柔軟なつながり関係と地域社会

2021年8月5日 木曜日

原です。

地域とゆるくつながる考え方として、最近注目を集めている考え方が関係人口です。今までは、地域と人の関わりとして、定住人口、交流人口というキーワードが注目されてきました。
最初の「定住人口」については、人口減少による限界集落や自治体の消滅危機が叫ばれているので、定住人口が注目されるのは当然のことです。少しでも人口を増やしたいという観点から、UIJターンによる移住を最優先の政策として自治体で優劣が競われることになります。実際、UIJターンの希望者は増えています。
続いて「交流人口」については、すぐに思い浮かぶのが観光です。特徴あるイベントや地域の特産品づくり、コト体験などをうまく組み合わせると観光客増につながり、地域おこしの打ち手になることも多いのです。

しかし、地域についての選択肢が定住人口、交流人口しかないと考えると関わり方が限定されてしまいます。定住・移住は良いことではあります。ただ、定住・移住して、その地域に深く関わるのでなければ、その地域について意見が言えない。よそものにいろいろと言われたくないという考えにつながるのであれば、地域と柔軟にゆるくつながることができなくなってしまいます。
さらに、多くの自治体が競って定住・移住政策を打ち出したとしても、限られたパイ(人口)の奪い合いとなり、どこかの地域の定住人口が増えその他の地域の定住人口が減るというゼロサムゲームとしての限界があることも事実です。また観光をきっかけにその地域に関心を持ち、定住・移住することもあるでしょう。ただ、関わり方というのは観光だけではないはずです。ミレニアル世代などの若者世代では、社会貢献の意識が高まっており、地域へも何らかの貢献をしてみたいとの希望があります。そこで、観光以外の選択肢が望まれるわけです。

このような社会の変化の兆しを反映して、総務省の研究報告書では関係人口という考え方が提唱されました。報告書で関係人口は長期的な定住人口でも短期的な交流人口でもない。地域や地域の人々と多様に関わる者と定義されています。そして具体的な関係人口の種類としては、近居の者、遠居の者、何らかの関わりがある者が例示されています。
関係人口の関わり方の具体例として、特産品購入、寄付(ふるさと納税など)、頻繁な訪問、ボランティア活動、2拠点暮らし、多拠点暮らしを挙げています。
多様な関わり方を自由に選択し、定住・移住でもなく、交流・観光でもなく、地域の仲間として貢献したいという気持ちに沿って行動している人も増えています。
従来は、複数の地域に同時に関わることには否定的なイメージがあったかもしれません。1つの地域に住みその地域に尽くすのでなければ、居住の意味がない。そうでなければ、いい加減だという批判的な考え方です。しかし、2拠点暮らしや多拠点暮らしのように、複数の地域のファンになり、複数の地域に貢献しても、本来、何ら問題はないはずです。これは、社員の兼業・副業を嫌い、1つの企業だけに忠誠を尽くすべきとする従来の考え方と似ています。
また、多拠点暮らしをする人にとっては定住・移住が最終ゴールではないというイメージも分かりやすく伝わります。多様な選択肢があってもいいけれど、やはり最終的に必ず定住・移住してほしいとなれば、真の意味で選択肢が増えたとは言えないでしょう。定住・移住をゴールとせず、探究人としてさまざまな地域を訪れ、それぞれに貢献していく。その生き方にも価値があると肯定されれば、安心してゆるく地域とつながることができる柔軟な社会が創造できるのではないでいょうか。








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