マーケティング近視眼

2008年1月14日 月曜日

早嶋です。



「当社のポリシーは、価格を引き下げ、事業を拡大し、製品を改良することである。価格の引き下げを第一に挙げたことに注意して欲しい。当社は、コストが固定的だと考えたことはない。だから、さらに売上が増えると確信するところまで、まず価格を引き下げる。その後で、その価格で経営が成り立つように懸命に努力している。当社はコストで頭を痛めることはない。新しい価格が決められると、それについてコストを下げるからである。」



上記はヘンリー・フォードが自身の経営哲学を簡潔に述べた文章の抜粋です。セオドア・レビットのマーケティング近視眼の中でフォードの話が出ています。



フォードは当時、黒色の車のみ販売していました。これに対しては非常識だが、市場ニーズに適合した生産システムの設計をリードしている点では優れているとレビットは指摘します。同時に、フォードは生産の天才だけではなく、アメリカ史上、最も優れたマーケターであると同時に、最も非常識なマーケターといっています。



フォードの組立ラインによってコストが切り下げられ、これによって価格が下がり、当時としては破格の500ドルの車が何百万台も売れた、と世間は見ています。しかし、事実はフォードが1台500ドルの車なら何百万台も売れると考えたので、それを可能にする組立ラインを発明したのです。



つまり、大量生産はフォードにとって低価格の原因ではなく結果なのです。当時、フォードは上記の点を指摘していますが、多くの生産中心主義の経営者は彼の偉大な教訓には耳を貸そうとはしなかったのです。



マーケティングの中で価格の決定は企業が利益を継続的にあげるために非常に重要な意思決定になります。戦略的に適正な価格を設定することが出来れば、買い手は購入意欲を持ち、支払い能力に対する不安を払拭することができます。



この点はブルーオーシャン戦略でも指摘されています。「価格を上手く設定すれば、瞬く間に多くの顧客を獲得できる」と。



レビットのマーケティング近視眼は、1960年代に書かれた論文ですが、マーケティング界に大きな影響を与え、彼の名を世に知らしめました。現在でもマーケティングのテキストとして使われていますので一度、読まれて見てはいかがでしょうか?



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