早嶋です。
白物家電の価格が上昇しています。日経新聞によれば10年前と比較して洗濯機は9割、エアコンや冷蔵庫は2割価格が上がっているようです。中国や韓国とテレビで競争している時に見向きもされなかった白物家電は今やメーカーの収益源になっているのです。
確かに得に洗濯機はドラム式洗濯機など高級路線に走っているメーカーが多く、家電量販店でも10万円後半の商品を多く見ますよね。白物が値上がりをしている中、テレビは反対に大幅に値段が安くなっています。10年前に比較すると5割下がっているようです。
これの違いは世界的な競争です。薄型テレビは国際競争にさらされ世界敵に価格が下がっているのです。そのため部品は汎用化され電源以外は世界共通。競合も中国メーカー、韓国メーカーなど非常に激しく日本のメーカーといっても技術優位に立てないため価格で勝負するしか無い業界になったのです。
白物家電が競争にさらされずむしろ単価が上がった理由は大きさと重さです。洗濯機や冷蔵庫は大きくて重たい。そのため完成品を輸入するコストがかさむことから海外勢が参入しにくかったのです。そこでガラパゴス日本の独特な品質追求のモノづくりが始まり、それが世界競争にさらされなかったのでメーカーは利益も確保し続けた。というのが背景です。更に国内の白物家電を作っていた東芝は一連の低迷で家電を整理した結果、パナソニック、日立、三菱などが大手として残り競争が緩やかになった背景もあると思います。
今後の白物はどうなるでしょうか?日本の可処分所得は低下していて白物家電の価格が高くなると、考えられるのは買い替えサイクルの長期化です。仮に価格が2倍になって、サイクルが2倍になったとしたら、人口は減っているのでメーカーは苦しくなります。実際、これだけ高機能が揃うとそろそろ天井を打ってもおかしくない時期かもしれません。
では、国産白物メーカーは、商品を海外にもって行けるか?ですが、難しいでしょう。一つは同じ理由で重さと大きさで、完成品を運ぶにはコストがかかります。もう一つは、機能が充実している高級白物家電を日本人は買いますが、海外、得にアジアの金持ちは白物家電を使わずに家政婦を雇っています。そのためわざわざ家政婦のために投資をしないため白物家電は日本独特の市場になっているのです。
大型白物家電の特需。令和になって緩やかに縮小することでしょう。
2020年1月 のアーカイブ
高級白物家電の限界
人材育成を阻む日本の現状
早嶋です。
追い越せ追いつけの時代はトップの国や地域や企業を模倣すれば良く、誰かが考えたことを正確に早くコピペすることで富を得ることが出来ました。しかし今は目指す姿がなく皆混沌としています。しかも矢継ぎ早に技術革新が起き業界構造が大きく変わりキャッチアップするのが大変な時代です。
そんななか、人材育成の手法は大きな変化もなく、職務を度外視した新入社員大量採用に重きを置き、戦略なきままに様々な経験を積ませてから配置を考えるという手法が蔓延しています。そして育成の手法も専ら育成能力を得に持つわけでもない先輩社員が名ばかりのOJTを繰り返すのみです。
内閣府の2018年度経済財政白書によると日本企業は1人あたりの人的資本投資の2/3をOJTに費やしています。人材教育はOJTとOFF-JTと自己啓発の3種類があります。中で企業が投資して行う人材育成はOJTとOFF−JTです。
OJTに力を入れているということは社外研修や職場を離れた研修に大きな後れを取っていることを意味します。厚生労働省の2018年労働経済分析ではOJTを除く企業の人材育成投資のGDPに占める割合を調べています。米国は2%弱、フランスは1.8%程度、ドイツは1.2%に対して日本は0.1%と極めて低い割合です。
企業にとって人材育成は将来の事業ポートフォリオ実現のための大切な手段です。過去の能力や知識を常に刷新し続け人材を強化することが企業の稼ぐ力や競争力を増加させることにつながります。しかし日本企業の人材育成は世界基準でみると明らかに後進国なのです。
では、なぜこのような状況になっているのでしょうか。考えられるのは企業戦略が脆弱なことです。経営者は常に将来の事業に投資をして、将来のキャッシュフローを増大させる責務があります。しかし多くの経営者は短期敵な思考で自ら既存のポートフォリオを変革することを積極的に行いません。人材戦略は企業戦略に紐づくので結果的に人材への投資もあまり考えられていないのです。
