工夫など、最終的にはビジネスモデルを工夫した企業が競争優位に立つ世界ができあがってきたのだ。
これらを整理するとイノベーションは、継続的な技術開発に加えて、異業種の技術や製品、サービスを組み合わせることで、消費者の経済行動を変化する諸々の取組を指すと言ってもよい。この考えは、近年の学者の指摘の中で、早稲田大学ビジネススクールの入山准教授の話と合致する。イノベーションは知の探索と深化の両利きの経営の中で生じ、事業が新規に近ければ未知の知を探索し、既存の事業であれば知の深化を進めることになると入山准教授は述べている。
事業は、1つの知を継続的に探索することでキャッシュを得る。しかし継続的な取組は、いつしか破壊的なイノベーションによって駆逐される可能性がある。かといって、知の探索をおこなっても、すぐにキャッシュを稼ぐことができない。企業イノベーションを行うには、この2つを頭に入れてうまく管理するしかないのだ。
では、イノベーションに投資する方法は何があるだろうか。冒頭に書いた通り、R&D、M&A、提携・出資などに類型できる。
既存事業の短期的な時間軸で取り組む手法がM&Aだ。まさしく時間を買う目的で事業シナジーを獲得する。既存事業の長期的な取組は、新規事業の探索になるのだろうが、実際に企業を観察すると既存事業の延長で研究開発をしている企業が多い。R&Dと名前はつくが、既存事業の継続的なプロダクト・イノベーションを進める取組なのだ。
新規事業の短期的な時間軸で取り組む手法はイントレプレナーやJV(ジョイント・ベンチャー)がある。多くの企業を観察するとこのエリアは、企業の事業ポートフォリオのノンコア部分で取り組む事例が多い。飛び地の事業を開発する取組だ。
新規事業の中期的な時間軸での取組は、CVCが近年注目される。事業会社がスタートアップ企業に投資することだ。通常、スタートアップ企業は、常にオンリーワンの新しい事業を企てている。そのため事業会社からみてもCVCは新規事業に位置づけることができる。事業会社がCVCに与えるメリットは、キャッシュ以外に、革新的なアイデアと自社の固有の技術しかもたないスタートアップに、事業化を促進するための他の資源を提供できる可能性だ。
このように捉えると、知の探索と知の深化を同時に行える可能性としてCVCはドンピシャなのだ。
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新規事業の旅107 エクイティにおけるインセンティブ
2024年4月25日
早嶋です。
企業勤めのインセンティブの代表がボーナスだ。特徴は、一定の成果に対して事後的に金額がきまる。それも自分の上司が評価を決める。一方で、ベンチャー企業におけるストックオプションは、事前に付与された比率によって決まる。そして、その金額は実際の時価総額の上昇幅によって変化する。つまり完全に結果重視だ。
ストップオプションの評価は、従来の事業会社の評価と全く異なるメカニズムだ。上司の評価は全く関係ない。ストックオプションを持たない社員はただのりしても、評価を得られないのでそもそも存在しない。事業会社であれば、ボーナスの原資を一定、実際に仕事をしていない従業員にも分配しなければならず、フリーライドする人材が確実に一定数存在する。ボーナスの査定は常に上司に委ねる部分がある。そのため顔色を伺うことを確実に行ってしまう。属する部門の成績によって、ボーナスの原資配分が決まるので、他の事業部の取組などは全く忘れて、全社の限られた事業の限られた部分での成果を追い求めてします。ボーナスの評価は四半期の成績を積み上げるもので、長期思考には絶対なり得ない。
一方、ストックオプションは異なる。既存の事業と異なり、目先の利益ばかりを追求しない。評価は5年程度先の事業価値を上げることによってしか得られないからだ。短期的なキャッシュインのために動いても価値は向上しない。継続的な先を見据えた取り組みに必然とフォーカスされる。不安定なベンチャーの事業モデルは、場合によってどんどん変えていく必要がある。組織は暫定で、異なる組織であっても、長期的に全体最適で成果が出る仕組みを追求する。限られた部門の成果に見合う歩合を払うボーナスとは異なり、同じ成果でも長期的な活動にコミットさせるのがエクイティ連動の評価制度になるのだ。
言われなくても、上司が見ていようが見ていまいが関係なく行動する。既存の事業とは異なり、どの仕事が、どの程度影響するかは、誰もわからない。結果、数年経過しなければ正解は無いのだ。そのような状況で試行錯誤して動くには、ストックオプションは極めて合理的だと思う。
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新規事業の旅106 スタートアップと採用
2024年4月24日
早嶋です。
数名の企業が素晴らしいビジネスモデルを信じ事業を展開する。将来、100人、1000人の規模になるかもしれない企業のポテンシャルは、これから採用する人材で決まる確率も高い。一方、鶏と卵の関係で、今のキャッシュフローがネガティブな段階でポテンシャルだけ示されても、将来の従業員を引き付ける力は弱い。
