早嶋です。
Web検索をしていると時折、高級時計のディスカウントショップと出くわすことがあります。キラキラダイアモンドを散りばめたロレックスが定価の3割引で販売している。タグホイヤーの新品が破格の値段で売られている。こうした市場はグレーマーケットと呼ばれ高級時計市場からすると厄介な存在です。
先月のバーゼルワールドではモヘ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)の腕時計部門を率いるジャン・クロード・ビーバー氏は、グレーマーケットを「業界のガン」と呼んでいます。高級部門の小売にとって、評判、憧れ、夢、価格が安売りによって崩れる事によって、ジワジワと信頼が損なわれるからです。高級品のディスカウントは、一見、購買者が増えますが、一度価格に走り始めると、それがジワジワブランドの価値の崩壊につながるのです。
ロイターの記事によれば、グレーマーケットに出回る時計の供給元は複数あり、売れ行きの悪い商品を処分したい公式の販売代理店、輸入代理店、更にブランド本体が直接提供することもあるとのこと。
一方で、グレーマーケットに対してメーカーの利点もあります。時計が売れることでメーカーは利益を確保できることです。また、そのようなサイトがネットに広告宣伝を出すことで自社ブランドの時計が無料で露出する。つまり宣伝広告としての効果が見込めることです。
多くのメーカーは時計の在庫を適正に管理しているでしょうが売上至上主義に走ったブランドが少なからずとも出現しています。2009年の金融危機の後に中国での高級品の需要が一気に高まりました。当然、高級市場の代表選手であるスイス時計も注目されます。メーカーはこれに追随する形で生産量を増やし小売価格を上昇させました。
しかしいわゆる中国人の爆買いは終焉を迎えます。日本同様に欧州を訪問する買物目的の観光客が激減しているのです。中国当局が過度の関税をかけたことが理由です。高級時計や宝飾品などを傘下におさめるスイスのリシュモングループは昨年の9月の株主総会で直近5ヶ月の成績は為替の影響を鑑みても14%の大幅な減少と報告していました。世界的なエリアでは日本が25%減、欧州が18%減、中東アフリカが10%減でした。
一方で国境を超えるECである越境ECは伸びています。現地に赴かなくても商品を検索することで品物が買えるし、越境ECには当局は注目をしていません(ネットの世界はあえて監視しているが今のところ口を出していない、という表現が正しいかもしれませんね。)。
高級時計と言ってもある程度生産数を増やした企業は急に生産量を調整することは難しいと思います。時計の製造工程は多く、段階を追って組立ていきます。高級時計は製造工程も複雑で製造計画の期間が1年から2年のものもあると聞きます。従って徐々に生産量を増やしたメーカーが、急に生産量を減らすことができない可能が考えられます。
そこで考えられる仮説は、在庫として溢れた商品の一部がグレーマーケットに流れているのではと。そして、越境ECの伸びとともにグレーマーケットが成長しているのです。
百貨店のコンサルをしている時の数字感覚ですが、売上100に対して2割がメーカーに、販売店は最大4割超えるマージンでした。しかしどんなにビジネスが苦しくても、メーカーは公式販売店に対して値下げをすることを許しません。ブランドイメージを徹底的に管理するためです。百貨店はそのような場合は、公のルートでは値下げをしませんが外商の得意顧客には15%から2割のディスカウントをして数字を確保していました。百貨店以外の代理店はそこまで外商のような上得意客を抱えていません。そこで自社の資金繰りを良くするためにグレーマーケットに商品を流したのではないかという可能性です。
スイスの時計輸出を見れば昨年は10%の減少、今年も初めの3ヶ月程度で8%の減少ですので、急激に商品が売れなくなっているという事実は本当のようです。
グレーマーケットのビジネスモデルは案外と巧妙です。基本は在庫をもたずに注文があった場合に秘密ルートから商品を調達するのでリスクを持ちません。商品は合法的な正真正銘の商品。ただ正規ルートでの販売いではないためブランドは腕時計の修理を拒む傾向があるようで保証性がつかないのが一般です。そのため販売店舗が独自tの保証や修理サービスを付けて顧客の獲得を狙っています。
