金融市場2)

2007年8月5日 日曜日

早嶋です。



昨日の続きです。80年代からの金利の動きに関してコメントします。



第二次石油ショックの影響を受けて、80年代前半は各国の金利が高騰しました。特に米国の長期金利は10%台半ばまで上昇しています。その後、世界的な不況で、世界各国の金利は下降トレンドに入ります。



そして、この金利コストの全般的な低下傾向こそが、証券化などに見れる金融商品の多角化とヘッジファンドの盛り上げをもたらした大きな要因です。



記憶に新しい方も多くいらっしゃると思いますが、90年後半からは、コンピューターの2000年問題を警戒して、各国の中央銀行は資金を大量に供給しました。これによってますます金利低下が加速した形になります。そして、01年9月の同時多発テロにより、各国はいっそうの金融緩和を行っています。



さて、金利の行方ですが、徐徐に上昇傾向にあります。米国のFRBが政策金利を17回にわたり引き上げだし、ECB(ヨーロッパ中央銀行)でも金利を引き上げています。



この金利上昇は、ヘッジファンドやオルタナティブ投資などでは、レバレッジを効かせた運用を行っている事からかなりの影響を受けるでしょう。レバレッジとは、テコの原理を指す言葉ですが、金融用語では次のような例で使います。



例えば顧客から預かった運用資産でポートフォリオを組み、そのポートフォリオを担保に外部金融機関から資金調達して、これを新たな投資に回す。そして、それを元にポートフォリオに上乗せを行う・・・。つまり、こうする事によって、元の資金の2倍にも3倍にも膨らまして運用が出来るので、薄い利ざやの運用であっても、それなりの成績を収めることが出来るのです。



最近まで、紙面に良く出てた、日本のゼロ金利政策で、円キャリー(円借り)取引に世界中が群がっていたのも、レバレッジを効かせた運用を行うためです。



金利が世界的な上昇傾向をはじめると、レバレッジを効かせたプレーヤーにとっては環境が厳しくなります。資金調達コストが上昇すると、強気の運用をしない限り、これまでのようにレバレッジの効果を享受できないからです。また、無理に運用を行えば逆ザヤになる可能性も出てきます。



もう一つの問題は、金利上昇によって運用資金が流出する可能性です。運用する目的は、当然そのリターンを期待します。近年、年金がヘッジファンドやオルタナティブ投資に回っていたのも、伝統的な株式や債券によるポートフォリオでは、投資リターンが期待できなかったからです。運用額が巨大になった年金は、かつてのように10年スパンの長期的な運用ではなく、短期的な運用に変化してきました。



しかし、金利の上昇によって、短期金融市場でも金利収入を稼げるようになれば、これまでのようにヘッジファンドなどに預ける必要はなくなります。この様な動きが定着するとヘッジファンドなどへの資金の流出は減り、そのうち流出という動きが予測できるのです。



この動きは注目に値します。運用資金の流出がはじまれば、期間投資家のポートフォリオに影響が出るからです。例えば、解約資金を調達するために保有資産を売却し、それが時下を押し下げたり、ちょっとした売りが過剰反応を起こし、相場を下げる場合などです。



ヘッジファンドの動きが注目されると、資金を貸し出している銀行が資金回収できなくなるので、売りの連鎖が始まるのではなどと、世界の金融市場が混乱し始めます。この例は、米国のヘッジファンドがサブプライム・ローンの回収不能に陥ったと言うニュースで米国の株価が暴落した例と重なりますね。





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