早嶋です。
ベンチャー投資は、今後成長が見込まれるベンチャー企業に投資をし、上場などを出口戦略として大きなリターンを狙う投資だ。
典型的なベンチャー企業は8年程度を費やして上場を目指す。会社設立は1,000万円程度の資本金ではじめ、6ヶ月程度で事業アイデアをカタチにするための資金を集める。シードステージと呼ばれ、そのアイデアに対して企業価値5億を想定して1億程度の資金を調達する。その資金で1年程度で実際のアイデアを実現するプロトタイプを作り出す。
次に、起業から1.5年程度で、プロトタイプの商品を実際に販売して自分たちが立案するビジネスモデルを確立するフェーズに移る。いわゆるアーリーステージと呼ばれ、この頃の資金調達では企業価値30億円程度を見込み、5億程度の資金を調達して1.5年分の運転資金に充てる。このフェーズは、テストマーケティングを繰り返しながら、ビジネスモデルが成立することをカタチにする大切なフェーズだ。
設立から3年程度の資金調達のフェーズでは、確立したビジネスモデルで市場シェア1位とか2位を獲得するフェーズだ。ミドルステージと呼ばれ、この頃の資金調達は企業価値50億円相当で8億程度の資金を調達する。そして、その資金を1年程度の運転資金に充て、サービスの認知と営業やマーケティングを加速する。事業によっては海外への展開もスタートする。
この間でイメージ通りの流れになれば、徐々に赤字の状態を解消して黒字化するフェーズに移行する。調達した資金を燃やすのではなく、株式上場に向けて4年程度位の期間を費やして収益を出し始めるのだ。そして時価総額150億円程度で約8年程度の期間をかけて上場するのだ。そして最後はレイトステージと呼ばれる。
ベンチャー企業と中小企業の違いは赤字で沈み込んでジャンプする様だ。ベンチャー企業は、起業してから利益や出資金を全て事業投資に注ぎ込む。プロダクトを作り、テストマーケを行い、徹底的に営業や宣伝にお金を費やし仕組みを創るのだ。この間の赤字を上場する前の4年程度で黒字化して一気に利益体質の企業に変えていくのだ。
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新規事業の旅84 ベンチャー企業
新規事業の旅83 ペット保険にAmazon参入
早嶋です。
Amazonがペット用の保険に参入する。11月1日より申込が始まる。商品は「わんにゃん保険」。現時点でAmazonで検索しても出てこないので、報道の通り、初期はテストマーケティングをしている。曰く、18歳以上のアカウントで申込を無作為に抽出して一部の消費者に提供して、本格的に12月の中旬頃よりサービスを展開するという。
ペット保険の市場規模は1,000億円程度とされ、各社の保険商材をみると5歳の小型犬で2,500円から5,000円の月額課金だ。ペット保険に参入する企業は20社程度あり、最王手はアニコムHD。
国内で飼育されているペットは犬猫合わせて1500万から2,000万匹とされ、新型コロナウィルス禍で21年のペット(犬猫)の新規飼育頭数は過去最大の88万匹強が増えている。1,000億程度の保険市場も数年前は500億円規模だったので、規模自体は小さいにも関わらず成長事業になっている。
直近の動きでは、
・22年7月にチューリッヒが少額短期でペット保険の販売を開始
・23年1月にアフラックがグループ内のペット保険を引継ぎ営業開始
・23年3月第一生命がペット保険のアイペットHDを子会社化
・23年3月東京海上日動がアニコムHDと資本提携
・23年4月オリックスがペットメディカルサポートの保険を販売開始
等々、各社の動きが活発だ。ただ、人間を相手にした市場規模と比較して遥かに小さく、大手に取って手間がかかる割には収益の貢献度は低い業界だ。それでも人間の保険商材が縮小し、ペットを通じて飼い主や家族との接点を取る動きを重視するのだろう。
生保協会の発表では、22年3月末での人様の保険等収入の規模は32兆円。コロナ前の19年と比較して1割程度減少している。各社の経営は苦しくなり、より合従連衡が進み淘汰されることも予測できる。
一方で、新規参入の中小にとってはニッチではあるがそこそこ規模が大きい。ただ、自社の商材を知って頂くためのプロモーションコストが高くなかなか収益を出せないというのが現状だったと思う。
そこにAmazon。飼い主の多くは、Amazonでペット関連のグッツを買っているであろう。そこに対してペット保険を提案できるのだ。しかも過去の購買履歴からペットのサイズ、ペットへの愛情、ペットの年齢などを推定するのも用意だ。Amazonがペット保険の代理業務を始めれば、一定数の販売シェアを獲得する可能性が高いことが他人の目から見てもわかる。
ペット業界や保険業界からすると、Amazonの動きがただただきになるのではないか。そのうち、本丸の人様の領域にも入ってくれば、保険商材の提案も大きくかわるかもしれない。
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新規事業の旅82 バックキャスティング