ここいっときの高級時計の過剰なブームが急に止みブランドは生産過剰に。在庫を抱える販売店はちょっと魔が差したか、生きるために仕方なかったのか、グレーマーケットに商品を流す。そして中国の爆買いから越境ECのシフトとともにグレーマーケットは急成長。顧客は正規ルートで満足を得るか、メーカーの保障はないけれども3割前後の値引きで高級時計を手に入れるか。高級時計業界も目まぐるしく経済が動いていることがわかります。
2017年4月 のアーカイブ
グレーマーケット
人口構造の変化2017年
早嶋です。
マクロ環境分析の考えの中に社会的な変化をみる視点があります。マネジメントの発明の大家であるドラッカーは度々人口構造の変化に関するコメントを残しています。
総務省が人口推計を発表しました。現在の総人口は1億2千693万人。6年連続で減少しており昨年よりも16万人減っています。年間の死亡者数から出生数を引いた自然減は29万6千人で統計を取りはじめてから最多となっています(上記の差異がある部分は外国人が帰化している部分等)。
現在の日本は、凡そ100万人の出生があり、130万人の死亡者数がある。2007年以降10年連続で自然減が続き、今後も高齢者の増加からこの傾向は継続。そして自然減の減少幅は更に拡大すると考えられます。
人口構造の変化は市場と雇用に大きな変化をもたらします。現在は高齢者の増加と若年人口の減少です。従って市場の変化としては、国内市場の縮小、若年市場から高齢者中心の市場に変化します。雇用の変化としては、労働可能年齢が延長され、雇用形態が多様化される、特に製造業の雇用減少に伴い知識労働者が更に増えることが予測できます。
労働者の担い手である15歳から64際の生産年齢人口は現在、7600万人。総人口の6割です。終戦直後の同比率と近づいているのです。一方で高齢者、65歳以上の割合は27%越えで過去最高です。
入国と出国の差分である社会動態は13万4千のプラスです。入国者数は336万人。内訳は正確ではないが生産年齢人口の幅に属するとしたら4.5%(336/7600)に相当します。移民に対してはグレーですが外国人労働者受入策の効果、結果長期滞在をする外国人が増加しているといえるでしょう。
EC決済におけるスマフォとクレジットカード
早嶋です。
国内でのクレジットカード利用が増加しています。
ーー2017年4月14日日経新聞引用ーー
2016年のクレジットカードのショッピング支払額は初めて50兆円を超えた。ネット通販の市場拡大に加え、税金、医療費の支払いなど、カード払いの対象が広がっていることが背景にある。
ーー引用終了ーー
去年からの伸びが約8%でその要因はネット通販です。アマゾン、楽天などに代表される通販は、代引き、コンビニ支払いもありますが、その場で完結できるカード決済が便利とあり増加しているのでしょう。同記事には三井住友カードのコメントがあり、前年比で毎月20%近いEC取引が伸びているとありました。
また、ふるさと納税や自動車英などの税関連でも利用が増えているようです。更に、医療現場においてもクレジット決済が普及しつつあり、高齢者の利用も目立っています。マクドナルドも2017年の後半頃より全国の店舗での利用を開始します。これはインバウンドの人がより便利にすることが背景だとおもいますが、10年前と比較してカード利用ができるシーンが増えているのです。経産省が発表する一般消費者向けの電子商取引の市場規模は13.8兆円。この市場は今後も省人力化の影響で増える見通しです。
一方、中国やインドのトレンドはクレジットカードを飛び越してスマホ決済に向かっています。現在中国では8億人がスマフォ決済を利用しており、2016年のスマフォ決済額は600兆円で前年比の2倍です。金額も、伸び率も日本の13.8兆円から比較すると桁違いです。
中国でのスマフォ決済の2強はテンセントとアリババ。テンセントはウィーチャットペイという名称で決済ユーザーの総合計は8.3億人。小売店やネット通販、振替、振込、公共料金の支払いでよくつかあれています。一方のアリババはアリペイという名称で決済ユーザーの総合計は4億人。こちらもネット通販、小売店、振替、振込、公共料金の支払が主な使途です。現味、2014年はウィーチャットペイや8%のシェアでアリペイが79%でした。2016年はウィーチャットペイが38%、アリペイが50%とテンセントが追い上げている構図です。
2007年にアップルがスマートフォンを発表してから世界が大きく変ってきています。現在のビジネスの多くは、スマフォを中心としたビジネスモデルになり、全ての行動をスマフォを中心に行えるようになりました。加えて物流が発達してリアル店舗に行かなくても消費者は購入が可能になります。