次に考えられるのは人事部門の専門性の低さです。グローバルカンパニーでは、人事の専門知識や学位を持つ人材が担うのが当たり前ですが日本は違います。言葉は悪いですが人事の知識や経験が乏しい素人がたまたま配属されて過去の模倣を繰り返すだけなのです。したがって未だに新入社員を採用して接遇研修や読み書きそろばんのようなトレーニングを繰り返すことに時間と資本を費やしています。
日本にある独特の人事制度も関係すると思います。年功序列や入社年次による雇用管理システムです。経済成長していた頃は、事業拡大とともに新しいポストが生まれました。そのためある程度仕事をしている人はそのポストにつかなければ仕事が回りませんでした。しかし成長が低迷してもその仕組が残っています。役割が変わらないのに年齢と共に役職が付き評価が高まるという実に不思議な仕組みです。
厚生労働省の2018年賃金構造基本統計調査によると日本企業の男性社員の賃金ピークは50歳前半で約43万円/月です。これは25歳後半の賃金の1.7倍に相当します。この悪しき制度がはびこるあまり若手が能力を発揮しても評価されないし、若手の能力を積極的に活用する思想も乏しいものになっています。もっというと能力に関係なく年齢で評価がなされるため何もせずに年を取るのをじっとまつ忍耐力の強い社員が増えるばかりなのです。
伝統的な日本企業は今でも戦後の新卒一括採用、大量雇用を信じています。そして信じられないことに職務を明確にしないままに未だに雇用を続けています。明確な人材育成方針が無いのは一般に幅広く経験を積ませてから配置を考えるという30年以上も前の考え方から脱しきれていない部分があるのです。
このような環境では間違いなく尖った能力を持つ人材や高度な専門性を持つ人材は育た無いでしょう。仮に職務を明確にして専門性の高い人材を一本釣りしようとしても、労働組合が許しません。自分たちよりも年齢の低い社員の給与が自分たちよりも高いことが理解できないのです。
こう考えると日本の組織は将来に渡って構造的に良くなる気配がしませんね。本来、現在のような環境下では職務を明確にした上でその能力を有する人材を採用するという手法に変えないと生き残れません。当然、その前提として企業は明確な進むべき方向性を明らかにして、達成のために不足する能力を採用と育成によって埋めていく考え方に転換することが重要です。今の考え方を変えない限り、今後も状態が良くなることは無いでしょう。
行動観察
原です。
グループインタビューやアンケートはよく活用される重要な手法なのですが、万能ではありません。そのため、司会者が正しい質問を行ってもニーズやノウハウ、課題の抽出には限界があります。そこで、限界を突破するために追加して有効な手法が「行動観察」です。
行動観察が有効な理由は2つあります。
1つ目は、「言語化されていないニーズやノウハウ、課題を抽出できることです。人間はほとんどの行動を無意識に行っています。ハーバード大学ビジネススクールのジェラルド・ザルトマン名誉教授の「心脳マーケティング(ダイヤモンド社/2005年)」によると、人間の行動のうち、自分で認識しているのは5%程度しかないと述べられています。
つまり、人間は自分自身の何気ない行動をすべて把握しているわけではないです。
さらに、自分のニーズを構造的に解釈して理解しているわけではないです。そのため、重要なニーズが存在していても、本人がそれを把握しているとは限らないです。行動観察では、人の行動をすべてつぶさに観察することにより、本人が認識していないニーズなどを知ることができます。
2つ目は、社会通念によるバイアスを排除できることです。アンケートやインタビューにおいては、社会的に「こうあるべきだ」と思われている方向に回答が影響されがちです。例えば、「日頃から料理をしていますか?」とアンケートやインタビューで聞くと、ほとんどの人は、「はい、料理をしています」と答えます。しかし、行動観察を行えば、日頃から料理をしているとは思えない事実が分かってきます。つまり、行動観察とは、社会通念に反する実態であっても把握でいるのです。
続いて、行動観察のステップについてです。行動観察のステップでは、現場に足を運んでそのフィールドでの人間の行動を詳細に観察し、実態を把握します。その場で気づいた事実について詳細なメモを作成します。
筆者は、グループインタビュー前には顧客モニターに商品の実体験を行って頂き、体験時のモニターの行動を観察します。気になった行動内容についてグループインタビューでヒアリングしながら深堀りしていきます。