早嶋です。
2024年問題。企業の中で様々な動きがあるなか、ユニ・チャームは商品の包装を更に工夫することで輸送効率を高める取り組みをしている。26日の日経新聞によると、大人用の紙おむつで、従来よりもパッケージの幅を12から13%圧縮したという。この改善でトラックで運搬する場合、搬出できる商品の従来比で1割以上増やすことができる。
おむつは不織布とウエストのゴム、それらを接着する接着剤で構成される。今回の小型化には、超音波を使って熱を発生させ接着剤を使わずに不織布とゴムを接着する技術を新たに採用したという。
この取り組みは、欧州で進められている循環型経済に対しての準備にもなると筆者は考える。欧州では2030年に向けて多くの商品(プラ、アルミ、ガラス等の商品や容器など)の完全循環を目指すという方針だ。接着剤などは、リサイクルする際の分別や回収が非常に手間になるので、ここの見直しを5年以上先をめがけて企業は取り組む必要があると思う。さもなければ欧州で売ることができないからだ。
ユニ・チャームが2024年問題を重視して取り組んだのか、そのさきの2030年の循環型経済を考えて取り組んだかは不明だが、企業として5年10年で世の中を予測してそのヘッジをしていることは間違いない。そんなに簡単に実現できる技術では無いからだ。考えて見ると、運送の問題で2024年問題などと言われているが、マクロ状況を見ていて少し先に労働人口が減ることは誰でもわかることだ。
このような手法はバックキャスティングと言われ、確実に起こりうる将来や可能性を考えて、今から手を打つ取り組みや手法だ。が、世の中、そんなにお利口さんではなく、目の前の仕事に追われていて時間が来ればなんとななると思っている思考がまん延しているようにも感じる。M&Aの世界でも跡継ぎ問題、後継者問題と称されるが、なんてことはない。経営者の想像力の欠如で、20年先の出口戦略を考えずに準備をしていないだけなのだ。
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新規事業の旅81 部下の視野と視点の狭さはあなたの鏡
早嶋です。
経営者やトップマネジメントは、自分たちの部下や社員に対して「視野が狭い、視点が低い」などと口にする。しかし、その根本は日常の自分たちのマネジメントが作り出した結果であることを理解すべきだ。
戦略の教科書の始めの項には、大抵ミッションとビジョンと事業計画の関係が記されている。戦略立案の際に、ミッションを確認し、その達成に向けたビジョンを整理することと。ミッションは企業の中で普遍であり、抽象度は高いが社会的な使命や企業の存在意義を示す。ビジョンは、その達成の経過地点を示すもので3年から5年先、あるいは100周年や2030年など、切りの良い時間軸で、定量的な目標を示すことが多い。売上や利益、事業ごとの内訳やシェアなどだ。
そしてビジョンを達成するために事業計画や中期経営計画を練り込み、この計画を基に事業年度の行動を規定していくのだ。
が、「視野が狭い社員が多い!」とボヤキが聞こえる企業になればなるほど、トップマネジメントや一部の管理職しか事業計画の中身を知らない。中間管理職以下社員は、事業計画を理解せずに、従来の延長で仕事に取り組んでいるのだ。
そして管理職が実は経営計画の理解不足であったり、戦略の理解ができておらず、結果部下に対してコミュニケーションが取れていない場合もあるのだ。自分が理解していないから部下や現場にも伝えることができないのだ。また、「伝えている!」という場合も、実際は経営計画などのダイジェスト版を掲示しただけとか、回覧板で回したなど、間接的なコミュニケーションに頼り、しかも部下の理解度を確認することもしないのだ。
視野を広く、視点を高くするためには、限られた仕事の流れ、つまりバリューチェーンの一部の仕事に邁進する社員に対して時折、教育が必要だ。OJTやOFFJTを活用し、自分たちの事業モデルがどのような背景で成り立ち、自分たちの部署が、全体のビジネスモデルの中のどの部分を担っているかを定期的に共有するのだ。社員がおのずから会社の全体像を知る行動に出るなど稀なのだから。
時間軸に対しても同様だ。社員は評価が四半期毎のノルマの達成など、短いスパンに限定されていることが多い。そのためマネジメントは、期のはじめや節目節目に、会社が見ているビジョンを達成した状況を社員に自分の言葉で語りかけることが大切だ。実際に、具体的なイメージは社員の想像力を掻き立てることになるし、イメージが明確であれば、現状と比較した場合の問題も明らかになって来る。
そして管理職の役割は、まさに将来を創ることだと意識しなければならない。過去の仕事をするのではなく、将来の在りたい姿に近づくための行動を取り、時折社員を巻き込むことに意味があるのだ。
このようなトップの基で数年育った社員は、自ずと全社、少なくとも事業部全体のことを考えた上で、今の任務をこなす視点になるのだ。しかも短期的な成果に加えて、常に事業計画で示された年度や少し先の将来の事業を捉える考えも持つようになる。