2014年の世界のB2CのEC市場の規模は1.3兆ドルでした。これが2017年予測では2.5兆円、2019年予測では3.6兆円ですので日本のEC化のスピードよりも遥かに国外は進んでいることがわかります。特に国別でみると中国が6720億ドルの市場規模で、米国が次いで3406億の規模です。日本のEC市場規模は約900億円ですので国外の規模感との差がわかります。
今日の日経はクレジットカード会社に取っては追い風のようなコメントがありましたが、中国の勢いを見ればIT会社がスマフォ決済の仕組みを導入しシェアを取りにいくことも考えられます。手数料が安く、手続きと利便性が良いからです。
ネット、決済、物流。昨日も小売に関してのコメントを載せましたがわずか数年でどんどんと世界が変っています。
小売業界の明暗
早嶋です。
2018年2月期、主要な小売業57社の8割弱で純利益が増加。セブンアイなど3割の企業が最高益になる見通し、と日経にありました。消費者の傾向が継続的な節約志向はあるものの、健康、安全に対しての価値を認め単価を引き上げているのが背景にあるようです。
以下、2017年4月13日の日経新聞抜粋ーーーーー
イオンは12日、18年2月期に売上高にあたる営業収益が前期比1%増の8兆3000億円、純利益は33%増の150億円になる見通しだと発表した。総合スーパーを運営するイオンリテールの岡崎双一社長は「顧客は価格だけでなく価値を評価している」と話す。
「高め消費」を取り込もうと旧ダイエーの店舗を総菜やワインを取りそろえた「イオンスタイル」などに転換する。プライベートブランド(PB)商品は低価格品だけでなく、安全認証を受けた魚や自然肥料で育てた肉など高価格品が好調だ。
ーーーー終了
総務省が発表するエンゲル係数も2016年に26%とおよそ30年ぶりに高い水準になっています。この数字の背景は共働き世帯の増加によって惣菜や冷食の需要が増加したことがあります。また、高齢化層は食やファッションの消費は全体として細っています、健康配慮の商品、家の中を快適にする住居関連で付加価値が高い商品は好調になったのでしょう。
結果、業態としてはコンビニ、スーパーには追い風、生活雑貨も機能や付加価値を提供する企業は追い風になったのです。もちろん企業も努力をしており不採算事業を縮小して不可価値品を揃えている企業が結果業績をあげています。
◯セブンアイ。不振だったスーパー事業で不採算店舗を閉鎖、総菜に力を入れた。
◯イオンも同様の取り組みをしている。
◯ローソンは健康志向の商品が最高益を牽引している。
◯家具のニトリは大都市の百貨店の進出をおこない高価格帯の商品が伸びた。
今後の小売業のマクロ環境は、1)ネット通販、2)人手不足、3)物流費の高騰をどのようにマネジメントするかが課題になりそうです。
インバウンドの爆買いはリアルからネットの世界に移行して越境ECが活況です。百貨店などリアルの投資を続けた業態はネット通販の変化に大きな打撃を受け続けるでしょう。一方で、ネットが扱いにくい生鮮や総菜は、先に延べて健康、安全とあいまって今後注力するジャンルの1つになるでしょう。
人手不足について無人レジの導入や高度化した物流センターに投資をした企業の先見の目というか戦略の勝利ですね。無人レジ関連ではテラオカや東芝テック、NECや富士通フロンテック、富士電機やOKIなどには追い風になりますね。一方、物流センターでは、前回起きたアスクルの火事を受けて大規模倉庫の3割が消防法違反だったので、業界には追い風ながらも追加の設備投資を余儀なくされます(当たり前の投資だが、安全面で)。結果、規模の経済で資金的に余裕がある企業が更に設備投資を行い業界の再編が進むでしょうね。
ポテチショックにみるカルビーの強さ
早嶋です。
全国のスーパーやコンビニからポテチがなくなる、或いは品薄になっています。いわゆるポテトショック。そしてネット時代の反映を受けて早速、一部のポテチ銘柄がオークションサイトで数万円近くの出品もで始めました。4月10日にカルビーと湖池屋のポテチが品薄になることが報道されているので、やはり最近の投機筋の動きはすごいなと思うばかりです。
さて、国内の製菓メーカーの売上高を調べてみました。1位は山崎製パンで3700億。ヤマザキビスケットや不二家、東ハトなどをもつ企業です。2位はカルビーで2400億。スナック菓子最王手です。3位が江崎グリコで2000億。チョコレートなスナック菓子、アイスなどを製造販売しています。4位は森永製菓の1800億、5位は明治HDで1600億。
報道で気になったのはカルビーと湖池屋の社名が並んでいたことです。上記の国内の製菓メーカーの上位ランキングにはでてこない湖池屋がなんでだろうと調べてみました。
