ライン拡張の罠

2009年9月17日 木曜日

シーソーは、片方に人が乗れば、片方が上がります。一方を押せば、一方が沈む。ゼロサムゲームの中では、片方がシェアを奪えば片方がシェアを失います。人の気持ちも、何かを優先すると、片方を失う場合がありますね。



ブランドを付けるときに、タダ乗りには注意!という言い回しがあります。まさに、シーソーの原則です。



例えば、かつて、ハインツと言えばピクルスでした。えっ?と思う方も多いと思います。ハインツはピクルスの会社というポジションを得て業界最大のシェアを誇っていました。その後、ラインを展開する際にケチャップにもハインツを冠したのです。そして今ではハインツと言えばケチャップというのが専ら消費者の頭にある印象でしょう。物語は続きます。シーソーのように片方が上がれば片方が沈みます。業界でシェアを取っていたピクルスの売り上げは低迷して、ピクルスの印象が薄れていったのです。



ポジショニングの観点から考えると、1つブランドを2つ以上の商品に使いこなすと、消費者の頭の中で混乱を招き、結果、そのブランドの力が衰えていくと考えられます。あたかも宇宙空間に存在する惑星が膨張を繰り返しながらいつしか光を失い滅びていくかのようです。ラインを拡張する事で、急激にはブランドの力は弱まらないでしょうが、時間をかけて目に見えない速度で徐々に力を失います。急速に力を失う事が分かれば、手を打つのが早いでしょうが、時間がかかるからこそ、判断が鈍るのです。そして、多くのライン拡張の場合、気付くのが遅かった、という結果になります。



ブランドはあたかも輪ゴムのように考える事が出来ます。伸びるけれども限界があるということです。期待と裏腹に引き延ばすほどに弱くなるのです。どこまでブランドを拡張するのか?経済性を考えるとともに、ブランドの力を考える判断力が必要です。



デルモンテは、果物と野菜の缶詰に同じブランドを冠して販売していました。そこに1種類の果物に絞った商品が登場します。パイナップル缶のドールです。結末は?もちろん、ドールのパイナップルは、またたく間に業界トップに躍り出る事になります。ここでも物語は続きます。気分を良くしたのでしょう。ドールは次に生のバナナにドールを冠しました。するとどうでしょう。ドールのバナナのイメージは消費者の頭にこびりつきましたが、それが故にパイナップルにシーソーの法則が適用されたのです。



では、ライン拡張は誤った選択か?結論は否です。恐らく、誤りではありませんが、多くのトラップが待っています。つまり、罠なのです。ライン拡張を積極的に行う場合、他の競合がブランディングに長けてい無かったり、市場の規模がそれほど大きくない場合、若しくは競合するライバルがいない、ポジショニングを気にしていない、プロモーションミックスを諦めている、場合は有効に働くでしょう。



しかし、一方の商品をブランディングしながら、他方の商品を同じブランドを冠している場合、ブランドが浸透する頃に、せっかく築いたポジションが失われていく結果になるかもしれません。ここはブランドが浸透するには時間がある程度かかる事を考えて、少し気の長い戦略が必要なのかもしれません。



早嶋 聡史(はやしま さとし)





【ビズ・ナビへのお問い合わせ】

うーん、この集団に相談してみたい!と思って頂いた方は、お気軽にご相談下さい。

お問い合わせはこちらから。



【関連サイト】

九州でマーケティングのご相談、法人営業のご相談はビズ・ナビ&カンパニーへ。

お問い合わせはこちらから。



九州で店舗M&A、小規模M&Aのご相談はビザインのストラテジックM&Aへ。

お問い合わせはこちらから。



【関連雑誌】

日経ビジネスアソシエのムック本、スキルアップシリーズ「できる人の実践ロジカルシンキング」(最新号) に戦略思考を担当・執筆しています!

詳しくはこちらから。



コメントをどうぞ

CAPTCHA