起業して間もない頃、ソフトバンクアカデミーで戦略の講師を務めていた。当時の孫さんは100年先を当たり前に見ていた。そのため勉強会に参加していた部長職は30年先を普通に語り、課長職は10年と時間軸が短くなるものの、他の企業と比較した場合の時間軸の長さは歴然だった。上述した考えを当時から体現していたのだ。
マネジメントが自分の部下や仲間に対して視野を広げ、視点を上げるコミュニケーションや教育なしに、「視野が狭い、視点が低い」というのは、自分自身に責任があると言わざるを得ないと理解できただろう。
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新規事業の旅80 業務提携と資本提携
早嶋です。
(前回(ゼロイチとM&A)までの確認)
例えば、企業の売上が70億で、数年後に100億を達成するという挑戦的な目標を掲げた企業があるとする。既存の事業が複数あり70億の売上を達成しているが、稼ぎ頭の事業は既に成熟期を迎えている。通常は、事業を継続させるのも難しい局面だ。
ここに対して、不足する売上をM&Aで賄おうとしても、結論から言えば、そのような案件が売りに出ていること自体が極めて稀である。仮に買収することが出来たとしても、その事業をマネジメントすることが難しく、買収した時の企業価値が最高値で減損する結果になることも多く観察できる。特に新規エリアでM&Aを行えば、事業会社から買収企業をマネジメントできる人材も限られており、戦略的なシナジーを出すことは非常に稀だ。
企業は、ミッションやビジョンの実現のために成長を選択するし、成長をあきらめる企業は衰退する以外ない。しかし常に新規事業を自助努力だけで行うゼロイチだけでは実現は難しいため、外部リソースを取り入れて成長を目指すM&Aも必要だ。既存事業の売上を増やす目的であればシナジーが読みやすく買収前調査のリスクも許容できる。しかし新規事業となると、実際は困難を相当伴う覚悟も必要なのだ。
基本は、自社の成長の方向性を議論して整理する。現状と在りたい姿のギャップを確認する。その不足する経営資源は、時間なのか、ノウハウなのか、経験なのか、販路なのか、何らかの技術なのか。兎に角、不足するギャップを徹底的に整理して可視化し具体化することが重要だ。ゼロイチか、M&Aかなどは手段であり、目的が不明確な企業は案外と多いのだ。当然、他の方向性でギャップを埋める手段として提携や出資も見えてくるだろう。
(業務提携)
在りたい姿に対して、現状とのギャップが整理できれば、それをどのように埋めるかが論点になる。自社でやるか、他社でやるかだ。その過程において、3つ目の選択肢が業務提携や資本提携だ。
業務提携とは、企業同士が業務内容について提携することを指す。生産提携、技術提携、共同開発、販売提携などだ。2社以上の企業が契約によって対象とする業務で協力しあうのだ。
生産提携などは、従来製造したことが無い製品を、工場や機械投資、そしてノウハウを蓄積することなく、既に製造が可能な企業と提携して製造することが可能になる。
技術提携などは、特許や知財などの利用を互いに許諾してクロスライセンスを結んだり、他のノウハウなどを互いに提供したりする。通常、特許で公開した技術以外は、企業機密で内容が企業の外に出ることはない。そのようなノウハウを共通の目的を持ち互いに利用できるようにするのだ。
共同開発は、技術や人材を互いに提供し合い、何らかの研究を共同で行う。研究は足が長い作業で、時間や資本をかけたところで必ず商品化されるものではない。そのため、2社以上が集まって巨力しあうことで、開発のスピードを高め、リスクを分散することができる。
販売提携は、提携する企業が互いに販売ルートを共有して、販路を拡大する際に活用される。販路があるということは、過去の営業活動と蓄積した信用があるため、新規に販売ルートを開発して新たな商品を提案するよりもはるかにコスト(お金、時間、苦労等)を下げることが可能だ。
以上、自社の不足するギャップが明確になっている場合は、提携する企業を見つけて、解消できないかを考えるのも必要なオプションだ。提携は互いに組むことでスケールメリットやシナジー効果が生み出せるのであれば検討しない手はないオプションとなる。
(資本提携)
業務提携は、事業の一部を共同で行うが、利益配分の仕方については明確に事細かく約束をしておかなければ紛争になる可能性もある。また、業務提携は情報や技術を一部共有して取り組むため、両社の関係が良好であることが前提だ。しかし関係が悪化した場合、既に共有された情報や技術は元に戻すことは出来ない。都合が悪いこともあるのだ。
そこで資本関係を結ぶことで、業務提携という単なる契約関係よりもより強固な関係性を構築する方法が資本提携だ。資本提携は2社以上の企業が互いに業務面や資金面で協力し提携関係を構築する手法だ。一方の企業が提携先の企業の株式を取得する、或はそれぞれの企業が株式を持ち寄り、提携関係を構築する。
