早嶋です。
旧暦三月十三日。春も終わりに向かう頃だ。昔の人は、この時期を「春惜しむ」と呼んだという。今日は、まさにそんな一日だったと思う。
妻と唐津へ出かけた。偶に通う料理教室に参加するためだ。教室は、地元の窯元とその旦那さんが営んでいて、庭や畑で採れた野菜と唐津の海の食材を使った季節の献立を習う。器も料理も、そしてそこに流れる時間も、すべてが手づくりだ。
今日は、蕗をご飯に混ぜた。炭と一緒に茹でてアクを抜き、丁寧に筋を取り、刻んで筍と一緒に炊いたご飯に混ぜる。ほろ苦くて、鼻に抜ける香りがよくて、春を名残惜しむのにぴったりの味だった。山椒の葉も、ちょうど柔らかい時期だ。摺鉢で丁寧に摺り、千鳥酢と和えて、備長炭で焼いたスズキに添えた。香ばしさと清涼感が交わり、スズキの旨味を引き立てた。外では鶯が鳴いていて、縁側から吹き抜ける風が心地よい。山の斜面には、大好きなあざみの花が咲いていた。
教室の帰り道、水が張られた田んぼが目に留る。山のかたちが水面に映っている。風が吹くたびに揺らめいている。田植えの準備が始まっているのだろう。自然の営みは静かだけれど、確実に次の季節へと歩みを進めている。春は終わる。でも、こうして春を惜しむ時間を重ねることで、心の奥に季節が残っていくような気がする。