ポイント制度

2008年6月23日 月曜日

早嶋です。



航空会社や小売業が販売額や利用頻度に応じて顧客に特典を与えるポイント制度、近年、使途が広がり、擬似通貨としての機能を果たすようになってきています。大手家電量販店などを見ると、ポイントに応じて割引が利いたり、そのまま品物が購入できたりします。このポイント制度、何も考えずに導入していくのは時として危険ではないかと考えます。



そもそも、ポイント制はアメリカン航空が81年にはじめたFFP(フリークエント・フライヤー・プログラム)が発展したものだと考えられます。FFPが導入された背景は、航空業界の特性が考えられます。航空会社の基本的なサービスである空港間の輸送は差別化が難しく、競争市場になるにつれて価格格差が無くなってきました。



そこで、顧客に再び利用して頂くように飛行マイルに応じたマイルがたまるFFPが開始されたのです。多くの航空会社はたまったマイレージとその航空会社の無料搭乗券を交換しています。そして、この交換はコスト構造を考えるとWin-Winの関係になっています。



例えば、A氏がJALのマイルをためて福岡-ホノルルの往復搭乗券を手に入れたとします。これに関してA氏が得られる金銭的メリットは、エコノミークラスで10万円程度です。では、JALはどの程度の費用が増加するでしょうか?A氏が追加搭乗したときに増加する2回分の機内食の費用程度でしょう。もしかすると、通常は多めにつんでいるため実際の増分は無いかも知れません。



JALにとっては空席を空(から)で運ぶよりもA氏に搭乗してもらったほうがCS向上につながるかもしれません。飛行機の運航コストはほとんどが固定費であるため、A氏が搭乗したからと言って燃料費も代わらないでしょう。



つまり、航空会社におけるFFPは次の3つの条件を備えているため上手く機能していると考えられます。



1)競合企業が提供する製品・サービスに格差が少ない

2)企業が提供する費用より、顧客が得るベネフィットのほうが大きく見える

3)固定比率が高い



では、冒頭で危惧した流通業、特に大手量販店でのポイント制度についてコスト面を見てみましょう。流通業では、10%のポイントが付くと顧客が得をする金額は、商品の10%です。しかし、流通業側が拠出するコストは利益に直接影響します。FFPで見たコスト構造と全く異なることが分かります。



航空業界は固定費の割合が高いため、FFPは利益の圧迫要因にはなりませんでしたが、流通業では変動費の割合が大きいため、ポイント制による収益圧迫の可能性は高いはずです。



では、なぜ流通業でポイント制を導入しているのか?おそらく、他の競合他社が始めているから!という答えが返ってくるのではないでしょうか。もう1つは、交渉の幅を持たせるため。流通業では商品の金額を一度下げて、再ぶ元の金額に戻すのはとても難しいです。そのため、付与するポイントの率を変化して調整するのです。実際に量販店では、季節や商品によってポイントの付与率を変動しているところが多いです。



顧客のリピートを狙う!という答えも返ってくるでしょう。しかし、量販店にフォーカスして考えると、ポイント制はそこまでの効果を持たないのではないでしょうか?



実際、ポイント制によって顧客は企業に囲い込まれた!なんて思っていないでしょう。顧客は複数のポイントカードを持っていることが通常でしょう。ヤマダ電機やヨドバシカメラ、ビックカメラと言うように。仮に、ポイントによってロイヤリティーが一時的に増したとしても、たまったポイントを清算した瞬間にいっきにスイッチングコストが低下するでしょう。



今後、ポイント制がEdyのように企業の枠を超えて擬似通貨として交換されるようになればポイント制は企業の収益から必ずしもプラスとはならないでしょう。従来のようにポイントを使わないで死蔵する例も減るでしょうし、ポイントをためなくとも利用できるようになるからです。



ポイント制度を導入する場合、企業の旨みなどをもう少し考えた方がよさそうですね。



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