
ダイバーシティ・マネジメント
2018年8月31日
早嶋です。
ダイバーシティーマネジメントの議論のポイントは、なんと言っても、意味の拡大と選択肢の拡大です。ダイバシーティは様々な解釈があると思いますが、考え方や文化、意思決定基準が異なる個々人を組織化してビジョンに向けて成果を最大がする取り組みです。
その際、当然にある事象に対しての意味の解釈が異なり、様々なアイデアがでてきます。そして、そのアイデアを実現するための行動も考え方がことなるので複数出てきて、結果的に選択肢が拡大されます。
ダイバシティーマネジメントに関わる管理者は、上記を理解しながら、一連のプロセスをマネジメントしながら成果を出すことが役割です。
その際に理解しておくべきは、意味の拡大と選択肢の拡大において、当然にメリットどデメリットが生じることです。ダイバーシティーにおいて、言語のギャップや、文化や価値観が異なる組織をマネジメントするわけですから、同質の組織をマネジメントするよりもはるかに手間やコストがかかります。それらは摩擦となり、組織のプロセスを阻害する要因にもなります。
選択肢の拡大に対しても、組織として集約するための手間とコストがかかります。複数の選択肢が生まれるということは、それだけ検証や意思決定に時間がかかり、やはりプロセスを妨げる要因になります。
しかし、確実にこのようなコンフリクトを解消することができれば、これまでの思考の範囲外で結果を出すことになるので、素晴らし成果が出ることを意味します。これはやはりダイバーシティーの最大の成果です。また、同時に組織はそのような経験と積む過程において学習して更に結束が強いチームになります。この過程で得られる組織の成長も副次的な成果と言えます。
ダイバーシティを今後取り組んでいく組織においては、関わる全社員に対して、上記のようにダイバーシティ・マネジメントを行うことでメリットとデメリットが発生することを理解させておくことも大切です。
イノベーションを起こさない組織
2018年8月24日
早嶋です。
イノベーションを起こさない組織。
ある程度の売上があれば、企業は成長戦略を課す必要があります。特に市場から資金を調達している場合は、株主に対してのインセンティブとして株価を高め、配当を出す必要があるからです。
しかし国内市場は成熟化しています。理由は少子高齢化に代表されるように、母数である人口が減少傾向にあり、かつITのおかげで大きな投資を必要としない社会に変化しつつあるからです。一般には、企業が成長するためには2つの方法しかありません。異業種分野に進出するか、市場を海外に広げるかです。
全車の異業種への進出は、企業にとって新たな取り組みになります。そこで企業は組織的にイノベーションを起こす必要がある。それから、先の持続的な社会を目指すために、今の取り組みをゼロベースで見直さないといけない。と体外的には言っています。しかし、一方で、社内からイノベーションを起こす動きがあれば、前例が無い、そうは言っても直近の数字達成が先決だ、と結局は尻窄みになります。
その理由は、今のマネジメントレベルが結局、新しい取り組み、つまり0から1を創る経験をしたことが無いというのが大きいと考えています。入社した頃はある程度ビジネスモデルが確立されており、10を20にする取り組みが中心だったと思います。そして、いざ経営陣になり、いよいよ過去のつけが効かなくなっても、後数年はなんとかなるだろうという思いから、一歩が踏み出せない。
