原です。
マーケティング調査でのモニター顧客は、調査対象に関連する商品やサービスについてある程度の情報や経験があります。
おかげさまで、顧客の声を聞くことで、さまざまな価値ある情報を得ることができます。
しかし、目的の達成、その後の戦略・戦術立案に活かそうとするときは、顧客の声を聞きすぎることに、注意しなければなりません。
特にマニアックな人の声を聞きすぎることは危険です。(ただし、マニアックな人がターゲットの場合は例外です。)
マニアックな人は、インタビューで話を聞いていくと、どんどん要望が高度になることがあります。
例えば、調味料開発に関するグループインタビューのケースです。
グループインタビュー参加者の中には、「料理人の家庭で育ち料理もできるし、多種類な調味料のことには詳しい」人がいました。
グループインタビューでは、自宅に保管している調味料の話をはじめました。
調査対象の商品に対する要望も高度かつ厳しい意見を述べます。もちろん、高度な意見や厳しい意見はとても貴重です。しかし、「その商品に詳しい人の意見だから」と安易に意見を取り入れても、売れる商品になるとは限りません。
そういうことから、筆者は、このマニアックな参加者さんに次のような質問しました。この商品を「ほしいですか。買いたいですか。」そうすると、「ほしくない。買いたくない。」と回答されました。理由を聞くと「自宅にある調味料を組み合わせれば、自分でも作れる。調味料を自分で作ることにこだわりがある。」と言われました。要するに、この時のマニアックな参加者さんは、要望は言うけれど買わずに自分で作るのです。結局、要望を聞いて開発しても、その商品を買ってくれないのです。
それに、他のインタビュー参加者さんからは、そこまで高度でなくても良いという意見が多かったです。
このように、詳しい人の声を聞きすぎると、商品がどんどん複雑化・高度化していきます。その結果、売れない商品になることがあります。
戦略立案にあたって顧客の声をどこまで活かすかは、調査側の判断力や戦略的な思考力が必要です。
2019年5月 のアーカイブ
聞きすぎることのリスク
本質的な理由を聞き出せていない
原です。
グループインタビューの司会は、誰でもできると思われているかもしれません。しかし、限られた時間の中で目的を達成するには、ある程度のスキルと経験が必要であると思います。
なぜならば、筆者のグループインタビューに参加した人からは、共通する言葉を頂きます。それは、「原さんのグループインタビューでは、参加者全員が本音で話しているので、学びや気づきが多かったです」。一方、「他の素人司会者によるグループインタビューに参加した時は、グループの中で発言力のある一部の人の意見に偏ることが多かった。でてくる意見の内容が薄かった。テーマから話の内容がずれていた。」などです。
ただ感想を述べてもらうだけなら簡単です。本音や本質的なことまで聞き出すのは容易ではないのです。
因みに筆者は、グループインタビューの技法などのセミナーに参加したことはないです。そのようなセミナーがあるのかも知りません。
筆者は、自ら司会をして顧客インタビューをするにあたり、知人を集めてグループインタビューの練習を繰り返しました。その他ではインタビューに関する本を1冊読んだぐらいです。
もちろん、筆者はコンサルタントなので、1対1や複数人相手の対話は日頃から経験しています。また、研修講師としても10名から30名程の受講者を相手に、考えを伝え受講者の考えを聞き受講者同士の共有を図るなど、顧客の声を聞く基本的なことは、当たり前に身に着けています。
筆者の経験上、相手がインタビューに慣れていない一般モニターの場合、グループインタビュー開始から30分ぐらいまでは、本音はなかなか出ません。発言のほとんどは、商品に対する「褒め言葉」です。「美味しい、ほしい、買いたい」などです。ところが、質問を繰り返していく中で、「美味しいけど、見た目が悪いからほしくない。似たような商品があるから、別にこの商品を買う必要はない。」など本音が出てきます。
もしも、褒め言葉だけを信用していたら、どうなるでしょうか。「自社の商品は、顧客からの評価が高い。改善する必要はない。」などと事実とは異なった判断をしてしまいます。