新規事業を開発したい企業は、通常業歴が長く一般的な信用はベンチャーよりはるきあに強い。また、販路や販売後のフォロー体制など歴史とともに形成される資産を多数保有する。一方、ベンチャー企業や中小企業は、何らかの技術開発や新商品を有していたとしても、販売力や製造力、場合によっては販売後のフォロー体制が脆弱な場合ががあるなど、大企業と大きく異なる。
このように何らかの経営に問題を抱える企業にとっては、資本提携の形式で出資を受けることで与信が高まり、自社のボトルネックを解消することにつながる場合もあるのだ。
資本提携では、ある企業が他の企業に(あるいは互いに)出資し、互いの独立性は保たれる。具体的には、資本を受け入れる側の企業が資本を出す側の企業に対して第三者割当による新株発行などを行い、一定数の株式を与える。新株発行により、一方が他方の株式の1/3を超える株式を取得すると、株主総会の特別決議(定款変更、事業譲渡、合弁の承認等、会社経営の重要な決定について要求される)の拒否権が生まれる。この場合、買収(子会社化)されたのと変わらないため、業務資本提携の場合は、双方の独立性を保つために株式比率を1/3未満に設定する。
(メリット)
資本提携の目的は、双方の企業の支援にある。互いに強固な関係を結びながら、販路拡大や製造、場合によっては商品開発などを進めることができる。出資する側は、自社にないノウハウを獲得し、実際に新規事業に結び付けることができるか小さく実験できるのだ。
仮に、M&Aで一気に買収した場合は、経営権は獲得できるが、買収前の調査で検討した以上に事業統合が上手くいかない、実際に想定した新規事業のシナジーが得られない場合もある。一方、資本提携の場合、1/3以下の株式取得で進めるため、M&Aと比較すると出資金は少なく、実務を通じてシナジーを確認することが可能だ。大型の案件を進めるには不安だが、提携より強い関係を構築したい場合は、最良の選択肢となるのだ。
更に、資本提携をすすめながら、実際にシナジーを出す過程で、よりその事業に対しての資金需要が高まった場合、交渉をしながら優先的に追加出資をするなど、徐々に出資割合を高めて、子会社にしていくことも検討可能だ。
なにより、M&Aの場合は、買収前調査はあくまで紙ベースの判断になるが、少額でも出資して、人材を派遣するなどして、業務を取り組むことで、出資先の企業の状況を実業務ベースで半年から1年かけて入念に調査することもできるのだ。
(まとめ)
新規事業を始める際のオプションとして、ゼロイチとM&Aに加えて、提携や資本提携を同時に検討することが大切だ。一方で、事業会社の多くは資本政策に関連する業務は少なく経験も乏しい。積極的にアドバイザーや経験者を雇用して、自社の新規事業開発にも幅広い視点で臨む覚悟が経営者には求められるのだ。
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新規事業の旅79 ラスト一マイルの柔軟思考
早嶋です。
ラスト一マイルの議論ほど、過去から決別することが大切だと思う。
例えば、運輸。長距離は、高速道路やフェリーや鉄道を使い、現在の電気自動車の技術で用意に自動運転ができる。高速道路から電車の駅やフェリー乗り場を有機的に設計し直せば、積替えの手間なども大幅に削減される。互いの媒体が結びつくことでまだまだ省人力化は可能だ。
一方で、タイスト一マイルと呼ばれる短距離輸送は、自動化が現在の感覚ではハードルが高い。従来人間がベースとしてインフラを整備したエリアを、自動車という形や概念で自動化するには様々なハードルがあるからだ。
ここにドローンという全く異なるテクノロジーが現れて来た。地上300m以下は航空法の縛りがなく、これまで人は殆活用することがなかったエリアだ。ここに対してラスト一マイルの運輸や交通を整備すると、地上で自動運転するよりもハードルが低いという考え方もある。
例えば、離島や山間部、海の上での通信環境だ。通信といえばこれまでは有線を前提にした発想でインフラが構築された。NTT法という縛りがあり、全国津々浦々に電柱をこしらえ音声を届けた。しかし、この線でつなぐという普及方法は時代遅れで、インフラを整えるのに面積と距離に比例して一定のコストと整備費用などの維持コストがかかる。
ここに飛び道具である衛生を活用することで、通信のカバー率を劇的に高め、インフラを整備する、あるいは保守する費用を圧倒的に安くすることができるようになる。
どちらの事例も、従来の枠組みでの発想で実現しようとするとコスト高で、技術的にも難しかった。しかし発想を変えて異なるテクノロジーや概念を組み合わせることで、いがいと解決する道筋が見えてくる。
新たなことをする際に必要な視点は、連続的な思考に加えて、非連続的な思考を追加することだ。そのためには、素直な心や技術を俯瞰して活用する発想が必要になる。もちろん自分の利権を守りイノベーションを遅らせるような昭和なおじさんは、そく退場させないと30年が更に40年になってしまうと思う。
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新規事業の旅78 逆境を乗り越えるリーダー
早嶋です。