するとスナック菓子というジャンルでくくって見たところ1位がカルビー、2位が湖池屋だったのです。なるほど、今回はポテチだったので合点がいきました。湖池屋の商品ポートフォリオは1)ポテトスナック、2)コーンスナック、3)タブレット製菓で売上比率にするとポテトとコーンで99%の売上比率です。
全日本菓子協会の菓子統計をみると、スナックの国内市場規模は1980年から1990年にかけて上昇、2005年ころまで減少、そして現在まで再び上昇しています。1980年の規模は2800億円程度で1990年が4000億円、そして3500億前後まで下がったあと、2015年で4200億円程度まで上がっています。同統計にはチョコ、ビスケット、米菓子がありましたがこの菓子小売市場は緩やかなものもありますが成長していることを知りました。
富士経済の食品マーケティング便覧2017年によれば、スナック菓子メーカーのシェア100(規模3188億円)とした時、カルビーは50%、湖池屋が12%、山崎製パンが僅差の11%、おやつカンパニーが6%、日本ケロッグが4%、森永製菓、明治、ハウス食品がおよそ2%です。
カルビーの主力商品はポテトチップス、かっぱえびせん。湖池屋の主力はカラムーチョ、スコーン、ドンタコス。山崎製パンの主力はチップスター、キャラメルコーン。おやつカンパニーはベビースター。ということで各社報道はポテチに限ってはカルビーと湖池屋を引き合いに出したのですね。
ちなみに富士経済の食品マーケティング便覧でポテトチップスのシェアを見てみました。全体を100(売上規模1102億円、2015年)としたときカルビーは71%、湖池屋22%、他7%とカルビーが圧倒的に強い領域がポテトチップスなのですね。
2社のポテチを調べて見ました。1962年に湖池屋がポテトチップスを発売。その8年後の1975年にカルビーもポテトチップスを発売しています。湖池屋がポテトチップスについては元祖のようです。湖池屋はその後ポップコーン、カラムーチョ、スコーン、ポリンキー、ドンタコスを1985年頃から1995年頃に発売してスナック菓子の統合企業になり売上を200億規模に成長させています。2000年初頭に海外展開をはじめ2004年のJASDAQ上場の頃に300億円の規模の会社になっています。
一方のカルビーは1975年にポテトチップスを発売する頃の規模は200億後半。1990年台には1000億規模、2010年頃に1500億、現在は2500億の企業規模になり企業としての格差は拡がっています。元祖湖池屋がポテチの市場を創造してカルビーとともに市場を拡げ、現在はカルビーがその市場を牽引している絵図なのです。
因みにポテトチップスのシェアを調べてみると1990年はカルビーが7割、湖池屋が1割、2割は複数社のの頃。それが2015年にはカルビーは7割、湖池屋が2割になっているので湖池屋が挽回に向かっていることはわかります。それでも7:2の力の差。恐るべきカルビーというのがポテチ業界の事情なのです。
少し海外に目を向けます。カルビーの2015年のアニュアルレポートにカルビーはジャパンフレトリーを完全子会社化して、ペプシコに20%の出資をしている記述がありました。ペプシコは米国のスナック市場の5割を牛耳る会社でその日本の会社をカルビーが傘下においている。つまり、カルビーはポテチに対して国内最強、海外(米国)でも最強のペプシコと手を組んでいる。日米のトップ同士がガッチリとポテチを牛耳っているのです。これでは湖池屋は2割のシェアを更に伸ばすことはかなりハードルが高いと言えそうですね。
子会社や孫会社のガバナンス
早嶋です。
東芝は2016年4月から12月期の決算に関して、監査法人の適正意見が表明されないままの発表となった。今回の判断は、これ以上の先延ばしは信頼を決定的に損ねるとの判断だったであろうが、先延ばしにしても今発表しても、全問の虎後門の狼といった感じだろう。
そもそもの根本は、「グループ全体経営のマネジメントが不十分でガバナンスが取れていない」ということだと思う。特に、M&Aで傘下に収めた原子力の会社ウエスチングハウス。この会社の責任者が巨額の損失を回避するために従業員に過剰な圧力をかけたり決算をごまかしたりしていることが大きな要因と指摘されている。
東芝からすると子会社の子会社、つまり孫会社が与えた損失が、ある日親会社の決算に影響を与えたということで、自社の粉飾に加えてダブルパンチだったとも推測できる。
