アンゾフⅡ

2008年4月19日 土曜日

早嶋です。



昨日の続き、成長マトリクスの後半です。



●製品開発

新しい製品を現在の顧客へ投入することで継続的に成長を図ります。シャンプーや自動車まで、多くの業界ではこの戦略を取っています。また、製品に関連するオプションを導入したり、機能を加えて違う製品を開発する場合もありますが、既存顧客への販売を目的とします。



多角化●多角化戦略

製品・市場ともに、新規の分野に進出します。既存事業の周辺事業分野、または関係のない新たな事業分野に進出することによって企業の成長と拡大を図る考え方です。



多角化について、いくつかフレームが示されています。1)水平展開、2)垂直展開、3)コングロマリットです。



1)水平展開

水平型多角化とも呼ばれ、同じ事業分野を広げるイメージです。バイクメーカーであったホンダが自動車事業へと多角化したケースは水平展開です。



2)垂直展開

垂直型多角化とも呼ばれ、製造の上流や販売といった下流へ自身の事業を広げるイメージです。部品メーカーが製品まで手がけて販売するケースなどです。



3)コングロマリット

全く新しい製品を、全く新しい市場に導入するケースです。ソニーが保険分野や銀行業務に進出した例はこちらに当てはまります。



多角化のケースは多くの企業で観察できます。60年代は自社で一貫した多角化が前提でしたが、80年代頃には無造作な多角化経営で失敗するケースが相次ぎ、多角化に対してネガティブな印象を提唱する人が多く出ました。そして、近年の多角化は全てを自社でまかなうのではなく、他者との連携やアウトソーシングを図ったり、部分的にM&Aを繰り返した多角化など、その形態に幅が出てきています。



多角化で特に成功をしている企業は、自社のコア・コンピタンスを活用しており、また事業ドメインの範囲で成長マトリクスを構築している事例が目立ちます。この点に関して、シナジー効果が高い収益性をもたらす事は近年の論文でも示されています。



多角化を進めてきた企業が、コア事業へ集中する、という逆の動きを見せる事例も多々あります。東芝は、自社の事業を半導体事業を中心とした電子デバイス事業、HD DVDなどのデジタルプロダクツ事業、そしてウェスチングハウスの買収など原子力を中心とした社会インフラ事業の3つに資源を集中しています。



規制緩和や市場変化、グローバル化によって事業環境がより複雑に変化する中で企業はこれまでの非関連多角化による分散投資から、コア事業への集中に軸足を移している事例です。自社のコア・コンピタンスとの関連性が低い事業を売却して、売却資金をてこにコア事業への強化や周辺事業への再投資に充てることで、コア事業を中心とした事業展開を実現するのです。



成長マトリクスは単純な4象限からなりますが、考え方や戦略をまとめる際に、或いは他の事業研究を行う際に非常に使い勝手が良いフレームワークです。自社事業をプロットして、今後の長期的な戦略に基づく第一歩を踏み出して見るのはいかがでしょうか?



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