高齢化、現場任せ、個人の能力任せのシワ寄せが各業界で観察できる。建設、製造、エンジニアリング、運送業、引越等だ。2000年頃までは人手が不足する現象は予見されていても、現況が成り立っており収益も得れていた。そして、現役バリバリの層がまだ厚かったことから作業の標準化や見直しはスローガン的に出ていても、実際はスルーされ、従来通りの現場の頑張りで業績を維持して10年、20年が経過した。
そして、人手不足と高齢化が露呈し始めてやっと、「現場では人手が不足している」「若手の育成がでいていない」「作業が個人任せで標準化がおいつかない」などと当たり前の現象をあろうことか全社の課題として認識している。そして、「採用を増やし、教育に力を入れる」とこれまた意味不な解決策を出して一件落着でいる。
日本の経済状況と社会的な動向を見た場合、あらゆる業界で人手不足が今後も続く、もちろん現状の仕事の仕方を前提にした場合だ。特に、効率化を行わず、安い人件費でなんとかやり過ごしてきた業界は、この傾向が強い。これまでは、そのような業界は何らかの規制等で守られており、競争のルールはあったものの、他の業界と比較すると極めて優位な立場で経営ができた。
しかし、世の中は少子化、高齢化。円の価値が劇的に下がり、労働者も簡単に色々な情報を入手できる時代になった。理屈で考えると、どの業界も人手不足なので、採用を増やしても働く母数が少ないので激しく競争になる。若手を採用するとなると更に厳しい。人材を欲しいという需要に対し、働く供給量が圧倒的に少ないのだ。更に若手は、労働市場の情報を簡単に入手して、条件が良い業界や企業を選択する。辛そうな業界に自分から歩み寄る若手は少ない。
5年頃前までは、ここに外国人の労働者をあてがうことでなんとか対処した。が、コロナ期間から急激なインフレが始まり、ドルの価値を下げている米国よりも日本円は価値が下がっている。外国人労働者に取って、日本で働くメリットがかなり薄れているのだ。まだ、日本に定住して生活することを前提に考えられる外国籍であれば良いが、日本の給与の多くを自国に仕送りすることが主目的の労働者からするとデメリットが強い。円の価値が相対的に下がり、苦労して日本語を覚えて日本で仕事をするメリットが少なくなり、英語が使える他国で外貨を稼いだほうが都合が良いのだ。
と、総合的に考えると、日本人や外国人の採用は今よりも更に厳しくなるのだ。そこで業務フローや仕事のあり方そのものにメスを入れ、効率化を進める選択肢を取らなければ企業の将来は明るくないのだ。
一方で、現場の状況を10年程度前から冷静沈着に分析し、将来、現在の人材が高齢化を迎え、今の属人的な仕事の流れだったとしたら、その方々の退職と共に現場が回らなくなる。という当たり前の分析を行い取り組んだ企業も一定数いる。
・作業の標準化をした上で、効率化、あるいは経験が浅い人材でも取り組める仕組みを作る
・同様に、年齢が上がって体力や認知力が落ちても一定の仕組みで仕事が可能な体制を作る
・一人で一つの工程を行うのではなく、複数の工程ができる多能工を育成する仕組みを作る
・人で行う作業をコンピュータやロボットに置き換えて省人化を実現する
などの方向性を議論して、数年かけてシフトしているのだ。このような企業のトップや現場の管理者と仕事をしていると、いくつか共通のリーダー像を観ることができる。
上述のように、冷静沈着に過去から現状の姿を分析して、確実に来る未来の姿を徹底的に議論している。そして、その未来の姿と現状を比較した際のギャップ、いわゆる問題を明確に認識している。これは10人の現場でも100人の現場でも、1000人以上の組織でも基本変わらない。そして、その問題を解決するための課題を特定して、解決策のアプローチを確実に示しながら長期間かけて行動を続けているのだ。
例えば、ある作業フローを作業毎に別の社員で行っていたが、それだと特定の社員がいなくなった場合、現場が回らない現実を直視した。そこで、現場の状況をあらゆる視点で議論をした結果、多能工化を進める意思決定をする。多能工化を進める際の数年かけての取り組み方を明確にしめし、それが実現した世界を仲間に具体的に話しながら進めていくのだ。
現場の人間の5人は電気系統の仕事と同時に、機械系統の仕事が2年先からできるようにシフトを組む。そのために、1.5年後には新たに社内の認定資格に合格している。その資格に合格するために3ヶ月先から1ヶ月単位で具体的に資格を取りながら、現業を続ける方法を個々人に落とし込み実現するのだ。途中途中、蜜に個々人とリーダーがコミュニケーションを取りながら、社員の不安を取り除くのだ。
はじめこそは、できるわけが無いとなるが。少しづつ行動を変え、挑戦する中で、出来ないことができるようになる。そのタイミングで、周囲はその違いを言葉にして「これができるようになっているね?」という感じでその成長を可視化させていくのだ。
リーダの仕事は、確実にビジョンを示し、そのビジョンを達成した後の夢を具体的に語る。そして、そのビジョンを実現するためのプロセスを具体的に細分化して、どのように取り組んでいくかを明確に示すのだ。そして、その始めの一歩から、途中のフィードバックまで粘り強く、時間をかけてコミュニケーションを続ける。つまり、方向性を示し、具体的に行動ができるようにして、不足する能力ギャップを埋める取り組みに超コミットするのだ。