大きな組織でもまれ、イノベーションを興したくても起こせない。だったら早いところ、その組織を飛び出して、外にでるのも一つです。大きな組織でも実際にイノベーションを興したくても、言い出しっぺがいない組織もまたゴロゴロしているからです。いずれにせよ、今の時代、異端児は貴重な資源なのです。
数字あそびは結構重要
2018年8月17日
早嶋です。
中経のターゲットである利益。トップが10億といえば、経営企画は10億になるような数字を「創る」必要がある。でもって、その組織が強烈にトップダウンであればよいのだが、案外とみんなのことを聞きながら方向を決めるんだ!といいつつ、敢えてリーダーシップを発揮しない場合、結構現場は結構困る。
若手は10億よりも大きな数字を見積もり、現在進行系のマネジメントは10億よりも小さな数字を積み上げる。大きい場合は読みが甘い!とか、コストの中身を理解していない!とか、他のビジネスモデルと自社では特徴が違うので熟慮しなさい!とか。小さい場合は、ビジョンが足りない。視野が狭い。極端な場合は怒り出す。
でも、これってある意味良い儀式かと。少なくとも数字を意識した場合に、それが妥当なのか?という目でこれまでの仕事を離れて会社全体でみてみる。トップや経営陣が真面目に全体間を捉えて議論をしているところに、現場やマネジメントのエッセンスを入れる。少なくともトップがどちらにせよ茶々入れることで、現場はそれ以上に真剣に考え、最終的にはその数字に対してある程度の納得感と自分たちも数字を創るのにコミットするという大きな成果を生むからだ。
今は、コンサルという立場でトップとマネジメントと現場の3方向に出入りして全体を俯瞰できるので良いが、十数年前に現場で数字を弾いていたときは、そんなに全体感なんて持てなかったから、やはりトップにある種の不安を持っていた。従い、その種の不安を払拭して、自分たちもその世界にいくための訓練だよ!と場の勢いをつけることも結構重要な儀式だと思っている。
人生の第二領域
2018年8月16日
原です。
タイムマネジメントの分野では、重要度と緊急度の2つの軸があります。
多くの人は緊急な対応に追われ、バタバタした時間や人生を過ごすことに集中しがちです。
一方、緊急ではないが重要な領域を第二領域と言います。
第二領域は、将来を考えると重要なことだと分かっているけど、緊急なことを優先してしまいがちなため実行しないまま日々が過ぎていく傾向があります。
なので、主体的に計画的かつ優先的に実行すべき領域なのです。
私は、30代後半で働きながら経営に関するビジネススクールに入学しました。当時、ビジネススクールで学ばなければ生活できないわけでもなく緊急なことではありませんでした。
しかし、成熟化やグローバル化していく経済環境を考えると安定に対する将来の不安もあり、30代後半からでもビジネスに関しての学びは必須であるのではないかと真剣に考えました。つまり、私にとっては緊急ではないけど重要な領域だったのです。
当たり前なのですが、自分自身で学費を支出し働きながら早朝と深夜、休日、隙間時間を有効活用して2年間を過ごすことで第二領域の目的を実行しました。
現在では、この2年間の学びをベースに経営コンサルティングや研修講師により、微力ながらも日本経済や社会貢献に取り組んでいます。
人生や仕事の目的が曖昧なまま日々の多忙な業務に対応するだけは、虚しい人生だと思います。
人手不足など多忙な社会だからこそ、目的と計画を考え人生や仕事の第二領域を実行することで豊かな人生を過ごすことが可能になります。
皆さんの緊急ではないけど最も重要な「第二領域」は何でしょうか?
そして、その第二領域の内容は、スケジュールの中に記載されているでしょうか?
そして、スケジュールに記載されていることを実行されているでしょうか?