例えば、司会者が「体験中、待っている間が退屈そうでしたね?」と質問すると、顧客モニターの方からは、「そういえば、あの時そう感じました。待ち時間がとても退屈でした。」などの本人が気づかなかった潜在的なニーズや課題を発見することができるのです。発見後は、グループインタビュー後のテキスト分析、分析結果後の改善策の提案というステップとなります。
エンゲージメント
安藤です。
エンゲージメントは、アップルやグーグル、ディズニーやザッポスなど、世界の成長企業が導入しています。
最近では、離職防止・生産性向上・組織の可視化・働き方改革・マネジメント力向上などを目的に エンゲージメント向上に取り組む日本企業も急増しております。
また、現在既におこなっている1on1や研修における効果測定および改善のために、エンゲージメントの可視化に取り組む企業様も数多くいらっしゃいます。
エンゲージメント(従業員エンゲージメント)という言葉が、従業員の状態を把握する概念として日本に展開されてから約10年程経っています。従業員エンゲージメントとは、企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識をもっていることを指します。言わば、組織の目指すゴールに対する「自発的貢献意欲」を意味します。
従業員満足とは違います。相違点としては、従業員エンゲージメントは、会社が目指す方向性や姿を物差しとして、それらについての自分自身の理解度、共感度、そして行動意欲を評価します。しかし、従業員満足の場合は、所属する組織、職場の状況、上司、自身の仕事などについて、「従業員が自身の物差し」で評価します。
今までは、従業員は会社の帰属物であり、「会社・組織側の適切な施策により達成可能」という考え方がありました。これからは、従業員は、個々に経験や能力、スキルや意欲、興味関心を会社の成長ベクトルに向けていかに投入してもらうかが重要となってきます。そのためには、組織も魅力ある組織になっていくことが求められます。
ストレスマネジメントとエンゲージメントの関係については、取り組む仕事にストレスを感じない⇒興味・関心⇒ジョブクラフティング⇒エンゲージメントという流れになります。ジョブクフティングも最近のキーワードです。指示型でなく、仕事を自分で再定義・再構築していくことです。エンゲージ度を高める基本は、ジョブクラフティングです。
そして、これからの人材マネジメントにおける最大の焦点は、エンゲージメントです! 仕事の意義を議論し、よりよい方法を創造する雰囲気があり、シナジー効果を広げるという風土をどう構築していくかが重要になってきます。
エンゲージメントの促進には、上司との人間関係、上司の人間性が部下のエンゲージ・レベルと強い関係を持つと言われています。
エンゲージメントの促進などにご興味・ご関心のある方また、気軽に弊社にご相談くださいませ。
歯科医院に学ぶ本気の経営
高橋です
毎月この1か月間にお会いした人、会社の中から、私が選ぶ The most impressive Meeting(最も印象に残る出会い)を皆様にご紹介してまいります。
今月のテーマは「歯科医院に学ぶ本気の経営」です。
今回ご紹介するのは、開業して6年目あっという間に地域売上NO.1を達成し、すでに2店舗目を開業された歯科医院です。
この歯科医院の特徴は、医療機関でありながらその辺の企業よりはるかにビジネスリテラシーが高い点だと、私は思います。
まず「ビジネスリテラシー」について説明します。リテラシーとはその分野に関して知識や教養があるという意味です。「ITリテラシーの高い人材を育てる」や「日本人は金融リテラシーが低い」などの使い方をします。
「ビジネスリテラシー」とはビジネスにおける知識や教養という意味です。今回は➀対人スキル②ロジカル思考➂コミュニケーション力に分解し、この歯科医院の特徴をご紹介します。
➀対人スキル
この医院では徹底的な顧客志向を目指し、癒しとおもてなしを理念に掲げ全てにおいて実践しています。理念がお題目で終わっている医院や企業が多い中、この医院ではまさしく徹底しています。まず医院のしつらえ、インテリアが歯科に見えません(笑)カフェと見間違えるほどオシャレな空間と音楽で患者がくつろげるようにしています。また接遇マナーの講師による研修を継続的に導入し、スタッフ一人ひとりがおもてなしの接客を体現しています。歯科に来た気がしない心地よさ、自分が大事にされているなぁと実感できる、スタッフの対人スキルが高くなければできないうれしい体験です。