筆者は、質問の最後のところで価格に関して質問します。なぜならば、価格(Price)は、マーケティング4Pの1つです。価格は、ほかの3P(製品、流通チャネル、プロモーション)の結果としての顧客の納得の有無を問うものだからです。
また、インタビューでは、「ほしいけど買わない」と回答する人が多い傾向があります。
そこで、筆者は、「なぜ、ほしいけど買わないのか(理由)」について聞き出すために、少し工夫して以下のような質問をします。
例えば、「その商品を高いと感じる価格はいくらですか?」、「その商品を安いと感じる価格はいくらですか?」、「その商品がこれ以上高い、または安いと不安に感じる価格はいくらですか?」などの質問です。
その質問への回答が、本質的な理由に近づいてきたら、更に理由を深掘りして具体的にしていきます。
このように、顧客の本音や本質的な理由を聞き出すには、論理的思考(客観的)と創造的思考(直感力)を活用することが必要です。後は、経験により工夫しながら精度を高めていけば、多くの人ができるようになります。
インターネット情報(2次データ)だけの限界
原です。
データ分析ツールの進化によって、顧客の声の捉え方も進化しています。
分析後のデータは、インターネットを検索すれば、誰でも・いつでも・無料または安価で情報を得ることができ便利になりました。
また、POSシステムやポイントカードの普及などにより、顧客データも蓄積されています。顧客がいつ・どこで・どんな買い物をしてきたかは、長年にわたる膨大なデータを分析することにより、顧客動向の大きな流れを掴むことができます。
しかし、POSシステムやポイントカードとはいえ、得られるデータには限界があります。この仕組みで顧客情報を収集できるのは、買い物をした顧客の行動だけからです。例えば、来店して売り場を見て回り、何も買わずに店を出て行った顧客の情報は含まれていません。分析の材料となる顧客の行動は、ほとんどの店では現場の販売員による「肌感覚」でしか掴めていないのではないでしょうか。顧客が「なぜ買わなかったのか。何が不満だったのか。」の理由を分析することも重要と考えられます。
更に購入した顧客からは、「なぜ購入したのか」の理由が分かりません。「この商品で問題が解決できる。助かった。」など満足したのか。「この商品しかないから仕方なく買った。」程度なのか。「もっとこんな商品があると良いのになぁ」の欲求など、顧客の感情や本音は掴むことができません。
例えば、筆者はポイントカードの使用やインターネットから商品を購入します。
毎回、私用で商品を購入するだけではありません。筆者の両親はインターネットを使用しないので、私が代わりに商品を購入することがあります。しかし、データでは私の購入履歴(いつ、どこで、誰が、何を購入など)になっていると思います。「誰が」にズレがあり、正確なデータとは言えないのではないでしょうか。
あるいは、筆者は講師業も行っていることから、人前に立つことが多いです。
なので、顔の肌のケアのため化粧水を使用するようになりました。住居付近のドラッグストアでは男性用の化粧水も少しだけ置いていますが、素材重視という理由から女性用を購入しています。
こういう場合、ポイントカードによるデータからは「男性も女性化粧水を求めて買う人がいる」と分析するだけなのか。「男性も化粧水を購入する人がいる。理由をもっと具体的にして男性化粧水の開発も増やしていこう」と判断するのかが気になります。筆者は、もちろん、理由まで掴んで開発された筆者の期待にぴったりの商品の方を購入したいです。
このように、超大な情報からの分析データは、大きな流れや動向は掴めます。
しかし、顧客の実情にぴったりと当てはまらないことがあります。
つまり、進化していく顧客分析ツールによるデータは、有効活用すべきです。そして、実情にぴったりと当てはまらない部分は、人から人へのインタビューから掴むことが必要なのです。
自分にとってのマインドフルネス
早嶋です。
マインドフルネス。簡単に言えば、「その瞬間に全力を傾けること」でしょうか。MITマインドフルネスセンター所長のジョン・カバットジン博士は「今という瞬間に、余計な判断を加えず、自分の人生がかかっているかのように真剣に、意識して注意を向けること。」と定義します。
最近、好きな言葉に「心は頭よりまさる」というのがあります。誰かがお話された言葉かなにかあの本で読んだ言葉だと思いますが(検索しても出てこない)、我々人間は感情が先に動いて後から頭で考えることが多いということです。