スタートアップは、今金を払うことはできない。だからと言って低賃金で高給取り経験豊富な人材を獲得できる虫の良い話はない。当然、将来を拡張する可能性を持つ優秀な社員に対しては、相応のインセンティブが必要だ。そこにストックオプションが活用される。例え1%以下のストックオプションだとしても事業価値が1,000億になれば、その価値は数億にも相当する。
加えて、スタートアップの理念や、従業員が大企業で得られない体験ができたり、社会を変える挑戦に参画したりと、副次的な要素が集まれば、優秀な人材がやってくる可能性はある。お金ありきではないが、リスクしかないスタートアップには、やはり相応以上のリターンが大切だ。
そのために創業者や経営者は、事業の成長に対して、価値を作り出すことにコミットし、自分はいけると信じ続け行動する。この取組を10年単位で爆速できる胆力が絶対条件だと思う。そこに、今のメンバでなんとか問題を解決する感じではなく、適材適所で、適切なタイミングで、適切な人材を活用すること。そして規模を拡大して価値を創造する思想が大切だと思う。
数字や事業の中身も同様に大切だが、時期やフェーズに合わせた人材投入と組織構築は鍵だ。数名のメンバで1,000名規模の仕事をしたいのであれば、既に1000名規模でガンガン引っ張っている人材を登用する発想だ。今のメンバが頑張ったとて、現メンバの成長を期待しても、事業の成長はないし、人の成長は時間がかかる。既存の事業であれば、人材の成長を期待しながらでの登用は問題ないが、変化が激しい不確実な世界でその発想は、すなわち停滞を意味する。確実に人の成長は事業の成長より遅いのだ。
SaaSの仕組みを提供したいのであれば、既にSaaSの世界で活躍している人材を引っ張ってくるべきだ。法人営業を行うのであれば、法人の経験者を採用すべきだ。2Cの販促を拡張したいのであれば、試行錯誤するのも大切だが、その道のプロを責めてアドバイザーにつけるべきだ。起業メンバの学生とともに経験が浅いのに、プレゼンシートをちまちま作っても時間がいくらあっても足りない。あるべき姿を逆算したら、採用やメンバも、同様に逆算してメンツを決めていく。そのような発想は極めて大切だ。ベンチャーは現在の延長で議論しても無意味なのだ。※もちろん、一定のフェーズは自分たちで手や足を動かして汗をかくことは大切だ。ただPoCなどを終了して一気に展開するフェーズは思想を変えた方が良いのだ。
せっかく起業したのだ。常に自分が優秀である必要はない。自分よりも優れた仲間を集めマネジメントする。そのメンタルが大切だ。優秀な人材ではなく、使い勝手の良い、使いやすそうな人材を選んでも価値は創造できない。仮に問題を解決できても、将来に飛躍する起爆剤になra
る可能性は低い。
ベンチャーのトップの仕事は企業価値を高める取り組みだ。そのための戦略、そのための組織、それを達成するためのプロセス、そこに必要な資金。それらを示して投資家と議論しながら調達をし続ける。その取り組みができなければ、既に組織構築を経験した人材を採用して右腕につけるべきなのだ。
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新規事業の旅105 経済的なインセンティブの大切さ
2024年4月23日
早嶋です。
この10年。スタートアップやベンチャー企業は、国内でも一定の認知を得られる仕事になった。学生や脱サラした人が、自らの志と事業アイデアを試すべく起業し、そこにジョインする人材も後を絶たない。一方、国外でのスタートアップの成長や時価総額を見ると、量と質の両方から日本のベンチャーの勢いはが少ない。質と量のさにインセンティブはないだろうか。スタートアップは自社の企業価値の向上とともに、その組織で初期に活躍する人材の経済的なリターンを提供する取り組みだ。
20年、30年前には存在しない企業で、現在では時価総額が高い企業の多くは、企業価値をベースに巨額の資金調達を実施している。そして、他のスタートアップを内部に取り入れ、従業員にもストックオプションを付与し、企業の成長果実を利害関係者にバックする仕組みを構築し勢いを加速している。
一方、20年、30年前は時価総額ランキングで上位にあった企業の多くは、ストックオプションの制度が無い。またM&Aは近年こそ活発になりつつあるが戦略的に仕掛けている企業も少ない。資金調達の手法は、金融機関から融資を受ける取り組みもあれば、株式で資金調達する手法もある。しかし株式を活用したエクイティファイナンスの醍醐味は、資金調達目的に加えて、起業家、経営陣、従業員、投資家、買収候補先、取引先を強烈にモチベートさせる経済的なインセンティブの側面も忘れてはいけない。
このインセンティブを取り入れた企業とそうでは無い企業の比較は、三輪車で漕いでいるそばを911で爆速するくらいの違いを発揮すると思う。実際、米国ではVCの投資額はもちろんのこと、未上場企業を買収する目的で設立されたペーパーカンパニーを上場させ、そのSPACを活用したM&Aも盛んだ。ここにも強烈なインセンティブがバックに潜んでいるのだ。そして、日を追う事に新しいファイナンス手法も生み出され、進化が止まらない。