人生100年時代の新・社会人基礎力
2018年8月14日
安藤です。
平成30年2月に経済産業省が『人生100年時代の新・社会人基礎力』を発表しています。
「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した社会人基礎力『3つの能力と12の能力要素』は重要性が増しています。
そこで、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会とのかかわりの中でステージの各段階で活躍し続けることが必要となり、 3つの能力と12の能力要素はかわりませんが、新たに3つの視点 ①何を学ぶか ②どのように学ぶか ③どう活躍するかについて追記されています。
3つの能力とは、一つ考え抜く力(シンキング)、2つ目は、チームで働く力(チームワーク)、3つ目は前に踏み出す力(アクション)です。12の能力要素は、1)の考え抜く力(①課題発見力 ②計画力 ③創造力)、2)のチームで働く力(④発信力 ⑤傾聴力 ⑥柔軟性 ⑦状況把握力 ⑧規律性 ⑨ストレスコントロール力)3)の前に踏み出す力は (⑩主体性 ⑪働きかけ力 ⑫実行力)です。
「新・社会人基礎力」では、能力を発揮するにあたって、目的、学び、組合せのバランスを図ることで自らのキャリアを切りひらいていくことが位置づけられています。具体的には、どう活躍するか(目的)、何を学ぶか(学び続けることを学ぶ)、どのように学ぶか・組合せ(多様な体験・経験や能力を組み合わせる)です。
『キャリアオーナーシップ』という言葉が使われ、主体性を向上させ、自らの『持ち札』を増やすことでキャリアを切り開いていくことの大切さも記されています。
要は、個の成長と企業の成長のベクトルを合わせることが、生産性の向上が実現可能になり、「働き方改革第2章」で求められていることでもあり、主体性・モチベーションの向上がエンゲージメントの向上につながるということです。
益々、これかの時代、個人には主体的にキャリア開発が求められ、企業には個人のキャリア自律への支援・理解、柔軟な人事制度、人材活用方針、自社魅力の魅力化などが求められていきます。
人材開発、人材育成に活かす外部キャリアコンサルタントによる企業内キャリアコンサルティング、組織にキャリアコンサルタントを養成したいなどのご相談がありましたら、弊社にご相談くださいませ。
学習と勉強
2018年8月9日
早嶋です。
勉めることを強いると書いて勉強。勉強はどちらかと言えば強制的な学びを意味します。強制的であれば苦痛が伴うのも無理が無いですね。子供の時に勉強するのはつまらなかった、すごく自然な感想です。
一方、学問は本来は、好奇心や興味によって内から湧き出る要求が源泉です。知りたい一心で、銭にもならないのに、向学のため向上のために楽しみながら学びます。興味が強いから質問も矢継ぎ早に止まりません。学びそして問う。これが学問の真骨頂ですね。
師曰く。これを知る者は、これを好む者に如かず。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。
既存企業の存続のため、社命によって新規事業を創造する人たちがいます。多くのパターンは、机上で情報収集して、セミナーで情報収集して、自社の環境分析をして、実際に起業している人にものすごい数のインタビューをしています。が、そこには沸き立つエネルギーがなく、なんとなく作業の延長で淡々と行っています。
マネジメントの管理指標の一部の数字を気にして起業の真似事、新規事業の取り組みを行っても、好きで行っている者には到底叶いません。業務時間に創業のことを考える。四六時中、好きで事業のことを考える。そして、それが苦痛とも思っていない。資源の中で最も重要なのが人。そして、その人の中で限りがあるのが時間。その時間を惜しみなく費やす。かなわないでしょうね。
自ら組織を出て起業する者、右も左も分からずに小資本、あるいは自己資本を犠牲にして好奇心で起業する人は兎に角考えと行動を繰り返しています。失敗したらそこから学びブラッシュアップ。成功してもそこから学び更にブラッシュアップ。人から言われた、コンサルが言った。知識を二次情報で得て取り組む人と、好きでやっているため経験を繰り返す中で整理して取り組む人は全く違う。論語の通りです。