②ロジカル思考
この医院では、きわめてロジカルにマーケティングを行っています。すなわち商品戦略と顧客管理システム(CRM)の導入です。
商品戦略は他と差別化できる商品(施術)を開発し、いかに顧客に届けるかという戦略です。この医院では他の医院にはない画期的なホワイトニングに強みを持っています。スタッフも自信を持って勧めることができ、患者も満足しリピート率が高いので、医院の売上に貢献しています。そして定期的にキャンペーンを打つことでホワイトニングの顧客数を増やしています。
CRMはキャンペーンのみならず強力なツールになっています。CRMとレセプトコンピューターが連動し、患者一人ひとりの治療内容や履歴、前回来院時期、ホワイトニング購入履歴はもとより、直前キャンセルの履歴やキャンセル連絡の有無まで一覧表示されます。どの患者に、どのようなインフォメーション(キャンペーン情報や定期健診)を、どのタイミングで、どのように(ハガキかメールか電話か)出すか、患者毎に最適化された情報がCRM上に毎日ポップアップされますのでモレがなく、負担は最小限に、その分治療や顧客対応に時間と労力を向けることができるので、効率が良くスタッフの生産性が高いのです。
➂コミュニケーション力
そしてこの医院の特筆すべき点は、スタッフ全員参加のミーティングにあります。私はこのミーティングを見学させていただき本当に驚きました。「ダラダラ時間のムダな会議」「結局何も決まらない会議」などよく聞かれますが、それとは真逆の会議です。スタッフが主体的に取り組み、医院の今後の戦略、課題の発見と解決策の話し合いを進めます。全員が付箋を持ち、短い時間で意見を書き、張り出し、議論し、決定する。「共有→発散→収束→決定」という会議4サイクルがにこやかな雰囲気の中にも真剣に行われる会議を目の当たりにしました。
目指す方向が一つで、チーム一丸となって進む組織だからこそできる会議です。スタッフ間のコミュニケーション力の高さが際立っていました。
院長曰く「このような医院にすぐ成れたわけではない。たくさん失敗もして、人の入れ替わりに悩んだこともあった。でも理念を実現するためにあきらめずに続け、ようやく結果がついてきた」とのことでした。まさに、院長が本気で経営に取り組んだ結果でしょう。
『厳しいプロは、高い目標を掲げ、それを実現することを求める。』 (現代の経営)
『挑戦の大きなものでなく、容易に成功しそうなものを選ぶようでは、大きな成果はあげられない』(経営者の条件) by P・F・ドラッカー
セールスプロセス構築、営業研修、会議改革、人材育成、チームビルディングなどにご興味ご関心のある経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
2019年の国内新車販売台数
早嶋です。
自動車の業界団体が発表した昨年2019年の国内新車販売台数は軽自動車を含めて約519万5000台でした。
1990年が780万台、1996年で729万台。1998年から600万台を割り587万台。それから2005年までは580万台代を維持していましたが2008年に一気に470万台まで落ち込みます。その後、2013年まで緩やかに販売台数を伸ばし569万台が直近のピークです。
紙面では災害や消費税増の影響を指摘していますが全体の傾向としてやはり販売台数は減少傾向です。
ブランド別にみると好調な企業はトヨタで前年比でトヨタが2.6%増、レクサスが13.2%増、ダイハツが1.9%増です。他ブランドは軒並み販売台数を落としておりスバル11.6%減、日産7.9%減とかなり苦戦しています。
政府が示す自動車新時代戦略会議の中(2018年7月)で2030年の次世代自動車普及目標を次のように掲げています。「次世代自動車の新車販売にしめる割合を30〜50%にする。」
世界的には電気自動車を次世代自動車と位置づけていますが、日本はHV車が独自に進化しておりすでに新車販売の比率は4割近くなっています。一方で、電気自動車やPHVは共に1%を切っています。
ノルウェー道路連盟が3日に発表した統計によれば2019年の電気自動車(EV)の新車販売は前年比で3割以上伸びて、新車販売に占めるEVの割合は42.4%と世界記録を更新しています。