ニュアンスは適宜細かく異なる部分もあるが、概ね、上記のようなリーダーの姿を観察することができる。
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新規事業の旅77 近くと遠くと全体と細部
早嶋です。
企業はミッションやビジョンを基に、5年から10年程度の事業の在りたい姿を設定して、そこに向けて事業部毎の目標、部門ごとの目標と設定した目標を達成するために細分化する。そして当然に末端のリーダーは、その細分化された目標が自分が達成すべき全体と捉えるので、自部門の目標達成を主体に動く。
環境変化が激しい場合、この手の目標管理に不具合が生じる。5年、10年をベースに設定した取り組みが若干冗長なので、そのとおりにいかないという現象だ。そこで、5年程度の事業計画の期間をベースに、実際に1年経過した時点で残りの4年を見直し、追加で1年を加えて、常に5年程度の事業計画をローリングするやり方だ。この場合、誤ったリーダーは、対象目標を達成できないとしても、修正してローリングするので時間が来ればなんとかなると考えてしまうので。
全体を見れば細部が見えなくなり、細部を見れば全体が見えなくなる。人間の性なのだが、トップマネジメントやそれに準じる人材は、常に全体最適と部門最適のバランスを考慮する必要がある。その際の視点は2つ。遠い時間軸と短い時間軸。全体の事業ポートフォリオのバランスと、各事業の方針だ。この時間と規模を常に頭に入れて、遠くと近く、全体と部分を行き来しながら取り組むことが肝要だ。
部分の議論、短い時間軸の議論をするリーアーは、人材が不足、業務負荷が高い、リピートが獲得出来ない、若手が育たないなどの不満をあげる。
しかし冷静に考えると、人口は2008年をピークに減少している。若手を新卒等で採用したいのであれば、数多くある競合や大手企業よりも良い条件を出さない限り採用できないのが事実だ。業務負荷が高いのは、採用が出来ないからだと言っているが、2000年を境に世の中の技術革新は進んでいる。が、業務の流れや考え方は20年フィックスしたままの場合が多い。それなのに気合と根性で仕事を続けるので、なんとか利益は出るが、30代以下の社員からすると勘弁して欲しい状態で、転職を選択する気持ちも理解できる。3年、1年、四半期、1ヶ月。目標を細分化して目先の仕事に目が行くと、取った仕事のフォローや既存のメンテンスがおろそかになる。従い、年月が過ぎても固定客が出来ずに常に焼き畑農業の状態が続く。そして若手が育たないと嘆く。教育は3年から7年程度の時間をかけないと育つわけが無いのに、人事は新人教育で終わりで、階層教育も10年、20年見直しがない。事業部独自の教育は実質計画されておらず、忙しい現場に丸投げ状態だ。
ノルマに追われ、人手が不足して、自分が頑張らないとどうにもならないと勘違いしてしまうのはわかる。が、10年以上持続可能にしたいのであれば、時間軸を長く見て、事業全体、企業全体のメカニズムに対して問題の洗い出しを行い、抜本的な見直しを考えるべきではないか。
いま起きている現象は、5年前、10年前にその発生が確実に予見できるものばかりで、単に企業として対策をしていないで、たまたま採用した40代から50代の気合と根性で組織が成り立っているという事実に気づいた方がよいのではないか。
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新規事業の旅76 TAM・SAM・SOM
早嶋です。
ベンチャー界隈のイベントやピッチを見ていて感じる。なんとも言えない違和感。イベント感があり業界を盛り上げるのは良いのだが、一方でそれをどの程度本気で取り組むのか、あるいは取り組んでいるのかが謎なのだ。モヤモヤする。
スタートアップや新規事業を立ち上げる際に、TAM・SAM・SOMを算出する。TAMはTotal Addressable Marketで、ある事業全体の最大のポテンシャルで、2次データを中心に規模を想定する。SAMはServiceable Available Marketで、実際に想定する事業で獲得する最大の市場規模だ。ここは1次情報やテストマーケを繰り返しながらある程度の精度を意識して計算する。そして、SOM、Serviceable Obtainable Market。これは実際に顧客にアプローチできる規模だ。SOMを事業の売上目標に掲げることは良くある。
一方で、SAMの5%でSOMは●円規模です、などの表現を度々聴く。が、その先が一切検討されずに、極めて雑多な感じを受けるプレゼンやピッチが多い。顧客のアプローチ方法はさておいて、どのようにプロダクトを作るかの議論が続くのだ。
