メーカの今後

2018年10月17日 水曜日

早嶋です。

メーカーは原材料を加工し、製品を生産提供する産業です。鉱業や建設業とともに第二次産業を構成する大きな分野です。工業というくくりは重工業から軽工業まで幅広い分野があります。現在の多くのメーカーはものづくりのフォーカスから脱却できずに、顧客との接点を活用できず、更に顧客フォローを行えずに苦しんでいます。

メーカーの上流工程はサプライヤーで部品や原料をメーカーに提供する企業がいます。メーカーはこれらをベースに加工と製造を行います。メーカーの下流にはその商品を仕入れて販売、或いはフォローする企業がいます。メーカーによっては、上記のサプライチェーンをすべて自前で行う企業もいますが、全体としては、調達、加工製造、販売とフォローの3つに分かれるサプライチェーンのうち加工と製造に力を入れているのが多くのメーカーです。

当初、メーカーは顧客のために、顧客が直面する何らかのペイン(問題やニーズ等)を解消する目的で何らかの商品を考案しました。しかし、問題を解決するための商品化までは、実際、結構な時間が必要でした。メーカーの通常のバリューチェーンは、上流工程から研究や開発、調達や製造、販売やアフターサービスです。企業の中でも上流工程で時間がかかってしまい、そのため顧客に提供する組織を販社や代理店に任せる企業が出てきたのです。

市場が成長していた頃は問題ありませんでした。需要と供給のバランスで、圧倒的に需要が多く、商品そのものが飛ぶように売れたからです。しかし、現在はそのバランスが崩れ顧客も情報化に寄って知識武装しています。そのため商品が良ければ売れるという時代でもありません。

これまで流通チャネルを広げることでものを販売してきたメーカーにとっては非常に厳しい時代です。結果的に小売業が直接消費者と接してきて、そこの購買行動からその後のフォローをデータを活用しながら実施し始めたからです。情報化の時代、一度この取り組みを始めた企業は加速度的に成長します。

それもそのはず、小売業が直接顧客IDを持っているので、個々人に対してきめ細やかや購買体験を提供できるようになったのです。しかも、その後の購買後のフェーズまで各種IT機器の連携や支払い情報を組み合わせることでよりくっきりと企業が知ることができるようになります。

流通業は、1つの商品だけではなく、消費者が生活の中で必要となるあらゆる商品の販売を提供しようとします。そしていつしか、詳細な顧客情報をもとに、上流工程のメーカーに商品の企画を持ちかけ、自ら企画して商品を開発委託するようになりました。

メーカーも、高度成長期に合わせて増設したラインが今は動いていないため、流通向けに工場を稼働し始めます。ここに皮肉なことが起こり始めるのです。メーカーは、直接顧客の情報を握っていないため、卸や小売を使って昔通り販売します。そして流通店の棚の前で消費者に想起してもらうために、あいかわらずマス広告に多大なるマーケティングコストを費やしています。

かたや小売業は自ら企画したPB商品を自前の棚に置くだけで売れるようになるのです。その理由は、その店舗までは顧客が足を運び、メーカーが販売する商品の隣に置くことで類似品としての認識をたかめ、ブランドに拘らない合理的な顧客にPBを提供する仕組みを作ったからです。メーカーはマーケティングコストをかけて作っていますので、流通点に並んだ商品はPBと中身は同じでも価格が高くなります。一方、PBブランドはそのようなマーケティングコストが乗っていないため通常よりもうんと安く提供しても、利益をしっかりと取れる商品を揃えてしまったのです。

メーカの今後の選択肢としては、これまで通りマーケティングコストを支払って高く売り続けるか、流通の工場となって高い利益をあきらめるか。或いは、自分たちで直販の仕組みを持ち、顧客IDを獲得して仕組みをゼロから見直すかです。整理すると、どのオプションを持っても今より上手く行きにくい選択肢です。

メーカーが過去に構築したビジネスモデルは成長期に通用するモデルだったのです。



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