学問も起業も基本は創造的な取り組みです。答えはなく、答えを創造して作り上げていきます。性は相い近し、習えば相い遠し。子供の頃は、自分が興味があるものに、時間を気にせずに取り組んでいます。いつしか答え合わせが目的かのうよな教育によって皆が創造性を失い始めました。習う字は白に羽。白は鳥の胴体を抽象化した形で、そこに羽をつけています。ひな鳥が飛ぶための方法を試行錯誤して練習している様がその意味です。
論理思考の落とし穴
2018年8月8日
早嶋です。
論理思考とは思考の展開に対して筋道を立てて、段階を経て判断する思考方法です。ここで言う筋道は思考の展開に対して因果関係が明確で、合理性にあっている状態です。因果関係が明快とは互いに発生する事象に対して原因と結果の関係の疑いの余地がない状態です。
また、合理性にあうとは、その筋に無駄がなく、どう考えても、そのように考えることがごく自然な状態です。それから段階的な判断とはある根拠や原因をベースに結論や結果を導き、それらをベースに更に次の結論の根拠として論点を整理することです。
思考の筋を示すためには、一部にフォーカスしても完全に整理できたとは言えません。従って全体像を示すことが大切です。事象によっては階層構造が深くなる場合もあるので、結果的に一律で何かを示すことが難しくなります。従い、段階的に判断を行うことが必然的に行われるようになります。
ながながと書きましたが、論理思考は結論に対して違和感なく根拠を示せる状態であり、一定の条件が揃えば同じような結論を導き出すことができる思考方法です。
さて、ビジネスにおいての論理思考について考察します。前提が揃い、同一の入力情報に対して一定の結果や成果がでなければ、ビジネスの現場では混乱が起こるでしょう。同じような取り組みに対して、同じような成果がでることで、安定的に大量に顧客に解決策を届けることができます。不安定な状態は、予想外の取り組みが必要になり、その対処に膨大なコストがかかってしまいます。
そのためある程度の知識レベルの人が同じ入力をしたならば、同じような成果を出せる状態をつくることが企業の標準化といえます。そして、そのような仕組みを構築した企業は、安定的に効率よく大量に商品を世の中に提供することができます。
一見すると素晴らしい状態ですが、競争戦略の視点で捉えると、けしてそうとも言えません。企業はミッションを実現するために、ビジョンを唱え、その実現のために日々戦略を立てて術をこなします。その時の経営の尺度の一つである利益は、売上とコストの差分です。従って経営戦略のパラメーターは差別化を図って高く売るか、同じような商品を誰よりも安くうるかによって実現することが可能です。
現在、多くの社会人や経営者が論理思考を身につけています。しかし、正しく論理思考を身に着け、理性的な判断をすればするほど、出てくるアウトプットが同じになるのです。つまり、個性や違いがなくなり、ビジネスの違いが出にくくなるのです。
同じ入力に対して正しい答えを出す技術が、結局はビジネスのコモディティ化を招いているのです。確かに教育の成果としては素晴らしいです。しかし個性という点において論理思考は反対の影響を与えることになります。
マーケティングの概念にニーズとウォンツがあります。ニーズは、現状を好ましいと思わずに、在りたい姿に向けて動きたい状態です。しかし一方で、そのように思いながらも、進んでその状態を解決したいわけではありません。ニーズが満たされていないと、当然解決策があれば受け入れますが、喜んで導入する状態ではありません。従って機能は最低限で良く、できるだけ解決するためのコストも抑えたいと思います。
ウォンツは、現状を悪く思っていません。しかし、更に良い状態にしたいという状態です。既に悪い状況でもないのに、もっとよくしたいと思うので解決策があれば喜んで導入するし、コストが高くても検討します。
従って、ニーズよりもウォンツに目を向けたほうが顧客に対して付加価値の高い商品を提供しやすいです。しかし、市場の多くはニーズ的な部分で満足するため、規模を大きくすることが難しくなるというトレードオフが生じます。
経済学の考え方では、需要バランスによって商品の価値が異なります。ニーズ的な欲求が強く、解決策がなかったときは、ある程度高いコストを支払ってでも顧客はその商品を解決するために導入しました。しかし、論理思考が普及して、皆がニーズに対しての解決策を大量に見出すようになると、その商品が一般化して量販店でも取り扱われるようになります。結果的に価値が下がり、コモディティと化してしまうのです。