違和感の正体は、プロダクトリスク(どうやって商品化するか?)の議論ばかりにフォーカスして、マーケットリスク(どうやって販売するか?どうやって継続させるか?)の議論が浅いのだ。どのような理屈で、どのようなメカニズムでその商品が市場を形成していくのかの具体が見えない。ターゲットの反応や想定する顧客のイメージやテストマーケの結果も反映されていない。特に多いのはアプリなどのプロダクトで観察できる。便利そうなプロダクトであるのは間違い無いが、それをどうやって想定するSOMの売上を獲得する顧客にリーチするのかの議論が殆無いのだ。どのような優れた商品であったとしても、顧客がその存在を知らなければ売れないし、知っていても届ける媒体に工夫が必要になる。そして、ここには思った以上に泥臭い。
経営者や経営陣が、実際に泥水を飲みながらプロダクトの開発と共に、プロダクトの販売やマーケティングを実施し、あたりを付けていれば、そのせプロダクトを売るための業界のギャップなり、キーパーソンの存在なり、なにかプロダクトを良くする以外のボトルネックが複数見つかるはずなのだ。そして、その取り組みを思考しながら顧客へのアプローチや思わぬビジネスモデルの緒が見えてきたりするのだ。
すると資金調達の目的も変わってくる。単に、プロダクト開発のためや、議論していないプロモーションの予算を集める行為から、具体的に資金提供者にも動いてもらうアイデアがどんどん出てくる。つまり、資金提供者を選んで、自分たちで不足する資源やギャップを埋める可能性がある企業に自ら近づいていき提案をして、資金も調達するのだ。
起業する際に、いくばくのアイデアと、そのアイデアを形にするチャンス。そして大切なエッセンスにチームがいる。このチームの中に、販売を加速する仲間がいると心強い。単に資金調達をすると同時に、そのギャップを埋めれる企業に近寄り、提携やマイノリティ出資を募り、そのギャップを一緒に解決する提案などを行う人材だ。そのためベンチャー企業といっても、やはり進出する業界に一定の明るい人材を確保するオーガニゼーションリスク(それなりのメンツを揃える)は常に考えて置く必要がある。ただ、開発のように常に社員としている必要はないから、ストック・オプションを提示しながら肝となる活動を行ってもらったりして、そのようなベテラン人材の確保を着々とすすめていくのだ。
北米のVCあたりは、ひよっこベンチャーにも触手を広げるが、一定の業界のマネジメント層や若手で成果を出すビジネスパーソンに日々寄り添い、彼ら彼女らに起業の話を持ちかける。なんてことも当たり前のように行っているのだ。
要は、プロダクトに加えて、マーケティング、組織、そしてファイナンスを揃えながら事業を行っていくのが肝要なのだ。
(過去の記事)
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新規事業の旅75 ゼロイチとM&A
早嶋です。
新規事業の獲得のために多くの企業がM&Aを考えている。しかし、実際は上手くいく事例が少ない。なぜだろう。M&Aは売り手の状況を考えた場合、そもそも出口戦略の一手になる。その場合、業界が縮小する、効率が悪い、利益が出にくくなる。そんな理由でどうにかなる前に会社の売却を決める場合がそもそも多い。従って、M&A以外のオプションも考えるべきなのだ。
(新規事業開発が必要な背景)
国内企業は、規模の大小に関係なく、成熟期を迎えている。そして事業存続のために、次の成長に向けて、或は将来の稼ぎ頭を獲得すべく、自助努力で新規事業を開発している。しかし結果が出る企業が少ない。多くの企業は10年も20年も特定の業界で、さらに過去に出来上がったビジネスモデルを軸に事業を行ってきた。そのためこれまでの経験があまり活用されにくい新規事業の開発に苦しむのだ。
一方、歩みは遅いけれども、経営者が先陣を切り、ゼロベースで試行錯誤を続ける企業は自助努力でも時間の経過と共に、一定の可能性を見出し、損益を回収する地点までたどり着け、一定の成果を出す企業も散見される。
しかし規模が大きな企業に良くありがちな風景は、「新規事業」「イノベーション」などとそれっぽい言葉を経営陣が連呼するだけで、実際の新規事業の開発や取組は社員に丸投げというのも珍しくない。新規事業開発室、イノベーション推進室等、かっこいい組織が立ち上がるが、既存の事業も不安定で人手不足に見舞われているため、多くはそのような組織は既存業務との兼業で行われる。事業の開発の仕方や、業界外のネットワークなど何もないと感じる社員は、新規の取組を行っても直ぐに成果が出るわけでもないし、一方で評価は既存の事業の4半期の成果で評価されるため、そもそもリソースを割かないのだ。
(ゼロイチと共にM&Aを考えはじめる)
ゼロイチ、いわゆる新たに事業を創業する経験やノウハウや知識と、既存事業を維持拡大するそれとは大きく異なる。経営者であっても四苦八苦する取組だ。それを、既存の出来上がった事業モデルの一部をニッチに繰り返しの作業で仕事をしてきた社員に、兼業で開発しろと言うのは、無茶苦茶な話なのだ。
そのような中、経営者には、「M&Aで事業を買収して次の収益の柱を立てる事例があるらしい」と金融筋や御用聞きコンサルから幾度となく話が入りはじめる。そして、これまで興味が無かったM&Aという言葉に惚れ込み、「自社もM&Aだ!」的な動きになる。