朝起きて、ベランダに出た後は花や木々に水をまきます。その後、飼っているメダカの卵を採取して別の水槽に移します。一方で10日間程度で針子になったメダカを別の水槽に移して育てています。
自宅で朝を迎えるときは毎日欠かさず行っていますが、このときの精神状態はまさに何も考えていなくて、水やりのときは植物と対話をしており、メダカの世話のときはメダカと向き合っています。
マインドフルネスは私なりの解釈は、今に集中するテクニックです。今に集中することで他のありとあらゆることから思考を脱することができるため、たとえそれが短時間であっれも毎日の中にルーティンとして取り入れることで心が豊かになっていきます。
考えると、普段の呼吸や心臓を動かすことに対しては無意識に行っています。しかし、そのことを意識し始めると、呼吸以外のことを考え始めます。過去のこと、これから行わないといけないこと。考えないようにすればするほど雑念が浮かんできます。しかしながら毎朝のルーティンは考えて行うことを超えて行っているため、水やりそのもの、メダカの世話そのものに意識が集中できているのです。
以前は収集癖がありました。骨董(というレベルのものでもないですが)や椅子(無名から有名デザイナーの作品)を調べてはなんとかして手に入れるという遊びです。このときも探しているときや調べ物をしているときは無心にそのことに集中できていましたが、その状態がずっと続くものではありませんでした。
植物やメダカの場合は手に入れてからがむしろ対話する時間が多いですが、骨董や椅子などのカタチがあるものは、手に入れた当初は愛でて楽しんでいましたが、すぐに他のものに目移りしていきました。所有欲というのは、ある意味煩悩を常に最大化する取り組みで、集めても集めてもきりがないものだと思います。
今の私にとって毎日の植物の対話とメダカの世話は欠かせず、今に集中するための大切な儀式なのです。
アンケート調査(1次データ)だけの限界
原です。
多くの企業が顧客の声を聞く調査方法として、アンケート調査に取組んでいます。紙への記述アンケートだけでなく、最近はネットやSNSでのリサーチが増えたこともあり、安価でスピーディに情報を集められるようにもなりました。
情報を収集できる対象人数も多く、集計分析が可能などのメリットがあります。
このように、アンケートはマーケティング上で有効な調査方法の一つです。
一方、顧客の「生の声」を情報として集めたい場合は、アンケートよりもインタビューの方が適していることが多いのです。
なぜならば、アンケートで得られる情報は、記載された質問に対する答えに限られます。特に、アンケートは顧客の気持ちが表れにくいという欠点があります。アンケートへの回答内容は、理由がはっきりと読み取ることが難しいです。理由が分からないと、課題設定が不明確となり課題解決できません。
もちろん、アンケートでも質問項目に理由について問うこともできます。
自由回答欄に「理由」を書いて頂くこともできます。
しかし、記述には時間がかかるため、回答者の負担を考えると理由の掘り下げには限界があります。そもそもアンケートでは、アンケートの回答内容を詳細に書いてくれる人は少ないと思います。
記述内容も文章力や表現力など、書かれた内容がどんな意味をするのか、意図が分かりにくいことも多いです。
例えば、美容関連商品のマーケティング調査のケースです。
「この商品を友人や知人に勧めたいですか」という質問項目があります。あるAさんのアンケートでは、「自分が買わないから、勧めることができない。」の1行だけが書かれていました。この1行からは、結論として「勧めることはできない。」理由は、「自分が買わない商品は勧められない。」が読み取れます。
同じAさんからのインタビューの回答です。「私は、肌アレルギーでは困っていないから買わなくても大丈夫です。しかし、自分の周りには、肌のアレルギーが原因で病院に通っている知人がいます。こんな商品があるよと勧めたいです。」と言われました。このように、インタビューでは、勧めたい理由と勧めたい人物像まで聞き出すことができました。
それから、筆者はグループインタビューの最後にアンケートの記入もお願いします。