ノルウェーは2025年までに欧州で最初にガソリンやディールの販売を禁止する国です。2013年の新車販売に対してのEV比率は5.5%、2018年があ31.2%なので国が総力を上げて目標を達成しようとする意気込みがわかります。
電気自動車の中にEVに加えてPHVも含めた目標を掲げ、HVからPHVにシフトさせ、合わせて充電設備を拡充する。という流れを創るのが日本の合理的な姿だと思います。
ただ、日本は器用貧乏を発揮しており、EVに加え、水素エンジンなどの推進も行っているため結果的に分散していると言わざるを得ませんね。PHVをEVに含めることで、長距離は従来通り燃料で走り、燃費が落ちる短距離や市街地の移動を電気で動くことが実現できます。また、懸念されているインフラ整備に対しても燃料と電気の両方が使えることで無理なく投資が出来ると思います。
歴史は繰り返す④ 二極化と保護主義
早嶋です。
2000年頃と比較して政治、経済、社会、文化、技術、地政学など全ての面で世界は変化しています。気候変動や環境破壊、それに伴う飲料水の不足、マイクロプラスチック問題、移民の増加、少子高齢化、所得格差、ポピュリズムや原理主義の台頭、テロの脅威など枚挙にいとまがありません。
そして『歴史は繰り返す①②③』でコメントしてきたように世界中の民主主義国家が上記の問題に対処出来ないとみなされはじめています。その結果、ヒトやモノの移動を極端に制限する保護主義が台頭しています。そしてその推進と共に独裁的な政府が次々に誕生しています。米国、ブラジル、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどの民主国家でも確実にこの傾向を確認できます。一方でスーダン、チリ、エクアドル、ボリビアでは不満を募らせた国民が反乱を起こし全体主義に基づく政治基盤が崩壊している状況も観察できます。
どちらの場合でも問題の本質は問われず放置されたままで、変わり民間も公的債務も膨れあがり記録的な水準にまで達しています。各国は中央銀行が超低金利状態を維持して破綻しないように援助をひたすら続けるのみです。
得に欧州の国々では顕著です。経済成長の急速な失速により未来の雲行きが怪しくなっています。これに米国の独裁的な動きが加わり、従来の米国を頼る防衛が成立しなくなっています。結果、英国のEUの離脱、ハンガリーやポーランド、そしてオーストリアなどのポピュリズム政権が盛り上がりを見せています。
これは非常に危険な徴候です。独裁制が不健全であることは皆が知っている史実です。民主主義と異なり少数の限られた人々によって意思決定が繰り返されるため最終的には多くの過ちが起こるのです。また、社会が豊かになれば中産階級が自分の財産を保護する傾向が強くなり独裁者の恣意的な意思決定に意義を唱えたくなります。いずれにせよ長期間続く独裁制は少ないのです。
上述した現象は日本にも多大なる影響を与えると考えます。保護主義による国際貿易の縮小は経済に打撃を与えます。国内では少子高齢化、女性の社会的な地位向上、エネルギー源の確保、北朝鮮などの脅威など複数の厄介な問題を解決する必要があります。
従来は米国が世界の警察の役割を担っていましたが今後は頼りに出来なくなります。米国の内向きな態度はトランプ大統領が別の大統領になっても続くでしょう。日本は日米安全保障条約の有効性を確認し、自国の防衛をゼロベースで見直す、地政学的な敵国に対しての抑止力を真剣に検討すべき時期にあります。
戦後70年日本は米国の顔色を常に伺っていましたが経済活動の中心は大西洋から太平洋に移動しています。中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなど隣国と友好関係を強めることは太平洋からの利益を得る必要条件です。そして引き続き日本が持つ技術、得にロボット工学やナノテクノロジーなどの先端技術に投資を続けることも大切です。
これらの技術を破壊を促進する方向に用いてはいけません。あくまでも全体を包括した、将来に意味のある技術としての活用が望まれます。それは今を生きる発想から、次世代の利益を守るための行動に切り替えることです。簡単では無いでしょうが、皆がそのような行動に切り替えることができれば地球は素晴らしい環境を維持する可能性が高まります。国や地域、企業や個々人が自分の子供や孫の世代のことを考えて思考して行動する。そのための先進国の政府と世界をリードする大企業の責務は大きいのです。