確かに、大手企業では一定の規模の事業を買収して、自社のシナジー効果を取り入れながら事業の開発を行っている事例は多々ある。しかし、自社のシナジーなしに買収した企業を更に成長加速させることは稀なのだ。
通常、M&Aは売り手からすると出口戦略の1つになる。複数ある事業の中で、1つの事業が成熟すると、その事業は会社にとって収益の源泉になる。しかし、その状態が永続するとは限らない。経営者としては、複数の事業ポートフォリオを意識的に組み替えて事業価値を高めることが仕事だ。そのため成熟期や衰退期に差し掛かった事業で、業界全体から見てポジションを取れていない事業は売却の対象になりやすい。
このような事業は、成熟した業界の中で高いシェアを持つ企業が買収し、更にシェアを高めたり、規模の経済を活用して収益構造を改善したり、デジタルを駆使して少人数でも事業活動が行なえる工夫をする。当然に、買収した後も、その事業のコントロールを徹底的に行ない事業のシナジーを出す取り組みに一定の資源を費やす必要がある。そもそも買収した事業とともにシナジーを出すには、一定の事業への理解と継続的な関わりが前提になるのだ。
勿論、小規模な事業の場合、先行きが不安、業績不振、後継者不在などのネガティブな理由で、事業のライフサイクルを度外視して売却を模索する経営者も多々いる。また、ファンドの投資先の企業がIPOすることが出来ず10年を迎えてしまった場合は、投資先の事業の一部、もしくは全部を現金化する必要がある。このような事業を新規事業の買収先として検討することもできる。しかし、その手の情報が入る企業は、新規事業の開発に対して戦略的で、ゼロイチとM&Aに加えて、提携や出資を行いながら情報収集と事業化の可能性を検討しているので、今回の議論の対象外、いわゆる優等生企業なのだ。
(M&Aは成功するのだが・・・)
さて、話を戻そう。新規事業を立ち上げる目的で、自社でゼロイチの部隊をつくる。しかし、これまで説明した理由でなかなか進まない。一方で、株主に対しては成長戦略を軸にした経営計画を既に発表している。
例えば、現在の企業の売上が70億で、後数年に100億を達成するなどだ。内訳は、既存の事業が複数あり、特に稼ぎ頭の事業は成熟期を迎えているので70億を維持するもの難しいのに、きりよく100億を目指したいと公表している状況だ。色々議論しても、既存事業の延長とゼロイチで今行っている取組が成功しても90億が限界だ。どうしても10億足りない。そんな状況だ。結局、議論が堂々巡りになり、最後に「10億はM&Aだ!」的になり、経営会議の中で希望を見出してしまうのだ。
仮に10億の企業が利益率10%で1億の利益だとする。資産の価値が3億程度だとしても相場は8億から10億程度だ。案件があればお金で解決し、事業計画で不足する10億の嵩増しが出来て一件落着とならないのだ。
売り手が事業を手放す際に、更に成長するためにより大きな資本傘下になり成長を加速したい。という案件は稀で、実際は今後の成長が不安定でいくつか問題を抱えている。それでも新規事業や成長を遂げたい買い手企業がたくさんあるので売り案件に対して買い手が10社以上手いることもざらだ。
仮に運よく買うことができたとしても、買い手はその企業のマネジメントを行う必要があるし、場合によってはテコ入れが必要になるのだ。M&Aをしたからと言って、勝手に自走して買収案件が収益を生むかといえば、そのような事業は売りに出されることが稀だ。買い手企業は買収した企業に経営陣を送り込み、買収した企業の問題解決にあけくれる。
本来は、買収する前の時点で、統合した場合のシナジーの予測や問題点の洗い出しをするのだが、経験がない買い手はお金をだしたら終わりだと思ってしまう。結果、買収した時が最も企業価値が高く、その後の経過と共に価値を棄損させてしまうのだ。ひどい場合は、のれん代の減損が生じてしまう。
さらに、慣れていない会社ははじめてのM&Aで結構なキャッシュを払ってしまい、既存事業の資金繰りも悪化するなども稀に観察する。
(ではどうするか?)
70億から100億に切りよく目標を設定したことが・・・。と思うかもしれないが、それは仕方がない。企業はミッションやビジョンの実現のために成長せざるを得ない生き物だ。問題は、残り10億となったところで思考停止したことだ。瞬時にM&Aと捉えるのでなく、その領域に対して、投資先に対しての戦略をもう一つ深掘りして準備すべきだ。
現実的に考えると、自社の売上を保管する企業が都合よく売りに出る可能性は極めてゼロに等しい。しかし、自分達だけでは達成できない。深掘りすべき点は、では何が自分たちに不足しているのかだ。時間なのか、ノウハウなのか、経験なのか、販路なのか、デジタル技術なのか。
その不足する部分を徹底的に整理して言語化することがまずは大切な一歩なのだ。そして、その部分をゼロイチで取り組む考え方と、不足する部分をM&Aではなく、提携や出資で補うという考えも持つべきなのだ。
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