アンケートへの記載については、1つの質問事項について1行から2行ではなく最低でも3行以上は記載するようにお願いします。それでも、インタビューでの発言数は多いのにアンケートでは1行しか書けない人もいます。また、インタビューでは明確に発言しているのに、アンケートでは何を書いているのかが分からない意味不明な文章を書く人もいます。
まずは、インタビューの重点項目により、広く深く自由に聞き取る。続いて、インタビューで聞いた重点項目をアンケートで数字により定量的に検証していく。インタビューでは聞けなかった漏れをアンケートの自由欄で補う。
つまり、インタビュー(定性調査)とアンケート(主に定量調査)の両方で調査することにより、顧客の声を聞き取る「限界の枠」が広がるのです。
顧客の声を聞いても、その後の活用が分からない
原です。
顧客の声を聞くことが重要だと知っているけれど、「顧客の声を聞いても、どう活用したら良いのかが分からない。」こんな声を企業から聞きます。
マーケティング調査は、インタビュー調査などを分析して価値を把握し戦略に生かすためのものという認識が薄い傾向があります。「情報を集めれば何とかなる」と無意識のうちに感じているのではないでしょうか。
そもそも、顧客の声を聞くことが目的ではなく、顧客の声から企業や商品の課題解決となる方向性を導き出すことが目的です。つまり、マーケティング戦略・戦術立案のために行うことが前提です。
「戦略・戦術」などというと、難しく聞こえてしまうかもしれません。
もう少し分かりやすく言えば、「目的を達成するために、どのように行動するかを定めたもの」です。
マーケティング戦略・戦術の「目的」は、「商品とお金とのハッピーな交換」です。ハッピーな交換とは、企業は価値を顧客に提供し、顧客から利益を享受します。
企業としては、「どのような顧客に、何の価値を、どのように提供する」のマーケティングの考え方が必要です。
だから、2章1項3で書いているマーケティングの視点で調査し、考えながら整理したものがマーケティング戦略・戦術(目的、方向性、どのように行動)となります。そして、企画書や計画書に言語化された仮説をベースに、実行して仮説の検証を繰り返すことで目的の達成を目指していきます。
筆者は、若い頃から企業の経営計画書策定支援に取組んできました。
どんなに業績が良い企業でも、どんなに顧客の声を聞き高度な分析を行っても、100%予測できる計画などないと思います。
ですが、顧客の声を聞くことは当たり前のことです。せめて、当たり前の調査から考えた戦略を立案し、後は実際に行動しながら市場や顧客の反応を見ます。そして、計画を修正すべきは軌道修正していきます。
インタビューなどのマーティング調査の結果、当初の計画(仮説)は実行する必要はなかったという判断になることもあります。
例えば、老舗の靴の小売販売業のケースです。
4代目社長は、デザイン性の高い靴の小売販売店を経営しています。顧客の健康を考え、機能性とデザイン性が高い伝統的な履物の開発を真剣に考えています。
そして、思い描く履物に近い商品を仕入れ研究しながら、和洋折衷の履物を開発する計画を立てていました。
また、製造を委託でいる業者も探していましたが、なかなか見つからない状況でした。そのような中、弊社がマーケティング調査を依頼されました。
ところが、日頃から着物を着て生活しているような和好きな顧客からは、和洋折衷の商品は全く受け入れられない結果となりました。また、和重視の方が、健康への機能性を高めることができ、製造委託できる業者も見つかりました。
結果的には、自分が目指しているデザイン性と機能性が高い製品づくりへのゴールが見え始めました。次のステップは、第一号のプロトタイプ(試作品)作りです。そして、顧客の声を聞きながら、プロトタイプを修正し完成品を作り上げていけるのです。完成してからの顧客探しではリスクが大きいですが、作りながら顧客の声を戦略に反映していくことでリスクは軽減できます。
このように、完璧な戦略を立案することではなく、「顧客の声を聞きながら、その時点で最適な戦略を軌道修正し、判断の意思決定と行動を続けることが大切です。
調査会社に委託すればお金がかかる
原です。
調査会社に委託すればお金がかかるからと顧客の声を聞くことを諦めている企業があります。