考えてみると滑稽ですね。囚人のジレンマのように必死に論理的に解を出す作業を経済活動として続けた結果、皆が同じような解決策を提示して、同じ市場の顧客にリーチするために消耗戦になってしまっているのです。
当然、ここで勝つためには商品軸そのものは同じようになってしまうので、提供するためのコストとスピードが違いを生むためのポイントになるのです。日本企業の強さを鑑みると、コストとスピードは確かに強みの一つですよね。
80年代、ボストンコンサルティンググループは日本の自動車産業においてコストと品質に次ぐ第三の競争コンセプトにスピードを定義し、タイムベース競争論を展開しています。同じような商品がある場合、手に入れるまでのリードタイムを短縮した企業に価値がでるという概念です。また、同じ商品、提供時間であれば、当然に安く提供する企業に価値がでるのです。
整理すると、論理的な思考が蔓延することで、企業が同じインプット、つまり経営環境に対して同じような解決策を示しました。その結果時差はあったにしろ、企業が提供した商品、解決策が同じようになりました。そこで、次の競争の軸をスピードに求め、そして最後はコストにいきつきました。
しかし、この手法も論理的に解釈され、リバースエンジニアリングされ、欧米の企業でも同じように導入された結果、全ての企業が同じような打ち手を提供するようになり、差別化そのものが無くなってしまったのです。
打ち手としては差別化です。ニーズ的な商品で市場が埋め尽くされた今、顧客のウォンツに目を向けて価値を提供することです。しかし、ニーズは顧客が望む最低限の欲求なので、ある程度属性や塊によって共通ですし、基本的な欲求なので分析そのものは苦労しません。
しかしウォンツの部分は、顧客によってことなります。そのために顧客を個の客と捉えて正面から向き合い、個の客の目指したい姿に対して商品を提案することができれば、当然にその個の客は価値を見出すでしょう。
しかしこの作業は非常に手間がかかり、大規模に提供しようとすると、やはり論理思考と標準化の波に押し寄せられコモディティ化します。従って、価値ある商品でビジネスを行う場合は、なかなか規模を大きくすることが難しいのです。
日本文化と感性工学
2018年7月8日
原です。
日本の夏の風物詩の一つに、風鈴(ふうりん)があります。
私は田舎育ちだったので、夏休みになると屋根の軒下に風鈴をぶら下げ、風鈴の音を楽しみました。
大学からは都会で暮らしはじめ、風鈴をぶら下げる習慣はなくなりましたが、帰省中や旅先で風鈴の音を聞くと、子供の頃に聞いた情緒ある風鈴の音や風情までも思い出し、一時的に子供の頃にタイムスリップした気になれます。
このように、風鈴の優れたところは、「わび・さび」を連想させる形状だけでなく、日本人の本来敏感な情緒的な感覚を刺激するところではないかと実感しています。
つまり、風鈴は長く培われてきた日本人独特の和の暮らしへの関心や美意識を呼びおこす作用を持つ「感性を軸とした製品」と言えます。
一方で、日本家屋が少なくなり、マンションや西洋風の建築が増えました。これらの建築物はエアコンが主流であり、日本式に窓を開け放して風を呼び込むということはしません。なので、若い人たちには「風鈴」を知らない人が増えています。
しかし、最近では、古民家を再生した新たなライフスタイルなど、和の暮らしが見直されてきています。日本人がその伝統的な様式に「癒やし」を見出そうとしていることが背景にあります。
私も災害プロジェクトの起案をきっかけに、オリジナルの風鈴作りに取り組んでいます。風鈴を作ったからといって災害への問題解決にはなりませんが、心の復興にはつながるのではないかと考え実行しました。
今後は、心地よい風鈴の音の解析など科学的な領域も取り入れながら、日本独特の美意識について探求していきます。
成熟化した時代では、モノの豊かさよりも、「心地良さ、癒やし、共感」など、心の豊かさが求められます。感性(右脳)と工学(左脳)の融合による新しい価値の創造が「ビジネスモデル、商品開発、サービス開発、政策形成、企画立案」には必要なのです。
成果主義と内的動機付け
2018年7月8日
安藤です。
やる気には、「外発的動機付け」と「内発的動機付け」があるのは周知のことと存じます。
