パラダイム論進化

2006年5月14日 日曜日

早嶋です。



60年代に「科学革命の構造」を執筆したトーマス・クーンによってパラダイム・シフトの概念が世の中に広くいきわたりました。これは、科学は既存の枠組みの中で進化論的な進歩をするわけではなく、新たな世界観に突然、飛躍することによって進化する、という考え方を示しています。



例えば、ニュートン物理学では、光の動きを説明できなかったので、アインシュタインが、新たなパラダイムとして相対性理論を打ち出しました。クーンが説明するパラダイムは、特に研究活動において、目に見える現象を説明し、理解するためのパターンやモデルをさしています。クーンや、その後に続くパラダイム論者は、パラダイムシフトを一方通行で絶対的、不可逆的なものとして解いています。



ただ、現実では科学者は異なる考え方を使い分けています。物理の入門コースでは、ニュートン力学やマックスウェルの場の理論を教えていますが、学生や研究者は問題によって使用する理論を使い分けています。



このように最近の研究では、パラダイム自身が往来するものとして、クーンが解いた理論を更に広く扱い始めています。おそらく、クーン自身が、人間の思考の最も古い思考(パラダイム)、白か黒かをはっきりさせる世界にとらわれていたのかもしれません。人間は圧倒的な違いを求めるという根本的な部分です。2000年のアメリカ大統領選のようにブッシュとゴアのどっちらが真の勝者だったのか?というようなあいまいな状況には我慢なら無いのでしょう。



古いモデルから新しいモデルに対して変化が起こった時、パラダイムを受け入れた人は改宗したかのごとく新しいモデルの信奉者となります。これによって過去の知恵や経験に終止符を打ち、幅広い視点から見ることを止めようとします。一度、新しいパラダイムを受け入れると、もとのパラダイムを受け入れようとしないのです。しかし、この状態は危険で既存のモデルに固執すると、急に柔軟な思考回路が閉ざされてしまいます。



重要な事は、パラダイムをありのままに受け入れて理解し、いつ役に立つのか、いつ足かせになるのかを見極めることです。既存の秩序を理解した上で変化に対する環境により適した新しいパラダイムを探す、革命と言うものは常に魅力的ですが、現状維持と同じか、それ以上の危険を伴います。



電子環境が整い、インターネットが整備されても、紙や鉛筆が無くなるわけでもありません。むしろ、机上に鉛筆、ボールペン、万年筆、電話、インターネットに接続されたPCを備えるように、新旧の選択肢をそろえておく事によって、一つの世界観に捉われないようにすることが重要なのです。異なるパラダイムを自由に行き出来るようにして、目的を達成する必要がある、というのがパラダイム論の進化系のようです。



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