日本文化と感性工学

2018年7月8日 日曜日

原です。

日本の夏の風物詩の一つに、風鈴(ふうりん)があります。
私は田舎育ちだったので、夏休みになると屋根の軒下に風鈴をぶら下げ、風鈴の音を楽しみました。
大学からは都会で暮らしはじめ、風鈴をぶら下げる習慣はなくなりましたが、帰省中や旅先で風鈴の音を聞くと、子供の頃に聞いた情緒ある風鈴の音や風情までも思い出し、一時的に子供の頃にタイムスリップした気になれます。
このように、風鈴の優れたところは、「わび・さび」を連想させる形状だけでなく、日本人の本来敏感な情緒的な感覚を刺激するところではないかと実感しています。
つまり、風鈴は長く培われてきた日本人独特の和の暮らしへの関心や美意識を呼びおこす作用を持つ「感性を軸とした製品」と言えます。

一方で、日本家屋が少なくなり、マンションや西洋風の建築が増えました。これらの建築物はエアコンが主流であり、日本式に窓を開け放して風を呼び込むということはしません。なので、若い人たちには「風鈴」を知らない人が増えています。
しかし、最近では、古民家を再生した新たなライフスタイルなど、和の暮らしが見直されてきています。日本人がその伝統的な様式に「癒やし」を見出そうとしていることが背景にあります。

私も災害プロジェクトの起案をきっかけに、オリジナルの風鈴作りに取り組んでいます。風鈴を作ったからといって災害への問題解決にはなりませんが、心の復興にはつながるのではないかと考え実行しました。
今後は、心地よい風鈴の音の解析など科学的な領域も取り入れながら、日本独特の美意識について探求していきます。

成熟化した時代では、モノの豊かさよりも、「心地良さ、癒やし、共感」など、心の豊かさが求められます。感性(右脳)と工学(左脳)の融合による新しい価値の創造が「ビジネスモデル、商品開発、サービス開発、政策形成、企画立案」には必要なのです。




コメントをどうぞ

CAPTCHA