上場企業およそ3560社は、自社戦略を成長戦略にしなければ株価が下がることから、毎年成長の方向性を示さざるを得ない。国内は成熟、成長市場は海外。となると成熟市場においては同業者をM&Aしてシェアを買う。成長市場に対してノウハウがない場合は時間とリソースを買収する目的でM&Aを行う。今後の上場企業にとってポイントになるのがノウハウや時間やリソースを買う目的の後者のM&Aだ。
この場合の目的は、そもそも自社ではその領域の仕事を出来ないから資本を投下して時間を買うということ。しかし、近年の大型買収や中型の買収を見ていて、経営者を自社から送り込むものの、その領域に明るい経営者が不足していて買収先の企業を十分にマネジメント出来ていないという問題が散見される。考えてみれば当然で、ノウハウが無いから他に資本を入れるわけであって、その企業をマネジメントできる器の経営陣が始めからいないのだ。
今回の東芝の件は行き過ぎとしても、他の業界でもグループ経営の財務における、信頼を落とす可能性のリスクは多々潜んでいると思う。東京商工リサーチの2016年の発表コメントでは、会計処理が不適切と示した上場企業は57社で過去最高。上場企業3560社を分母とすると1.6%もの企業が不適切な処理をしていたことになる。実に200社の中から3社の割合だ。しかもその4割が子会社や孫会社に関連するものだった。明らかに多い。
買収先の子会社で不正な会計処理が発覚して15年3月期の決算発表を延期したLIXILグループ。オリンパスの粉飾事件を受けて監査がより厳しくなったということも考えられるが、実力を超える企業を買収してその会社のマネジメントが出来ていない。或いは戦略が無いまま、金融筋からM&Aの誘いを受けて不十分な買収前調査のままリスク面の洗い出しが甘かった。ということも考えられる。
何れにせよこの一連の東芝の報道はある程度の規模のM&Aを過去から行っている企業にとっては対岸の出来事ではないだろう。M&Aは手段だが、今回のようなリスクがあることを考えながら、やはりは人。マネジメント層の教育や意識が一層必要になることは間違いないと思う。
実はその世界ではスキルが高いものだ
早嶋です。
コンピューター工学を専門に仕事をしていた時代があったが、今はコンピューターはさっぱりと思っていても実務レベルでは全く問題ないし、企画や設計やグランドデザインを考える際にも企業経営者の助言レとして議論はできる。案外と世の中は知らないのだな。という感覚を明確に言語化したリサーチだ。
「ユーザーのコンピュータスキルはあながた思う以上に低い」
この論文は終始、専門家とその方を頼りにする方とのスキルや知識や概念のギャップを解説している。結論は、「あなた方専門家は、ユーザーとは違う」ということ。想像以上にユーザーやクライアントのレベルは低いのだ。結果、勝手な判断や好みに走り、真っ当な判断が出来ないでいる。
ここからの学びは、
1)ユーザーのことを考える場合は、子供相手になったつもりで極力、先方の思惑、理解したいこと、実現したいことに先ずはフォーカス。
2)自分の実力と同じターゲットは5%未満であるため、ある程度仕事は出来る。同じ専門家集団の会社での能力の工程は、その集団地での判断なので超一流企業を除き、その人材でも他に行けば輝く。社長はその判断を行い、適材適所に再配置して後は任せるという大きな気持で迎えると結果を出すかもしれない。
読んでいて感じたことは、企業の経営者や管理に回る人間は数億レベルの投資案件に対しては口を挟まないが、年賀状のデザインレベルのどうでも良い細かな案件に対しては意見が多くでて収集がつかない。これは実は、難しいレベルの判断の内容を殆どが理解していない証拠なのだ。
参照:https://u-site.jp/alertbox/computer-skill-levels
新規ブランド展開の相談
早嶋です。
新しい事業の立ち上げの相談を頂いた。海外では既に社会的に意義のある取り組みをしていたチームが独立し、その内容を引き継ぎ日本でもプロダクトの製造と販売を展開する。その際のマーケティングや戦略についての全般的な議論だ。
その地域での活動はNGO団体としては非常に著名な活動。ただ、その名前に引っ張られたくないということで、そのNGOの名称を外したいという要望があった。そして既に出来上がっている商品といくつか取り揃えているセレクト商品を日本で展開したいという内容だ。
今回1時間の議論で整理したことは、次の2つ。
1)基本、これまでの展開はその地域でのお土産需要としての商品であった、日本は一般的な消費の中での需要なので分けて考える必要があるということ。
