バックキャストから自分(自社)の未来戦略を考える

2022年8月4日 木曜日

高橋です。

 

私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。

 

今回は番外編です。先日参加したビジネススクールの講義の中で、私の印象に残ったエッセンスをご紹介いたします。テーマは「バックキャストから自分(自社)の未来戦略を考える」です。

 

講義全体の趣旨は、イノベーションの概要を学ぶものでした。参考までにイノベーションの定義は様々ありますが、シュンペーターはイノベーションを、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義しました。私なりに解釈すると、「これまでにないモノを生み出し、世の中にインパクトある変化をもたらす」とでも言いましょうか。

 

さて、自分(自社)が今後の戦略をどのように考えればいいのか、これも様々な考え方、取り組み方があります。多くの場合、現在行っている事業、商品サービス、仕組みなどをその時々の世の中の変化に合わせて変えていくのではないでしょうか、つまり現在の延長線上です。例えば、コロナ禍で来客数の減った飲食店が、テイクアウトを始めるような取り組みです。商品(食べ物)は変わらないけど、提供の仕方を時世に合わせて変化させたということですね。

 

今回取り上げる「バックキャスト」という思考法は、このように現在の延長線上に戦略を考えるのではありません。バックキャストは、まず望ましい未来を考え、そこから逆算してそれを実現するためどうすればよいか、と戦略を考えます。バックキャストの逆は「フォアキャスト」と言い、現在置かれた状況を起点に、そこから起こりうる未来を探索する思考法で、先ほどの飲食店が例えです。

 

バックキャストでは、望ましい未来とは?から考えますので、現時点に縛られることなく自由に発想できますし、それゆえ大きな変革や変化が激しい時代には有効な思考法だというのは納得できます。現在の延長線上を創造するのと違い、「どうすればこの望ましい未来を実現することができるのか?」と頭をひねりますので、思いがけない発想や突拍子もないアイデアが浮かぶ可能性があるのです。これならイノベーションを起こすこともできる考え方だと腑に落ちました。

 

当日の講義では受講生が3チームに分かれ、それぞれ「衣・食・住」の10年後の望ましい未来を創造しました。そして、その「望ましい未来」と「現状」とのギャップを導き出し、そのギャップを自身の会社や仕事に当てはめてみるというワークショップを行いました。

 

例えば、「食」についてはこの様になりました。

10年後の「食」は、「肉はほとんど合成肉になるだろう」、「菜食主義が一般化しているだろう」、「地産地消が増えるだろう」、「デジタル技術で簡単調理が流行るだろう」などの未来イメージが出ました。それに対して、現状は「低コスト大量生産に依存している」、「肉などの動物性たんぱく質が主菜である」、「鮮度を保ちながら物流することを重視する」などの認識があります。未来と現状のギャップは「生産と消費の境界がなくなる」、「個性がより尊重される」、「デジタル技術が実生活に浸透」、「グローバルからローカルへ」と導き出されました。

 

この未来と現状とのギャップを、自分(自社)を取り巻く環境に当てはめるとどうなるでしょ?ということを各チームが最終発表しました。

 

例えば、自社は現在グローバルサプライチェーンの中で大量生産・大量消費・大量廃棄するビジネスをしているが、グローバルサプライチェーンは急激に衰退するだろうから地産地消の仕組みを考えてみよう、とか、安定した正社員が良いという価値観から個性重視の自由で自分らしい働き方を望む人が増えるだろうから雇用形態が激変するなどの意見が出ていました。

 

望ましい未来として世の中がそのように変わることが予想されるならば、その未来に対して自分(自社)はどのように変化を起こしていけばいいのだろう?どのような未来の戦略を立てればいいのだろう?と、バックキャストの思考法で考えるよい機会となりました。

 

コロナ収束がいまだ見えず、不確実性が増すばかりの昨今です。個人も企業も先が見えず不安に感じることも多いのではないでしょうか。そんな時だからこそ、バックキャストの思考法を取り入れ、望ましい未来を創造しそれを実現するために今、何をすべきかを考えることが重要だと感じます。大切なことは「将来どうすれば実現できるか」とあきらめずに考えること、またそれを実現するために今できることから行動すること。普段の生活でも営業活動でも同じことだと思います。

 

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