能力の有無よりも経験の違い

2020年12月25日 金曜日

早嶋です。

熊本にはいわゆるビジネススクールがありません。そこで3年前より熊本学園大学や熊本県などが主催となり、地元経営者の声のもと、次代舎という学び舎を運営しています。特徴はファミリービジネスの2代目や後継者に向けた経営ナレッジを提供するもので、1年かけて自分が社長になった際のシナリオを検討する内容です。

弊社はこの次代舎のメンターという立場で参加させて頂いており、時折、参加者を交えて議論をさせて頂いています。

先代と後継者の最も大きな違いは経験の差です。先代や起業した方々は何も無いところから様々な失敗を経て、今の事業を成立させています。規模を大きくし、経営を安定させる、そして社会に価値を創出する。経営者によって何をミッションとするか、そしてどのような信念を軸に動くかは異なりますが、皆一様に苦労と失敗という経験を積んでいます。

心理学や宗教学に覚醒という言葉があります。意味としては、本来の自分に戻ること、素の自分になることなどです。人は元々から素晴らしい力を持っていますが、人生というゲームを楽しむために、神様があえて試練を与えているのです。そのために常に周りと物事や取り組みを比較させ自信を喪失させます。そうすることでもがき苦しみ、そこに救いの手をもとめるようなビジネスモデルなのです。

しかし、覚醒を繰り返す、つまりこれまでできなかったことを少しづつできるようになる、という経験を積むことで徐々に自信が芽生えます。そして最終的には周囲を気にしないで素の自分でいられるようになります。自分の経験値があがり、ちょっとしたことでも選択肢や代替案が浮かび、うまくいかないことが当たり前なので、そんなことを気にしなくなるのです。実際、この感覚を他者、特に経験値が低い方や努力をされていない方に説明しても共感と理解をいただけませんが、わかる人は静かに頷いていただけると思います。このような真理って簡単なようで難しいことなのでしょうね。

神の存在は別として、上記の考え方はあながち間違っていないと思います。アイデアの創出でもアントレプレナー(起業家)の行動理論でも、自分自身のマインドセットが最も大切なトピックスの一つとして取り扱われています。そして、その中でも周囲と比較することなく、常に自分の考えにフォーカスして、過去の自分よりもブラッシュアップすることを勧めます。

先代やアントレプレナーは、何かのきっかけで事業を起こしました。継承者は当然に先代と全く同じ歴史を体験することはありません。仮に知っていても、そこに感情移入が無いため、過去のストーリーをすっと流し聞きしてしまいます。また、歴史にはかっこ悪い部分は省略され適度に成功ストーリー的に脚色されているから、実際に華が咲くまでの苦労や失敗はあまり語られることが無いのです。そして勘違いします。その輝いている今の一瞬を見て、自分も同じように取り組まないと、と。

何も苦労せずに今を作る人なんて存在しないと思います。皆その過程で他人からすると想像つかないほどの苦労や失敗や苦しみを幾度となく味わっています。

この理解がなければどうなるか。継承者は勘違いします。自分の能力で1回の線形的な計画で上手くいくと。そして失敗して、自分の無能さに怖気づき、次の行動に移れなくなるのです。失敗、挫折等を味わうことなく、割とストレートに、割と要領よく生きてきた方にとっては、このような苦しみを当たり前と思わずに、自分に能力が無いと勘違いするのです。

傍から見ていれば大した失敗でも躓きでもないのに、当人はその経験によって、自分は向いていないかもしれない。と考えてしまうほど、甘ちゃんなのです。10年もすると、あの頃は青二才だったなと笑い飛ばせるでしょうが、そのような将来の自分を想像することもできずに、行動を止め、結果がでなくなるのです。

でも実際は、能力の違いなんてほとんどなく、そのような躓きを繰り返す中で要領を得て、マインドをリセットして太く強く靭やかになるのです。もっと人生ゲームを楽しみましょう。主人公は自分自身です。他人の人生に生きることを止めて、自分の未知を切り開く。これが本来の人生ゲームだと思います。



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