早嶋です。
日本は成長期から成熟期、衰退期もしくは超低迷期に入ろうとしています。従い過去の常識が当てはまらず、ある意味、今を新しい時代への過渡期として位置づけることができます。
生物の深化と歴史を見ると、大型恐竜が安定していた時代から急激な気候変動が起こると小さな生物が生き残り、大型動物は駆逐されていきました。大型生物は変化に対応する力が弱く、一方で小さな生物は生死のサイクルが短いことを糧に、急激な変化に対しても柔軟に適応していきます。結果、生き残り新たなマジョリティとなりました。その最たる例が人間です。
世の中の経済を見ると、過去の事業モデルで収益を上げていた企業は急激に体力を弱めています。すべての事業モデルが比較的長期を前提として規模が大きな仕組みの中で経済活動を繰り返しているため、混沌とした、そして変化の早い時代背景には、そもそも不適合です。一方、小さな組織や個々人は、変化に柔軟に対応して生死を彷徨いつつも、新たな事業モデルを開発しています。自分たちが小さいがゆえに小さな取り組みを繰り返すことしか出来ず、でもその結果、柔軟に対応できるようになるのです。そして一定数の企業は、次の時代を牽引する新たなリーダーとなるのです。
今、新たな取組をする場合の一つの仮説は、短期間の事業サイクルで、小型の事業を行うことです。短期的な時間軸で投資を回収しながら、矢継ぎ早に次の事業モデルを繰り返す。そして、当たると思った時点で大資本に売却するか、資本を入れて一気に拡大するかを決めるのです。時間軸としては3年程度が妥当なのではないでしょうか。
既存事業を行ってきた大きな組織の人間からすると、3年程度の期間で出口戦略を準備していくこと自体、理解されないと思いますが、そのくらいで事業のリターンを回収することを前提に回す規模の事業ではないと、マクロの変化についていきにくいのです。
当然、上記のような取り組みを行う場合は、事業開発を行え、0⇒1の仕組みを創ることができる人材が必要です。もし、そのような人材がいないのであれば、エリアを絞って、ドミナントで他の成功事例を模倣して行うことも良いと思います。
もし、そのような事業がFCであればエリアを絞って10店舗程度をマックスとして展開するのです。エリアを絞る理由は人手不足を前提とすることです。トレンドはほとんどが短命な今、もしFCのブームが去ってしまっても10店舗程度の事業を3ヶ月ごとに見直して、1店舗づつ別のFC業態に変えることもできます。
3ヶ月に1店舗の見直しで、10店舗あれば30ヶ月程度で約3年です。FCがヒットしたら一気に収益を伸ばす。微妙であれば複数のFCを展開しながらマルチフランチャイザーとして動く。その際、エリアを絞って入れば、人材の活用やプロモーションが効率的に行なえます。
FC事業の多くは立地に左右されるので、上記の仮説は立地を抑えていることがKSFにつながります。
2019年5月8日 のアーカイブ
小規模事業の考察
顧客価値
原です。
顧客中心に考える上で、人間が本来どのような欲求をもっているのかを理解することは重要です。
「人間は何を求めているのか」についてエイブラハム・マズローは人間の欲求を5段階に分けました。マズローの理論は、経営学にも応用されており、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という仮説をもとに作られた理論です。一般には、欲求は下層から順を追って満たされると考えられてきました。
しかし、マズロー自身は、欲求の充足にはさまざまな形態があることも説いています。
マズローの欲求5段階を製品やサービス向けに拡大・発展したのが、ハーバード・ビジネスレビュー(2017年3月号)に記載の「顧客がほしいと思う30の価値要素(価値要素ピラミッド図)」です。
製品やサービスは本源的な価値要素を備えています。それらの価値要素は、「①機能、②感情、③人生の変化、④社会への影響」に関係する4種類の顧客ニーズに対応しています。そして、最も影響力のある価値要素が最上層を占めます。但し、重要度の高い価値要素を提供するには、製品カテゴリーに求められる機能面の要素を少なくともいくつかは揃える必要があります。
例えば、入院患者用の「おしゃれな入院衣」の製品開発事例です。
生産者は、ご家族の介護経験から、できるなら入院している患者さんにも「おしゃれな入院衣を着せたい。おしゃれにより元気になってもらいたい」という想いがありました。地味な入院衣から明るいカラー、花柄のデザインなど「②感情」や「③人生の変化」を重視して入院衣を試作していました。しかし、顧客からは、おしゃな入院衣は着せたいけれど、「①機能」について不満の声が多かったです。おしゃれ以前に、入院患者が着やすく、肌にやさしく、動きやすく。介護者が着せやすく、洗濯しやすい入院衣である「①の機能性」を少なくともいくつかは揃えることが期待されていました。
また、最近の人気商品は、複数の価値要素がさまざまな形で組み合わさっている傾向があります。
例えば、シェアリングエコノミー分野の空き家活用ビジネスは、人気が出てきています。
筆者は、数年前に古民家(空き家)の遺贈を受けたことで、「③人生の変化」が起こりはじめました。
最初は、床下改修、電気・水道の設置、部屋の整理整頓により、複数の「①機能」を満たしました。続いて、平日は都会でビジネス、休日は田舎の古民家の2地域で暮らすライフスタイルにより、自然の癒しや家族と過ごす時間も増え「③感情」を満たしています。更に2地域で暮らすライフスタイルが地域創生などの成功モデルとなることで「④社会への影響」につながるのではないかと思っています。
このように、下層から上位の順番でもなく、上位の価値要素が満たされれば良いというわけではないのです。複数の価値要素の組み合わせが必要なのです。
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