BOP

2010年1月5日 火曜日

ビール国内首位のアサヒビールが同業世界最大手のカールスバーググループと海外販売で提携するニュースがありました。これまでに両社に資本関係は無く初めての業務提携となるようです(日本経済新聞)。

08年の国内のビール関連の販売量はピーク時の94年から16%減少しています。速報値では09年も前年の数値を下回っています。少子化、若者のアルコール離れ、景気の低迷。確実に今後も市場規模は週リンクするという判断でしょう。そこで国内の内需依存を改める必要に迫られているのです。

アサヒビールが目をつけた新市場はまずは香港。カールスバーグが強い欧米系飲食やコンビニ、スーパー向けにチャネル開拓を行いスーパードライを売って行きます。これまで同社は和食レストランに限った展開を行っていました。香港の市場は1300万ケース。日本が5億ケースなので規模は小さいですが、成長市場と捉えています。

国内市場に見切りをつけて、海外市場に目を向ける国内の企業。これまで以上に加速するでしょう。しかし、多くの企業はピラミッドの頂点をターゲットにビジネスを加速していますが、今後のトレンドとしてピラミッドの底辺に焦点を充てるビジネスを検討せずにはいられなくなるでしょう。

BOP、Bottom(or Base) of the Pyramidの略。世界の所得レベルをピラミッド状に例えたとき、所得階層ピラミッドの最底辺で暮らす人々を指す言葉です。統計的には年間所得が3000ドル以下で暮らす低所得層です。しかし、人口規模は世界で40億人。つまり、地球人口全体の7割をカバーするのです。

BOPの先駆けはグラミン銀行です。バングラディッシュ・チッタゴン大学経済学部長のムハマド・ユヌス氏が貧困層に個人的にお金を貸したところ、借りた人が経済的に自立して、返済率が思ったよりも良かった事より、83年頃より正式に許可を取って設立した銀行です。この銀行の付与制度はマイクロクレジットと呼ばれ、女性を中心に500万人以上に貸し付けが行われています。詳細はC.K.プラハード著のネクストマーケットに譲りますが、これまでビジネスにならないと考えられていた方を対象にビジネスを行う新しい概念です。

アマゾンのロングテールを考えると理解しやすいかもしれません。しかし、通常我々の生活レベルを考えていればとてもビジネスになるとは考えにくいのも事実です。そのため、日常ではあまり耳にされませんでしたが、グローバルでビジネスをしている企業にとっては重要なキーワードの一つです。

フランスに本社を置く国際的な食品関連企業であるダノンは、BOPビジネスに先行投資をしている企業のひとつです。低価格ヨーグルトであるシャクティ(価格は日本円で約8円)を開発して、低所得者の市場で受け入れられる水準で、かつ、食料事情の悪さで不足がちなヨウ素、鉄、亜鉛、ビタミンなどの微量元素を配分しています。バングラディッシュでは約500名のシャクティ―・レディーが1日に約3万4000食のシャクティ―を販売しています。

ダノンはグラミン銀行と協力してバングラディッシュの首都ダッカの北西にヨーグルト工場を建設して、2010年度には2つ目の工場を作る予定です。ダノンの関係者によると「ダノンがバングラディッシュに投じた2000万ユーロは投資に見合う利益は期待できない。しかし、食を通じて世界の人々の健康に貢献する(日経新聞)」としています。

確かに立派な社会貢献ですが、ダノンはシャクティを通じて最貧国での事業ノウハウの獲得して新興国のビジネスにつなげる明確な意図があるのでしょう。

早嶋聡史





コメント / トラックバック1件

  1. […] 日本企業には総じて戦略が無い!といわれます。顧客ターゲットが不明確であったり、ポジショニングが曖昧だったり、様々な事を言われます。他にも、戦略ではなく、オペレーションエクセレンス、つまりこれまで行っていたオペレーションを更に良くする。もっと頑張る!という活動を繰り返して結果、企業が伸びてきたのです。 ポーターの戦略論を極論すると企業として安く提供するのか?それとも、付加価値を付けて高く売るのか?に大分されます。これに対して、日本は更品質のモノを頑張って上手く作ったため、海外の企業に差をつけたと言ったところでしょう。 日本企業は常に頑張ってきました。これは日本の教育制度のおかげかもしれません。海外の人と比較して頑張る文化が過去はあったからです。また、過去は他の国がたまたま頑張る事をしなかったのかもしれません。つまり日本の頑張り方が突出したのです。これでは長く続かないですよね。3年5年は耐えれるかもしれませんけど、10年20年は持たないですよね。そのため頑張る事の賞味期限が切れたのかもしれません。 グローバルで経営を考えると状況が変わってきています。過去、がんばり方を知らなかった海外の企業が戦略とオペレーションエクセレンスを組み合わせて来たのです。これによってグローバル競争のルールが変更されています。 例えば、日本は常に100点満点の商品を100というコストをかけて、100という価値で価格を付けたとしましょう。これに対して、米国やヨーロッパは初めから100点満点の品質を諦めて、70点とか80点に割り切って商品を企画しました。 モノづくりに携わる人だったら、80点くらいの商品だと意外にコストを安く抑える事を知っているでしょう。そして、80点を100点に近づけるためには、80点の商品を作るよりもコストがかかるかもしれない事も肌で感じていると思います。 そこで米国の企業は70点とか80点の商品を60くらいのコストで作り、90くらいの価値を付けて販売するという戦略を取りました。一方、ヨーロッパの企業は70点とか80点の商品をやはり60位のコストで作り、うまくマーケティングを仕掛けてブランドイメージを構築しました。結果、100という価値を付けて販売に成功しました。米国とヨーロッパが上記を意図的に行ってきたので、日本企業は頑張れなくなってきた頃より、パワーダウンします。利益率が低くなるのも納得しますよね。 米国はコストリーダーシップ戦略を取り、つまり安く提供するビジネスモデルを構築しました。ヨーロッパは差別化戦略を取り、付加価値を提供するビジネスモデルを構築しました。米国のやり方は理解できるかもしれないけれど、ヨーロッパのやり方は解せない!と思う方もいるかもしれません。ブランドを構築して付加価値を提供する。これは美学のセンスの違いかもしれませんが、結果的にヨーロッパのブランディングはかなり成功しています。但し、両者には明確な戦略があることが分かります。 では、今後も日本は頑張り続ければよいのか?これには厄介な問題が出てきました。新興国の出現です。日本の品質を100点としたら、新興国の品質は50点を切る程度。つまり、落第の点数です。しかし、50点を切る品質レベルを10くらいのコストで作るビジネスが新興国で成り立っているのです。そして価格は10くらい。これが段違いのコスト競争の始まりです。昨日コメントしたBOPの概念を無視できないのはこの点にあります。 もうひとつは、米国やヨーロッパの企業は、日本と同様に頑張り方を覚えて来た。つまり、戦略+オペレーションエクセレンスの合わせ技になってきたのです。日本だけで物事を考えても、海外の企業にシェアを取られるかもしれないし、海外に進出したら段違いな価格競争と戦わなければならない。 従来のように戦略が無い!といわれて、もっともっと頑張る、といったところで限度があるでしょう。さて、企業のすすむべき方向性をどちらに置くかを考えるときがやってきたかもしれません。 […]

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