ギグ・ワーカー
早嶋です。
ギグ・エコノミー(Gig Economy)は、スマフォ経済によって2つの次元が昔と比較して自由度が高まったことで生まれた経済空間です。時間によるタイムシフト、場所によるロケーションシフトの2つです。このシフトが実現することで、その経済圏にいる人の働き方が変わります。そこで誕生した働き手をギグ・ワーカー(Gig Worker)と称します。
Gigは英語の俗語(スラング)でミュージシャンが単発ライブを行うことをギグと呼んでいたことから、単発の仕事を指す言葉として使われるようになり出来上がった言葉です。
表向きは働き方改革、実際はコストカット等の一つの手法として正社員が行っていた仕事を外注する企業が増えています。従来は一つの仕事を案件単位で請け負ってもらい案件を仕上げていきました。しかし、新たな経済圏により空いているスキマ時間で仕事を担って頂くような外注の依頼が可能になってきたのです。
ウーバーなどはまさにそのような形態で、本業の合間のわずかな時間でも自家用車でタクシーの運転手が可能です。決まった時間や場所に居なくてもスマフォによって仕事の依頼と受注が出来るため従来では考えられなかった自由な労働ができるようになりました。
従来のフリーランスやアルバイトと異なる点は、仕事を提供する側と仕事を受ける側の間にプラットフォーマーが介在する点です。労働を提供する側はプラットフォーマーと雇用契約を結び単発の仕事を行います。派遣のような概念ですが、仕事の単位が数ヶ月とか1ヶ月ではなく単発の仕事単位で互いに自由に仕事の依頼ができるようになったのです。派遣と違って事前の登録に手続きも必要なく簡単に始めることが可能です。
ギグ・ワーカーの利点は自分の好きな時間に自由に仕事が出来る点です。従い、日本でも隙間時間を活用して仕事を行い、給与に加えてお小遣いを得たいという感覚ではじめる人も多いと思います。また、縛られること無く自分の最良で必要な金額を稼ぎその他の自由な時間を自分のために使う。という目的でギグ・エコノミーに参加している人もいるでしょう。子育て中の主婦、家族の介護をしている方、学生など何らかの理由で長時間労働はできないけれども金銭が必要な方からしても良い仕組みです。
一方で、仕事を提供する側からすると同様の仕事を日本人以外の世界中の方々に同時にオファーするチャンスを得ることが可能になりました。限られたエリアで、限られた人材を集めて仕事をお願いするという発想をなくすことができるのです。
当然、ウーバーのように物理的なロケーションがある程度重要な仕事は別ですが、文字の入力やPCを伴う仕事などは時間も場所も関係ありません。そのような仕事に関しては仕事を得たい人が増えれば増えるほど仕事の取り合いになり、結果的に労働単価は安くなるか、単発の仕事であっても過去の仕事の仕方が上手な人にオーダーがいく仕組みが確立されるようになるでしょう。競争が世界規模になり、先進国は多くの後進国の人たちと小さな仕事を取り合うことが予測されます。結果的に時給が下がるという構図が見えてきます。
また、国が進めるように最低時給を1,000円以上にすると経営者は定期雇用という選択肢をしなくなるでしょう。更に同一賃金という概念が浸透すれば割高な給与を支払っている人に対して賃金を下げる格好の理由になります。私は政治家が目論んでいる世界と真逆の方向に経済が進むと考えられます。そこにギグ単位で仕事が発注できるとなると、ますます競争は激しくなるのです。資本家や経営者からするとハッピーな仕組みですが、労働者からすると実に恐ろしい仕組みだと私は思います。
歴史は繰り返す③ 保護と開放の葛藤
早嶋です。
格差は2極化している一方で、世界全体の格差はこの30年でむしろ小さくなっています。定期的に海外旅行をしているとそれは強く感じます。DNA単位で考えると才能や知性の分配は個体単位でみると平等ではありません。強い種が強い種を生み続けるのが生物の定めだからです。その結果個人の能力は必ず不平等を産みます。
完全なる自由社会ではこの出生の偶然による不平等を軽減させる仕組みが問われてきます。そのために教育が社会全体に対して不可欠になります。また才能を持ち合わせていてもチャンスに恵まれない人たちもたくさんいて、ここにもメスを入れる必要があります。
経済を保護するか、開放するか。米国トランプ政権は保護主義を正義とし、英国も離脱を前提としたポピュリズムを推進しています。ポピュリズムは民主主義の一つで善悪の対象ではありません。