あるいは、企業が自社内で社員にインタビューすることもあります。効果は、社内の人に関心を持ってもらえるメリットがあります。しかし、企業担当者自らのインタビューは、インタビュー内容の客観性が薄くなるなどのリスクがあります。
そのようなことから、多くの企業で行われている製品開発や商品販売にあたってのインタビュー調査は、調査会社が請け負って実施することが主流だと思います。
製品開発の投資が大きければ大きいほど、外部のプロに任せたほうが安心、手間が省けるなどのメリットがあります。ただし、当然のことながら費用がかかります。
グループインタビューを頼むと、概ね1グループ50万前後かそれ以上かかることが一般的です。商品数やグループ数を増やしていけば、数百万円になることもあります。
マーケティング調査は労力がかかる仕事なので、これくらいの費用がかかってしまうことは仕方ありません。とはいえ、中小企業では、気軽に実施できる金額とは言えないでしょう。大企業でも何度も実施ということは難しいでしょう。
しかし、費用がかかるからとはいえ、事前に顧客情報を把握せずに製品開発などを進めることは、結果的に非効率と言えます。
顧客の声を聞かないのはもったいないだけでなく、思わぬ失敗を防ぐ意味でも重要です。
例えば、厳選素材を活用したジェラート加工会社のケースです。
地域の農家との契約により厳選された素材を強みにジェラートを製造しています。無着色・無香料で味も美味しくて好評です。
当然、こだわりの製造による手間と厳選素材による高コストから、価格も高めに設定することが必要です。
高価格帯のアイスクリームやジェラート商品との競合に対抗するために、高級感あるパッケージとバラエティある商品を目指し商品数も年々増えていました。しかし、競合はブランド力もあり、価格を下げないと売れないという思いこみから、価格を下げた薄利の苦しい経営状態を続けていました。
また、価格を下げるだけでは知名度が高まらないと販売促進費にも少ない利益から支出していました。
このような中、弊社はマーケティング調査を依頼されました。
グループインタビューでは、厳選素材と手間かけた加工は好評でした。
しかし、「デザインは高級感があるけど、他社のブランド商品に似ているだけでオリジナルティがない。厳選素材使用のイメージが伝わってこない。着色・香料の商品は、企業イメージを下げブランド化につながらない。販促ツールは立派に作成されているけど、コンセプトが伝わってこない。」などでした。
分析結果を経営者に伝えてところ、経営者は驚いていました。
経営者は、「製造仲間とは、パッケージは高級感があるからと自信を持っていた。
商品も無着色・無香料の厳選素材だけでは売れないとブランド商品に似た商品を増やしていた。今回の分析結果を聞いて、自分達が間違った方向に向かっていることに気づきました。
自分達の強みは何かを再認識し、他社の模倣ではなく、コンセプトに自信を持ち、原点に戻り商品を改良していく。」と話されました。
売れないからと価格を下げ、オリジナルティのないパッケージにコストをかけ、意味なく商品数を増やすことで製造コストをかけ、オリジナルティのない販促ツールにコストをかけても、苦しい結果になるだけです。
こうした思いこみを取り払うためにも、後々不要なコストをかけないためにも、事前にコストをかけてでもインタビュー調査をすることをお勧めします。
どうしても、インタビュー調査にお金をかけることができない場合は、企業の実務担当者が自らインタビューすることもあります。効果は、顧客の感覚をダイレクトに感じることぐらいはできます。
何を聞いて良いのか分からない
原です。
顧客の声を聞くことは重要であると理解しているけれど、何を聞いて良いかが分からないと言われる人がいます。これでは、顧客の声を聞くことはできません。また、自分が聞きたいことだけを適当に聞いたとしても、顧客の価値を聞くことができないので、インタビューの効果は出ません。
「何を聞くか」をその都度考えるのは、大変そうに感じるかもしれません。インタビュー調査では、ケースにもよりますが、マーケティングの視点が必要です。しかし、安心してください。マーケティングの基本的な知識があれば確認すべきポイントは概ね決まります。
まずは、商品コンセプトの視点が必要です。