これは何らかのマネーゲームに見えるかもしれないが、成長したスタートアップは、上場した元スタートアップやM&Aでイグジットしたスタートアップの役員が手に入れた資金で、新たにスタートアップを起こし(シリアルアントレプレナー)、あるいはエンジェル投資家やアントレプレナーのメンターになりベンチャーにおけるイノベーションを加速するエコシステムの源泉になっている。
この急速なスタートアップの成長、M&Aによる出口における資金回収は、投資家の期待利回りを向上させることにもつながり、VCなどのファンドにさらに資金を集める仕組みにもつながる。そして投資額も巨大化しているのだ。本来スタートアップの成長はすべて将来の話。何の確実性も存在しない期待のみの世界だ。スタートアップの時価総額も将来の期待キャッシュフローを現在価値に割り引いた金額に過ぎず、あるいみ虚構で、極めて自由な市場で、個々人の欲望と期待が交錯する世界だ。
国内では、このような不確実な世界に政府が介入し、税制を優遇し、コントロールしようとしている。しかしナンセンスだ。そもそも不確実な世界を確実にコントロールできると思う発想がのっけから間違っているのだ。そのために、将来のとてつもないインセンティブをベースに事業を爆速させる仕組みがファイナンスの手法にはあるのだ。
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新規事業の旅 全集
2024年4月23日
こちらは現在連載している「新規事業の旅」の全部のリンクです。
新規事業の旅(1) 旅のはじまり
新規事業の旅(2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(4) M&Aの成功
新規事業の旅(5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(6) 若手の教育
新規事業の旅(7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(9) 採用
新規事業の旅(10) NBとPB
新規事業の旅(11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(12) 山の登り方
新規事業の旅(13) ポジションに考える
新規事業の旅(14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(15) 偶然と必然
新規事業の旅(16) キャズムを超える
新規事業の旅(17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(18) アンゾフ再び
新規事業の旅(19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(23) 道具の使い方
新規事業の旅(24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
新規事業の旅(28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
新規事業の旅(29) 売り手のトラブルは売り手の無知から
新規事業の旅(30) OEは最早役に立たたない
新規事業の旅(31) ジョブと障害とキャズム
新規事業の旅(32) 需要と供給
新規事業の旅(33) ストレッチ目標
新規事業の旅(34) 複利の効果
新規事業の旅(35) 人間は機械の一部になる
新規事業の旅(36) デジタルの弊害を受け入れる
新規事業の旅(37) 会社を居場所に置き換える
新規事業の旅(38) システム化された社会
新規事業の旅(39) 金融リターンではなく事業リターン
新規事業の旅(40) サービス業の苦悩
新規事業の旅(41) 3つの財布
新規事業の旅(42) グループ企業の試練
新規事業の旅(43) 思考と行動
新規事業の旅(44) デジタルバッジ
新規事業の旅(45) デジタル化とOC
新規事業の旅(46) ジョブ発見のコツ
新規事業の旅(47) 器と魂
新規事業の旅(48) Z世代の高級品
新規事業の旅(49) アニメ界のSPA企業が覇者になる日
新規事業の旅(50) PBR1割れの衝撃
新規事業の旅(51) 新規事業の創造3つの方向性
新規事業の旅(52) 別の視点で見るイノベーションのジレンマ
新規事業の旅(53) 新規事業のベストミックス
新規事業の旅(54) サーキュラーエコノミー
新規事業の旅(55) PBR1割れを考える
新規事業の旅(56) 情報の民主化と経済格差
新規事業の旅(57) セキュリティの今後
新規事業の旅(58) サステイナブル経営
新規事業の旅(59) Z世代のアプローチ
新規事業の旅(60) ドローン事業
新規事業の旅(61) ノンカスタマー
新規事業の旅(62) プランB
新規事業の旅(63) Z世代
新規事業の旅(64) 小売とマーケティング
新規事業の旅(65) 高齢者をターゲットにした事業
新規事業の旅(66) ベンチャーキャピタルの実態
