早嶋です。
言葉は概念的なものであり、表もあれば裏もあります。昔の人は文字に残すことよりも、言葉以外の文脈や全体を持って意を解釈していた次期も日本にはありました。文明は文字が出来てからと解釈する学者さんもいますが、文字が全てを表すというものでも無いと思います。
諺に、「船頭多くして船山に上る」と「三人寄れば文殊の知恵」があります。1隻の船に何人もの船頭がいれば、船は山に上ってしまうようなおかしい方向に迷う様から指図する人ばかりが増えても物事がうまく進まないことを示します。後者は凡人でも3人集まると、思いがけない知恵が浮かんでくるというニュアンスです。
一連のみずほ銀行のことです。2月28日に、ATMの通帳が出てこない問題から9月30日のシステム障害で外為取引に遅れを生じるという問題まで、実に8回ものシステム障害を出しています。
そもそも2002年11月に大規模なシステム障害を起こし、2019年にシステムを刷新しています。その勘定系システムはMINORIと称され、全面稼働しました。しかしそれが端を発し、システム障害のオンパレードになっています。
過去を遡ると、金融業界ではバブル崩壊により国際競争力を得るための規模の拡大が必要不可欠とされ都市銀行の再編がはじまりました。2001年に旧三井銀行の流れをくむさくら銀行と住友銀行が合弁して三井住友銀行が発足。2002年には第一勧業銀行と日本興行銀行と富士銀行が合弁して、みずほ銀行が発足。2006年には東京三菱銀行とUHJ銀行が合併して、現在の三菱UFJ銀行、当時の三菱東京UFJ銀行が発足しています。こうして3大メガバンクができたのです。
しかしながら、船頭多くしての状態になっているのは、3つのメガバンクの中でみずほ銀行だけ。なぜ、他の2行は文殊の知恵になっているのでしょう。
それらは勘定系システムの統合の戦略に因果があると思います。大きな銀行が合併した場合、システム統合の方向性は2つに分かれます。1つは、全く新しい情報システムを構築して、ゼロベースにして、それぞれの銀行が既存システムから新システムに移行する方法です。そして。もうひとつは何処か1つの既存のシステムに他の銀行が移行するやり方です。
三菱UFJ銀行の場合は、旧三菱銀行のベンダーだった日本IBMのシステムに寄せられます。三井住友銀行の場合は、旧三井銀行のベンダーだったNECのシステムに寄せられます。そしてみずほは、旧みずほ銀行、第一勧業銀行のベンダーだった富士通のシステムに寄せられました。しかしMINORIは、2002年と2011年に大規模なシステム障害を発生させたため日本興業銀行のベンダーだった日立製作所、富士銀行のベンダーだった日本IBMが富士通とともに開発。そして、ぐちゃぐちゃな状況に更に(ここは推測)NTTデータが中に加わり4社のマルチベンダー体制での開発に至りました。
当然、それぞれのベンダーは日本、あるいは世界を代表するシステムインテグレーターで開発能力はピカイチでしょう。しかし、ここが仇となったのではないでしょうか。小さな案件の場合はマルチベンダーのメリットが出る可能性は高いでしょうが、大規模の案件になればなるほど、マルチベンダーになると意思疎通が悪くなり結果的にデメリットが全面にでたのです。
本来は、各システムのアルゴリズムは決まったルールに基づき、互いがコミュニケーションできる思想で設計しているはずです。しかし規模が大きくなりすぎて、見解の違いなどが生じました。統合のたびに小さなテストを繰り返してミスがでないようにするのが通常ですが、およそ期間が短いなか突貫が続く体制で、4社が入り混じり、その下請けもぐちゃぐちゃになり、結果的に必要な業務の漏れや手抜きなどが頻発した(ここも推測)のではないでしょうか。
大手の統合を見ているときも、ニュースでいいおじさんたちが握手をして写真を取っている状況を時々みます。しかし、あの光景は後追いをしても結果が出ているケースのほうが遥かに少ないのです。親分が2人以上集まれば、責任の所在が不明瞭になるのです。
9月30日、金融相の麻生さんは、「システム障害が月1回くらいのペース。利用者にとっては不便で、極めて迷惑な話」と指摘しています。金融庁は一連の障害の要因解明に向けたシステム全体やガバナンス(企業統治)の検査を続けています。それからインテグレーターをIBMに一本化することで、全体の解決を図ろうとしたさなか、今回のトラブル。実に問題の根深さが浮き彫りにされました。
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船頭多くして
2021年10月1日 金曜日
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