商品コンセプトとは「ある商品・サービスを概念的に表現したもの」です。そのため、言葉で表現するものになります。いくつもの商品コンセプト案を作り、それらを元に想定される顧客へのインタビューを通じて、最終的に成功率の高い1つの商品コンセプトに行きつくことを目指します。
商品コンセプトは顧客の欲求(ニーズやウォンツ)と自社の独自ノウハウであるシーズをアイデアで1つに結びつけた商品価値の仮説です。
仮説となるコンセプトを想定している顧客に伝えることで、顧客の反応がとれます。もちろん、すぐにNGになってしまうものもありますが、反応がとれれば改善できるのです。また、意外なアイデアが顧客から出てくることもあります。
続いて、マーケティングSTPの視点です。
STPの「S」はセグメンテーションと言います。対象となる市場を明確にし、その結果、どこが競合関係になるかを具体化します。商品コンセプトのインタビュー時に、顧客がどのような競合商品と比べているかを引き出すことで整理できます。
STPの「T」は、ターゲティングです。商品コンセプトを受け入れてくれる自社にとって望ましい顧客層を決定します。インタビューして深掘りすることで整理できます。
STPの「P」はポジショニングです。商品コンセプトがターゲットにとってどのような価値を提供できるか。その価値の裏付けをインタビューで聞くことができます。
最後は、マーケティング4Pの視点です。
4Pとは、プロダクト(製品、商品・サービス)、プライス(価格)、プレイス(流通チャネル)、プロモーション(販売促進)の4つの頭文字Pをとったものです。
プロダクトでは、インタビューにより、製品や商品・サービスの中身を特定し、パッケージなどの外見を具体化することができます。
プライスでは、インタビューにより、販売価格を設定することができます。
プレイスでは、インタビューにより、どのようにして顧客に商品を届けるか。販売方法や販路を具体化することができます。
プロモーションでは、インタビューにより、顧客ファンになってもらうための情報の伝達方法やコミュニケーション方法を具体化することができます。
以上のように、マーケティングの視点でインタビューを行うことができれば、商品コンセプトのブラッシュアップ、マーケティング戦略とマーケティング戦術を考えることに役立ちます。
忙しくて聞く時間がない
原です。
仕事の管理(時間管理)には、タイム・マネジメントの考え方があります。
タイム・マネジメントでは、重要度と緊急度の2つの軸があります。
多くの人は緊急な対応に追われ、バタバタした時間や人生を過ごすことに集中しがちです。
一方、緊急ではないが重要な領域を第二領域と言います。
第二領域は、将来を考えると重要なことだと分かっているけど、緊急なことを優先してしまいがちなため実行しないまま日々が過ぎていく傾向があります。
なので、主体的・計画的かつ優先的に実行すべき領域なのです。
筆者は、顧客の声を聞くマーケティング調査の導入を企業に提案します。そうすると、次のような返答があります。
「顧客の声を聞くことは、とても重要だと知っているけれど、製品づくりに時間がかかる。忙しくてそんな時間はない。製品づくりに集中したい。」です。
「顧客の声を聞くことは重要である。しかし、そんな時間はない(緊急ではない)」は、第二領域に当てはまります。
それでは、なぜ、重要だと分かっていても実行できないのでしょうか。
主な原因となるのが、仕事の優先順位が不明確であることが考えられます。
著書「7つの習慣」でも有名なスティーブン・R・コヴィー博士は、タイム・マネジメントの本質を一言で言うなら「優先順位をつけ、それを実行すること」に尽きると話されています。
また、タイム・マネジメントの世界では、全体の活動の重要な20%が結果の80%を生むという理論があります。パレートの法則と言います。
重要度が高く優先すべき第二領域は、この20%に該当します。
優先順位が不明確なために、以下のような不具合も生じます。
モノ作りが好きな人は、モノ作りに集中します。好きなことに集中することは良いことです。しかし、集中しすぎて顧客の声を聞くことを後回しにする人がいます。結果、顧客のニーズに合わずに売れない商品になることがあります。
また、緊急なことに全て対応してしまう思考と行動パターンから抜け出せなくなる人がいます。「緊急中毒」とも言います。
