日本の戦略論

2010年1月7日 木曜日

日本企業には総じて戦略が無い!といわれます。顧客ターゲットが不明確であったり、ポジショニングが曖昧だったり、様々な事を言われます。他にも、戦略ではなく、オペレーションエクセレンスで良くなったわけで戦略ではないと言われます。つまりこれまで行っていたオペレーションを更に良くする。もっと頑張る!という活動を繰り返して結果、企業が伸びてきたのです。

ポーターの戦略論を極論すると企業として安く提供するのか?それとも、付加価値を付けて高く売るのか?に大分されます。これに対して、日本は更品質のモノを頑張って上手く作ったため、海外の企業に差をつけたと言ったところでしょう。

日本企業は常に頑張ってきました。これは日本の教育制度のおかげかもしれません。海外の人と比較して頑張る文化が過去はあったからです。また、過去は他の国がたまたま頑張る事をしなかったのかもしれません。つまり日本の頑張り方が突出したのです。これでは長く続かないですよね。3年5年は耐えれるかもしれませんけど、10年20年は持たないですよね。そのため頑張る事の賞味期限が切れたのかもしれません。

グローバルで経営を考えると状況が変わってきています。過去、がんばり方を知らなかった海外の企業が戦略とオペレーションエクセレンスを組み合わせて来たのです。これによってグローバル競争のルールが変更されています。

例えば、日本は常に100点満点の商品を100というコストをかけて、100という価値で価格を付けたとしましょう。これに対して、米国やヨーロッパは初めから100点満点の品質を諦めて、70点とか80点に割り切って商品を企画しました。

モノづくりに携わる人だったら、80点くらいの商品だと意外にコストを安く抑える事を知っているでしょう。そして、80点を100点に近づけるためには、80点の商品を作るよりもコストがかかるかもしれない事も肌で感じていると思います。

そこで米国の企業は70点とか80点の商品を60くらいのコストで作り、90くらいの価値を付けて販売するという戦略を取りました。一方、ヨーロッパの企業は70点とか80点の商品をやはり60位のコストで作り、うまくマーケティングを仕掛けてブランドイメージを構築しました。結果、100という価値を付けて販売に成功しました。米国とヨーロッパが上記を意図的に行ってきたので、日本企業は頑張れなくなってきた頃より、パワーダウンします。利益率が低くなるのも納得しますよね。

米国はコストリーダーシップ戦略を取り、つまり安く提供するビジネスモデルを構築しました。ヨーロッパは差別化戦略を取り、付加価値を提供するビジネスモデルを構築しました。米国のやり方は理解できるかもしれないけれど、ヨーロッパのやり方は解せない!と思う方もいるかもしれません。ブランドを構築して付加価値を提供する。これは美学のセンスの違いかもしれませんが、結果的にヨーロッパのブランディングはかなり成功しています。但し、両者には明確な戦略があることが分かります。

では、今後も日本は頑張り続ければよいのか?これには厄介な問題が出てきました。新興国の出現です。日本の品質を100点としたら、新興国の品質は50点を切る程度。つまり、落第の点数です。しかし、50点を切る品質レベルを10くらいのコストで作るビジネスが新興国で成り立っているのです。そして価格は10くらい。これが段違いのコスト競争の始まりです。昨日コメントしたBOPの概念を無視できないのはこの点にあります。

もうひとつは、米国やヨーロッパの企業は、日本と同様に頑張り方を覚えて来た。つまり、戦略+オペレーションエクセレンスの合わせ技になってきたのです。日本だけで物事を考えても、海外の企業にシェアを取られるかもしれないし、海外に進出したら段違いな価格競争と戦わなければならない。

従来のように戦略が無い!といわれて、もっともっと頑張る、といったところで限度があるでしょう。さて、企業のすすむべき方向性をどちらに置くかを考えるときがやってきたかもしれません。


早嶋聡史





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