中国がWTOに加盟した後、米国は中国に高い関税をかけてきました。米国の民衆の声は、中国の平均的な家庭が利益を生むことに対して反対し、グローバル化は自分たちに取って都合が悪いことと捉えたのです。
貿易、移民、資本が自由に動くボーダレス社会の一瞬を切り取って、ただ今の瞬間だけを見て物事を判断します。教育は平等に提供していても、そのチャンスを掴むためには個々のDNAが反応しないと積極的な学びは起きません。結果、そこの不平等は解消できないのでしょう。
結果的には生物に生じる個体の優劣は2:8の法則に従い、少数派が正しいと感じても完全なる民主主義になれば8割の意見が押し通されるのです。ポピュリズムは中間層の考えや思考を理解できないエリートからすると異常な状態になってしまいます。しかし中間層、ボリューム層からすると快楽を逸してまで将来を豊かにすることなど耐えられないのです。
トランプ大統領が公平な貿易を推進すると、中国は米国を抜きアジア太平洋を牛耳る地位になったでしょう。米国の代表としては当然自国を一番に考えることが正しいとされます。そこに民主主義と共産主義を対比させて敵国を作って民衆からの支持を得たほうが自分にとっても都合が良いと考えるかもしれません。
一方、中国の持続的な成長を考えた場合も限界があります。人口が増え、財政が破綻することも考えられます。しかしそれ以上にエリートの一部が人民の思考や表現を統制するということに無理が生じると思います。過去の歴史は常に人民の革命によって国が生まれ変わっています。
思考や表現の自由が既存の考え方や高度にメスを入れ創造性を育みます。創造性やイノベーションは常に社会を良くしてきました。自由社会は非自由社会に負けないというのも歴史が物語っています。
中国はAIとIoTなどの最新テクノロジーを駆使して中国共産党の監視システムを世界で最も早く、最も効率的に実現して実装しています。しかし自由を求める人間の性質がDNAには宿っています。監視社会は必ず革命を起こす火種になるのです。
メルボルン
早嶋です。
年末の2019年12月25日から30日にかけてメルボルンを視察しました。その時に考えたことや聞いたこと、そして調べたことを備忘録として記します。
時差
南緯37度49分、人口100万人以上都市の中では世界で最も南に位置するメルボルン、オーストラリア大陸の南東部にある都市です。訪問した2019年12月末の日の出は6時頃、日の入りは21時頃でした。メルボルンと日本の時差は通常1時間ですがサマータイム期間の10月初旬から4月初旬までは日本より2時間早く時間が進みます。
地理
メルボルンはポートフィリップ湾を囲み郊外は東に広がります。南東に位置するダンデノン丘陵とヤラ丘陵からポートフィリップ湾にヤラ川が流れ込みます。北西からはマリビノン川が注ぎ、川と支流の西側と北側は平坦な農業地域になっています。旧市街とヤラ川を挟む対岸のサウスバンク地区は超高層ビルが並びます。郊外は人口密度が低く、片側4車線の道路が網目状に通り戸建ての大きな家が広がります。
アクセス
メルボルンを中心にLA、パリ、ロンドンからはいずれも12,000Km以上離れています。メルボルン・タラマリン空港から各種路線が出ており世界でも有数の長距離路線として知られます。成田からメルボルンまでは8,000km強あり直行便があります。
空港からメルボルン市街まではシャトルバアスやタクシーや鉄道などの交通機関が充実しており、いずれも20分から30分程度の距離です。深夜に着く便でも目的地まで安心して向かうことが出来ます。
気候
気候は海洋性の影響が強い西岸海洋性気候に分類されます。ただし想像以上に日によって天気が目まぐるしく変わり、年間を通してはっきりとした四季が感じられなく1日の中に四季があると表現されるほど変化します。到着した日は23時頃でしたが気温は10度くらい。そして次の日の日中は30度を超えていました。非常に乾燥しているため気温が上がっても非常に過ごしやすかったです。
冬季は7月が最も寒く平均気温が6度とオーストラリアの大都市では最も冷え込むようです。近隣の山では降雪はあるものの平地で雪が降ることは稀だそうです。夏期は1月が最も暑いとされ平均最高気温は26度ですが、実際は内陸の砂漠地帯から吹き抜けるフェーン現象の影響で40度を超えることもしばしばあります。ただ日本と違い、そのような日でも朝と夜は涼しく熱帯夜になることは殆どありません。
