IoTとAIの世界

2017年1月19日 木曜日

早嶋です。

2017年1月の向研会はオプティムの菅谷さんにAIとIoTの実例や今後のことについてのレクチャーでした。オプティムは氏が学生の時に企業した会社でネットを空気に変える活動を行っています。

なるほど、と思ったのは、電気、ガス、水道は国家主導の垂直統合後民間に移行されたインフラで、ネットははじめから民間主導で始まった生活インフラということ。従って、何かと設定だのトラブルがあっても誰に対応してもらうか、或いは機器が増える毎に設定が品雑になっていく現状です。オプティムはこれらをITを使って空気のような存在にする会社だと説明されていました。

2000年代にITとして使われるようになった言葉を菅谷さんは意図的にAIとIoTというセットで代用しているように感じました。

今回のレクチャーでやはり、IoTとAIが絡み合うことでモノの売り方と買い方が劇的に変わることを確信しました。例えばGEのタービンは一声100億円くらいの商品です。当初は100億円で販売していましたが、次はファイナンスの仕組みを取り入れリース販売。近年はGEファイナンスに見切りをつけて、IoTとAIによってサービスとしてのビジネスモデルにシフトしました。これまでのように100億で売り切るのではなく、例えば20億の導入コストを顧客に払ってもらい、後は従量課金にするのです。顧客にとってはイニシャルリスクが下がり設備投資が行いやすくなります。GEに取っては顧客の活動が手に取るようにわかり、それをベースに別の提案ができそこでもチャリンとお金が入ります。

この先行事例はメーカーに取って脅威と感じることでしょう。基本的に今後のハードウェアはイニシャルで買うのではなく、従量課金にシフトすることを予測させる取組だからです。

サービスになると、購入した人は常に最適な状態でハードを使うことができます。これはコンビニのコーヒーの事例を考えると理解が深まります。コンビニ界ではいち早く淹れたてのコーヒーを販売したかったのですが、商品を増やす度にスタッフのオペレーションが品雑になるという悩みを持っていました。そこでIoTとAIです。コーヒーマシンに導入することで、コーヒー豆が無くなる前に、機械メーカーが豆の補てんをしにくるようになったのです。ということは、従来のようにコンビニは紙コップを補てんするだけで機械の難しい管理から開放されて、コーヒーの商売ができるようになったのです。これはサービスのボトルネックでもある人材教育やバイトオペレーションの軽減負担を解決する事例として非常にわかりやすいですよね。(ちなみに既にコーヒーの売上はコンビニの売上のほうが、コーヒー専門店の売上よりも大きくなっています。)

IoTとAIは第4次産業革命ですね。今後のあらゆる産業を劇的に変えますよね、機械化、電力化、コンピューターとロボットの次の姿なのです。

コマツとの取組は、ベテランの職人がデータセンターからネットを通じて現場の若手建機オペレーターに指示をする仕組みです。現場オペレーターが診ている目線をベテラン職人はデータセンタで共有することができ、その上で同じ視覚上に図や言葉を使って簡単に指示ができる仕組みがあります。この仕組を使えば複数の現場の複数の若手職人を遠隔で1人の職人で具体的な指示をすることができます。いきなり機械化はできないような場合、ベテランがこのような仕組みを使ってノウハウを伝授したり、その指示の仕方をディープラーニングしてAI化することになるのです。

農業の事例も面白かったです。佐賀大学と提携をして研究用の畑の上をドローンが飛行します。空中から撮影した畑の画像から、何処に害虫がいるのかを特定して、その部分のみ農薬を散布します。夜中にドローンを畑の上空に飛ばし、紫外線に集まって来た虫に高圧電流をかけて殺すロボットも実用化されています。畑のルンバみたいなものです。農業コストの大部分の原価は肥料と農薬です。このような仕組みを使うことで減農薬野菜としてコストがさがり市場での価値があがりますので農家からすると一石二鳥になるわけです。これまでもYAMAHAが小型ヘリを使って農薬を散布する仕組みはありましたが、これは特定するわけではないので農薬の散布量は減りませんでした。人間は可視光線しか認識できないので、夜間は見えません。でもロボットは昼夜を問わず見ることができるので効率もぐっとあがるわけです。

遠隔医療の事例もありました。患者とドクターがiPhoneやスマートパッドを通じてテレビ電話します。患者は患部を見せながらドクターが初見をするのです。その際、コマツの事例でみたような画像を共有する仕組みを応用して診察を援助します。遠隔地の医療、過疎化の医療、地理的なギャップを埋める素晴らしいアイデアです。現在、これに加えてウーバーのモデルを取り入れているそうです。深夜の休館には、夜勤や小遣い稼ぎをしたいドクターがパソコン状にレディの状態になります。予め登録したドクターの専門性と患者の状況をAIで解析して最も妥当なドクターとマッチングする仕組みをテストしているそうです。これで、風を引いて辛い想いをして病院に行き、何時も待った挙句に数分の診察でまた会計で並ぶという苦痛から解放されることでしょう。

介護の現場では、カメラでの監視にプライバシーを考慮して、AIしか認識できないカメラを導入するというお話をされていました。要は、プライバシーを守るためはじめからモニタを作らずデータ情報のみをAIい取り入れるのです。そして、事前に登録していた状況になった時に、しかるべき相手にテキストやアラームで知らせる仕組みです。これだと24時間カメラで監視されても、その画像そのものが流出することが無くなるのでセキュリティやプライバシーも高まるというのです。この発想はなるほどと思いました。人間がみてわかる信号に変換する必要がなくなるとデバイスが減り、仕組みが更に単純化するので、IoTとAIで仕組みを作る際の視点や思考として非常に参考になる事例でした。

事例を色々お聞きするうちに、日本の人口減少による労働力の確保は、実はそんなに問題にならないなという楽観的な考えが芽生えて来ました。



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