早嶋です。
普段は、福岡や東京と比較的人口が密集している地域に住んでいるため、実家に戻ると妙に落ち着きます。この落ち着く感覚は、人の少なさ、沢山の自然からくるのかも知れません。事実、長崎の実家は昔からの住宅地ですが自然が多く残っており、近年急激に高齢化が進んでいることを感じます。
幼い頃から利用していたコンビニエンスストア(CVS or コンビニ)が近くにあったのですが、最近は空き店舗になっています。テナントが入っても直ぐに出ていく感じです。そこでふと、コンビニについて考えます。
コンビニは、初期においては、家庭の冷蔵庫の代替機能、近年は、よき近隣型店舗という位置づけのもと顧客に様々な流通ベネフィットを提供しています。そのため、コンビニが提供する商品機能は、顧客の購買目的や動機などによって他の小売店と比較しても明らかに異なっています。
例えば、すぐに食べられるファーストフードとしての弁当類をいつでも身近な店舗で素早く購入する利便性を提供しています。例えば、弁当類や総菜類を購入したついでに、冷えたビールを購入したい!というベネフィットを提供しています。ここらのコンセプトは、食事に要する手間をかけず、また冷蔵庫を持つ必要がないという初期のコンビニのコンセプトの象徴的な商品機能です。
代わりに価格設定は通常のディスカウンターと比較して割高、もしくは定価販売です。手軽に弁当を食べながら、ついでに冷えたビールも1本!といった顧客のライフスタイルを叶えるため冷えたビールを1本からでも販売しています。対して、ディスカウンターはケース売り、大量販売です。もちろん、価格は安いですが、すぐに飲みたい!という欲求は満たされません。なんせ、冷えていないし、店舗立地も郊外にあるからです。
コンビニは、商品開発、商品供給、店舗運営などを顧客のニーズによってマーケティングして多品種少量在庫による店舗運営、24時間年中無休という革新によって成長を遂げた小売業態なのです。
改めて、コンビニ業態が提供している流通ベネフィットを整理してみます。
1)商品面のベネフィット
メーカーが製造する商品規格のうち、品質やサイズ・容量など顧客の要求する商品にフィットしています。これも、コンビニ本部がメーカーの商品企画に入り込んだり、POSシステムとの連動により、実需を通したデータ分析結果を商品企画に反映しているからです。
2)時間面のベネフィット
買い物するまでの移動時間を短縮するための店舗展開。店舗内で目当ての商品を見つけてから支払をするまでの時間。レジ待ちや清算にかかる時間。もちろん、いつ行ってもあいているという営業時間。時間面でのベネフィットをあらゆる角度で提供しています。
3)立地面のベネフィット
店舗数が多ければ、顧客の移動時間が短くなるために、顧客の利便性が高まります。コンビニにおいて、アクセシビリティーを高める目的でエリアドミナント展開を行ったのです。コンビニにとっても店舗数が充実するとトラック1台あたりの商品積載効率が良くなり、店舗間の移動効率の向上、移動距離の短縮などにより、配送コスト削減につながりました。
4)品揃えのベネフィット
小売店はある程度の投資を行い、品揃えの豊富さを実現します。しかし、コンビニはフロア面積の狭小さにより必然的に多品種小品目の展開になります。つまり、日常生活に欠かせない便利性に富んだ商品の種類をできるだけ増やし、同一品種のカテゴリの品目数を売れ筋1位から3位程度までに絞り、1品あたりの在庫数を減らして多くの商品回転率を実現しています。
と、1)商品面、2)時間面、3)立地面、4)品揃えの4つのベネフィットについて整理しました。さて、ここで上記のベネフィットは実家のような地域にフィットするか?明らかに否ですね。空き店舗にコンビニが入っては、すぐに撤退するのも明らかです。従来、コンビニエンスは地域の顧客を分析して、その中から利便性を最重要に提供するビジネスモデルです。しかし、実家近くに展開していた大手チェーンのコンビニの品揃えやサービスはいわゆる福岡や東京のそれと変わり映えがありませんでした。
上記のベネフィットは福岡や東京など人口密集が高く、24時間活動している環境では別として、実家のような従来からの住宅地ではフィットしないのですね。これは、クリスチャンセンのイノベーターズジレンマと同じで、企業が提供してるスペックがいつしか顧客の求めるスペックを超え遙かに超えてしまっていたのです。もしくは、都心で成功した店舗展開をあまり考えることなく地方に展開したのかも知れません。
現在、コンビニ業界は成熟期にさしかかっています。商品構成や立地戦略、サービス面でのコンビニ企業が同質化しています。コンビニが更に伸びるには、違う付加価値を提供する必要もあると思います。つまり、近所の小売に徹するというコンビニの原点に立ち返ることです。
例えば、実家のような従来型の住宅地では24時間空ける必要が無い変わりに高齢化を見据えたシニアやアクティブシニアをターゲットとしたコンビニの開発など、地域の特徴を見据えるべきだと思います。
また、ディスカウンターの形態をコンビニに展開している店舗もあります。トライアルディスカウントコンビニ 。試験的に福岡を中心に展開していますが、着実に店舗数を伸ばしています。
コンビニであっても、地域の環境分析を行い、ターゲットを定めた上で店舗展開、商品構成・サービス、価格とプロモーション、いわゆるマーケティングミックスを見直さなければ今後の成長は危ういのではないでしょうか?
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コンビニ
2009年1月2日 金曜日
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