外的報酬(給料や昇給、昇進・昇格など)は、それを得るための行動を強く引き出す。これを『外的動機付け』といいます。または罰を回避するためといった理由ではなく、自ら主体的にやりたくて何かをしようとする意欲のことを『内発的動機付け』といいます。組織で働くいわば社員として活動することで生活費を得ていることは、報酬=『外発的動機付け』が基本です。しかし、1970年代ころ、作業後に報酬があることが必ずしも意欲を高めることにつながらず、むしろ自発的なやる気を低めてしまう可能性があるという知見がでてくるようになりました。
その現象を『アンダーマイニング効果』といい、報酬が自発的に何かをしようという意欲を低める現象のことです。
例えば、ある人が楽しんでいた行動に対し、「うまくできたらお金をあげます」と言って、外発的動機づけを与えると、その行動自体からお金をもらうという金銭報酬にすり替わってしまいます。そうなると、金銭報酬のためには頑張れるものの、その報酬がなくなると、当初感じられた行動自体の楽しさが失われてしまいます。
また、2種類の物体(時計等)どちらかを使ってゲームまたは物事をトライしようとした場合、その際に、自己選択条件(自分で選ぶ)と、強制選択条件(選ぶことができない・強制的に指示をする)の間で比較します。
自己選択条件の場合は、自分で選んで行動したという“自己決定感”とう感覚があると、失敗してもやる気を失わず
次の糧にしようとする心の働きが生まれるパフォーマンスがアップするともいわれています。
要は、創造的な業務に社員が『内発的動機付け』に基づいて取り組んでいる時に、成果主義を持ち込んで『外発的動機付け』に置き換えてしまわないように注意が必要といえます。
人材開発、人材育成に活かす外部キャリアコンサルタントによる企業内キャリアコンサルティング、組織にキャリアコンサルタントを養成したいなどのご相談がありましたら、弊社にご相談くださいませ。
経営とアート
2018年7月5日
早嶋です。
近年、大手企業やグローバル企業の経営層ではアート感覚や美的意識を鍛える取り組みが行われています。その背景に分析、理論、理屈、理性を基軸とした経営や意思決定が昨今の複雑な環境下では意味をなさない場合が出てきたからです。このことをサポートするポイントが3つあります。
1. 論理的、或いは理性的な情報処理スキルに限界が見えてきたから
2. 世界中の市場が自己実現のための消費に向かっているから
3. 急激な環境変化によって既存のルールや規制が追いついていないから
◾論理的、或いは理性的な情報処理スキルに限界が見えてきたから
論理的、或いは理性的な情報処理スキルの限界について説明します。大きく2つの要因があります。
まず、大学機関や研究機関の進歩、或いは企業研修等の発達によって、大勢の経営陣やマネジメント層が論理的な情報処理のスキルを身に着けました。その結果、世界中の経営の現場において、いわゆる正解の氾濫が生じています。論理思考は長らく、経営のツールとして必須とされてきました。しかし、論理的に情報を処理するということは、前提や観察した条件が一定であれば、皆が同じ解にたどり着くことを意味します。結果的に差別化の要素が薄まり、極端な話、どの企業も打ち手が同じになってきます。従って、感覚的な解やアートの感覚を取り入れることをしない限り、この状況を脱しにくくなったのです。
もう一つは、論理的な情報処理のスキルに対して、方法論の限界が見えてきました。VUCAというキーワードを聞いたことがあるでしょうか。元は米国陸軍が世界情勢を分析した際に表現する時に使われた言葉です。Volatility:不安定。Uncertainly:不確実。Complexity:複雑。そしてAmbiguity:曖昧。昨今の時代の特徴を表現する言葉を並べられた造語です。
VUCAの時代は論理的に問題解決をすると、経営に対してミスリーディングを招く可能性が出てきています。従来の前提条件は、問題の発生とその因果を比較的整理して言語化、構造化して理解することが出来ました。しかし、問題を構成する因子が急激に増加して、そしてその因果関係もより複雑に絡み合っています。そのような際は、厳密に現状を整理することが難しく、結果的に問題解決のアプローチが使えなくなっているのです。
VUCAの時代に合理性を求めれば、そもそも整理が出来ないため、いつまでも解が整理できず、結果的に経営の意思決定が出来なくなるのです。そこで、合理性の対局である、モノゴトの全体を、直感で捉え解を導き出す創造的な能力が求められるようになっています。
