水の価値と企業のモラル

2016年5月30日 月曜日

早嶋です。

商品(製品・サービス)の価値は、商品そのものが持つ機能的な価値とその商品に関して消費者がどのような価値を抱くかという感情的な価値がある。例えば水の価値は、喉の渇きを潤すという機能的な価値がある一方、何とかの天然水など産地のイメージを髣髴とさせることで水の感情的な価値を高める価値がある、感情価値である。機能的な価値も、感情的な価値もどちらも消費者の価値の根源であり、価値の有無や創出によって販売価格を高めに設定することができる。

マーケティングではあたり前のように行われている取り組みだが、近年のようにSNSなどで何かとDisられる世の中では、機能的な価値が無いのにさもあるかのように見せる取り組みは企業のブランドそのものを失墜させるリスクがあると考える。

水で世間を賑わせているのが水素水だ。きっかけは日本医科大学の太田成男教授が2007年に発表した一本の論文に遡る。水素分子が有害な活性酸素を消去して、一方で有用な活性酸素は消去しないことが確認されたという内容だ。

これらを受けて2008年頃より健康食品メーカー、通販メーカー各社が水素水という名前をブランドにつけて販売に乗り出している。中でも伊藤園は2008年から還元性水素水というブランドで青いアルミの缶で売りだし、2015年7月からは高濃度水素水というブランドをアルミのパウチで販売している。

伊藤園のプレスリリースによれば、水素水市場の活性化を図って販売を開始している旨の記述があるが、このような取り組みを大手が行うことに若干違和感とブランドを汚すリスクを感じる。というのも水素水の機能的な価値を茶カテキンなどの研究機関を持つ伊藤園自らが水素水の研究を行っていないからだ。

それなのに商品パッケージにかかれたインデックスには、「業界トップクラスの高濃度」、パウチには特許を取った「水素封入方式」で充填しているなど、何やら機能的な効能を謳っているかのような表現が満載なのだ。一方で、伊藤園は水素水はあくまでも清涼飲料水というポジションを取っており体に良いという表現はしていない。表向きは水として売っているが、明らかに意図的に機能的にな価値を見出そうとしたプロモーションだ。

パウチ入りの価格は200ml入りで278円(税別)でアルミ缶の商品は185円(税別)だ。単なる水で水素水の効能がさもあるかのように販売しているとしか考えられないのにこの価格。うーん、高いと思う。

伊藤園はその売上の殆どがおーいお茶に代表される飲料で、水に関する売上は微々たるもの。しかも伊藤園のWebを見ればいたるところに顧客目線、お客様第一主義、誠実などという言葉が並んでいる。

せっかく構築してきたブランドを水素水で壊す可能性もあるのではないか。何故に、この水素水の参入を許したのか経営層の判断が分からない。



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