コンパクトシティ
1850年代、メルボルンはゴールドラッシュに沸き世界中から人が集まりました。このときから多種多様な文化の礎が築かれました。当時の優雅でゴージャスな建築物は補修や修復を繰り返しながら現在の街並みにもフィットするように残されています。
通りを歩くと歴史的な町並みと花々と木々があり、通りは碁盤目状に整備され大きな通りにはトラムが走っています。気候が心地よくのんびりとした雰囲気が漂っています。建物は英国様式の石造りをリノベーションしており、緑が多いことからガーデンシティと呼ばれます。路地裏や川沿い、通りの端々でカフェを楽しむ人が途絶えません。
一方で、オーストラリア第2の都市としての機能は24時間稼働の空港、南半球で最大の取扱量を誇るコンテナ港がありインフラも充実しています。名門校も多数あり高い教育水準を誇り、文化や芸術においてもオーストラリアの中心です。テニス全豪オープン、競馬のメルボルンカップ、サーフィンの世界大会でもあるリップカールプロ、F1グランプリ開催などスポーツ面においても盛んです。
住民の医療費は無料で福祉面もとても充実しています。移民大国オーストラリアの代表都市でもあるメルボルンは25%が移民で占められており、様々は国や地域の人が住んでいます。当然、それらに対応する施設も充実しており様々な国の人にとっても住みやすい都市になっています。
住環境
英国経済誌エコノミストが毎年発表する「世界で最も住みやすい都市」ランキングでは2017年まで7年連続の世界1位、最も住みやすい都市に選ばれています(現在はオーストラリアのウィーンに次いで2位)。同調査は2002年に始まっていますが、メルボルンは常に上位で、ヘルスケア、教育、インフラ部門では常に首位をキープしています。
オーストラリアで最もランクが高いメルボルン大学をはじめRMIT(王立メルボルン工科大学)、モナッシュ大学、ディーキン大学、ビクトリア大学があり、多くの優秀な学生が集まります。
都市インフラは充実しており非常に利便性が高い都市です。しかしシドニーと比較してもまだ住宅は購入しやすい価格帯です。メルボルンの平均的なコンドミニアムはシドニーと比較して6割程度安く、ブリスベンと比較しても3割程度高い価格帯ですから、現状と今後の成長を鑑みるとまだリーゾナブルに感じました。
但し、今後の住宅価格は当然に上昇していくと考えられます。実際、市街地から郊外の住宅地にかけて建設ラッシュが続いていますし。街を歩いていても郊外を移動していても建築ラッシュが顕著です。オーストラリアのファイナンス新聞では年間に住宅価格が2割程度上昇する旨の記事がありました。また直近の1ヶ月で2.3%も不動産価格が上昇していると現地の人から話を聞きました。2017年頃より長期的な低迷は完全に終わり経済が上昇していると地元のコンサルも話をしていました。
因みに2019年1月時点でのメルボルンの賃貸住宅空室率は2.2%で、2018年11月時点の1.9%と比較しても住宅供給が徐々に追いつきはじめています。
食事
外食の相場感は、一人あたり昼は20ドル前後で夜は30ドルから40ドル程度です。気軽に外で外食という感じでは無いでしょうが、時給の最低賃金が20ドル前後ですので食費は日本が異様に安いだけでしょう。但し、コーヒーはどこも1杯4ドル前後で、ワインはグラスで7ドルから10ドル前後だったので嗜好品はお手頃に感じました。
味付けはイギリスと同じで我々日本からするとどこかはっきりしないぼんやりとした味です。乾燥した気候で汗をかきにくい環境なので、日本ほど人が食塩を欲しないことが理由でしょう。したがって全てにおいて塩気が足りないような味付けです。
交通費
メルボルン市内のトラムとバスの料金はゾーン制です。中心街はゾーン1、その周りがゾーン2です。ゾーン1はトラムに限り無料です。ゾーン1からゾーン2に移動する場合はバスやトラムの運賃が4.3ドルです。メルボルン観光をする場合の多くはゾーン1で十分です。交通費を別途支払って遠方に行くツアーに参加する機会を除くと交通費が無料というのは嬉しい限りです。
街中はトラムが縦横無尽に走っており、トラムの駅の間隔も非常に近いためちょい乗りでも便利です。メルボルン市街はなだらかな丘陵地にあり、平地と%
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