DX化の呪文の奥に潜む現場の弊害

2021年10月25日 月曜日

早嶋です。

一度でもデータをいじった経験があれば、かんたんにDX化が進まないことがわかると思います。そもそもアナログで最適化出来ていない企業がデジタルで最適化できるはずが無いのです。DX化は企業の仕組みをゼロリセットし、デジタル化に最適な指揮命令系統や組織、管理の仕方や評価など、まるっとするっと変える勇気と覚悟があっても結構大変だからです。したがって、DX化を実現できたら、そこには必ず組織の変革があり、新たな未来が見えるかもしれないのです。

DX化関門の1つ目はデータそのものです。多くの経営者は社内にはデータが溢れているから、「それらを活用して売上や利益を上げれるだろう。」なんて簡単に妄想します。が、間違いなく不可能です。そもそも偏在しているデータがいくら豊富にあっても、それらは活用出来ないのです。編集等手を加えない限り。

いわゆるデータの不備ですが、部門が異なる毎にデータの管理の仕方が異なったり、同じデータでも機能毎に意味が微妙に異なっていたり、全体としてルールがあっても現場レベルでローカルルールが正常運転している場合など様々です。データを分析する前に、それらのデータを使えるレベルにする必要がまずあるのです。

例えば、管理の仕方です。ある部門では大人を18歳と認識し、ある部門では大人を20歳と認識する。部門を統合してデータを分析しても大人の概念が異なり、統合したデータが無意味になります。例えば、定義の違いです。売上のタイミングをある部門では発生ベースで認識し、ある部門では入金ベースで管理します。2つの部門の売上を統合した結果の売上は何を意味するのか不明です。これらは全て全体最適で管理されず各々部門最適に動いてきた過去の弊害なのです。

データ統合の際に意味があるデータに修正する作業はクレンジングと称されます。じみーに大変であることが想像できると思います。当然、不足するデータに対しては新たに取得するルールを設けて収集することなども考える必要があります。これらのニュアンスが想像できない人は、既にデジタル化以前に近年の思考についていけない弊害です。断定しても良いですが、早く代替わりしたほうが良いのです。

上記のようなことが小さな会社でも発生しているのですから、組織再編する企業規模や、毎年のようにM&Aを繰り返して規模拡大している企業はデータのクレンジング作業がいつまでたっても終わりません。そのため企業によっては過去のデータに見切りを付けて、新たに収集したデータでDX化を実現させる企業もあると思います。

当然、データが集まっても、それらを解析し実行する部隊が必要です。2つ目のDX化の関門は人材です。企業において高々にDXを推進すると言いながら、毎年同じ人事戦略で、毎年同じルートで新卒採用を進めています。中途も代替同じような感じです。スペックをあまり決めずに集めています。そう、「その人材を獲得してもDX化なんて幻ですよ!」と助言したいくらいです。

もちろん初めは外部の専門家に頼んでデータの収集や社内データのクレンジングをすすめるでしょうが、その作業はDX化を宣言したら永続します。そのため社内でその取組ができる人材を内製化しなければ、いつまで経っても経費がかさむばかりです。データが揃って集まる仕組みが出来ても、分析するにもノウハウと経験の積み重ねが必要です。いわゆるデータサイエンティストの教育か、その確保が必須になります。

例えば、イメージして見てください。データ分析だけできる人材に、「このデータを適当に分析してなにか法則を見つけてみて?」と言っても100%当たり前の分析結果しかでてこないと思います。出てきたとしても、すごい工数をかけて「売上の80%を上位20%の顧客で賄っています!」なんて当たり前のコトを連発されて終わりです。そう、データを分析するためにはその業界やその事業の中身に対してある程度課題感と仮説構築を行いながら分析しなければ、鋭いインサイトなんて生まれないのです。

そのため成功している企業は、ある程度経営分析ができる社員や、現場の経験がある筋の良い社員にデータ分析のスキルとツールの使い方を教育しています。一定のキャリアを積み、ある程度分析に理解のある人材に対して課題提言を行わせ、データ分析の得意な専門家とタッグを組むなどしてデータの分析と活用を補完するのです。少なくとも事業がわかる人材がデータ分析の基本を持っていれば、外部に分析そのものの仕事を丸投げしてもある程度辺りを付けて指示をするので、「当たり前の結果」に高額の外注費を支払うリスクは低減されます。

とここまで見てくると、基本的に、色々器用にこなす人材に仕事が集中し、その人材がヘトヘトになるまで働く結果、疲弊していくというのが関の山なのです。経営者としては、そのメインディッシュ級の人材が仕事ができるように、必要なスペックの人材を適宜あてがうコトをしなければ、既存の取組に対しても逆効果になることを理解したほうが良いのです。

とここまで議論をすると、これがたまたまDX化というスローガンであって、過去からのイノベーションや新規事業などと唱え、全て同じサイクルで結局何も出来ていない企業がみんな連呼しているのがDX化じゃないかと。私はそのように滑稽に見てしまっています。もちろん、仕組みを作ってガンガン成果を出すお手伝いもしていますが、覚悟が双方に必要です。それが出来ない仕組みは極めて滑稽に感じます。



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