ARとマーケティング

2011年8月19日 金曜日

早嶋です。

こどもの頃に見ていた映画の世界がドンドン現実になっていますね。昔は、小さな端末から画像が出てきて、その人と会話ができるツールなんて夢のまた夢。それが今はスマートフォンで誰でも手軽に当たり前に使える世界。テクノロジーの進歩って素晴らしいですね。

さて、そのような技術の一つにAR(Augmented Reality)があります。日本語では拡張現実と称されます。この技術は、実際に目で知覚している風景や動画、イラストや文字などに何らかの媒体を使って電子情報を重ねる技術です。GPSと端末をリンクさせ、位置情報を基に、店舗への誘導、クーポンの配信、観光案内等々、様々な分野への応用が期待されます。

例えば、今年の5月に資生堂がオープンした銀座の総合美容施設であるシセイドウ・ザ・ギンザには、ミライミラーというARを使ったメークシミュレーターがあります。A4サイズ程度の鏡のようなモニターに自分の顔を写すと、好みのメイクをした自分が現れるという仕掛けです。機器に内蔵されたモニターで顔を認識して、そこに仮想的なメイクを加えて、モニターに映し出すのです。

化粧品を選ぶときに、メイクした自分の姿がその場に映し出されるので、イメージがしやすくなり、購入につながる。そんなツールでしょう。勿論、化粧品のノリや質感などは体感できませんが視覚的なイメージは明確になります。この技術は、アパレルショップやメガネ屋さんにも応用できますね。アパレルだったら全身の画像を認識した後に、好きな洋服を重ね合わせて、色見や全体のコーディネートを確認できます。髪型やメガネなどの小物を合わせたトータルコーディネートが可能になるので便利ですね。Webの世界に応用すると、その人の体系を上手く取り込むことができれば試着しなくてもサイズの確認がある程度正確にできるようになります。極めて便利で拡張性の高い技術だと思います。

スタジオジブリの映画、コクリコ坂からの劇場公開に合わせて、KDDIもARの技術を使ったプロモーションを行っていました。ここではARを使ったセカイカメラというアプリケーションを利用しています。映画の舞台となった場所を、セカイカメラを通して見ると、あたかも50年前にタイムスリップしたかのように古き良き日本の風景が映し出されます。

アプリケーションに事前にダウンロードして、その場に行き景色を媒体を通じて映し出す。すると、そこに媒体を通して仮想の映像が現れてくるのです。従来は、その場所に看板やポスターを張っていたでしょうが、この仕掛けだとそのコストと手間が省けます。また、場所の確保や土地や建物の保有者に対して一つ一つ許可を取る手間も省けるでしょう。

この技術は、例えば観光地に他言語での案内を画像に重ねて表示させることもできます。例えば、バスの窓にこの装置を付けることで、車窓の風景にそのロケーションにあった情報提供も出来るでしょう。新幹線の車窓に景色と共に、その土地土地のニッチな情報が得られるようになる、そんな世界もすぐそこにあるのです。

スーパーや百貨店でのPOPにも応用が期待されます。先行するデジタルサイネージは、商品の数やPOPの数だけハードを準備する必要があるのでコストがかかります。しかし、ARを利用することで、消費者のスマートフォンに適宜商品の情報やクーポンがその場で見れるようになります。

ただ一方で、何でも間でもカメラを通して見ることになりますので、消費者の負荷もかかるでしょうから、技術の進歩以上に普及のスピードは遅くなるでしょう。実際に、東急ハンズの梅田店ではARを活用したPOPサービスを実験的に行っています。担当者の声では、スマートフォンをかざして情報を入手する人はまだ1割程度だそうです。スマートフォンで街中を見たり、商品を見ていると盗撮やデジタル万引きという疑いの目をかけられるかもしれない!というネガティブな動機が働くのも原因の一つでしょうね。

最近は、技術の進歩が著しいですが、実際に導入するとなると、心理面の抵抗によって使えない!導入が遅れる!というのが多々ありますね。



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