戦略論⑥

2008年12月6日 土曜日

早嶋です。



本日は蘇我です。兄の家に泊まって甥っ子と姪っ子と遊んでいます。



久々に「ビジョナリー・カンパニー」を読み返しました。書かれている内容の総括としては、「結局、どんなに素晴らしいビジネスプランと戦略を持ってしても、大きなビジョン、夢とか達成したい姿とか理念なりを自分たちで明確に持ち、常に追求しなければ、継続的に成長を成し遂げるビジョナリーカンパニーになりえない」です。



hardvssoftかつての日本企業は明確な戦略なしに抽象度合いが高い社是や社訓を掲げ経営を行ってきました。これは、ツーカーというか阿吽の呼吸というか、同一民族だからこそ成り立ったのかも知れません。なんとなく皆が同じ方向を向いていたので戦略なしでもやってこれた時代があったと聞きます。



しかし、現在の日本には組織で働く人の価値観でさえバラバラです。そして、一昔よく言われていた日本人の勤勉性という性質も疑わしく感じます。そうなれば、組織を1つの方向に向かせ、最小の資源で最大の効果と効率を上げるためには、明確な戦略を打ち出す必要があるでしょう。



明確な戦略ができたら、その内容を組織に伝え、1つの方向に向かせるために、大きなビジョンが必要です。戦略をやんわり伝えるイメージでしょうか。最近のマーケティングでは、ビジョナリーカンパニーでいうビジョンをアンビジョンという言葉を使って説明しています。



企業には組織全体の普遍的な精神的な支え、行動規範などを表し、戦略の明確な方向付けを行うために理念が存在します。その理念で掲げている方向を具現化する内容を記述したのが戦略で企業は戦略に基づいて実行を行います。



戦略と書くと、米国が信奉している要素還元的な分析アプローチを想像する方が多いと思います。つまり、ツリー構造や体系化された理論に基づいて問題点を細分化して、経済や社会の動きを分析し、因果関係を明らかにして対策を練るような考えです。



対して日本が慣れ親しんだ戦略は、前述したようにもっとホリスティックなものです。細部を見るよりも、もっと全体的な部分を見るというか、俯瞰するというか。和とか誠実とか努力とか社会貢献とかいう抽象的なことばに代表される考え方です。



そこで、戦略と理念を結びつける柔軟な考え方をアンビジョンと定義しているのです。米国で言われる戦略が硬い戦略。アンビジョンは柔らかい戦略。この表現は社団法人日本マーケティング協会が21世紀型経営の主要課題やマーケティング革新のあり方を探求するために発足した「マーケティング・イノベーション21(略称MI21)」の報告論文で使われている表現です。



柔らかい戦略、アンビジョンは組織の外に向かっても何をしたいのかの方向性を示し、実行性の高い柔らかい戦略性を持って発せられるものです。硬い戦略と柔らかい戦略の違いは、硬い戦略は狭い意味で目的が明確でそのために誰が何を行うべきか?などが明らかに行動計画として定義されている。これに対して、柔らかい戦略はベクトルを明らかに示すもの、そのための具体的な方法論や厳密な機能的な役割分担までは規定されません。



かつての分析的な硬い戦略をアメリカの得意技としていましたが、ビジョナリーカンパニーで書いているように、大きなビジョンを示し続ける柔らかい戦略も重要視されているのですね。



皆さんの会社ではいかがですか?柔らかい戦略、硬い戦略、両方とも打ち出されているでしょうか?



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