◾世界中の市場が自己実現のための消費に向かっているから
2000年ころからIT革命がスタートして、2007年頃にスマート革命が始まりました。その頃から急激に世の中の経済が世界レベルで成長しはじめています。昔は、世界規模で成長を遂げている地域や国はほんの一握りだったのに対して、昨今は地球規模での経済成長が観察されるようになりました。結果、多くの市場において自己実現を求める傾向が強まっています。
欲求5段階説の提唱者であるマズローによれば、人間の欲求は低位の欲求である生存欲求から上位の欲求である自己実現の欲求に分類できるといいます。経済成長の恩恵により
人々はこれまでの安全で快適な暮らしを追い求める安全欲求から徐々に集団に属する帰属欲求、そして他者から認めてもらいたい承認欲求と進んでいきます。そして最終的には自分らしさを実感できる生き方を実現したい、自己実現欲求へと進展します。
このように世界的に経済が発展すると精密な企業のマーケティング活動を用いて論理的に機能優位性や価格優位性を説いても人の自己実現欲求を満たすには物足りなくなっていきます。そして結果的に感性や感情、美意識が重要になってくるのです。当然、企業にとっても意思決定の最前線にいる経営陣やマネジメントに対しても感性や美意識を磨くことで競争優位を勝ち得る要因となっていきます。
◾急激な環境変化によって既存のルールや規制が追いついていないから
急激な技術進歩の結果、法律や規制が現実の世界に追いつかない事例が多々観察されるようになっています。法律やルールは、何らかの変化が起こると必ず遅行して制定されます。そのため変化の激しい、そしてVUCAで表せられる昨今は、既に明文化された法律や規制だけを拠り所に経営の意思決定を行えば結果的に倫理観を大きく損ねる恐れがあります。旧ライブドアの事件や一連のDeNAの不祥事はまさに上述を示す事例として考えることが出来ます。
変化が目まぐるしい昨今、法律や制度や規制は、変化に追従する形で常に遅行して議論が開始され、時差を経て制定されます。そんな世界において高い質を維持しながら意思決定するためには明文化された法律やルールだけで判定するのではなく、個人の感覚や美的センスなどを加味することが大切です。
昨今の人工知能の研究を深める企業の多くは、内部に倫理的な議論を進める組織を併設しています。変化とスピードが早い人工知能の世界で経営的な意思決定をする場合、その活用を内部の別の価値観で判断するようにしているのです。このような意思決定を見ると上述のIT会社との格の違いを感じます。
では、再び経営とアートについて考えてみます。アートと捉えると、マーケティングを行う際の広告宣伝のセンスの良さや、商品パッケージの見た目をイメージするでしょう。しかし経営におけるアートは一つ上の視点で捉えると理解が深まります。
例えば合理的で実践的な経営判断の良さは、経済的な利益の追求に加えて、倫理的な側面、企業のミッションに即した判断、従業員の価値を大切にした取り組み、顧客にフォーカスした真摯さ、社会に還元する正しさなど、複数の取り組みを総合的に判断する必要があります。それらの判断基準は全てを合理的に記述して表現することは難しく、ある種の特殊な能力が必要とされます。アートはその側面を持ち合わせた能力なのです。
伝統的な経営はさまざまな経営指標によって管理されて来ました。資本回転率や生産性などです。しかし、これらは全体の経営のごく一部しか表現しておらず、かつ計測可能な側面にしか触れられていません。米国のコンサルタントの1人、エドワーズ・デミングは次のように言っています。「測定できないものは管理できない、と考えるのは誤りである。これは代償の大きい誤解だ。」と。
これらの世界は、本来の日本的な経営に宿った捉え方だったと思います。もともとは個人や組織の判断基準があり、しかしそれが言語化されず、組織で暗黙のうちに守られてきました。そして逸脱した考えは恥という認識で皆が良心を持っていました。この感覚的な部分こそがアートなのです。
参照:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口周著
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