本店とグループ会社

2022年1月28日 金曜日

早嶋です。

親会社とグループ会社。およそ親会社とは出資比率が50%よりも多い会社を指しています(もちろん連結対象としての会社は別途様々なルールがあると思いますのでここではざっくりと)。国内で著名な企業の多くがグループ会社を持ち、企業の経営は単体と同時にグループ全体ですすめ意思決定も行っています。

総務省統計局の少し古い資料ですが、平成26年次のEDINET情報によると上場企業、有価証券届出書類等提出企業の総数3953社のうち、3354企業がグループ会社の体制です。およそ85%の企業が親会社とグループ会社の体制です。同資料では、企業グループに属する会社企業の数の調査もあり、その数約8万社。そして事業所数は約61万社でした。また従業員の数は1817万人です。2020年時点での就業者人口がざっくり6700万人ですから、時制はあっていませんが27%、ざっくり3人から4人に1人はいずれかの企業グループの社員ということが言えます。同総務省統計局の資料は色々とグループ会社についてのファクトを示しています。グループ会社約8万社の3/4以上の従業員数は1から299人。業種は製造業、卸・小売業、建設業の順位で多く、左記で全体の6割以上を締めているのです。

さて、親会社とグループ会社についてのファクトを整理しましたが、ご承知のように、多くの親会社の事業モデルが成熟しています。従来は親とグループの関係で収益をあげていたのが、その関係性だけでは収益がのびない。そこで多くの親会社グループ会社はいわゆる「外販」を増やす意思決定をしています。しかし、実際「外販」を掲げるも、なかなかその実現しません。

例えば、今だったら親会社は2025年のグループビジョン、あるいは2030年のグループビジョンとして少し大きな数字を掲げています。その理由は単純で、企業グループが成長をストップした目標を掲げた瞬間に親会社の株価が低迷する可能性があるからです。株価は将来の収益の現在価値の総和として表現できます。理論値ではありますが、将来の成長をストップした企業は、投資家から弱腰に思われ、別の企業に投資配分を増やすなどがなされ事業が更に続けにくくなる可能性があります。そのため親会社としても常に成長を余儀なくされるのです。

そうなると、親会社もグループ会社も「成長しよう!」となるのです。例えば、「グループビジョンが今の収益を5年から10年で2倍にします!」と提示すれば、それはつまり、グループ会社1社1社も今の数字を倍にする必要を意味します。しかし、多かれ少なかれグループ会社の社員やマネジメントからすると、はじめは「・・・」と感想を抱くことでしょう。

そして、昨今はここに必ずと言ってよいほど、「DX」「SDGs」「BCP」「ガバナンス」などのワードが登場します。整理すると、「今の事業モデルを新たに変えて、その実現をデジタルを使って実現しよう!」。そして、「事業は環境や社会を無視することなく、あらゆる災害やウィルスなどの驚異にさらされても持続する」。そして、「その達成には倫理観を持ち、法令を遵守して正しく行いますよ!」というものなのです。「いやー、ガラリと変わりまっせ!」と言っているようなものなのです。

(親会社の戦略不足)
上記ぐだぐだと書きましたが、ここでビジョンを示して達成しているグループ企業と、なかなか達成出来ない企業にはどのような違いがあるかを考えてみます。まず、達成するグループ企業は当然、グループビジョンを示した後に、親会社の経営資源や特徴を把握し、どの分野に資本を投下し、どのようなシナリオで達成するかを常に議論しています。そして、グループ会社に対してもビジョンを丸投げして終わりではなく、グループ会社を事業部のポートフォリオと同様に分析し、濃淡を付けて連携しながら取り組みを検証しています。

一方で、なかなか達成できないグループ企業は、ビジョンを示すところで終わり、肝心の方向性や具体的な資源の配分については、あるいはDXの筋道の議論はグループ間を超えてまで行いません。あたかもその仕事は、親会社であれば事業部長や現場の部長がやってね。グループ会社であれば、グループ会社で考えてね。といった具合です。

従来のグループ会社は、親会社の仕事に付随する業務を自社で行う目的で設立されている会社が多いです。例えば、物流とか、オフィス周りに関わる不動産とか。そこにはビルの清掃や設備メンテナンスが付随します。研修を行うのであれば研修会社が出来上がります。グループ会社が30社とか50社もあれば、旅費の手配を行う会社があり、社宅を管理する会社がありと、グループ会社は周辺業務を支えるのが主目的でした。

