自動車の行く末はケータイ機器メーカーのようになるかもしれない

2016年5月31日 火曜日

早嶋です。

1908年。T型フォードの発売が始まって以来、自動車産業は製造業を代表する花型商品だった。しかし2000年に入り、ICTの急速な発展、ネットワーク技術の普及、そしてIoTが浸透するに連れてビジネスモデルが変わりつつある。キーワードはシェアリングという発想と自動運転技術だ。

形態こそ違えど、上記の先行的な変化を示す事例に携帯電話がある。当初はハードメーカー主導のビジネスであったが、いつしかOSやソフトを提供する企業がその業界を牛耳るようになった。そう、Googleやアップルという名称が携帯電話、そしてスマフォのビジネスにも王座として君臨するようになったのだ。そして、この傾向は自動車のビジネスにも浸透しつつある。

業界のレポートを読むと2025年までに自動車全体の2割がシェア利用されると言われている。この動きを捉えて米フォードはメーカーからサービス企業になる宣言をしている。理由は簡単で、車は憧れの対象、つまり持つことの喜びが失われ、使うという単純な発想の対象になったからだ。

海外勢ではBMW、GM、フォードが相次いでカーシェア事業に参入している。これらのビジネスは従来日本でもあったようなレンタカーのサービスと大きく異る。カーシェアのサービスエリアであれば、スマフォを通じて自動車を気軽に借りれ、料金は1分単位でガソリン代、保険代、駐車代などを含む。

簡単に考えると、これまで地域に10人住んでいて、個人個人が10台車を保持していた。それが地域で例えば3台所有して10人がその車を共同で使うという発想だ。となれば当然自動車会社からすると車の販売台数が減少するので、自分たちからカーシェアのビジネスに参入するのは矛盾が生じる。

その理由はライドシェアだ。これは自動車を所有する人が、自分が自動車を使わない時に他に自動車を貸すというビジネスモデルだ。私もそうだが、平日は殆どが車庫。土日も夜中は車庫だから、保有している期間の殆どを駐車場で車は主が乗るのを待っている状態だ。これらをスマフォを使って、他人でも利用できる仕組みがライドシェアだ。自分が車を使わない時は他の人が使ってくれて、かつお金を支払ってくれるから利用しない手はないという発想のビジネスモデルだ。

ライドシェアが普及すれば、コストパフォーマンスが良いクルマが選択されることになり、先に上げた車メーカーは自分たちのブランドが選択されないかもしれないと考えたのだ。きっと。だったら守りに入るよりは攻め、カーシェアのビジネスを普及してしまえ、と。

どちらにせよ、上記のようなサービスが普及すれば、世の中燃費が良いクルマ、コストパフォーマンスが良いクルマの台数割合が増えると予測できる。しかし一方で、車の母数は減ることになるだろう。となれば今絶好調の自動車メーカーも10年先は結構危うい状況なのだ。

加えて自動運転技術は自動車メーカーに取って諸刃の剣と言える。今、車は人が運転することが前程になっているが、カーシェアやライドシェアする車が勝手に動く、自動運転の車になれば、利用する人の増減によって車が勝手に場所を変えて最適化してくれるため最小の車の数でサービスを提供できるようになる。つまり車の使用効率が最大化されるため、ますます販売母数が減少することになる。

現在、車の技術の半分はハード、半分はソフト。そして基本的なハードの性能の向上よりもソフトの深化がめまぐるしい。このままシェアリングと自動運転が普及して当たり前になれば、車を所有する人は一部の金持ちか趣味の世界の人で、後はサービスとして活用するのが当たり前になるだろう。となれば、車を作っている企業よりもそのハードを如何に活用して如何にサービスとして提供するかの仕組みを牛耳る企業が自動車産業の覇者になるのだ。



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