新規事業の旅(67) 新規開発の落とし穴
新規事業の旅(68) 覚悟を持って取り組む
新規事業の旅(69) 売れるモノが良いもの
新規事業の旅(70) 性善説と性悪説
新規事業の旅(71) 保身に走らない
新規事業の旅(72) 中国リスク
新規事業の旅(73) サステナビリティ経営
新規事業の旅(74) ストックオプション
新規事業の旅(75) ゼロイチとM&A
新規事業の旅(76) TAM/SAM/SOM
新規事業の旅(77) 近くと遠く/全体と細部
新規事業の旅(78) 逆境を乗り越えるリーダー
新規事業の旅(79) ラストイチマイルの柔軟思考
新規事業の旅(80) 業務提携と資本提携
新規事業の旅(81) 部下の視点と視野の狭さはあなたの鏡
新規事業の旅(82) バックキャスティング
新規事業の旅(83) ペット保険にAmazon参入
新規事業の旅(84) ベンチャー企業
新規事業の旅(85) 生成AI1年目の誕生日
新規事業の旅(86) スケールする前後の組織
新規事業の旅(87) 無線給電
新規事業の旅(88) よく見る風景
新規事業の旅(89) ダイナミックプライシング
新規事業の旅(90) 提携と出資
新規事業の旅(91) アパホテルのプライシング
新規事業の旅(92) コカ・コーラのダイナミックプライシング
新規事業の旅(93) アップルのゴーグル型端末
新規事業の旅(94) 通年採用のススメ
新規事業の旅(95) 情シス事情
新規事業の旅(96) オープンイノベーションの打ち手としてのCVC
新規事業の旅(97) 今後のマーケティング
新規事業の旅(98) エフェクチュエーション
新規事業の旅(99) 2世と3世
新規事業の旅(100)自分事と他人事
新規事業の旅(101)最近の経営企画
新規事業の旅(102)ドーミーイン
新規事業の旅(103)誰もわからない
新規事業の旅(104)運とリスク
新規事業の旅(105)経済的なインセンティブの大切さ
新規事業の旅(106)スタートアップと採用
新規事業の旅(107)エクイティにおけるインセンティブ
新規事業の旅(108)イノベーションとCVC
新規事業の旅(109)
新規事業の旅(110)
【動画】2030事業(営業)戦略策定WS
2024年4月22日
※本ページは誠新産業様向けページです。
ワークショップに参加するメンバで、戦略立案に関する知識や経験に不安を感じる方は、以下の動画を参照ください。視聴は任意です。
【戦略思考の基礎】
戦略思考(34分)
全社戦略(26分)
成長戦略(38分)
基本戦略(36分)
環境分析(35分)
戦略立案(21分)
新規事業の旅104 運とリスク
2024年4月19日
早嶋です。
運とリスク
一定の事業は、あるタイミングで、ある業界に、何らかのきっかけを持って開始することでチャンスを掴む。同じタイミングで、同じ業界に参入する可能性がある組織は多数ある。しかし、取り組むか、取り組まないかの意思決定は組織によって異なる。そして組織の努力によって一定の成果を出すこともあるが、たまたまそのタイミングでその業界に参入したことで達成できた成果として考えることもできる。
成功した組織を、成功した後に観察し、関係者に話を聞き、調査をすると、成すべくして成功したように勘違いしてしまう。しかし、成功した組織の最も素晴らしい取り組みは、早いタイミングで、その業界に入って、その事業をスタートしたことのようにも思える。そして、そのタイミングは、意図的に戦略的に計算された結果ではなく、もっぱら偶然という表現の方がフィットするケースが多いのだ。
事業の成功=運と言いたいわけではない。一方で、運と表現した方が成功要因を説明することが簡単な場合も多々あるのだ。この解釈を持つことができれば、他人の芝を青く捉えず、どこにでもチャンスは転がっているという思想を持てる。
環境分析をする際、マクロの視点とミクロの視点から事業チャンスを分析する。自分たちのリソースを活用して、あるいはゼロベースで取り組め成果を出す領域を選定する。ある組織にはチャンスに見える業界も、別の組織には脅威となる。誰もが同じ物差しがあるわけではない。考え方の基準や判断基軸は千差万別なので、結局、その事業に参入するか否かの判断は戦略的に見えても、他の組織からすると合理性が乏しいのだ。
成功した組織は、その参入後も、継続的に、その業界のペインを解消すべくワークし続けていることだ。チャンスを掴み、信念を持って取り組んだ結果、成功がたまたま舞い込んでいる。事業における再現性は、じつは偶然や運の部分も無視できない。だれも神様ではないので確実に正確に知ることもでいない。個別の事例を研究して法則を見出し再現することは机上の作業でできても、現場では大変なのだ。
ここからの学びは、どのようなことでも、見方によっては良いし、悪いのだ。そう実は良くも悪くもないのだ。この視点を持つことができれば、成功しても、失敗しても、冷静に客観的に分析して判断ができる。成功と失敗には運とリスクが介在しており、運とリスクは紙一重なのだ。
(過去の記事)
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