そのため親会社には経営企画があっても、グループ会社にはその機能が無く、社長が担うのが当たり前だったと思います。しかしいつしか月日が流れて、気がついたら当初の社長は何代か交代。しかし組織は当時のまま。で、いま親会社から急に利益を倍にしてほしい的なオーダーがきているのです。若干オーバーではありますが、大きくずれていないでしょう。

もちろん、一定の数がグループ会社にあれば、その中で急激に伸びる会社もありますが、そのような会社は今回の議論の対象外です。多くのグループ会社は人事部もまちまちで、総務部が代替している会社が多いのです。重要なポジションは従来、親会社から人材がやってきていたので、教育も採用もまちまちだったのです。

(グループ会社の機能不足)
親会社がグループビジョンを示す場合、今でしたら2025年とか2030年を一つの区切りとして示します。親会社の利益が60とかだったら100を目指すなど、何かと切りの良い数字が提示されることが多く、戦略的な意図はあまり感じられません。当然、グループ会社は既存の売上目標でもアップアップなのに、このような数字の達成のためには新規の事業で成果を出すか、同業を買収して数字を揃えるしか手立てはありません。

そこで多くのグループ会社は、外販比率を高め新たに営業を始めるスローガンを掲げるのです。ただし親会社に対しては従来以上に価値を提供する必要があることから、価値の提供=値下げと思ってしまい、以下にコストを減らすかを考え始めます。そこで、ますます自社に残る利益は少なくなりジリ貧サイクルを回しているのです。

(親会社向けの仕事)
上述のように、基本はコストダウンを考え、更に内部の仕事を取りに行こうとします。しかし、親会社のビジネスモデルは既に成熟しています。仕事を更に取りにいくどころか親会社がグループ会社に回す仕事自体が減少しています。しかしグループ会社の発想は、相変わらず同じで自分たちの人件費を更に削って親会社からの仕事を確保しにいくのです。当然に社員を派遣やバイトに切り替えることでしか対応する発想がありません。結果的に仕事の質がますます定価するという悪循環に陥ります。

本来は、コストを下げることばかり考えずに、親会社に対してもしっかりと提案をして売上をむしろ上げる工夫をするべきです。そのためには、親会社が仕事を振り分ける前後の仕事を把握して、グループ会社が行ったほうが効率が上がり、価値が上がるような取組を探していくべきなのです。同様に、グループ会社が仕事を提供する下流工程の仕事も同様に、自分達が関わることで価値が上がることは無いか?というような視点で見極めます。

ただ、実作業において、自分の業務範囲でしかモノゴトを考えないので、上記の取組はイメージすら出来ないと思います。これは同様に親会社の社員もグループ会社に丸投げすることが当たり前になっているのでグループ会社からの提案に耳を傾けようともしないのです。

(外部の仕事)
これまでグループ会社は親会社から5年とか10年単位のスパンで仕事を得ていました。そのため親会社に営業するということは、親会社の御用聞きに徹するというニュアンスが営業の実態になっています。ですので、全くコネクションが無い企業に対してそもそも提案する発想自体がありません。更に、従来は親会社の担当者とやり取りをしていれば数字は取れましたが、外販は、担当者にあったとて先に進むことはありません。その会社のキーとなる人脈にたどり着き、その会社の先のイメージを理解しながら提案をすることが営業活動になるからです。どっぷりと親会社の御用聞き営業をしている人材は、残念ながら役にたたないのです。

能力以外にも、時間というリソースの問題もあります。本来は、先に投資をして人材を確保し、新規外販部隊をあつめてから対応すると良いようなものですが、いかんせん、予算がありません。そのために既存の営業に新規の獲得目標を掲げます。当然、既存の営業成果で評価される営業ですから、新規に時間を裂きません。もし時間を割いたとしても、結果的に成果が直ぐでるような仕事ではないため、やはりまた基の既存の営業にどっぷりと浸かるのです。

まさに7つの習慣にある、緊急性は低いが重要度の高い仕事のため、常に次回行おうとなり、結果的に行動せず、あっというまに数年が経過してしまうのです。仮に行動をしているとしても圧倒的に量が不足している企業も散見できます。その場合は、新規の外販目標が割と曖昧で、売上がいくらで、件数アプローチをどの程度行うのか?あるいは更に上位の、どの領域に対して、どのような目的で営業にいくのかなどは現場任せて、何も決まっていないという状態になっている企業も多いのです。

結果、目標は曖昧、新規の成果はなかなか出ない。既存のノルマは更に追い込まれるようになるので、新規や外販獲得はやっぱりスローガンで終わっているのです。



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