2)商品、価格、流通、販促、そしてそれらの軸となるコンセプトがバラバラに語られ、商品としては良いものが出来るであろうが、商売として成り立つかの観点が抜けていた。従って、マーケティング・ミックスの整合性を再度確認する必要があるということ。
地域や特性が変わると基本的にやはり考えるべきポイントは変ってくると仮説を立てた。その組織がそのブランドを再度立ち上げる背景や現在取り組んでいる活動をヒアリングし、ブランドの核となる部分を言語化していった。詳細は語れないが、女の子、良い物、頑張る、成長、社会的な意義、普段からの開放。というワードが抽出された。これらに対しては再度、早嶋から質問を繰り返し、どのようなブランドの価値があり、想いがあるのかを整理した。
一方で、既にその組織は活動を開始して2年は経過しているので、前提や絶対に守らねければならない制約条件等を細かくヒアリングした。特に社会的な意義に関しては、著名なNGO団体の名称は使わないまでも、その取り組み自体は引き継ぎたいことは言語化できた。また、その取り組みに対しても発想が異なることを整理した。従来は悪い部分を普通にしたいとの思いで社会問題を解決する現在問題的な発想であった。しかし今回のブランドによって更に今よりも良い状態にする将来問題的なアプローチであることも再認識頂いた。この違いによって取り組みや販促のルールが大きく異るのだ。
日本で展開する際に、どうしてもコストの部分が肝になりその地域で販売している価格に上乗せをする必要がある。現在、展開しているラインナップを更にブラッシュアップしてもっと洗練したものづくりを考えている。ターゲットとして語られているペルソナの像は明確であるが、それが独立していて他の意思決定に活かされていない。短期的な販売計画と出店したい場所や直近で決まっている催事や販促活動の辻褄があっていない等々。
ヒアリングをしながら商品や価格や販促や流通のコンセプトが少ないチームであるにもバラバラになっていることを再認識頂けた。その取り組みを今この瞬間に本当にすべきか?少し時期を後にしたらどうか?どのシナリオは本当に重要なのか。
おそらく普段のチームの議論では当たり前過ぎて突っ込むことも無いようなことだと思う。が私はこの整合性は後にボディブローのように効いてくるという仮説をもち、しかも過去に同様の不整合によってビジネスをシュリンクさせた取り組みを複数再生させて頂いた。従って、現時点でのイメージと少し先のイメージを議論を繰り返す過程で皆さんに理解して頂けたのは良い議論だったと思う。
伝統企業とイノベーション
早嶋です。
パナソニックが2018年に創業して100周年を迎える。そのメインイベントの1つにビジネスイノベーション本部の設置がある。読んでいて上手くいかないイメージがプンプンした。
本社肝いりで動くため、明らかにできっこないとか、肝いりの部隊が期待するような大掛かりなイノベーションを生み出さないといけない!とかいう空気感が現場レベルに落ちていき自由な発想と小さな実験と失敗からの学びが訴外されるからだ。
おそらく、そのセンターに配属される人材も超優秀な方々だろう。大企業の超優秀な人材は、過去のビジネスモデルでいわゆるキャッシュカウのビジネスや事業部で食ってきており、10を100にする力や、決められたことをよりスムースにする力はめっぽう強い。当然、このような部隊はキャッシュをバンバン生み出したから余裕があり、人材も入社した優秀な人達をいの一番に採用配置していった。
が、イノベーションはそもそも破壊だ。これまでのルールや慣習をぶっ壊して否定することから始まる。大企業のキャッシュカウにいた人材は5年もすると上司や上層部に大きな発言をしなくなる。そのほうがスムーズに仕事が進むからだ。
もし、上記のような人材が100周年だからと言って一同に集まったところで何も生まれないと思う。イノベーションは野放しでハングリーで遊びの中から生まれる。多いな温温とした環境では目が出にくいのでは。そもそも100周年を歌う前からイノベーションの重要性は言われている。のであれば既に成果がでているはずだ。
最新記事の投稿
最新のコメント
カテゴリー
リンク
RSS
アーカイブ
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月
- 2006年2月
- 2006年1月
- 2005年12月
- 2005年11月
- 2005年10月
- 2005年9月
- 2005年8月
- 2005年7月
- 2005年6月
- 2005年5月
- 2005年4月