例えば、販売員や顧客からの商品に対するクレームに緊急対応します。
しかし、クレームの原因を顧客から聞かない限りは、問題は解決できないことがあります。それなのに、重要度の高い「クレームに対する顧客の声」を聞かないために、いつまでもクレーム処理などの緊急な案件に対応し続けることになります。
優先順位とは、「すること、しないこと」を決めることです。
重要度の高いことからする。任せる。重要度の低いことはしない。減らす。後回しにする。
それと、「いつから、いつまで」の「いつ(When)」を決めることです。
「顧客の声を聞く」は、製品・サービス開発の担当者が行うこともあります。企業内のチームメンバーに任せることもあります。弊社のようなコンサルティング会社に委託することもできます。
人手不足など多忙な社会だからこそ、優先順位をつけ、重要度の高い「顧客の声を聞く」を後回しにせず実行することが大切です。
従業員エンゲージメント
早嶋です。
従業員の満足度が現状よりも5%向上すると、その企業の経常利益が0.8%向上する。という研究成果を読んだ。確かに、仕事柄多数の企業、同じ業界で競い合う企業や業界は違うけれども同様の事業モデルでしのぎを削る企業と日々接している。
上記のレポートの感触はそうだと思う。ある一定規模になると社長一人の踏ん張りでどうにかなる規模の仕事ではない。やはり末端の従業員の一人ひとりが意義を持って取り組んでいる企業は業種業態に関係なく仕事が回っている。近年はESのことをエンプロイーエンゲージメントと称したりしている。従業員が如何に仕事に従事して成果を出すか。などの研究だ。
私は戦略を軸にコンサルをしているが業績が良く従業員が元気で離職が少ない企業に共通することは、以下、あるいは以下の複数を実現しようとしてる企業だ。
* 企業のミッション、つまり大義名分が明確で、標語として掲示されるだけではなく、常に仕事をする上での指針となるように、その意味や理解が浸透して行動のベースとなっている企業。
* そのミッションを実現するためのビジョンが長期で示されており、経営陣がその達成に対して動き、その達成が従業員や地域社会に対してハッピーだと浸透している企業。
* ミッション、ビジョンを基にマクロ環境やミクロ環境の合理的な分析を基に企業の方向性を明確に示している。そして、その方向性に向けてマネジメントは従業員と一眼となって取り組んでいる企業。
* 戦略を実現するためにマネジメントは全体の目標と自分たちの目標の両方を理解しており、かつ自分たちのチームにも断片的なKPIのみを示して管理するだけではなく、企業全体の方向性や戦略の整合性を常に示している。
* 企業の戦略と人事戦略が明確に紐付いている。人事が独り歩きせずに戦略を実現するための長期的な人事戦略が明確である。
* ここで意外と大切なのが、事業部のこと以外に、他の事業部や部署の取り組を従業員も概要レベルでも良いので把握しており、それぞれの部隊が戦略実現に向けて意味があることを知っている。
* 従業員の評価は透明で、なぜそのような評価になるのかを事前に従業員に示されている。また、戦略に紐付いているし、人事制度を通じて個人が成長できるイメージを従業員も認識している。
* 個人プレーよりも組織やチーム全体の信頼関係、協力関係で仕事をすることを称賛しており、実際に互いにフォローする風土がある、あるいは作ろうとしている。
* 経営陣やマネジメントと従業員の距離が近く、仮に遠くても、双方の声が直接聞こえるような仕組みをリアル・バーチャル関係なく仕組みを工夫している。
* 人材教育において、マネジメントの仕事として認識しており、上司は定期的に上述の話をしながら従業員の将来についても、あるいみメンター的な役割を担っている。
* 戦略や個人の成長を加味しながら従業員に自律的に取り組む制度や仕組みが工夫されている。
* 日常的に挨拶やコミュニケーションがある。
結局、多くの研究成果や書物では、ESを高める、エンゲージメントを高めるためには、以下アガポイントになると思う。
* ミッションの理解と浸透
* 従業員の安心と信頼
* 明確な組織体制と人事制度
* 従業員の仕事のインパクト(小さな仕事でもその意義を各々が理解している)
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